ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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「よう、やっと半分だな」
「順調だね」
文次郎達と距離を離しながら、歩いていた留三郎と伊作も合流し、これで六年生全員が揃った。
石の上に座る伊作の前に、文次郎が現れると、深々と頭を下げる。
「ありがとう、伊作。おかげで、余計な立ち回りをしなくて済んだ」
「いいから、いいから」
律儀に礼を言う文次郎に、伊作は人当たりのいい笑みを見せた。離れた場所から、仙蔵と○○が『ちゃんと礼を言ったな』、「文次郎は真面目だからな」と、文次郎に聞こえる声の大きさで話す。
そんな事をしている○○の元へ、文次郎はゆっくりと足を進め、○○の前に立つ。
「それと○○……、さっきのお前の態度は、帳消しにしておいてやるから……お前にも助けられた」
どちらが犬か猿なのかで、吹き出した事を不快に思った文次郎だったが、伊作と同じ様に助け舟を出してくれ、通過許可を得られた事に変わりない。伊作だけに礼を述べ、○○には何もしないという陰湿な行為は文次郎自身が許さない。
末尾に、ありがとう…、と、言葉が付け足されたのを○○は聞き逃さなかった。
『おぉ、良いって事』
○○自身、礼を述べられたら、こちらも返答するのが人として恥ずかしくない礼儀であると思っている。○○は文次郎に向けて、手を向けたと同時に年相応の笑みを見せる。
「良かったな。文次郎から礼を言われるなんて、滅多にない事だぞ。俺なんかまだ一回も礼を言われた事が無い」
背負子 を下ろす留三郎は、揶揄う様に文次郎に向けて言う。
「お前が、礼をして貰える様な事をしたかよ!」
いつもの調子で、留三郎の揶揄いに乗っかる文次郎だったが、小さく呻き声を上げる。
腰を下ろしていた文次郎は立ち上がると、留三郎の前に現れた。
「食満留三郎様……、この度は、私めのヘマにより、多大なるご迷惑をおかげした事、誠に申し訳ありませんでした。また、窮地を助けて頂いた事に感謝し、ここに深くお礼を申し上げます。誠にありがとうございました」
文次郎は、腰を直角に曲げて深々と頭を下げた。この文章ならば、何ら変わりない感謝の言葉を述べているだけだ。
だが、文次郎が勢いよく頭を下げた事により、留三郎の胸部に激突し、留三郎はその場で尻餅をついてしまう。
「痛ぇ! 何しやがる!」
「この潮江文次郎様が、礼を言ってやったんだ! 有難いだろうが!」
「何だとー!?」
またしても、文次郎と留三郎は互いの襟元を掴み、額を押し付け合いつつ、睨みを効かせる。
「ちょ、ちょっと! 二人共、止めなよ!」
『ぬははははっ』
またしても喧嘩が開始され、伊作か二人の間に割って入るのは最早、恒例である。
ひとしきり笑い終えた○○は、真顔に戻る。
伊作の手助けに入る事も、文次郎と留三郎の喧嘩に乱入する事もなく、その場に腰を下ろした。
「まぁ、判ってた」
小平太にとって、二人が喧嘩を繰り広げる事など日常茶飯事であるので、無理に関わる事もせず、ただ頷く。
「予想通りだ」
「水、汲んでおこう」
仙蔵は、打竹の手入れを開始する。長次も竹水筒を小川の水に浸けて、竹水筒の中身を一杯にしたのだった。
・
小川を出発した六年生の面々は、半町の距離を空けて再び歩き始める。
だが今度は、三組が前中後を何度も交代しながら、忍術学園のある町との領境を目指す。
まずは、常設の関を通らなければならない。
平素ならば、関銭を払えば問題ないのだが、昨晩の騒動から、関は厳戒態勢を敷いている。関を通る者の持ち物全てが検査されており、更には陣幕の周りを槍を持つ足軽が囲んでいるのだ。
