短編
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摂津のきり丸が、(自称)アルバイトの天才と呼ばれた女の子と再会してから、何だか嬉しそうにしている話
◇元の話→青い鳥は、もう降りてこない(摂津のきり丸 R15)
(これを読んでいなくても、単発で読めるものとなっています。また、元の話はR15指定となっています)
摂津のきり丸×女夢主(年上)
◆名前変換夢の為、名前変換を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で、進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆きり丸と土井先生の関係性が好みで、夢主を介入させたくない。戦災孤児時代のきり丸が、誰かと一緒に過ごした時期があったのが解釈違い等の地雷があれば、ブラウザバック推奨。
夢主の簡単な設定
・孤児。きり丸とは、忍術学園入学前に出会って数年間、行動を共にしていた。
・生きる為にアルバイトに励み、集めた銭で、成り上がるのが夢。
・
近畿地方の山奥――、山岳地帯特有の広大な敷地を利用して、建設された忍者の養成機関、忍術学園。
午後の授業が終わりを告げれば、半鐘台にて、学園長の大川平次渦正の相棒である忍犬、ヘムヘムが、長所である石頭を打ち付けて、鐘を鳴らす。
各教室から生徒が出ていき、各々が自由時間を過ごしていく。校庭へと足を運べば、冷気を孕んだ秋の訪れを感じさせる風が吹き、ほんの少しだけ寒さが伴う。
「おーい! きり丸ー!」
教科担当担任の土井半助による、補習授業を受け終えた猪名寺乱太郎・摂津のきり丸・福富しんべヱが、校庭にてのんびりと時間を潰そうとする中、何者かがきり丸を呼ぶ声が木霊すれば、何事かと反応を示す。
「庄左ヱ門、どうしたの?」
乱太郎が問いかけた相手は、一年は組の学級委員長を務め上げる、しっかり者の黒木庄左ヱ門。
はぁはぁと息を整えながらも、庄左ヱ門の視線は、きり丸に向けられていた。
「小松田さんから、きり丸にお客さんが来ているって伝言を受けたんだ」
「お客さん?」
その言葉を受けて、乱太郎・きり丸・しんベヱの三人の声が重なり合う。
「どんな人?」
「姿までは見ていないけど、女の人だって小松田さんが教えてくれた。正門の所で待っているみたいだから、早く行った方が良いよ」
きり丸の女性の知り合いと言えば、乱太郎としんベヱの中では、きり丸よりもドケチであり、師匠とも呼べる存在、おりん婆さんの姿が浮かぶ。
「あのドケチの師匠の、おりん婆さんが、きり丸に何の用があるんだろう」
「分かんない」
乱太郎としんベヱが、こそこそと話をしている最中、庄左ヱ門から急かされれば、きり丸の跡を追いかけるべく、二人も走り出していく。
先頭を走っていたきり丸が、忍術学園の出入口でもある正門前に到着。事務員の小松田秀作の姿が見えれば、その隣にはきり丸の来客も一緒だ。
「あっ、きり丸くん。お友達が、遊びに来てるよぉ」
のんびりと間延びした口調で紹介されると、きり丸の双眸に小さな輝きが灯され、来客に視線が釘付けとなる。
それはかつて、忍術学園へと入学する前。
即ち、戦により家も家族も失ったきり丸が、孤児として過ごした数年間、行動を共にした人物であり、自分に銭を稼ぐ方法・アルバイトという生きる術を教えてくれた——、
「○○!」
青い鳥は、降り立つ
水色の忍装束の掠れる音と共に、正門前に到着した乱太郎としんベヱは、穏やかな空気を裂いたように、どこか喜の感情が込められたきり丸の声を聞けば、顔を上げる。
「はぁ…はぁ……、疲れた〜」
「きりちゃんの、御知り合いの方?」
地面に尻餅をついて、額から流れる汗を隠しもせずに、疲れを見せてしんベヱが座り込めば、砂埃が小さく舞う。
そんなしんベヱをよそに、きり丸の知り合いであろう○○を見れば、乱太郎が疑問を呈す。
『こんにちは。きり丸のお友達?』
乱太郎達よりも大きく、四年生以上の上級生よりは背丈は小さいであろう、○○から挨拶をされると、乱太郎としんベヱは条件反射で、同じく挨拶を返した。
「この人は、○○。おれが忍術学園に入学する前からの付き合いなんだよ。ちなみに、アルバイトの天才様って言われてたり」
乱太郎としんベヱは初対面であり、○○の紹介を簡潔ながらに行うも、最後に付け足された"アルバイトの天才様"と揶揄いを聞けば、○○は眉間に皺を寄せていく。
『もうっ。きり丸ってば、まだそれ言ってるの?』
「だって、○○が最初に言い始めただろ。それに昔だったら、すぐ手が出たのに、○○も丸くなったなぁって」
『それなら一発、拳骨をお見舞いしてやりましょうか?』
一触即発になりかねない空気ながらも、息のあった掛け合いに、乱太郎としんベヱは、二人が姉弟ではないかと一瞬だけ、過ぎる。
しかし、家も家族も失ったきり丸には、兄弟は居ないと話を受けた事があり、○○とは血縁関係のない赤の他人であると思いつつ、その仲の良さに、どこか微笑ましさを覚えた。
「○○さんときり丸、仲が良いんですね」
『あははっ、そうかなぁ』
きり丸から乱太郎へと視線を切り変えると、○○は眉を下げて、きり丸には見せていなかった、困ったような笑みを向け、小さく笑う。
「ところで、忍術学園へ何しに来たんだよ。ひょっとして、寂しくなったから、おれに会いに来たとか?」
『何で余計な一言を、そう足してくるのかなぁ。きみって』
平時から、余計な言葉を付け足しては土井をはじめ、実技担当教員の山田伝蔵から叱りを受けるきり丸は、その癖が○○の前でも発動。
『実は、この辺りで住み込みのアルバイトが見つかってね。丁度、きり丸の通っている忍術学園に近かったから、折角だと思って』
先程の呆れた様子から一転して、眉を下げて、穏やかな笑みを見せれば、貴重な時間を割き、忍術学園へ足を運んだ○○に、きり丸の頬が心做しか、緩んだ。
「もしかして、きり丸のドケチな部分って……」
『わたしは、ドケチじゃないよ』
きり丸と同じく、アルバイトに勤しむ○○を見て、きり丸のドケチな性質を受け継いでいると勘違いしたしんベヱに、○○は身振り手振りをしながら、訂正する。
「住み込みって事は、しばらくこの辺に居るの?」
『短期だけどね。まぁ、きり丸が寂しいって言うなら、顔を見せに来てあげても良いよ』
"あげて"と、きり丸が好む"あげる"という言葉と似た響きであるものの、ばきゅんと胸を貫く衝動には駆られず、苦虫を噛んだ顔を浮かべた。
「けっ。相変わらず、子供扱いして」
『わたしよりも年下でしょ』
そしてアルバイトも長期ではなく、短期。
それでも、空いた時間ならば、忍術学園に顔を出すのは可能であると伝えれば、きり丸は口を開ければ、ちらりと八重歯が見せる。
「ねぇ乱太郎。きり丸ってば、何だか嬉しそう」
「だねっ」
入学時から付き合いのある乱太郎としんベヱは、○○と会話をしているきり丸から、"○○と会えて嬉しい"といった感情が滲み出ていると分かれば、その光景を微笑ましく見つめているのであった。
◇
秋風と共に、忍術学園へ顔を見せるようになった○○。
きり丸達が忍術学園で勉学に励んでいる間、市中の宿に身を置き、住み込みのアルバイトに勤しむ。
放課後を迎えて暫くすると、顔見知りとなった小松田から入門票のサインを書くように言われ、素直に従い、下の名前を記す。
墨痕の残る紙を手渡してから、木の門をくぐり、学園の敷地へと足を踏み入れていく。
『乱太郎くん、きり丸、しんベヱくん』
今日も補習授業を受け、何とか終える事の出来た三人が、正門前にて待ち合わせをする○○の元へ足を運べば、○○は袖口から見える小麦色の手を振り、野辺に咲く花が陽を浴びたかのように、朗らかな笑みを咲かせた。
『忍術学園の勉強って、難しいの?』
短期の住み込みアルバイトの合間、忍術学園へと足を運ぶ○○は、足を運ぶ度に毎回、三人が補習授業を受けている現状に、勉学は難しいものなのかと疑問を持っていたのだ。
「おれの場合は、アルバイトが忙しくって」
内職を始め、農産物の販売や子守り等の数々のアルバイトを受け持ち、勉学が疎かになっているきり丸は、にへらと笑い、まるで反省していない。
事情を知らない者ならば、説教を説くのだろうが、きり丸の場合、忍術学園に支払う学費稼ぎの為に行っており、そのアルバイトの手伝いを行う同室の乱太郎としんベヱは咎めない。
むしろ、この時代を生き抜こうとする逞しさに尊敬を覚える。
◇
そして、日が経つに連れて、○○が忍術学園に顔を見せる光景は、他の忍たま達にとって見慣れたものとなりつつあった。
彼女が顔を見せるのならば大方、一年は組のお馴染み三人組に用事があるのだろうというのが、暗黙の了解。
しかし、きり丸はここ数日、とある話題ばかり振られては、どうしたものかと頭を捻る。
——ちょっと、きり丸。最近、よく顔を見せているあの御方、きり丸の想い人なの?
