ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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「留〜っ! 聞いてりゃ好き勝手、言いやがって! 誰が鼻つまみ者だって?」
「炭を背負って、楽してるお前だよ!」
文次郎は、留三郎の服の襟を掴む。負けじと留三郎も同じ様に襟を掴み、額を付けて睨み合う。
「この二人は、いつもこうなのか?」
喧嘩を開始した二人を一瞥してから、侍は伊作に声を掛ける。
「はい、小さい頃から。今日はお侍さんの前だから、大人しいのですけど。いつもは、すぐに殴り合いだから……」
『平素は、前を歩いていた二人組が意図も容易く沈めるのですが……。先に向かわれてしまい、私達みたいな小柄な男だけ残されて、殴り合いを止めるのも……』
幼馴染という関係性を利用し、三人よりも大柄な長次と小平太の平素の様子を○○は提示した。疲れきった様子を見せるのも、忘れはしない。
「そうか……竹馬の友で、犬猿の仲という奴か。判った、行っていいぞ」
喧嘩する文次郎と留三郎から、存在しない幼い頃の二人の喧嘩風景が侍には見えたのだ。侍は馬に騎乗して、足軽二人を連れて後方に並ぶ別の行商人に話し掛ける。
○○は、離れていく侍と足軽二人の背中を見届けてから、前を向く。伊作はこの場を乗り切れた事に安堵し、息を吐いた。
「そこまでだ。文次郎、留三郎」
仙蔵の声掛けに、睨み合ったままの文次郎と留三郎は反応を示さない。
「いい加減、じゃれ合うのは止めろ」
じゃれ合いと言いのけた仙蔵が、二人の間に割って入った事により、喧嘩は収束した。
「だってよぉ、こいつ……、ていうか、お前らもグルだったろう」
「話は道々聞いてやる。先を急ぐぞ」
先に文次郎、仙蔵、○○が出発する。半町の距離を保つ為に、留三郎と伊作はその場で待機だ。
「留の奴、余計な事をしやがって」
「そう言うな。これは、私が留三郎に頼んでいた事だ」
歩き出した直後、文句が飛ぶ。
しかし、仙蔵の言葉を聞いた事により、文次郎は眉を顰 めた。
「留三郎も心配していたぞ。実習が上手くいった後の、文次郎の心の緩みもな」
○○も気づいていた様だ…、と、仙蔵は知らん顔をする○○を見た。
「やっぱり、お前もかよ」
『その言い方だと、俺もグルだったって言いたいみたいだけど、半分外れ。鉢屋の話題が出された時点で、お前の気の緩みは理解した。その後は、仙蔵と留三郎に乗っかったという形になるのか?』
「自分の行動に対して、疑問に思ってんじゃねぇ」
末尾には、○○自身もどことなく疑問を抱いて曖昧な物言いとなっていた。それには、文次郎も○○に口出しをする。
仙蔵が留三郎に頼んだ事は、"自分達がヘマをしたら、文次郎に喧嘩を売れ"というものだった。
「伊作と○○の虚言で、侍はお前達二人が竹馬の友であり、犬猿の仲の喧嘩友達だと思い込んでくれた。留三郎にも礼を言っておけよ。あの場面で、お前に喧嘩を売るのは、結構な胆力がいった筈だ」
文次郎は、分かりやすくそっぽを向いてから、鼻を鳴らした。それを見た仙蔵は、クスクスと笑い出す。
「お前達……どっちが犬で、どっちが猿だ?」
「知るか!」
真面目な顔をして、下らないとも取れる質問を投げかける仙蔵に、○○は思わず吹き出した。
二人の態度を不快に思い、腹正しくなった文次郎は、地を踏みしめる様にして、歩く速度を速めるのだった。
・
一刻(2時間)の後、文次郎、仙蔵、○○は街道に沿って流れる小川の傍に置かれた岩場に向かう。街道を行き交う人々からは死角となり、休憩場所と事前に指定したのである。
「何だ、文次郎。機嫌が悪いな」
岩場には、腰を下ろした長次と小平太の姿があった。小平太は面白がって言い、文次郎は何でもないと言いつつも、ドスンと腰を下ろす。
「この世に一人、礼を言ったら死ぬ人間が居るらしい」
真面目な顔をして言う仙蔵と、先程の仙蔵の問いかけを思い出した○○は、口元に手を持っていく。明らかに口元は緩んでおり、今度は笑い声まで漏れている始末だ。
「まぁ、死んじゃうんなら仕方ないな」
小平太は、仙蔵の言葉の意味を理解すると、朗らかに笑う。
また長次も、言葉の意味を理解していた。そもそも、文次郎達を追い越して先頭を歩いていた二人は、不足な事態に駆けつけられる様にと、街道わきの木陰にて、休む振りをしながら、侍に阻まれた五人を見ていたのだから。
「にしても○○のか弱い振り、今回も最高だったな」
文次郎と留三郎の一件を見ていた小平太は、伊作と共に虚言を吐いた○○に向けて、今度は悪意なき笑顔を向けた。