聞き込みで得た情報では、関に並ぶのは一列で済むと聞かされていた。だが、今日に限っては、三列に増えている。
『軍目付 役様。わざわざ聞く必要は無いのだけれど、どうするつもりで?』
○○は、仙蔵に小声で話し掛ける。
どうやら、別々の列ではなく、七人全員が同じ列に並ぶという作戦だと仙蔵は告げた。
この作戦は、不運体質の伊作の動きがカギを握っている。留三郎と伊作の組を後方に持っていき、不運が発動したとなれば、関を通り抜けた留三郎以外の者が助けに向かう事は出来ない。得意武器の鉄双節棍 を携帯していない留三郎と伊作で、通常の三倍もの足軽と侍を相手にするのは些か危ない橋を渡らせる様な物だ。
留三郎と伊作の実力を侮っている訳ではないが、平穏に通る為にと考えた仙蔵は、一番手に留三郎と伊作を回した。また、仙蔵達も検査時の様子を観察し、自分達もその場限りの対策を講じれる様にしなければならない。
「小川の傍の留吉と申します」
「村の西に住んでます、伊助です」
床机に座る吟味役の侍の前に、留三郎と伊作が立ち、それぞれが偽名を告げた。
両脇に足軽二人を侍らせており、これだけでも厳戒態勢が敷かれていると分かる。足軽二人は二人が背負っている背負子を降ろし、俵の中に入っている木製の器を確認した。
「この先の町に居る漆職人さんに、持っていくんですよ。私達は運ぶだけですが、それの形が良くてね。大層な評判で、あちこちの領主様も欲しがられているとか」
留三郎が胸を張りながら説明をすると、伊作も大袈裟に頷いている。自分達の運び物に誇りを持ち、自慢する振る舞いは、農閑期に荷運びをする農家がよく見せるものだ。
二人はそれを真似ているだけだが、侍は関の通過を許可した。木製の器を俵の中に戻そうとした二人だったが、侍は別の木椀、木皿も見たいと申し出た。
「はい、只今」
断りを入れれば、通過許可が取り消しになりかねない。伊作は侍の命令に応え、俵の中から木椀と木皿を取り出す。
侍に近寄ろうと歩み出した時____、仙蔵の恐れていた事態が起きてしまうのだった。
伊作の履いていた草鞋の鼻緒が切れた。
反対側の足を出して止まろうとするも偶然、そこにあった落ち葉で反対側の足を滑らせてしまう。
「不運〜〜っ!」
手にしていた木椀と木皿が宙に舞う。
それを見た留三郎は身を沈めて、地面に落ちかけた木椀と木皿を拾い上げた。見事な動きであったが、その動きは吟味役の侍と足軽の前で見せてはならないと、後方に並ぶ仙蔵達は思った。
何故なら侍は、留三郎の素早い動きを見て、怪訝そうな顔をしているからだ。
文次郎は、先程の小川で拾った小石を右の袖口に入れた左手で掴む。
仙蔵は、小さな打竹を持っている。
小平太と長次は、背中の薪に手を伸ばす。
○○は、背中の炭に手を伸ばす。
それぞれが、万が一の事態に対応出来る様、準備万全であった。その事態に直面したら、仙蔵からの合図が出され、戦闘開始となる。
吟味役の目の前に立ち、留三郎は木椀と木皿を伊作に返す。
「勘弁してくれよ、伊助。いくら俺でも、何回も続けてお前のヘマの尻拭いに成功するとは、限らないんだからよぉ。一個壊したら、今日の駄賃無しになっちまう事、よーく覚えておけよ」
「すまない、留吉」
伊作は、木椀と木皿を吟味役の侍に手渡しする。留三郎と伊作に意識を向けつつ、侍は木椀と木皿を見てから、伊作に器を返す。
すると、侍は留三郎を手招きして、耳元である事を尋ねる。
「こやつは、いつもこうなのか?」
留三郎は、質問の意味を即座に理解した。それは、伊作と六年間も同室であるが故に、理解者でも留三郎だからこそ成せる技とも言える。
「これからという時や、これまでという時、ああ、ここぞという時にも、思いがけない事を起こすんです。でも、わざとじゃないですよ」
