短編
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摂津のきり丸が、"(自称)アルバイトの天才"と呼ばれた女の子から、ずっと一緒に居たいと言われたらしい話
摂津のきり丸×女夢主(年上)
◆名前変換夢の為、名前変換を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で、進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆きり丸と土井先生の関係性が好みで、夢主を介入させたくない。戦災孤児時代のきり丸が、誰かと一緒に過ごした時期があったのが解釈違い等の地雷があれば、ブラウザバック推奨。
夢主の簡単な設定
・孤児。きり丸とは、忍術学園入学前に出会って数年間、行動を共にしていた。
・生きる為にアルバイトに励み、集めた銭で、成り上がるのが夢。
・
青い鳥は、春日遅遅で、幸せを願う
春の季節。近畿地方の辺鄙な山奥に建設された、全寮制の忍術学園。
十から十五までの生徒——通称、忍たま(または、くのたま)が在籍しており、忍者の養成機関として、界隈ではその名を馳せている。
今日も、個性豊かな生徒達の喧騒が聞こえてくれば、午後の授業を終える鐘の音が響く。
「いけねっ」
忍術学園の敷地内に建設された忍たま長屋。
一年は組の生徒が寝泊まりとして使用している長屋の一室から、少年の声が聞こえてきた。
「売り物だってのに、これじゃあ使い物にならないよ」
長屋の一室を覗くと——、一年は組所属、摂津のきり丸が日課のアルバイトに励んでいる最中。
作物の豊作祈願に使用する花見の為にと、外部から委託された桜の造花作りに勤しんでいたが、一枚の桃色の和紙に皴が出来ていたのを発見すれば、売り物には使えないと、溜め息をつく。
「これじゃあ、儲けが~……」
がくりと、落胆する。
賃金を稼がなければ、学園に納付する学費等を支払えない。
たった一つの造花が、外部の不手際によって出来てしまった皴により、売り物が減少。
それにより、きり丸が報酬として受け取る駄賃にも大きく響いてしまう。
(…、……)
ふと、きり丸の脳裏にある人物が浮かぶと、皴が出来て売り物にならない桜の造花を手に取る。
(……○○に、だったら)
かつて、忍術学園に入学する前の数年間、きり丸と行動を共にしていた子女。
そして今は、ひょんな事から、忍術学園に在籍する生徒達の為にアルバイトの斡旋を行う事務員として、忍術学園に在籍している。
桜の造花を手にしていると、長屋の引き戸を、とんとんと叩く音が聞こえてきた。
「はい」
『あっ、きり丸?』
長屋の廊下から、○○の声が聞こえてくれば、自分に用事があって、ここに訪れたのだと理解した。
「○○? どうしたの?」
『きり丸が提出した外出許可書の許しが出たから、渡しに来たの』
はいっと、○○から差し出されたのは、数枚の外出許可証。
そのどれもが、外出理由に「アルバイトの為」と記されており、彼がいかに学費集めに奔走しているのかが見て分かる。
「おぉ。全部、通ってる! これだけ、アルバイトが出来れば~……」
銭目を浮かばせ、あへあへと笑い声がする。
桜の造花作りで見せた落胆ぶりは、すっかりと消失していた。
『きり丸。その銭目は、止めなさい』
伏し目がちに、○○がきり丸の行動を指摘すれば、きり丸は元の目の形へと戻っていく。
眉を下げながらも、きり丸らしい行動であると、微笑ましく思った○○は口角を上げる。
次に、床に置かれた桜の造花と、納品用の箱を目にすれば、内職のアルバイトに取り組んでいたのだと、○○は思う。
『アルバイトしてたのね』
「まぁね。”アルバイトの天才様”は、ここ最近、忙しいみたいだったようだし」
両腕を頭の上で組み、○○を揶揄う言葉を言い放つ。
その揶揄いの言葉は、かつて幼い○○が口にしていたもの。
きり丸に、アルバイトとの何たるやを教えていた中で、幾度も使用されていたが、現在の○○にとっては、恥ずかしいものと化していた。
『もうっ。まだそれを言ってるの?』
「だって、○○が始めた事だからなぁ」
ぷいっと顔を逸らして、したり顔を見せるきり丸。
昔ならば、○○の拳骨を受けるのが御約束であったが——、きり丸の頭部に、そっと○○の手のひらが乗せられると、よしよしと優しく撫でられた。