ある時は、くの一教室に通うユキ・トモミ・おシゲの三人組に絡まれては、○○との関係について根掘り葉掘り探られて。
——最近、よく学園に顔を見せる方は、きり丸の友達? 僕達と年が近いみたいだけど、何だかきり丸のお姉さんみたいだね
またある時は、同じ図書委員会に所属する五年ろ組の不破雷蔵から、本人は無自覚なのであろうが、○○がきり丸にとって、姉のような存在であると認識し始めていた。
——こら、きり丸! ぼーっとしていないで、授業は真面目に聞けー!
想い人やら、友達やらと、○○の関係に名前を付けるのならば、何なんだろうと物思いに耽ければ、土井の座学も、ろくに耳に入らない。
『住み込みのアルバイト、終わっちゃった』
そうこうしている間に、○○の短期の住み込みアルバイトも終わりを告げて。
○○の声も、秋の夕暮れの風のように寂しげ。
「また次のアルバイトを探されるんですか?」
『そうだね。生きる為には、銭が必要だから』
○○の言葉を聞けば、きり丸が普段から発している口癖に近い発言と酷似していると、乱太郎としんベヱは密かに思う。
田園にて立派に生えていた稲穂も、すっかりと収穫の時期を迎えては刈り取られ、市中に売られている農産物も柿や芋などへ移り変わっていた。
農閑期を目前とする中、戦に巻き込まれないよう、生きる術のアルバイトに勤しまなければ——、そう思う○○をよそに、きり丸は、ある事を思い出す。
「じゃあ、○○。今度さ、おれが受け持ったアルバイトの手伝い、頼むよ」
まるで、次のアルバイト先を探そうと、忍術学園の領地内を去る○○を引き止めるよう。
それでも、アルバイトの手伝いをする機会のある乱太郎としんベヱからしてみれば、自分達のように、○○にも手伝いを誘っているのだと何ら変わりない、自然な行動と捉えられた。
「そしたら、わたし達も——、」
「いや…、そのアルバイトの手伝いは、俺達が引き受けよう」
乱太郎の声を被せるようにして、頭上から聞こえてきた声。乱太郎でも、きり丸でも、しんベヱでも、ましてや○○でもない。
『えっ?』
「あぁ……っ」
平時ならば、アルバイトの手伝いを積極的に行い、力仕事等で頼りになる面々が、きり丸達の前に揃っていた。
しかし、今のきり丸にとっては、なんの因果なのかと。
乱太郎の所属する委員会 委員長の不運が自分にも降り掛かっているのかと。
「潮江文次郎先輩…、中在家長次先輩…、七松小平太先輩……」
そう、無意識に○○との繋がりを途絶えさせたくないと思っていたきり丸にとって、この三人がアルバイトの手伝いを申し出てきたのは、今回ばかりは、あまりにも都合が悪かったのだ。
『あっ…、えっと……』
ふと、○○が頭上を見上げてから、言葉が途切れ途切れになっているのをきり丸は遅れて気がついた。
昔なら、すぐに気がつけたのにと思えば余程、○○との繋がりが途絶えるのを恐れていたのだと、思い知らされる。
「○○。前に話した、おれのアルバイトを手伝ってくれる先輩方だよ。悪い人達じゃないからさ」
○○と過ごした数年間にて、過去に傾城屋を営む男性から声を掛けられ、店に仕える遊女にさせようと攫われかけた過去が○○にはあると、きり丸は知っている。
平均身長を上回る三人の背丈に圧倒され、その時の記憶がふと過った○○を安心させるべく、きり丸は○○の右手を握り、離さない。
『……そっか。きり丸の、アルバイトの手伝いをして下さっている方々なんだね』
彼等の素性をそれとなく聞かされれば再び、野花が咲き誇る、朗らかな笑みを浮かべ、安心している様を見せた。
不安感が拭われた今も尚、きり丸が○○の手を握って離さない姿は——、手にしたら、掴んだ物を手放したがらない癖が出ているようだと。
青い鳥と、久方振りのアルバイト
「それじゃあ、薪と落ち葉集めの方を頼みますね。あぁ…それと最近、山賊の出没が増えているそうなので、気をつけて下さい」
人々の喧騒が絶えない市中にて、秋風が頬を撫でる中、依頼主の若い男性から、今回のアルバイトの内容を聞き終えれば、きり丸と○○が元気よく返事をして、気前のいい様子を見せつけた。
(こうして、○○と一緒にアルバイトをするの、久しぶりだなぁ)
先程の活きのいい返事をするのも、○○から教わった技術。
依頼主に良い顔を見せて、今後の働き口へと繋がるのだと、幼い頃のきり丸は○○から教わった。
『ねぇ、きり丸』
「ん?」
そんな時、とんとんと肩を叩かれ、きり丸が振り向くと、屈んだ状態にて、○○と目線が合う。
『どうして潮江さん達は、山賊の話題が出た途端、柔軟体操をしているの?』
指をさした先には、山賊が出ると聞いた途端、鍛錬に励めると嬉しさを隠さない文次郎・長次・小平太が、おもむろに柔軟体操を始めたのだ。
そんな事も露知らず、きょとんとした顔を見せる○○の隣で、きり丸は焦燥した様子で、三人の元へ向かう。
「先輩方! 今日は、山賊退治じゃなくて、薪と落ち葉を拾うんですから! アルバイト優先で、お願いします!」
下級生である筈のきり丸に咎められ、六年生の三人は不満気な様子。
『とりあえず、雑木林で薪と落ち葉は、取れるみたいですし。何なら多めに取って、銭も弾んで貰いましょう』
馴染みあるやり取りは、○○にとって新鮮であるものの、抜け目のない様を見せつければ、文次郎・長次・小平太は内心、きり丸とよく似た性格をしているとつくづく思う。
(しかし、あの二人の距離感、本当に思い人同士じゃないのか?)