「お前も大変じゃのぉ」
留三郎と伊作は、吟味役の侍に同情された。
伊作の不運体質は、これまでの人生で出会った人々の中でも一際、異彩を放っていたのだろうか。事なきを得た二人が関を通り抜け、武器を構えていた仙蔵達の手が下ろされる。
・
関を通過した六年生は、敵領内の団子屋に足を運んだ。各々、菓子作りが得意な長次の勧めでもある団子に舌鼓を打つ。
「よし、そろそろ出るか」
「おばちゃん、団子もう一皿! お茶も!」
仙蔵が立ち上がったと同時に、小平太は団子屋の店主に注文を入れた。よく見れば、他の面々も長椅子に座ったままであり、仙蔵は小平太を見下ろす。
「すまん、仙蔵。お前の分を注文し忘れてた。おばちゃん、全部で団子七皿とお茶七つ!」
二皿目の団子を食べないという選択肢は最早、無いも同然であった。諦めた仙蔵は再び、長椅子に腰を下ろす。
『せっかくだし、下級生の分も買っていこうぜ』
団子を頬張り、咀嚼して飲み込んでから○○は皆にそう提案した。
「長次の勧める団子屋だもん。下級生達もこれを食べたら、喜ぶに違いないよ」
「土産話を聞かせる時に、一緒に団子も食べて茶を啜るのも悪くないな」
○○の提案に対して、真っ先に賛成の意を示したのは伊作と留三郎だ。
留三郎は、用具委員会に所属する一年は組の福富しんべヱが団子を前にして、煌々と目を輝かせ、涎を垂らしている姿が想像出来た。
「もそ…○○、自分の分も買おうと考えているのではないか?」
○○が手に持っていた小銭を確認した長次は、本来払うべき数より小銭の枚数が多い事に、目敏く気がついたのだ。
『あ、バレた』
「お前、自分が食べたいからなのか、下級生の為に買うのか、どっちなんだ!」
下級生への労りまで考えていた留三郎だったが、自分が食べたいが為に団子を購入しようと目論んでいたのかと思い、○○に詰め寄る。
『どっちもに決まってるだろ』
「じゃあ、私のも頼む!」
『自分で買え』
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「よう、やっと半分だな」
「順調だね」
文次郎達と距離を離しながら、歩いていた留三郎と伊作も合流し、これで六年生全員が揃った。
石の上に座る伊作の前に、文次郎が現れると、深々と頭を下げる。
「ありがとう、伊作。おかげで、余計な立ち回りをしなくて済んだ」
「いいから、いいから」
律儀に礼を言う文次郎に、伊作は人当たりのいい笑みを見せた。離れた場所から、仙蔵と○○が『ちゃんと礼を言ったな』、「文次郎は真面目だからな」と、文次郎に聞こえる声の大きさで話す。
そんな事をしている○○の元へ、文次郎はゆっくりと足を進め、○○の前に立つ。
「それと○○……、さっきのお前の態度は、帳消しにしておいてやるから……お前にも助けられた」
どちらが犬か猿なのかで、吹き出した事を不快に思った文次郎だったが、伊作と同じ様に助け舟を出してくれ、通過許可を得られた事に変わりない。伊作だけに礼を述べ、○○には何もしないという陰湿な行為は文次郎自身が許さない。
末尾に、ありがとう…、と、言葉が付け足されたのを○○は聞き逃さなかった。
『おぉ、良いって事』
○○自身、礼を述べられたら、こちらも返答するのが人として恥ずかしくない礼儀であると思っている。○○は文次郎に向けて、手を向けたと同時に年相応の笑みを見せる。
「良かったな。文次郎から礼を言われるなんて、滅多にない事だぞ。俺なんかまだ一回も礼を言われた事が無い」
「お前が、礼をして貰える様な事をしたかよ!」
いつもの調子で、留三郎の揶揄いに乗っかる文次郎だったが、小さく呻き声を上げる。