『言っても聞かないとは、思うけど…、あんまり、根詰めないでね』
一触即発どころか、きり丸を労わる和やかな空気へと持ち込まれた。
優し気な○○の声を浴びせられると、きり丸は戸惑いもありつつ、腑に落ちない様子。
「んっ」
何だかむず痒い感覚に襲われると、手にしていた桜の造花を、○○に押し付ける形で渡す。
『わっ。な、なに?』
「売り物に、ならなかった奴」
丁寧に折られた桜の造花。そこへ目立つようにして見えたのが、ほんの僅かな皴。
『ねぇ。わたしが、貰っちゃって良いの?』
「皴のある和紙にも、気づかないで渡してきたんだから。納品した個数が減ってても、気がつかないと思うぜ」
『そりゃあ、この内職を依頼した外部の御方に非があるとは……、って、ちょっと、きり丸――』
ぴしゃりと、引き戸が閉められた。
外出許可証は、きり丸の手元に届き、○○が頼まれた事務員としての仕事は完了。
きり丸に半ば強引に、渡された桜の造花に視線を落としてから、顔を上げる。
『桜、丁寧に折れてるよ。上手になったね』
最後にそう言い残して、○○は、一年の忍たま長屋を後にしていく。
「……」
○○の足音が遠ざかっていくのが分かると、きり丸は、その場に体育座りの姿勢を作って、座り込む。
「う゛ぅ~~……」
○○の手が添えられた頭部を、きり丸は自身の右手を当てて、摩る。
忍術学園に入学する前に味わった拳骨の痛みが、どれ程のものだったのかを、そんな記憶も霧がかり、霞む。
「んん~~~っッ!!」
わしゃわしゃと、水色の井桁模様の描かれた頭巾越しに、紺色の髪が乱雑な形へと変わっていく。
「おれが、○○と離れたくないって言ったのは、そうだけど……!」
○○と一緒に幸せになりたいと言い、彼女が忍術学園の領地外へ出ていくのを引き留めたきり丸。
学園長を務める大川平次 渦正に直談判し、○○が忍術学園の事務員(仮)として、どのような利点があるのか等と必死に売り込んだ。
○○を想うきり丸の姿や、大川の突然の思い付きの発案により、○○は、忍術学園に在籍する事務員として雇われ、生活苦に陥っている忍たま・くのたまにアルバイトの斡旋を行う役目を与えられた。
「〇○○と幸せになりたいって言ったけど…、……っああ~! 何だよこれ~! せっかく、時間が空いたからもう一つのアルバイトに励めると思ったのに、身が入らねぇ~っ!!」
じたばたと、床に寝転がったきり丸がのたうち回っている間に、がらっと引き戸が空いた。
「きりちゃん、何してるの?」
「お腹空いたの?」
同じ一年は組で、同室で、入学時から付き合いのある親友の猪名寺乱太郎と、福富しんべヱの二人だ。
桜の造花が詰まれた木箱と、この後に取り組む予定であった筆つくりのアルバイト用の道具一式が並べられている。
その横で、わあっと声をあげて、わしゃわしゃと頭巾を掻くきり丸の構図を前に、二人は困惑の意を示すしかない。
◇
『”幸せになりたい”というのは、どんな意味があるのでしょうか』
中在家さん。
その姓で呼ばれた相手は——、木陰で書物に目を通して、仏頂面で、大柄で筋肉質な体格をしている忍術学園の六年生、中在家長次。
○○と一定の距離を保ってはいるが、決して不仲だからという訳ではない。
「きり丸本人に直接、聞いてみても良いのではないか」
『駄目なんです。きり丸ってば、小銭を落としても、”あげる”だったり、”ただ”とか、そういった言葉で釣ろうとしても……、それだけは絶対に、教えてくれないんです」
困ったように笑みを浮かべてから、○○は視線を落とせば、何かを握る。
くしゃっと和紙の音を聞き取った長次は、○○の手元に視線を落としていけば、桜の造花を手にしていたのを発見。
「……造花」
『あっ、はい。これ、皴が出来て売り物にならないからって、きり丸から貰ったんです。とっても上手に折れていて、誰が見ても桜だって信じちゃいますよ』
今度は、にこっと笑顔を浮かべ、桜の造花を長次に見せた。
「もそ。確かに」
自称天才アルバイターの後輩の器用さに感心しつつも、アルバイトで偶然見つけた不良品をあげるという行為を、きり丸が○○以外には、しないとも思う。
「おっ。長次に、○○ちゃんじゃないか」
「それ、桜か?」
そんな時、二人の男性の声が聞こえてきた。