(なんだ、文次郎。アルバイトよりも、そっちが気になるのか。まぁ私も、如何な物かとは思ってはいたけれど)
(……ここ最近、委員会活動では頬が緩んでいる姿を見かけると、雷蔵から話は聞かされている)
忍術学園特有の矢羽根を用いて、六年生の三人が会話をする。
一般人の○○から見れば、ひゅっと空気を裂く音が、聞こえてくると錯覚するのみ。
◇
アルバイト先の雑木林は、昼を過ぎても薄暗く、頭上で枝葉が重なり合っては陽射しを細く切り裂く。
木漏れ日の下、落ち葉は淡い金色と褐色を織り交ぜ、踏みしめる度に、ぱりっと乾いた音を響かせる。
「ふぅー、結構、集めたなぁ」
額から流れる汗を拭き取り、背負い籠に詰め込まれた落ち葉に視線を送るきり丸。
それら全てが銭へと還元される光景が早くも浮かべば、あへあへと笑いを隠さず、両目に銭の模様が出現。
(先輩方……、○○は、大丈夫かなぁ)
きり丸よりもアルバイト歴が上である○○からして見れば、山賊との遭遇は五分五分の確率。
それは分かっているものの、武道派揃いの六年生三人と異なり、他者を攻撃する術が乏しい○○の身を年下ながらに案じて、落ち葉と共に、○○の姿も探し出す。
『七松さん。この塹壕?というのを掘られると、落ち葉が取れやすくなるんですか?』
きり丸が探していた人物の声が、風に吹かれて聞こえたものの、第三者の名前まで聞こえれば、「えっ」と間抜けな声が発された。
「取りやすくなるというより、山賊の邪魔が入りにくくなる」
『へぇ。じゃあ、アルバイトをしている時に、山賊の邪魔が入らずに済むんですね』
忍術学園の校庭内にて、学園長先生の許可もありつつ、塹壕を掘り進める頻度の多い小平太は、塹壕の有効性を○○に説明する。
茂みの影から、二人の様子を伺っているきり丸だが、伊達に六年間も学園に在籍している訳もなく、小平太はきり丸の気配を察知済みだ。
「〇〇ちゃんは、きり丸とは、どんな関係なんだ?」
にっと快活な笑みを浮かべれば、きり丸の存在など、始めから知らない素振りを見せて、○○に問いかけた。
忍術学園に顔を見せる○○だが、自分と年齢の近い上級生との関わりは薄く、特に最上級生の六年生は野外実習等で不在の時期もある。
ここ最近、○○ときり丸の噂について耳にはしていたが、"関わりが薄い"という点を利用して、○○から話を聞き出そうとするのが、小平太の思惑。
『きり丸が、戦災孤児になっていた所に偶然、出会ったんです』
○○の脳裏に浮かぶのは、しんしんと降り積もる冬のある日、縁框の下で莚を体に巻いて、寒さを凌ごうとする幼き頃のきり丸の姿。
けれど、自らがきり丸の過去を晒して、彼の名誉を傷つけてはいけないと、簡潔に説明を終えれば、小平太もその事情を察する。
(まぁ、そう簡単に話す訳がないか……、しかしまぁ、きり丸の事を大事に想っているのはよく伝わる)
小平太がそのような事を考えている等、きり丸も○○も知らない。
にこにこと擬音が発される、溌剌とした笑みを見せる小平太に、茂みの影から眺めているきり丸は、怪訝そうな表情を隠せない。
(七松先輩、○○にそんな事を聞いて、何の得があるんだろう……もしかして、おれの情報を誰かに渡して、銭を儲けようと……?!)
自らの情報が誰かに提供されるとなれば、金銭のやり取りが発生する。飛躍した思考に行き着いたきり丸が口を開けると、ちらりと八重歯が見えた。
「よぉーし! いけいけどんどーん!」
気を取り直して、落ち葉拾いを再開する小平太は、持て余している体力を活用すべくと、雑木林を彩る落ち葉を拾い上げていく。
◇
アルバイトに勤しみつつ、○○の動向も気にしてしまうきり丸は、ギンギンと、聞き馴染みのある口癖を発する人物の元へ、○○が導かれたのだと気がついた。
『潮江さん。とても元気があって、張り切ってますね』
「これが、俺のやり方だからな」
その正体は文次郎であり、背負い籠には雑木林の中で拾い上げた巻が積み上げられている。
木肌の香りが鼻を刺し、自然の香りが漂う落ち葉とは対称的。
そんな中、文次郎は○○の背負い籠に詰め込まれた落ち葉の量を見てから、○○に視線を移す。
「にしても、手馴れた様子だ」
『生きていく為に、色々なアルバイトに挑戦していましたので。気がついたら、こんな風に』
○○と同い年の女子であれば今頃、伴侶となる夫の家に嫁いでいる者が殆どであろう。
しかし、幼い頃に戦災孤児となり、家も家族も失った○○からして見れば、誰かの元へ嫁ぐなど、夢のまた夢。
ましてや、アルバイト先の武家や商人の子供にいたく気に入られる玉の輿なんて、果てなき夢に等しい。
「逞しく生きる方が、得をするとも言う……きり丸も、そんな○○ちゃんの生き方に、感化されたんじゃないか?」
ちらりと、文次郎の視線が移ろう。
自分の背後にて、○○との会話を盗み聞きするきり丸の気配を感じ取れば、そのような発言をしてみせたのだ。
『その逞しさが、潮江さん達に御迷惑を掛けていらっしゃらなければ。きり丸が銭の事になると目の色を変えるのは、わたしと一緒に過ごした時間で、培われたものでもありますから』
アルバイト生活に明け暮れた結果、ちゃりんと銭の音が聞こえれば、どこからともなく、きり丸が現れる。
姿を見せない彼の居所を簡単に探し当てられる奇癖であり、それは○○と過ごした時間で培われたものでもあった。
◇
その後も、落ち葉拾いに励む○○を気にしながらも、同じくきり丸も背負い籠に落ち葉を詰めて、銭へと還元させる妄想を膨らませては、あへあへと笑いを隠さない。
『きゃっ!』
しかし、○○の小さな悲鳴が聞こえれば、その特徴的な笑いは鳴りを潜める。
地面に足を奪われたのだと分かれば、きり丸は○○が転ばないようにと、駆けつけようとしたが、足が止まった。
「泥濘が、落ち葉に紛れていた」
自身が所属する図書委員会の委員長が発する、ぼそぼそとした声を聞き取れば――、長次が○○の背を支えて、助けに入ったのだと分かる。
『あ、ありがとうございますっ』
「……怪我は」
『大丈夫ですよ。足は、捻っていないみたいですし』
○○の足元には、泥濘に嵌った草履の跡が残されており、これといった怪我も見られない。
朗らかな笑みを見せる○○を見つめる長次は、足元に少量の泥が付着していると気がつく。土埃が払われた岩場に○○を座らせ、常服の懐から、手拭いを取り出す。
『中在家さん、細かい所をよく見ていらっしゃるんですね』
「……何かあれば、きり丸が悲しむ」
同じ委員会に所属し、アルバイトに勤しむきり丸を気にかけている長次が、自らの足に付着した泥を拭き取ってくれる様を見せられると、○○は眉を下げて、笑みを浮かべる。
『きり丸だったら、ドケチな性格が出て、怪我をしても、唾で治るって話してくる筈ですよ』
造花作りのアルバイトにて、指を切った際に、保健委員会 委員長を務める善法寺伊作特性の塗り薬を、たっぷりと塗る行為すら拒み、唾を付けたのは、きり丸の記憶に新しい。
「きり丸本人が、そのようにしても、大切に想う人が相手となれば、唾で治ると話はしないだろう」
じぃっと、○○に向けて注がれる熱い視線の主が、きり丸であると分かりきっている長次は敢えて、きり丸にも聞こえるようにと、ほんの少しだけ声量を上げた。
◇