蔑まれているのかと勘違いする者も居ると思うが、小平太なりの賞賛の言葉だと○○も含め、文次郎達は理解していた。
忍者となれば、時として情報収集等の際に人を騙す事も必要となる。だが、○○自身の切り替えが早いせいか、忍務となれば何の躊躇 いもなく行える。
『か弱かったら、バレーボールを破裂させる事も無いし、用具委員会委員長に文句の一つも付けられないけどな』
「なはは! それ、私の事じゃないか!」
用具委員会委員長とは、留三郎の事だ。
日頃から学園内の備品を破壊、趣味の塹壕堀りで大量の通り道を作る小平太に、留三郎は自分を含め、下級生の仕事が増えるから止めろと、何度も注意している。
それで止まるなら万々歳だが、○○の発言から察せられる通り、小平太の破壊行為は収まっていない。それどころか、自分の行いで用具委員会が被害を被 る事を自覚しているので尚のこと、質が悪い。
「長次と小平太が一緒では、○○の体格と比較されて、街道を抜ける際に目敏い見廻りに目を付けられ、疑われる心配があったものでな」
だから、私と文次郎の組に加えたのだ…、と、仙蔵は補足を付け足す。
○○は、この時代の男性の平均身長と比べれば、高い部類に入る。だが、大柄の二人に混ざれば話は別だ。
長次と小平太が背負子 に詰んだ量の薪を、○○が容易く運んでいる光景を目の当たりにして、細工を忍ばせているのかと疑う輩が出てもおかしくない。そこまで想定した上で、軍目付 役の仙蔵は同じ背丈の自分と少しだけ身長の大きい文次郎の組に加えさせ、街道を切り抜ける術を選んだのだった。
『引きずってなーい。小平太みたいなクソ力は無いし、長次みたいな筋肉質でもないんだからさぁ……、あ、これって無い物ねだりか。無いんだから、気にしても仕様がない』
女装もまぁ、この体格なら上手く出来ます事ですし…、と、先程の悩みと思わしき事を、気にする素振りを見せない。正確には、自己完結したから、気にするも何もない。
悩み事が生じても、一人で会話して、一人で物事を勝手に完結させてしまう。下級生なら気を遣い、問題解決に励む者も居るが、六年生には介入する者は一人も居ない。勿論、○○本人も問題解決の手助けを求めている気は、毛頭ない。気づいても気が付かなくても、一人で勝手に完結してしまうから。
偶に、一人での解決が困難な悩み事が生じれば、このような口振りすら披露出来ない。それを理解しているから、六年生の面々も変に気を遣い、取り合う事もしない。
名無し○○もまた、個性が強い六年生の内の一人として、時には厄介に思われているのだ。
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「留〜っ! 聞いてりゃ好き勝手、言いやがって! 誰が鼻つまみ者だって?」
「炭を背負って、楽してるお前だよ!」
文次郎は、留三郎の服の襟を掴む。負けじと留三郎も同じ様に襟を掴み、額を付けて睨み合う。
「この二人は、いつもこうなのか?」
喧嘩を開始した二人を一瞥してから、侍は伊作に声を掛ける。
「はい、小さい頃から。今日はお侍さんの前だから、大人しいのですけど。いつもは、すぐに殴り合いだから……」
『平素は、前を歩いていた二人組が意図も容易く沈めるのですが……。先に向かわれてしまい、私達みたいな小柄な男だけ残されて、殴り合いを止めるのも……』
幼馴染という関係性を利用し、三人よりも大柄な長次と小平太の平素の様子を○○は提示した。疲れきった様子を見せるのも、忘れはしない。
「そうか……竹馬の友で、犬猿の仲という奴か。判った、行っていいぞ」
喧嘩する文次郎と留三郎から、存在しない幼い頃の二人の喧嘩風景が侍には見えたのだ。侍は馬に騎乗して、足軽二人を連れて後方に並ぶ別の行商人に話し掛ける。
○○は、離れていく侍と足軽二人の背中を見届けてから、前を向く。伊作はこの場を乗り切れた事に安堵し、息を吐いた。
「そこまでだ。文次郎、留三郎」
仙蔵の声掛けに、睨み合ったままの文次郎と留三郎は反応を示さない。
「いい加減、じゃれ合うのは止めろ」
じゃれ合いと言いのけた仙蔵が、二人の間に割って入った事により、喧嘩は収束した。
「だってよぉ、こいつ……、ていうか、お前らもグルだったろう」
「話は道々聞いてやる。先を急ぐぞ」
先に文次郎、仙蔵、○○が出発する。半町の距離を保つ為に、留三郎と伊作はその場で待機だ。
「留の奴、余計な事をしやがって」
「そう言うな。これは、私が留三郎に頼んでいた事だ」
歩き出した直後、文句が飛ぶ。
しかし、仙蔵の言葉を聞いた事により、文次郎は眉を
「留三郎も心配していたぞ。実習が上手くいった後の、文次郎の心の緩みもな」
○○も気づいていた様だ…、と、仙蔵は知らん顔をする○○を見た。