○○が顔を上げると——、十キロ算盤を片手に持つ、六年い組の潮江文次郎。得意武器の二丁苦無を手に、新緑色の忍装束が砂だらけな、六年ろ組の七松小平太が、○○と長次を見つけるなり、木陰の中に入ってくる。
『わっ……』
長次と同様に、日々の鍛錬で鍛え抜かれた筋肉質な体格をしている二人は、忍術学園の外の世界で○○が見てきた元服済みの男子よりも、どこか威圧的。
過去、傾城屋に遊女として雇おうと、攫われかけた事のある○○は、自分の手を引こうとした中年の男子が過る。男子を蹴り上げて、何とか逃げ切れたものの、その時の出来事が反芻する。
「文次郎、小平太。○○ちゃんが、怯えている」
桜の造花を手に、大樹の後ろに隠れようとする○○を横目で捉えた長次が、文次郎と小平太にそう指摘した。
「お、おぉっ。悪かった」
「悪い悪い」
困り顔を見せた文次郎とは対照的に、溌溂とした笑みを浮かべた小平太が、○○と一定の距離を取る。
『えっと、前よりは、背の高い男の人も大丈夫には、なったんですよ』
○○の脳裏に、一年は組の教科担当担任の、土井半助が現れた。
乱太郎・きり丸・しんべヱ達の担任であり、きり丸のアルバイトの手伝いをしているだけでなく、週末などは自身が借りている長屋を、きり丸のもう一つの居場所として与えた男。
出会った当初、”背の高い男性”と印象を抱き、きり丸が傍に居なければ、ぎこちない会話を繰り広げていた○○だったが、アルバイトの手伝いや胃痛を労わり、胃の調子を整える健康法を自ら教えたりと、交流を図った。
その結果、初対面よりは、まともに会話が出来るようになり、きり丸の心配の種が一つ減った。
『あのっ。潮江さんと七松さんにも、お聞きしたいのですけれど……』
きり丸のアルバイトの手伝いをする先輩として認識している○○は、長次をはじめ、文次郎と小平太とも縁が出来ていた。
そんな二人にも、きり丸が○○に向けて言い放った「幸せになりたいの意味」について、問いかける。
「そりゃあ、○○ちゃんと一緒に居たいって、そのまんまじゃないのか」
恥ずかしげもなく、そう言いのけた文次郎を見た小平太は、伏し目になり、年相応な意地の悪い笑みを作っていく。
「おっ、文次郎。たまには、良い事を言うじゃないか」
「な、何だよ、小平太!」
「なははっ。まぁ確かに、文次郎の言葉も一理ある。きり丸は、○○ちゃんと離れたくなかっただろう? そういう事だ! 細かい事を気にする仲じゃないだろう!」
豪快に笑ってみせれば、○○をはじめ、文次郎・長次・小平太の居る木陰が一気に、賑やかな場へと移り変わる。
『……わたしは』
ぽつりと、○○が言葉を零す。
「ん?」
その声を聞き取った三人の視線が、○○に注がれていく。
『きり丸と、ずっと一緒に居られたらって思います』
一度は、きり丸の為を想ってと自ら彼の手を離した○○。
二度目は、忍術学園に入学したきり丸と再会して、短期の住み込みアルバイトを終えて、別の領地へと足を運ばなくてはならないと告げたが、もう○○の手を離したくないからと、一緒に幸せになりたいと涙混じりに語ったきり丸。
『きり丸は、わたしの中の”ずっと一緒に居たい人”です』
一度掴んだものは、手を離さない奇癖を持つきり丸が、○○の手を離さなかった。
この学園に通い、土井と巡り合い、新たな居場所を手に入れたきり丸であったが、優しい心も持ち合わせている彼は、○○とも幸せになりたいという思いも抱えていた。
他者から見れば、我儘とも取れる発言だが、ドケチとして名が通っているきり丸が心から欲していると分かれば、それ程までに、○○が大事であると分かる。
『わたし、きり丸が大好きだから、ずっと一緒に居たくて、幸せになりたいんだって……、そう思います』
きり丸から送られた桜の造花を手にした○○は、満面の笑みを浮かべて、そう答えた。
その発言を最後まで聞き終えた文次郎と小平太は、木陰に座っている長次の元へ集い、こそこそと小声で話し出す。
「これでもまだ、きり丸と○○ちゃんは思い人同士じゃないのか?」
「いや、○○ちゃんの方は、脈があると踏んでいいだろう」
「……あの桜の造花が、きり丸の答えだ」
未だ、二人の仲は進展していないと思っていた文次郎。
それとなく仲が深まっていると、持ち前の野生の勘で察した小平太。
きり丸が○○に贈った桜の造花が答えであると、二人の仲で先に答えに辿り着いた長次。
『あ、あの……?』