雑木林にて、薪と落ち葉を一通り、拾い終えると、きり丸をはじめ、○○、六年生の三人が集合場所へと足を運び、背負い籠を地面へと下ろす。
「これだけあれば、駄賃も弾むに違いない…!」
先程の○○と六年生の三人とのやり取りなど、今のきり丸の頭から、すっぽり抜け落ちて、背負い籠と同じように、地面へと転がり落ちる。
「その薪と落ち葉は、ここに置いて行って貰おうか!」
あへあへと笑いを込み上げるきり丸だったが、突如として、背後から野太い男性の声が冷気を孕んだ風と共に、三つも聞こえてくれば、そちらに顔を向けていく。
『出たなぁ、山賊——、』
「わーっ! 駄目ーっ!」
依頼主が話していた山賊であると分かり、○○は気圧されないものの、そこへきり丸が止めに入り、静止。
きり丸は、○○の手を掴んで、離さない。
「何だ? 何だぁ?」
「"山賊"って言葉が、聞こえたぞぉ」
「もそっ」
わざとらしく、まるで芝居かがった白々しい台詞を吐き捨てたのは、文次郎・小平太・長次。
きり丸が彼等と励むアルバイトにて、山賊等の不届き者が出没するのは珍しくなく、今回もお待ちかねの時間がやってきたと分かれば、六年生の三人は、興奮を隠しきれない。
「な、何かあの大柄な三人組、やけに威勢がよくありません…?」
「まるで、おれ達が出てくるのを待ち侘びていたような……」
「んな訳があるかぁ! お前ら、行くぞ!」
自分達の討伐を心から待ち詫びて、各々が意気揚々と得意武器を取り出せば、山賊の頭に仕える手下の二人は、どことなく違和感を覚えた。
しかし、薪と落ち葉を自分達に差し出せと脅し言葉を放った手前、逃げるという選択肢は、山賊の頭には無い。
「きり丸は、○○ちゃんを守っていないといけないから、俺達が山賊を倒さないとなぁ!」
「一度掴んだ物は手放せないのが、きり丸の癖だから、ここは私達の出番という訳かぁ!」
「うへ、うへへっ……!」
袋槍・苦無・縄鏢が、山賊に降り掛かると、雑木林では、野太い悲鳴が飛び交う。
それぞれが特徴的な口癖を発しながら、意図も容易く山賊を撃退してしまえば、その光景に目が眩むきり丸と、六年生の三人の強さに目を輝かせる○○は、すっかり観客と化していた。
『きり丸……、潮江さん、中在家さん、七松さんって、お強いんだねっ』
「結局、こうなるのか〜……っ」
感嘆とした声をあげて、肩を落とすきり丸を見つめる○○。
それに対して、あっさりと山賊を撃退してしまい、物足りないと思う六年生の三人は、今も○○の手を握って離さないきり丸を見れば、面白いものを見たと心に留める。
◇
薪と落ち葉を回収し、ついでに山賊までも退治し終えれば、依頼主からは、感謝の言葉の雨が四人に降り注がれた。
きり丸と○○の読み通り、駄賃は倍以上に弾まれ、銭の模様を浮かばせたきり丸と、頬を真っ赤に染め上がる○○を交互に見て思うのは、やはり似たもの同士であるという事。
「きり丸。山賊は、もう居ないぞ?」
忍術学園までの帰り道にて、空一面を包み込む橙色の空を見上げてから、目を細め、にやにやとした面を見せる小平太が、○○の手を握って歩くきり丸に、声を掛けてみせた。
「へっ?」
「……無自覚か」
ぽつりと、長次のぼそぼそとした声を聞き取れたきり丸は、自分が今の今まで、○○の手を握って歩いていたのだと気付かされるも、離しはしない。
『このまま忍術学園まで歩いていたら、乱太郎くんとしんベヱくんに、揶揄われてたよ?』
平時から行動を共にしている乱太郎としんベヱと比較して、学園内でのきり丸は、どこか大人びているようだと、ここ何日か足を運んでいた○○の気づいた一面。
きっと、自分の発言に照れて、うるせぇ等と可愛げのない台詞を吐いてくるのだろうと待ち構えていたが、きり丸の口から言葉が発せられない。それには、○○もどうしたのかと首を傾げた。
「○○は、忍術学園まで来てくれるの?」
我に返ったかのように放たれた言葉は、○○が自分と共に忍術学園へ帰るのかと問いかけたもの。
しかし、その疑問を口にする前から、○○が忍術学園には帰らず、農閑期前に、新たな働き口を見つけるべく旅立つと、きり丸は知っている。
『きり丸が、今日のアルバイトを手伝って欲しいって言ったんじゃない。わたしが、きり丸の所に居られるのは、忍術学園の門の前まで』
まるで無垢な残酷さを持ち合わせる子供のようにして、○○は現実を口にしてみれば、きり丸の胸の奥が、きゅっと呻いた。
『元気な顔を見れて、良かった』
幼い頃に知り合い、数年間を共にした彼女の温もりが込められた掌が、きり丸の頭をそっと撫でていく。
きり丸は、今の自分の顔を見られたくないと、○○から視線を反らして俯く。
商売上手で、余計な一言を言い放つお喋りな口も今だけは、一文字にして、塞がれている。
『忍術学園の事は、口外しちゃいけないって言われたから、誰にも話したりはしないよ。例え、銭を出されてもね――、』
「ずっと、居ろよ」
震えた声色を鼓膜が聞き取れば、○○は眉を下げ、自らきり丸の手を離せば、その場に屈んで、きり丸と目線を合わせようとする。
『きり丸』
「成り上がる為に、おれと別れたのにっ」
『こっち見て』
「会いに来れるんだったら、何で付いてきてくれなかったんだよっ」
その時、俯いていたきり丸の両頬を、○○が両手で掴む。
無理やり顔を上げさせられると、目尻に小さな輝きを放つきり丸が、○○と目が合う。
『なに、泣いてるの?』
「泣いてないっ」
『わたしと居た時は、強がって泣かないようにしてた時もあったのに?』
「だから、泣いてなんかないっ」
忍術学園では、滅多に見られないきり丸の姿。
それでもつい最近、土井が"とある一件"にて、行方を眩ませ、焦燥しきった時と酷似している。
そう思いつつも、文次郎・長次・小平太は茶化したりはせず、きり丸と○○の二人を見守る。
『忍術学園で、大切な人達を見つけられて、心が温かくなったんだね』
目尻に浮かぶ輝きを、○○が指で掬い取れば、水気を含んでいた。
『ごめんね、きり丸』
ふわりと、○○の言葉が夕暮れ時の空にて、舞い上がる。
『あの時、わたしと居たら、今の温かい心を持ったきり丸は居なかったと思う。わたしじゃ、そんな風に、きみを成長させられなかったから』
今の○○は、元服を控える子女。
しかし、きり丸と行動を共にしていた当時は、齢一桁の時期もあり、子供だけで戦や飢饉、災害の絶えない戦乱の世を生き抜けないと、心の奥底にふと湧き上がってきたのだ。
『孤児を馬鹿にする人達を見返そうと、成り上がりたい夢があったのは本当だよ。今だってそう……、でもね、』
成り上がりよりも、きり丸と過ごすアルバイト生活が楽しくなっていたの。
○○の口から、本音が零れ落ちたものの、本人は至って冷静。
『幸せだなぁって思ったの……、けど、きり丸が同じ幸せを感じているか分からなかったから、この生活を無理に続ける必要なんてないんじゃないかって思えば、きり丸が忍術学園の噂を小耳にしたのを聞いて、ここでお別れなんだって、勝手に思っちゃった』
「おれの気持ち、勝手に決めつけるなよっ!」
始めて出会った時から、○○は自分勝手な奴なんだ。
それは、きり丸と○○の出会いにまで遡る。
――ここ、わたしの家。ここに居るんなら、銭の一銭でもちょうだいよ
―ーねぇ、死なないの?