腰を下ろしていた文次郎は立ち上がると、留三郎の前に現れた。
「食満留三郎様……、この度は、私めのヘマにより、多大なるご迷惑をおかげした事、誠に申し訳ありませんでした。また、窮地を助けて頂いた事に感謝し、ここに深くお礼を申し上げます。誠にありがとうございました」
文次郎は、腰を直角に曲げて深々と頭を下げた。この文章ならば、何ら変わりない感謝の言葉を述べているだけだ。
だが、文次郎が勢いよく頭を下げた事により、留三郎の胸部に激突し、留三郎はその場で尻餅をついてしまう。
「痛ぇ! 何しやがる!」
「この潮江文次郎様が、礼を言ってやったんだ! 有難いだろうが!」
「何だとー!?」
またしても、文次郎と留三郎は互いの襟元を掴み、額を押し付け合いつつ、睨みを効かせる。
「ちょ、ちょっと! 二人共、止めなよ!」
『ぬははははっ』
またしても喧嘩が開始され、伊作か二人の間に割って入るのは最早、恒例である。
ひとしきり笑い終えた○○は、真顔に戻る。
伊作の手助けに入る事も、文次郎と留三郎の喧嘩に乱入する事もなく、その場に腰を下ろした。
「まぁ、判ってた」
小平太にとって、二人が喧嘩を繰り広げる事など日常茶飯事であるので、無理に関わる事もせず、ただ頷く。
「予想通りだ」
「水、汲んでおこう」
仙蔵は、打竹の手入れを開始する。長次も竹水筒を小川の水に浸けて、竹水筒の中身を一杯にしたのだった。
・
小川を出発した六年生の面々は、半町の距離を空けて再び歩き始める。
だが今度は、三組が前中後を何度も交代しながら、忍術学園のある町との領境を目指す。
まずは、常設の関を通らなければならない。
平素ならば、関銭を払えば問題ないのだが、昨晩の騒動から、関は厳戒態勢を敷いている。関を通る者の持ち物全てが検査されており、更には陣幕の周りを槍を持つ足軽が囲んでいるのだ。
聞き込みで得た情報では、関に並ぶのは一列で済むと聞かされていた。だが、今日に限っては、三列に増えている。
『
○○は、仙蔵に小声で話し掛ける。
どうやら、別々の列ではなく、七人全員が同じ列に並ぶという作戦だと仙蔵は告げた。
この作戦は、不運体質の伊作の動きがカギを握っている。留三郎と伊作の組を後方に持っていき、不運が発動したとなれば、関を通り抜けた留三郎以外の者が助けに向かう事は出来ない。得意武器の
留三郎と伊作の実力を侮っている訳ではないが、平穏に通る為にと考えた仙蔵は、一番手に留三郎と伊作を回した。また、仙蔵達も検査時の様子を観察し、自分達もその場限りの対策を講じれる様にしなければならない。
「小川の傍の留吉と申します」
「村の西に住んでます、伊助です」
床机に座る吟味役の侍の前に、留三郎と伊作が立ち、それぞれが偽名を告げた。
両脇に足軽二人を侍らせており、これだけでも厳戒態勢が敷かれていると分かる。足軽二人は二人が背負っている背負子を降ろし、俵の中に入っている木製の器を確認した。
「この先の町に居る漆職人さんに、持っていくんですよ。私達は運ぶだけですが、それの形が良くてね。大層な評判で、あちこちの領主様も欲しがられているとか」
留三郎が胸を張りながら説明をすると、伊作も大袈裟に頷いている。自分達の運び物に誇りを持ち、自慢する振る舞いは、農閑期に荷運びをする農家がよく見せるものだ。
二人はそれを真似ているだけだが、侍は関の通過を許可した。木製の器を俵の中に戻そうとした二人だったが、侍は別の木椀、木皿も見たいと申し出た。
「はい、只今」
断りを入れれば、通過許可が取り消しになりかねない。伊作は侍の命令に応え、俵の中から木椀と木皿を取り出す。
侍に近寄ろうと歩み出した時____、仙蔵の恐れていた事態が起きてしまうのだった。
伊作の履いていた草鞋の鼻緒が切れた。