その中で一人、きょとんとした様子の○○。
「○○ちゃん! きり丸がアルバイトで困っている事はないかとか、何か聞いていないか!?」
『えっ?』
「いけいけどんどんに、私達が手伝うぞ!」
『えぇっ?』
大事な後輩と、その思い人の恋結びの象徴でもある”アルバイトの手伝い”という話題を出した文次郎と小平太だが、○○と一定の距離を保てなくなっており、当の○○は大樹にしがみつき、言葉が詰まっていた。
「文次郎、小平太。距離を保てと、あれ程……ふへっ、へへへ……っ」
不気味な笑い声が聞こえてくれば、縄鏢を振り回す音が聞こえ出す。
今度は、袋槍と苦無の先端が、かきんっと鳴る音がすれば、忍術学園の校庭にて、武道派揃いの六年生三人の乱闘が開始された。
「あっ、先輩が――、って、えぇっ!? 何が起きてるんだ~!?」
そこに、文次郎・長次・小平太の姿を見つけて、アルバイトの手伝いを頼もうとしたきり丸も合流する。
だが、黄土色の砂煙が舞う中、独特の口癖を発して乱闘を続ける三人の光景を目の当たりにして、きり丸は空いた口が塞がらない。
『あっ、きり丸』
「○○! せ、先輩方は一体、何を……?」
『ちょっと色々あって…、……ねぇ、きり丸』
大樹の陰に隠れて、決闘を観戦する○○を発見したきり丸。
彼が声を掛けるも、ひょいひょいと手招きをされれば、○○の元へ近づく。
『ちょっと耳を貸して』
「すぐ返せよ」
御馴染みのやり取りを繰り広げてから、きり丸の耳元に、○○の唇が近づく。
――きり丸の事、大好きで、”ずっと一緒に居たい人”だよ。
きり丸の手のひらに、くしゃっと和紙が置かれた。
それは、アルバイトの為にと丁寧に折られた桜の造花であり、本物の桜を彷彿させた。
――――――――――――――――
◇○○
現六年生より年下。
忍術学園入学前のきり丸と数年間、行動を共にしていた。
ひょんな事から、現在は、忍術学園の事務員として雇われている。
傾城屋に攫われかけた過去から、背丈の高い男性に苦手意識がある(傍に、きり丸が居れば、平気。一人の時は、今回のように詰められるのはまだ慣れない)。
○○としては、下級生(特に一年は組)と関わるのが好き。
○○にとってきり丸は、”ずっと一緒に居たい人”。
◇摂津のきり丸
忍術学園入学前の数年間、○○と行動を共にしていた。
○○と離れたくなくて、忍術学園の事務員として雇ってもらえるように引き留めた。
きり丸にとって○○は、”一緒に幸せになりたい人”。
◇猪名寺乱太郎、福富しんべヱ
一年は組所属で、きり丸の親友。
○○と居るきり丸は、嬉しそうという認識。
◇中在家 長次
図書委員会 委員長。
きり丸だけでなく、きり丸の大事な人でもある○○を気にかけている。
きり丸と○○が親愛を超えて、両片思いへと進展したのを分かりつつも、見守っている。
◇潮江文次郎、七松小平太
会計委員会 委員長と体育委員会 委員長。
きり丸と○○が親愛を超えているor両片思いなのかのどちらかと踏んでいる。
◇土井半助
名前のみの登場。
○○と出会った当初は、ぎこちない会話が続いたり、きり丸を介してではないと接するのが難しかった。
それでも、きり丸の恩人だからと思った○○が努力を重ねて、今では普通に接するまでに成長した。
週末などは、きり丸と借家の長屋に帰っているが、○○は土井の立場(大家さんから、女性関係について疑われる等)を気遣い、一緒に帰っていない。
その代わり、○○は主に一年は組の乱太郎の実家(農家の手伝い)、庄左エ門の実家(庄二郎の子守り)、しんべヱの実家(福富屋の手伝い)、伊助の実家(染物の仕事の手伝い)等にお邪魔して、それとなく駄賃を稼いでいる。
解説
◇副題の意味
→青い鳥=○○
春日遅遅 =春の日を、長閑に長く感じられること。
◇桜
→花言葉「精神の美」、「純潔」、「優美な女性」
◇桜の造花(作物の豊作祈願に使用する花見)
→農村では、桜が咲くと、御神酒を桜に振舞い、豊作を祈願していた。
きり丸が○○に抱いている想い(例え造花であっても、心に抱いている想いは本物)。
◇「恋結び」
→離れていても、恋が途絶えない事を願って、紐を結ぶこと。
元は、万葉集に登場するおまじない。
◇「”ずっと一緒に居たい人”」
→○○にとっての、好意を抱いている人。