――遠くの町か、なんばんで、どれいにでもなったら、簡単に死ねるよ
きり丸が孤児になって間もない頃、とある寺院の縁框の下に暮らしていた○○の住処に、きり丸が入り込んだ。
整えられておらず、清潔感の欠片もなく、死んだように生きていたきり丸に、○○が掛けた言葉達。
それらは、配慮の至らないものが殆どで、当時の○○の自己中心的な一面を特徴づけている。
――触らないで! これは、わたしが自分で手に入れた銭! 何もしていないきみなんかに、触らせない!
アルバイトで手にした銭が、ちゃりんと雪の上に落ちた時、咄嗟に拾おうとしたきり丸に声を荒らげ、威嚇した○○。
その迫力に圧倒され、目を潤わせて、涙が零れそうだったのをきり丸は覚えている。
――教えて。おれにも、銭を手に入れられるやり方を教えてくれよ
これが、アルバイトという生きる術を持たなかった頃のきり丸が、○○に教えを乞うべく、震えながら発した言葉。
それから、きり丸は○○と共に、南瓜の売り子をはじめ、子守り、茸取り、合戦場の弁当売り等と多種多様なアルバイトに励み、銭一筋であり、それでも他者を思いやる心を忘れない少年へと成長していった。
――この辺りの山奥に、忍術学園って所があるみたいでさ
きり丸が十歳を迎える間際――、忍術学園の存在を知り、その学園へ入学する為の資金が必要だと話す姿を見ては、○○は別れを察して、自らその退路を作ろうという思惑が脳裏に浮かんで。
――きり丸
――何だよ
――明日で、わたしとお別れね
――はっ?
それはあまりにも、あっさりとした別れを予期させる言葉。
――きり丸。きみは、幸せになりなよ
そして、別れる直前に告げられた、きり丸への言葉。
幸せになって欲しいという言葉は、これから忍術学園で出会う心の温かい人達に囲まれ、人並みの生活が送れますようにと、○○からの囁かな幸せが込められていたものであった。
しかし、それはあくまで、○○の中でのみ。
「○○と一緒に、幸せになりたい。○○が居てくれたから、乱太郎やしんベヱ、一年は組の皆に、忍術学園の先輩方……土井先生に会えたってのに」
気がつけば、きり丸は○○の両手を握っていた。
掴んだ物を離さない奇癖が表出しているが、それはまるで、また自分の元から去って行かないでと願う子供のよう。
「おれ…、忍術学園に入学して、○○に言いたい面白い話がまだ沢山残ってるから……、まだ時間が、足りないんだよ……っ」
だから、行かないで。
最後の一言が、喉元をつっかえてしまい、○○に伝わらない。
橙色の空が、漆黒色に包まれてしまったら、忍術学園に到着したら、○○はまた隣に居なくなる。
時間が経つにつれて、その現実が近づいていたのを、きり丸が恐れていたから。
(きり丸……っ)
言葉にせずとも、自分を引き留めようしているのが分かった○○。
けれども、仕事の働き口がこの領地内では見つからず、別の領地に顔を出さなければ、生き抜く事は出来ない。
温室で、ぬくぬくとした生活を送れない○○は、きり丸の思いに答えてやれない、大人未満な自分を恨めしく思う。
「そういえば、学園長先生が、このような事をおっしゃられていたなぁ」
その時、きり丸と○○の頭上から、またしてもわざとらしく、白々しい芝居がかった文次郎の台詞が聞こえてきた。
「きり丸のような、生活苦に陥っている忍たまへ向けて、仕事の斡旋に強い人材は居ないのかってなぁ」
「確かに言ってなぁ、そんな事。私ってば、うっかり忘れてしまっていたぁ」
「もそっ」
文次郎に続き、小平太と長次も一緒になって、芝居がかった台詞を言い放つも、それらは全て、○○を引き留めようとするきり丸を思いやる言葉。
「……そうだ! 学園長先生の突然の思いつき!」
日頃から、突然の思いつきが発動されれば、げんなりとした顔を隠す事なく、学園長に振り回されるのが恒例。
しかし、今となれば救いの元。
目尻に溜まった輝きを拭うべく、きり丸は腕で擦っていけば、○○の手を掴む。
「○○、忍術学園に行こう!」
『えっ?』
「新しい働き口、見つかるかもしれない!」
西日を受けて、きり丸と○○の影が大きく伸びていく。
かつて引き離された二人の影は、今は手を握られている事で、しっかりと繋がっている。
きり丸が生気を取り戻したと分かれば、六年生の三人は、お決まりの口癖を発しながら、忍術学園へと向かうきり丸と○○を追いかけるべく、走り出していく。
◇
半鐘台にて、ヘムヘムが自らの頭を打ち付けると、学園中に鐘の音が鳴り響いた。
午後の授業が終わり、放課後の時間が訪れたのだと分かれば、各々が与えられた時間を有効かつ自由に使う事が出来る。
日頃、世話になっている金楽寺では、自然の恵みに感謝すべくと収穫祭を目前に控え、和尚と顔見知りの学園長が何故かやる気に満ち溢れていたと、忍たま達の間では話題に。
「○○さーん!」
アルバイトの為に市中へ出掛ける、くの一教室の生徒を見送る○○の背を、乱太郎・きり丸・しんベヱが見つければ、駆け寄って行く。
『乱太郎くん、きり丸、しんベヱくん』
今日も土井の補習授業を受けた三人を、○○は朗らかな笑みを浮かべて、迎え入れた。
「なぁ、アルバイトの天才様〜」
突然、猫撫で声を発したきり丸を見ては、何かを察した○○は、怪訝そうな顔を浮かべたものの、きり丸には通用しない。
「おれにも、アルバイト紹介してくれよ〜」
『自分で見つけてくるじゃない。それに、土井先生に押し付けるって聞いたけれど?』
「土井先生も、快く引き受けて下さってるから」
『何か前に、胃痛に襲われている所を目撃したんだけど……』
きり丸と○○の会話劇が繰り広げられる中、乱太郎としんベヱは、○○とまたこうして、一緒に過ごす事が出来て、頬が緩んでいるきり丸に視線を送る。
「きりちゃん、嬉しそう」
「うんっ」
青い鳥は、もう少年の傍から離れない
――――――――――――――――
◇○○
忍術学園入学前のきり丸と、アルバイト生活をしていた。
元々は孤児で、自分を馬鹿にした人達を見返すべく、成り上がりを夢見ていたが、きり丸とのアルバイト生活が楽しくなっていた。
子供二人だけの生活(現代で言う、血縁関係のない機能不全家族)では限界が訪れると自ら悟り、一方的にきり丸と別れた過去がありつつ、再会。
その後は、学園長先生の許可を得て、生活苦に陥っている忍たまを手助けする事務員(仮)として、新たな働き口を得た。
きり丸への想いは、親愛寄り。
◇摂津のきり丸