「やっぱり、お前もかよ」
『その言い方だと、俺もグルだったって言いたいみたいだけど、半分外れ。鉢屋の話題が出された時点で、お前の気の緩みは理解した。その後は、仙蔵と留三郎に乗っかったという形になるのか?』
「自分の行動に対して、疑問に思ってんじゃねぇ」
末尾には、○○自身もどことなく疑問を抱いて曖昧な物言いとなっていた。それには、文次郎も○○に口出しをする。
仙蔵が留三郎に頼んだ事は、"自分達がヘマをしたら、文次郎に喧嘩を売れ"というものだった。
「伊作と○○の虚言で、侍はお前達二人が竹馬の友であり、犬猿の仲の喧嘩友達だと思い込んでくれた。留三郎にも礼を言っておけよ。あの場面で、お前に喧嘩を売るのは、結構な胆力がいった筈だ」
文次郎は、分かりやすくそっぽを向いてから、鼻を鳴らした。それを見た仙蔵は、クスクスと笑い出す。
「お前達……どっちが犬で、どっちが猿だ?」
「知るか!」
真面目な顔をして、下らないとも取れる質問を投げかける仙蔵に、○○は思わず吹き出した。
二人の態度を不快に思い、腹正しくなった文次郎は、地を踏みしめる様にして、歩く速度を速めるのだった。
・
一刻(2時間)の後、文次郎、仙蔵、○○は街道に沿って流れる小川の傍に置かれた岩場に向かう。街道を行き交う人々からは死角となり、休憩場所と事前に指定したのである。
「何だ、文次郎。機嫌が悪いな」
岩場には、腰を下ろした長次と小平太の姿があった。小平太は面白がって言い、文次郎は何でもないと言いつつも、ドスンと腰を下ろす。
「この世に一人、礼を言ったら死ぬ人間が居るらしい」
真面目な顔をして言う仙蔵と、先程の仙蔵の問いかけを思い出した○○は、口元に手を持っていく。明らかに口元は緩んでおり、今度は笑い声まで漏れている始末だ。
「まぁ、死んじゃうんなら仕方ないな」
小平太は、仙蔵の言葉の意味を理解すると、朗らかに笑う。
また長次も、言葉の意味を理解していた。そもそも、文次郎達を追い越して先頭を歩いていた二人は、不足な事態に駆けつけられる様にと、街道わきの木陰にて、休む振りをしながら、侍に阻まれた五人を見ていたのだから。
「にしても○○のか弱い振り、今回も最高だったな」
文次郎と留三郎の一件を見ていた小平太は、伊作と共に虚言を吐いた○○に向けて、今度は悪意なき笑顔を向けた。
蔑まれているのかと勘違いする者も居ると思うが、小平太なりの賞賛の言葉だと○○も含め、文次郎達は理解していた。
忍者となれば、時として情報収集等の際に人を騙す事も必要となる。だが、○○自身の切り替えが早いせいか、忍務となれば何の
『か弱かったら、バレーボールを破裂させる事も無いし、用具委員会委員長に文句の一つも付けられないけどな』
「なはは! それ、私の事じゃないか!」
用具委員会委員長とは、留三郎の事だ。
日頃から学園内の備品を破壊、趣味の塹壕堀りで大量の通り道を作る小平太に、留三郎は自分を含め、下級生の仕事が増えるから止めろと、何度も注意している。
それで止まるなら万々歳だが、○○の発言から察せられる通り、小平太の破壊行為は収まっていない。それどころか、自分の行いで用具委員会が被害を
「長次と小平太が一緒では、○○の体格と比較されて、街道を抜ける際に目敏い見廻りに目を付けられ、疑われる心配があったものでな」
だから、私と文次郎の組に加えたのだ…、と、仙蔵は補足を付け足す。
○○は、この時代の男性の平均身長と比べれば、高い部類に入る。だが、大柄の二人に混ざれば話は別だ。
長次と小平太が
『引きずってなーい。小平太みたいなクソ力は無いし、長次みたいな筋肉質でもないんだからさぁ……、あ、これって無い物ねだりか。無いんだから、気にしても仕様がない』
女装もまぁ、この体格なら上手く出来ます事ですし…、と、先程の悩みと思わしき事を、気にする素振りを見せない。正確には、自己完結したから、気にするも何もない。
悩み事が生じても、一人で会話して、一人で物事を勝手に完結させてしまう。下級生なら気を遣い、問題解決に励む者も居るが、六年生には介入する者は一人も居ない。勿論、○○本人も問題解決の手助けを求めている気は、毛頭ない。気づいても気が付かなくても、一人で勝手に完結してしまうから。
偶に、一人での解決が困難な悩み事が生じれば、このような口振りすら披露出来ない。それを理解しているから、六年生の面々も変に気を遣い、取り合う事もしない。
名無し○○もまた、個性が強い六年生の内の一人として、時には厄介に思われているのだ。
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