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摂津のきり丸が、"(自称)アルバイトの天才"と呼ばれた女の子から、ずっと一緒に居たいと言われたらしい話
摂津のきり丸×女夢主(年上)
◆名前変換夢の為、名前変換を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で、進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆きり丸と土井先生の関係性が好みで、夢主を介入させたくない。戦災孤児時代のきり丸が、誰かと一緒に過ごした時期があったのが解釈違い等の地雷があれば、ブラウザバック推奨。
夢主の簡単な設定
・孤児。きり丸とは、忍術学園入学前に出会って数年間、行動を共にしていた。
・生きる為にアルバイトに励み、集めた銭で、成り上がるのが夢。
・
青い鳥は、春日遅遅で、幸せを願う
春の季節。近畿地方の辺鄙な山奥に建設された、全寮制の忍術学園。
十から十五までの生徒——通称、忍たま(または、くのたま)が在籍しており、忍者の養成機関として、界隈ではその名を馳せている。
今日も、個性豊かな生徒達の喧騒が聞こえてくれば、午後の授業を終える鐘の音が響く。
「いけねっ」
忍術学園の敷地内に建設された忍たま長屋。
一年は組の生徒が寝泊まりとして使用している長屋の一室から、少年の声が聞こえてきた。
「売り物だってのに、これじゃあ使い物にならないよ」
長屋の一室を覗くと——、一年は組所属、摂津のきり丸が日課のアルバイトに励んでいる最中。
作物の豊作祈願に使用する花見の為にと、外部から委託された桜の造花作りに勤しんでいたが、一枚の桃色の和紙に皴が出来ていたのを発見すれば、売り物には使えないと、溜め息をつく。
「これじゃあ、儲けが~……」
がくりと、落胆する。
賃金を稼がなければ、学園に納付する学費等を支払えない。
たった一つの造花が、外部の不手際によって出来てしまった皴により、売り物が減少。
それにより、きり丸が報酬として受け取る駄賃にも大きく響いてしまう。
(…、……)
ふと、きり丸の脳裏にある人物が浮かぶと、皴が出来て売り物にならない桜の造花を手に取る。
(……○○に、だったら)
かつて、忍術学園に入学する前の数年間、きり丸と行動を共にしていた子女。
そして今は、ひょんな事から、忍術学園に在籍する生徒達の為にアルバイトの斡旋を行う事務員として、忍術学園に在籍している。
桜の造花を手にしていると、長屋の引き戸を、とんとんと叩く音が聞こえてきた。
「はい」
『あっ、きり丸?』
長屋の廊下から、○○の声が聞こえてくれば、自分に用事があって、ここに訪れたのだと理解した。
「○○? どうしたの?」
『きり丸が提出した外出許可書の許しが出たから、渡しに来たの』
はいっと、○○から差し出されたのは、数枚の外出許可証。
そのどれもが、外出理由に「アルバイトの為」と記されており、彼がいかに学費集めに奔走しているのかが見て分かる。
「おぉ。全部、通ってる! これだけ、アルバイトが出来れば~……」
銭目を浮かばせ、あへあへと笑い声がする。
桜の造花作りで見せた落胆ぶりは、すっかりと消失していた。
『きり丸。その銭目は、止めなさい』
伏し目がちに、○○がきり丸の行動を指摘すれば、きり丸は元の目の形へと戻っていく。
眉を下げながらも、きり丸らしい行動であると、微笑ましく思った○○は口角を上げる。
次に、床に置かれた桜の造花と、納品用の箱を目にすれば、内職のアルバイトに取り組んでいたのだと、○○は思う。
『アルバイトしてたのね』
「まぁね。”アルバイトの天才様”は、ここ最近、忙しいみたいだったようだし」
両腕を頭の上で組み、○○を揶揄う言葉を言い放つ。
その揶揄いの言葉は、かつて幼い○○が口にしていたもの。
きり丸に、アルバイトとの何たるやを教えていた中で、幾度も使用されていたが、現在の○○にとっては、恥ずかしいものと化していた。
『もうっ。まだそれを言ってるの?』
「だって、○○が始めた事だからなぁ」
ぷいっと顔を逸らして、したり顔を見せるきり丸。
昔ならば、○○の拳骨を受けるのが御約束であったが——、きり丸の頭部に、そっと○○の手のひらが乗せられると、よしよしと優しく撫でられた。