忍術学園入学前、○○からこの世界を生きる術として、アルバイトを教えて貰った。
入学後に、○○と再会して、短期の住み込みのアルバイトが終わると、別の領地へと足を運ぼうとする○○を無理やり引き留め、薪と落ち葉拾いのアルバイト後、秘めていた胸の内を打ち明ける。
○○への想いは、親愛寄り。
◇猪名寺乱太郎、福富しんベヱ
お馴染みの一年は組の二人。
○○と一緒に居るきり丸は、どこか嬉しそうであると微笑ましく思う。
◇鍛錬組(潮江文次郎・中在家長次・七松小平太)
きり丸のアルバイトを手伝う先輩方。
忍術学園に顔を見せていた○○ときり丸の距離が近い現場を目撃し、互いに想い合っているかと思えばそうではなく、距離感が近いと解釈。
○○が短期の住み込みアルバイトを終えて、別の領地へと旅立つのが嫌なきり丸を見て、忍術学園へ○○の働き口を作るべく、ひと芝居打った。
摂津のきり丸が、(自称)アルバイトの天才と呼ばれた女の子と再会してから、何だか嬉しそうにしている話
◇元の話→青い鳥は、もう降りてこない(摂津のきり丸 R15)
(これを読んでいなくても、単発で読めるものとなっています。また、元の話はR15指定となっています)
摂津のきり丸×女夢主(年上)
◆名前変換夢の為、名前変換を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で、進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆きり丸と土井先生の関係性が好みで、夢主を介入させたくない。戦災孤児時代のきり丸が、誰かと一緒に過ごした時期があったのが解釈違い等の地雷があれば、ブラウザバック推奨。
夢主の簡単な設定
・孤児。きり丸とは、忍術学園入学前に出会って数年間、行動を共にしていた。
・生きる為にアルバイトに励み、集めた銭で、成り上がるのが夢。
・
近畿地方の山奥――、山岳地帯特有の広大な敷地を利用して、建設された忍者の養成機関、忍術学園。
午後の授業が終わりを告げれば、半鐘台にて、学園長の大川平次渦正の相棒である忍犬、ヘムヘムが、長所である石頭を打ち付けて、鐘を鳴らす。
各教室から生徒が出ていき、各々が自由時間を過ごしていく。校庭へと足を運べば、冷気を孕んだ秋の訪れを感じさせる風が吹き、ほんの少しだけ寒さが伴う。
「おーい! きり丸ー!」
教科担当担任の土井半助による、補習授業を受け終えた猪名寺乱太郎・摂津のきり丸・福富しんべヱが、校庭にてのんびりと時間を潰そうとする中、何者かがきり丸を呼ぶ声が木霊すれば、何事かと反応を示す。
「庄左ヱ門、どうしたの?」
乱太郎が問いかけた相手は、一年は組の学級委員長を務め上げる、しっかり者の黒木庄左ヱ門。
はぁはぁと息を整えながらも、庄左ヱ門の視線は、きり丸に向けられていた。
「小松田さんから、きり丸にお客さんが来ているって伝言を受けたんだ」
「お客さん?」
その言葉を受けて、乱太郎・きり丸・しんベヱの三人の声が重なり合う。
「どんな人?」
「姿までは見ていないけど、女の人だって小松田さんが教えてくれた。正門の所で待っているみたいだから、早く行った方が良いよ」
きり丸の女性の知り合いと言えば、乱太郎としんベヱの中では、きり丸よりもドケチであり、師匠とも呼べる存在、おりん婆さんの姿が浮かぶ。
「あのドケチの師匠の、おりん婆さんが、きり丸に何の用があるんだろう」
「分かんない」
乱太郎としんベヱが、こそこそと話をしている最中、庄左ヱ門から急かされれば、きり丸の跡を追いかけるべく、二人も走り出していく。
先頭を走っていたきり丸が、忍術学園の出入口でもある正門前に到着。事務員の小松田秀作の姿が見えれば、その隣にはきり丸の来客も一緒だ。
「あっ、きり丸くん。お友達が、遊びに来てるよぉ」
のんびりと間延びした口調で紹介されると、きり丸の双眸に小さな輝きが灯され、来客に視線が釘付けとなる。
それはかつて、忍術学園へと入学する前。
即ち、戦により家も家族も失ったきり丸が、孤児として過ごした数年間、行動を共にした人物であり、自分に銭を稼ぐ方法・アルバイトという生きる術を教えてくれた——、
「○○!」
青い鳥は、降り立つ
水色の忍装束の掠れる音と共に、正門前に到着した乱太郎としんベヱは、穏やかな空気を裂いたように、どこか喜の感情が込められたきり丸の声を聞けば、顔を上げる。
「はぁ…はぁ……、疲れた〜」
「きりちゃんの、御知り合いの方?」
地面に尻餅をついて、額から流れる汗を隠しもせずに、疲れを見せてしんベヱが座り込めば、砂埃が小さく舞う。
そんなしんベヱをよそに、きり丸の知り合いであろう○○を見れば、乱太郎が疑問を呈す。
『こんにちは。きり丸のお友達?』
乱太郎達よりも大きく、四年生以上の上級生よりは背丈は小さいであろう、○○から挨拶をされると、乱太郎としんベヱは条件反射で、同じく挨拶を返した。
「この人は、○○。おれが忍術学園に入学する前からの付き合いなんだよ。ちなみに、アルバイトの天才様って言われてたり」
乱太郎としんベヱは初対面であり、○○の紹介を簡潔ながらに行うも、最後に付け足された"アルバイトの天才様"と揶揄いを聞けば、○○は眉間に皺を寄せていく。
『もうっ。きり丸ってば、まだそれ言ってるの?』
「だって、○○が最初に言い始めただろ。それに昔だったら、すぐ手が出たのに、○○も丸くなったなぁって」
『それなら一発、拳骨をお見舞いしてやりましょうか?』
一触即発になりかねない空気ながらも、息のあった掛け合いに、乱太郎としんベヱは、二人が姉弟ではないかと一瞬だけ、過ぎる。
しかし、家も家族も失ったきり丸には、兄弟は居ないと話を受けた事があり、○○とは血縁関係のない赤の他人であると思いつつ、その仲の良さに、どこか微笑ましさを覚えた。
「○○さんときり丸、仲が良いんですね」
『あははっ、そうかなぁ』
きり丸から乱太郎へと視線を切り変えると、○○は眉を下げて、きり丸には見せていなかった、困ったような笑みを向け、小さく笑う。
「ところで、忍術学園へ何しに来たんだよ。ひょっとして、寂しくなったから、おれに会いに来たとか?」
『何で余計な一言を、そう足してくるのかなぁ。きみって』
平時から、余計な言葉を付け足しては土井をはじめ、実技担当教員の山田伝蔵から叱りを受けるきり丸は、その癖が○○の前でも発動。
『実は、この辺りで住み込みのアルバイトが見つかってね。丁度、きり丸の通っている忍術学園に近かったから、折角だと思って』