反対側の足を出して止まろうとするも偶然、そこにあった落ち葉で反対側の足を滑らせてしまう。
「不運〜〜っ!」
手にしていた木椀と木皿が宙に舞う。
それを見た留三郎は身を沈めて、地面に落ちかけた木椀と木皿を拾い上げた。見事な動きであったが、その動きは吟味役の侍と足軽の前で見せてはならないと、後方に並ぶ仙蔵達は思った。
何故なら侍は、留三郎の素早い動きを見て、怪訝そうな顔をしているからだ。
文次郎は、先程の小川で拾った小石を右の袖口に入れた左手で掴む。
仙蔵は、小さな打竹を持っている。
小平太と長次は、背中の薪に手を伸ばす。
○○は、背中の炭に手を伸ばす。
それぞれが、万が一の事態に対応出来る様、準備万全であった。その事態に直面したら、仙蔵からの合図が出され、戦闘開始となる。
吟味役の目の前に立ち、留三郎は木椀と木皿を伊作に返す。
「勘弁してくれよ、伊助。いくら俺でも、何回も続けてお前のヘマの尻拭いに成功するとは、限らないんだからよぉ。一個壊したら、今日の駄賃無しになっちまう事、よーく覚えておけよ」
「すまない、留吉」
伊作は、木椀と木皿を吟味役の侍に手渡しする。留三郎と伊作に意識を向けつつ、侍は木椀と木皿を見てから、伊作に器を返す。
すると、侍は留三郎を手招きして、耳元である事を尋ねる。
「こやつは、いつもこうなのか?」
留三郎は、質問の意味を即座に理解した。それは、伊作と六年間も同室であるが故に、理解者でも留三郎だからこそ成せる技とも言える。
「これからという時や、これまでという時、ああ、ここぞという時にも、思いがけない事を起こすんです。でも、わざとじゃないですよ」
「お前も大変じゃのぉ」
留三郎と伊作は、吟味役の侍に同情された。
伊作の不運体質は、これまでの人生で出会った人々の中でも一際、異彩を放っていたのだろうか。事なきを得た二人が関を通り抜け、武器を構えていた仙蔵達の手が下ろされる。
・
関を通過した六年生は、敵領内の団子屋に足を運んだ。各々、菓子作りが得意な長次の勧めでもある団子に舌鼓を打つ。
「よし、そろそろ出るか」
「おばちゃん、団子もう一皿! お茶も!」
仙蔵が立ち上がったと同時に、小平太は団子屋の店主に注文を入れた。よく見れば、他の面々も長椅子に座ったままであり、仙蔵は小平太を見下ろす。
「すまん、仙蔵。お前の分を注文し忘れてた。おばちゃん、全部で団子七皿とお茶七つ!」
二皿目の団子を食べないという選択肢は最早、無いも同然であった。諦めた仙蔵は再び、長椅子に腰を下ろす。
『せっかくだし、下級生の分も買っていこうぜ』
団子を頬張り、咀嚼して飲み込んでから○○は皆にそう提案した。
「長次の勧める団子屋だもん。下級生達もこれを食べたら、喜ぶに違いないよ」
「土産話を聞かせる時に、一緒に団子も食べて茶を啜るのも悪くないな」
○○の提案に対して、真っ先に賛成の意を示したのは伊作と留三郎だ。
留三郎は、用具委員会に所属する一年は組の福富しんべヱが団子を前にして、煌々と目を輝かせ、涎を垂らしている姿が想像出来た。
「もそ…○○、自分の分も買おうと考えているのではないか?」
○○が手に持っていた小銭を確認した長次は、本来払うべき数より小銭の枚数が多い事に、目敏く気がついたのだ。
『あ、バレた』
「お前、自分が食べたいからなのか、下級生の為に買うのか、どっちなんだ!」
下級生への労りまで考えていた留三郎だったが、自分が食べたいが為に団子を購入しようと目論んでいたのかと思い、○○に詰め寄る。
『どっちもに決まってるだろ』
「じゃあ、私のも頼む!」
『自分で買え』
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