『言っても聞かないとは、思うけど…、あんまり、根詰めないでね』
一触即発どころか、きり丸を労わる和やかな空気へと持ち込まれた。
優し気な○○の声を浴びせられると、きり丸は戸惑いもありつつ、腑に落ちない様子。
「んっ」
何だかむず痒い感覚に襲われると、手にしていた桜の造花を、○○に押し付ける形で渡す。
『わっ。な、なに?』
「売り物に、ならなかった奴」
丁寧に折られた桜の造花。そこへ目立つようにして見えたのが、ほんの僅かな皴。
『ねぇ。わたしが、貰っちゃって良いの?』
「皴のある和紙にも、気づかないで渡してきたんだから。納品した個数が減ってても、気がつかないと思うぜ」
『そりゃあ、この内職を依頼した外部の御方に非があるとは……、って、ちょっと、きり丸――』
ぴしゃりと、引き戸が閉められた。
外出許可証は、きり丸の手元に届き、○○が頼まれた事務員としての仕事は完了。
きり丸に半ば強引に、渡された桜の造花に視線を落としてから、顔を上げる。
『桜、丁寧に折れてるよ。上手になったね』
最後にそう言い残して、○○は、一年の忍たま長屋を後にしていく。
「……」
○○の足音が遠ざかっていくのが分かると、きり丸は、その場に体育座りの姿勢を作って、座り込む。
「う゛ぅ~~……」
○○の手が添えられた頭部を、きり丸は自身の右手を当てて、摩る。
忍術学園に入学する前に味わった拳骨の痛みが、どれ程のものだったのかを、そんな記憶も霧がかり、霞む。
「んん~~~っッ!!」
わしゃわしゃと、水色の井桁模様の描かれた頭巾越しに、紺色の髪が乱雑な形へと変わっていく。
「おれが、○○と離れたくないって言ったのは、そうだけど……!」
○○と一緒に幸せになりたいと言い、彼女が忍術学園の領地外へ出ていくのを引き留めたきり丸。
学園長を務める大川平次 渦正に直談判し、○○が忍術学園の事務員(仮)として、どのような利点があるのか等と必死に売り込んだ。
○○を想うきり丸の姿や、大川の突然の思い付きの発案により、○○は、忍術学園に在籍する事務員として雇われ、生活苦に陥っている忍たま・くのたまにアルバイトの斡旋を行う役目を与えられた。
「〇○○と幸せになりたいって言ったけど…、……っああ~! 何だよこれ~! せっかく、時間が空いたからもう一つのアルバイトに励めると思ったのに、身が入らねぇ~っ!!」
じたばたと、床に寝転がったきり丸がのたうち回っている間に、がらっと引き戸が空いた。
「きりちゃん、何してるの?」
「お腹空いたの?」
同じ一年は組で、同室で、入学時から付き合いのある親友の猪名寺乱太郎と、福富しんべヱの二人だ。
桜の造花が詰まれた木箱と、この後に取り組む予定であった筆つくりのアルバイト用の道具一式が並べられている。
その横で、わあっと声をあげて、わしゃわしゃと頭巾を掻くきり丸の構図を前に、二人は困惑の意を示すしかない。
◇
『”幸せになりたい”というのは、どんな意味があるのでしょうか』
中在家さん。
その姓で呼ばれた相手は——、木陰で書物に目を通して、仏頂面で、大柄で筋肉質な体格をしている忍術学園の六年生、中在家長次。
○○と一定の距離を保ってはいるが、決して不仲だからという訳ではない。
「きり丸本人に直接、聞いてみても良いのではないか」
『駄目なんです。きり丸ってば、小銭を落としても、”あげる”だったり、”ただ”とか、そういった言葉で釣ろうとしても……、それだけは絶対に、教えてくれないんです」
困ったように笑みを浮かべてから、○○は視線を落とせば、何かを握る。
くしゃっと和紙の音を聞き取った長次は、○○の手元に視線を落としていけば、桜の造花を手にしていたのを発見。
「……造花」
『あっ、はい。これ、皴が出来て売り物にならないからって、きり丸から貰ったんです。とっても上手に折れていて、誰が見ても桜だって信じちゃいますよ』
今度は、にこっと笑顔を浮かべ、桜の造花を長次に見せた。
「もそ。確かに」
自称天才アルバイターの後輩の器用さに感心しつつも、アルバイトで偶然見つけた不良品をあげるという行為を、きり丸が○○以外には、しないとも思う。
「おっ。長次に、○○ちゃんじゃないか」
「それ、桜か?」
そんな時、二人の男性の声が聞こえてきた。
○○が顔を上げると——、十キロ算盤を片手に持つ、六年い組の潮江文次郎。得意武器の二丁苦無を手に、新緑色の忍装束が砂だらけな、六年ろ組の七松小平太が、○○と長次を見つけるなり、木陰の中に入ってくる。