先程の呆れた様子から一転して、眉を下げて、穏やかな笑みを見せれば、貴重な時間を割き、忍術学園へ足を運んだ○○に、きり丸の頬が心做しか、緩んだ。
「もしかして、きり丸のドケチな部分って……」
『わたしは、ドケチじゃないよ』
きり丸と同じく、アルバイトに勤しむ○○を見て、きり丸のドケチな性質を受け継いでいると勘違いしたしんベヱに、○○は身振り手振りをしながら、訂正する。
「住み込みって事は、しばらくこの辺に居るの?」
『短期だけどね。まぁ、きり丸が寂しいって言うなら、顔を見せに来てあげても良いよ』
"あげて"と、きり丸が好む"あげる"という言葉と似た響きであるものの、ばきゅんと胸を貫く衝動には駆られず、苦虫を噛んだ顔を浮かべた。
「けっ。相変わらず、子供扱いして」
『わたしよりも年下でしょ』
そしてアルバイトも長期ではなく、短期。
それでも、空いた時間ならば、忍術学園に顔を出すのは可能であると伝えれば、きり丸は口を開ければ、ちらりと八重歯が見せる。
「ねぇ乱太郎。きり丸ってば、何だか嬉しそう」
「だねっ」
入学時から付き合いのある乱太郎としんベヱは、○○と会話をしているきり丸から、"○○と会えて嬉しい"といった感情が滲み出ていると分かれば、その光景を微笑ましく見つめているのであった。
◇
秋風と共に、忍術学園へ顔を見せるようになった○○。
きり丸達が忍術学園で勉学に励んでいる間、市中の宿に身を置き、住み込みのアルバイトに勤しむ。
放課後を迎えて暫くすると、顔見知りとなった小松田から入門票のサインを書くように言われ、素直に従い、下の名前を記す。
墨痕の残る紙を手渡してから、木の門をくぐり、学園の敷地へと足を踏み入れていく。
『乱太郎くん、きり丸、しんベヱくん』
今日も補習授業を受け、何とか終える事の出来た三人が、正門前にて待ち合わせをする○○の元へ足を運べば、○○は袖口から見える小麦色の手を振り、野辺に咲く花が陽を浴びたかのように、朗らかな笑みを咲かせた。
『忍術学園の勉強って、難しいの?』
短期の住み込みアルバイトの合間、忍術学園へと足を運ぶ○○は、足を運ぶ度に毎回、三人が補習授業を受けている現状に、勉学は難しいものなのかと疑問を持っていたのだ。
「おれの場合は、アルバイトが忙しくって」
内職を始め、農産物の販売や子守り等の数々のアルバイトを受け持ち、勉学が疎かになっているきり丸は、にへらと笑い、まるで反省していない。
事情を知らない者ならば、説教を説くのだろうが、きり丸の場合、忍術学園に支払う学費稼ぎの為に行っており、そのアルバイトの手伝いを行う同室の乱太郎としんベヱは咎めない。
むしろ、この時代を生き抜こうとする逞しさに尊敬を覚える。
◇
そして、日が経つに連れて、○○が忍術学園に顔を見せる光景は、他の忍たま達にとって見慣れたものとなりつつあった。
彼女が顔を見せるのならば大方、一年は組のお馴染み三人組に用事があるのだろうというのが、暗黙の了解。
しかし、きり丸はここ数日、とある話題ばかり振られては、どうしたものかと頭を捻る。
——ちょっと、きり丸。最近、よく顔を見せているあの御方、きり丸の想い人なの?
ある時は、くの一教室に通うユキ・トモミ・おシゲの三人組に絡まれては、○○との関係について根掘り葉掘り探られて。
——最近、よく学園に顔を見せる方は、きり丸の友達? 僕達と年が近いみたいだけど、何だかきり丸のお姉さんみたいだね
またある時は、同じ図書委員会に所属する五年ろ組の不破雷蔵から、本人は無自覚なのであろうが、○○がきり丸にとって、姉のような存在であると認識し始めていた。
——こら、きり丸! ぼーっとしていないで、授業は真面目に聞けー!
想い人やら、友達やらと、○○の関係に名前を付けるのならば、何なんだろうと物思いに耽ければ、土井の座学も、ろくに耳に入らない。
『住み込みのアルバイト、終わっちゃった』
そうこうしている間に、○○の短期の住み込みアルバイトも終わりを告げて。
○○の声も、秋の夕暮れの風のように寂しげ。
「また次のアルバイトを探されるんですか?」
『そうだね。生きる為には、銭が必要だから』
○○の言葉を聞けば、きり丸が普段から発している口癖に近い発言と酷似していると、乱太郎としんベヱは密かに思う。
田園にて立派に生えていた稲穂も、すっかりと収穫の時期を迎えては刈り取られ、市中に売られている農産物も柿や芋などへ移り変わっていた。
農閑期を目前とする中、戦に巻き込まれないよう、生きる術のアルバイトに勤しまなければ——、そう思う○○をよそに、きり丸は、ある事を思い出す。
「じゃあ、○○。今度さ、おれが受け持ったアルバイトの手伝い、頼むよ」
まるで、次のアルバイト先を探そうと、忍術学園の領地内を去る○○を引き止めるよう。
それでも、アルバイトの手伝いをする機会のある乱太郎としんベヱからしてみれば、自分達のように、○○にも手伝いを誘っているのだと何ら変わりない、自然な行動と捉えられた。
「そしたら、わたし達も——、」
「いや…、そのアルバイトの手伝いは、俺達が引き受けよう」
乱太郎の声を被せるようにして、頭上から聞こえてきた声。乱太郎でも、きり丸でも、しんベヱでも、ましてや○○でもない。
『えっ?』
「あぁ……っ」
平時ならば、アルバイトの手伝いを積極的に行い、力仕事等で頼りになる面々が、きり丸達の前に揃っていた。
しかし、今のきり丸にとっては、なんの因果なのかと。
乱太郎の所属する委員会 委員長の不運が自分にも降り掛かっているのかと。
「潮江文次郎先輩…、中在家長次先輩…、七松小平太先輩……」
そう、無意識に○○との繋がりを途絶えさせたくないと思っていたきり丸にとって、この三人がアルバイトの手伝いを申し出てきたのは、今回ばかりは、あまりにも都合が悪かったのだ。
『あっ…、えっと……』
ふと、○○が頭上を見上げてから、言葉が途切れ途切れになっているのをきり丸は遅れて気がついた。
昔なら、すぐに気がつけたのにと思えば余程、○○との繋がりが途絶えるのを恐れていたのだと、思い知らされる。
「○○。前に話した、おれのアルバイトを手伝ってくれる先輩方だよ。悪い人達じゃないからさ」
○○と過ごした数年間にて、過去に傾城屋を営む男性から声を掛けられ、店に仕える遊女にさせようと攫われかけた過去が○○にはあると、きり丸は知っている。