『わっ……』
長次と同様に、日々の鍛錬で鍛え抜かれた筋肉質な体格をしている二人は、忍術学園の外の世界で○○が見てきた元服済みの男子よりも、どこか威圧的。
過去、傾城屋に遊女として雇おうと、攫われかけた事のある○○は、自分の手を引こうとした中年の男子が過る。男子を蹴り上げて、何とか逃げ切れたものの、その時の出来事が反芻する。
「文次郎、小平太。○○ちゃんが、怯えている」
桜の造花を手に、大樹の後ろに隠れようとする○○を横目で捉えた長次が、文次郎と小平太にそう指摘した。
「お、おぉっ。悪かった」
「悪い悪い」
困り顔を見せた文次郎とは対照的に、溌溂とした笑みを浮かべた小平太が、○○と一定の距離を取る。
『えっと、前よりは、背の高い男の人も大丈夫には、なったんですよ』
○○の脳裏に、一年は組の教科担当担任の、土井半助が現れた。
乱太郎・きり丸・しんべヱ達の担任であり、きり丸のアルバイトの手伝いをしているだけでなく、週末などは自身が借りている長屋を、きり丸のもう一つの居場所として与えた男。
出会った当初、”背の高い男性”と印象を抱き、きり丸が傍に居なければ、ぎこちない会話を繰り広げていた○○だったが、アルバイトの手伝いや胃痛を労わり、胃の調子を整える健康法を自ら教えたりと、交流を図った。
その結果、初対面よりは、まともに会話が出来るようになり、きり丸の心配の種が一つ減った。
『あのっ。潮江さんと七松さんにも、お聞きしたいのですけれど……』
きり丸のアルバイトの手伝いをする先輩として認識している○○は、長次をはじめ、文次郎と小平太とも縁が出来ていた。
そんな二人にも、きり丸が○○に向けて言い放った「幸せになりたいの意味」について、問いかける。
「そりゃあ、○○ちゃんと一緒に居たいって、そのまんまじゃないのか」
恥ずかしげもなく、そう言いのけた文次郎を見た小平太は、伏し目になり、年相応な意地の悪い笑みを作っていく。
「おっ、文次郎。たまには、良い事を言うじゃないか」
「な、何だよ、小平太!」
「なははっ。まぁ確かに、文次郎の言葉も一理ある。きり丸は、○○ちゃんと離れたくなかっただろう? そういう事だ! 細かい事を気にする仲じゃないだろう!」
豪快に笑ってみせれば、○○をはじめ、文次郎・長次・小平太の居る木陰が一気に、賑やかな場へと移り変わる。
『……わたしは』
ぽつりと、○○が言葉を零す。
「ん?」
その声を聞き取った三人の視線が、○○に注がれていく。
『きり丸と、ずっと一緒に居られたらって思います』
一度は、きり丸の為を想ってと自ら彼の手を離した○○。
二度目は、忍術学園に入学したきり丸と再会して、短期の住み込みアルバイトを終えて、別の領地へと足を運ばなくてはならないと告げたが、もう○○の手を離したくないからと、一緒に幸せになりたいと涙混じりに語ったきり丸。
『きり丸は、わたしの中の”ずっと一緒に居たい人”です』
一度掴んだものは、手を離さない奇癖を持つきり丸が、○○の手を離さなかった。
この学園に通い、土井と巡り合い、新たな居場所を手に入れたきり丸であったが、優しい心も持ち合わせている彼は、○○とも幸せになりたいという思いも抱えていた。
他者から見れば、我儘とも取れる発言だが、ドケチとして名が通っているきり丸が心から欲していると分かれば、それ程までに、○○が大事であると分かる。
『わたし、きり丸が大好きだから、ずっと一緒に居たくて、幸せになりたいんだって……、そう思います』
きり丸から送られた桜の造花を手にした○○は、満面の笑みを浮かべて、そう答えた。
その発言を最後まで聞き終えた文次郎と小平太は、木陰に座っている長次の元へ集い、こそこそと小声で話し出す。
「これでもまだ、きり丸と○○ちゃんは思い人同士じゃないのか?」
「いや、○○ちゃんの方は、脈があると踏んでいいだろう」
「……あの桜の造花が、きり丸の答えだ」
未だ、二人の仲は進展していないと思っていた文次郎。
それとなく仲が深まっていると、持ち前の野生の勘で察した小平太。
きり丸が○○に贈った桜の造花が答えであると、二人の仲で先に答えに辿り着いた長次。
『あ、あの……?』
その中で一人、きょとんとした様子の○○。
「○○ちゃん! きり丸がアルバイトで困っている事はないかとか、何か聞いていないか!?」
『えっ?』
「いけいけどんどんに、私達が手伝うぞ!」
『えぇっ?』
大事な後輩と、その思い人の恋結びの象徴でもある”アルバイトの手伝い”という話題を出した文次郎と小平太だが、○○と一定の距離を保てなくなっており、当の○○は大樹にしがみつき、言葉が詰まっていた。
「文次郎、小平太。距離を保てと、あれ程……ふへっ、へへへ……っ」
不気味な笑い声が聞こえてくれば、縄鏢を振り回す音が聞こえ出す。
今度は、袋槍と苦無の先端が、かきんっと鳴る音がすれば、忍術学園の校庭にて、武道派揃いの六年生三人の乱闘が開始された。
「あっ、先輩が――、って、えぇっ!? 何が起きてるんだ~!?」
そこに、文次郎・長次・小平太の姿を見つけて、アルバイトの手伝いを頼もうとしたきり丸も合流する。
だが、黄土色の砂煙が舞う中、独特の口癖を発して乱闘を続ける三人の光景を目の当たりにして、きり丸は空いた口が塞がらない。
『あっ、きり丸』
「○○! せ、先輩方は一体、何を……?」
『ちょっと色々あって…、……ねぇ、きり丸』
大樹の陰に隠れて、決闘を観戦する○○を発見したきり丸。
彼が声を掛けるも、ひょいひょいと手招きをされれば、○○の元へ近づく。
『ちょっと耳を貸して』
「すぐ返せよ」
御馴染みのやり取りを繰り広げてから、きり丸の耳元に、○○の唇が近づく。
――きり丸の事、大好きで、”ずっと一緒に居たい人”だよ。
きり丸の手のひらに、くしゃっと和紙が置かれた。
それは、アルバイトの為にと丁寧に折られた桜の造花であり、本物の桜を彷彿させた。
――――――――――――――――
◇○○
現六年生より年下。
忍術学園入学前のきり丸と数年間、行動を共にしていた。
ひょんな事から、現在は、忍術学園の事務員として雇われている。
傾城屋に攫われかけた過去から、背丈の高い男性に苦手意識がある(傍に、きり丸が居れば、平気。一人の時は、今回のように詰められるのはまだ慣れない)。
○○としては、下級生(特に一年は組)と関わるのが好き。
○○にとってきり丸は、”ずっと一緒に居たい人”。
◇摂津のきり丸
忍術学園入学前の数年間、○○と行動を共にしていた。
○○と離れたくなくて、忍術学園の事務員として雇ってもらえるように引き留めた。
きり丸にとって○○は、”一緒に幸せになりたい人”。
◇猪名寺乱太郎、福富しんべヱ
一年は組所属で、きり丸の親友。
○○と居るきり丸は、嬉しそうという認識。
◇中在家 長次
図書委員会 委員長。
きり丸だけでなく、きり丸の大事な人でもある○○を気にかけている。
きり丸と○○が親愛を超えて、両片思いへと進展したのを分かりつつも、見守っている。
◇潮江文次郎、七松小平太
会計委員会 委員長と体育委員会 委員長。
きり丸と○○が親愛を超えているor両片思いなのかのどちらかと踏んでいる。
◇土井半助
名前のみの登場。
○○と出会った当初は、ぎこちない会話が続いたり、きり丸を介してではないと接するのが難しかった。
それでも、きり丸の恩人だからと思った○○が努力を重ねて、今では普通に接するまでに成長した。
週末などは、きり丸と借家の長屋に帰っているが、○○は土井の立場(大家さんから、女性関係について疑われる等)を気遣い、一緒に帰っていない。
その代わり、○○は主に一年は組の乱太郎の実家(農家の手伝い)、庄左エ門の実家(庄二郎の子守り)、しんべヱの実家(福富屋の手伝い)、伊助の実家(染物の仕事の手伝い)等にお邪魔して、それとなく駄賃を稼いでいる。
解説
◇副題の意味
→青い鳥=○○
春日遅遅 =春の日を、長閑に長く感じられること。
◇桜
→花言葉「精神の美」、「純潔」、「優美な女性」
◇桜の造花(作物の豊作祈願に使用する花見)
→農村では、桜が咲くと、御神酒を桜に振舞い、豊作を祈願していた。
きり丸が○○に抱いている想い(例え造花であっても、心に抱いている想いは本物)。
◇「恋結び」
→離れていても、恋が途絶えない事を願って、紐を結ぶこと。
元は、万葉集に登場するおまじない。
◇「”ずっと一緒に居たい人”」
→○○にとっての、好意を抱いている人。
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