平均身長を上回る三人の背丈に圧倒され、その時の記憶がふと過った○○を安心させるべく、きり丸は○○の右手を握り、離さない。
『……そっか。きり丸の、アルバイトの手伝いをして下さっている方々なんだね』
彼等の素性をそれとなく聞かされれば再び、野花が咲き誇る、朗らかな笑みを浮かべ、安心している様を見せた。
不安感が拭われた今も尚、きり丸が○○の手を握って離さない姿は——、手にしたら、掴んだ物を手放したがらない癖が出ているようだと。
青い鳥と、久方振りのアルバイト
「それじゃあ、薪と落ち葉集めの方を頼みますね。あぁ…それと最近、山賊の出没が増えているそうなので、気をつけて下さい」
人々の喧騒が絶えない市中にて、秋風が頬を撫でる中、依頼主の若い男性から、今回のアルバイトの内容を聞き終えれば、きり丸と○○が元気よく返事をして、気前のいい様子を見せつけた。
(こうして、○○と一緒にアルバイトをするの、久しぶりだなぁ)
先程の活きのいい返事をするのも、○○から教わった技術。
依頼主に良い顔を見せて、今後の働き口へと繋がるのだと、幼い頃のきり丸は○○から教わった。
『ねぇ、きり丸』
「ん?」
そんな時、とんとんと肩を叩かれ、きり丸が振り向くと、屈んだ状態にて、○○と目線が合う。
『どうして潮江さん達は、山賊の話題が出た途端、柔軟体操をしているの?』
指をさした先には、山賊が出ると聞いた途端、鍛錬に励めると嬉しさを隠さない文次郎・長次・小平太が、おもむろに柔軟体操を始めたのだ。
そんな事も露知らず、きょとんとした顔を見せる○○の隣で、きり丸は焦燥した様子で、三人の元へ向かう。
「先輩方! 今日は、山賊退治じゃなくて、薪と落ち葉を拾うんですから! アルバイト優先で、お願いします!」
下級生である筈のきり丸に咎められ、六年生の三人は不満気な様子。
『とりあえず、雑木林で薪と落ち葉は、取れるみたいですし。何なら多めに取って、銭も弾んで貰いましょう』
馴染みあるやり取りは、○○にとって新鮮であるものの、抜け目のない様を見せつければ、文次郎・長次・小平太は内心、きり丸とよく似た性格をしているとつくづく思う。
(しかし、あの二人の距離感、本当に思い人同士じゃないのか?)
(なんだ、文次郎。アルバイトよりも、そっちが気になるのか。まぁ私も、如何な物かとは思ってはいたけれど)
(……ここ最近、委員会活動では頬が緩んでいる姿を見かけると、雷蔵から話は聞かされている)
忍術学園特有の矢羽根を用いて、六年生の三人が会話をする。
一般人の○○から見れば、ひゅっと空気を裂く音が、聞こえてくると錯覚するのみ。
◇
アルバイト先の雑木林は、昼を過ぎても薄暗く、頭上で枝葉が重なり合っては陽射しを細く切り裂く。
木漏れ日の下、落ち葉は淡い金色と褐色を織り交ぜ、踏みしめる度に、ぱりっと乾いた音を響かせる。
「ふぅー、結構、集めたなぁ」
額から流れる汗を拭き取り、背負い籠に詰め込まれた落ち葉に視線を送るきり丸。
それら全てが銭へと還元される光景が早くも浮かべば、あへあへと笑いを隠さず、両目に銭の模様が出現。
(先輩方……、○○は、大丈夫かなぁ)
きり丸よりもアルバイト歴が上である○○からして見れば、山賊との遭遇は五分五分の確率。
それは分かっているものの、武道派揃いの六年生三人と異なり、他者を攻撃する術が乏しい○○の身を年下ながらに案じて、落ち葉と共に、○○の姿も探し出す。
『七松さん。この塹壕?というのを掘られると、落ち葉が取れやすくなるんですか?』
きり丸が探していた人物の声が、風に吹かれて聞こえたものの、第三者の名前まで聞こえれば、「えっ」と間抜けな声が発された。
「取りやすくなるというより、山賊の邪魔が入りにくくなる」
『へぇ。じゃあ、アルバイトをしている時に、山賊の邪魔が入らずに済むんですね』
忍術学園の校庭内にて、学園長先生の許可もありつつ、塹壕を掘り進める頻度の多い小平太は、塹壕の有効性を○○に説明する。
茂みの影から、二人の様子を伺っているきり丸だが、伊達に六年間も学園に在籍している訳もなく、小平太はきり丸の気配を察知済みだ。
「〇〇ちゃんは、きり丸とは、どんな関係なんだ?」
にっと快活な笑みを浮かべれば、きり丸の存在など、始めから知らない素振りを見せて、○○に問いかけた。
忍術学園に顔を見せる○○だが、自分と年齢の近い上級生との関わりは薄く、特に最上級生の六年生は野外実習等で不在の時期もある。
ここ最近、○○ときり丸の噂について耳にはしていたが、"関わりが薄い"という点を利用して、○○から話を聞き出そうとするのが、小平太の思惑。
『きり丸が、戦災孤児になっていた所に偶然、出会ったんです』
○○の脳裏に浮かぶのは、しんしんと降り積もる冬のある日、縁框の下で莚を体に巻いて、寒さを凌ごうとする幼き頃のきり丸の姿。
けれど、自らがきり丸の過去を晒して、彼の名誉を傷つけてはいけないと、簡潔に説明を終えれば、小平太もその事情を察する。
(まぁ、そう簡単に話す訳がないか……、しかしまぁ、きり丸の事を大事に想っているのはよく伝わる)
小平太がそのような事を考えている等、きり丸も○○も知らない。
にこにこと擬音が発される、溌剌とした笑みを見せる小平太に、茂みの影から眺めているきり丸は、怪訝そうな表情を隠せない。
(七松先輩、○○にそんな事を聞いて、何の得があるんだろう……もしかして、おれの情報を誰かに渡して、銭を儲けようと……?!)
自らの情報が誰かに提供されるとなれば、金銭のやり取りが発生する。飛躍した思考に行き着いたきり丸が口を開けると、ちらりと八重歯が見えた。
「よぉーし! いけいけどんどーん!」
気を取り直して、落ち葉拾いを再開する小平太は、持て余している体力を活用すべくと、雑木林を彩る落ち葉を拾い上げていく。
◇
アルバイトに勤しみつつ、○○の動向も気にしてしまうきり丸は、ギンギンと、聞き馴染みのある口癖を発する人物の元へ、○○が導かれたのだと気がついた。
『潮江さん。とても元気があって、張り切ってますね』
「これが、俺のやり方だからな」
その正体は文次郎であり、背負い籠には雑木林の中で拾い上げた巻が積み上げられている。
木肌の香りが鼻を刺し、自然の香りが漂う落ち葉とは対称的。
そんな中、文次郎は○○の背負い籠に詰め込まれた落ち葉の量を見てから、○○に視線を移す。
「にしても、手馴れた様子だ」
『生きていく為に、色々なアルバイトに挑戦していましたので。気がついたら、こんな風に』
○○と同い年の女子であれば今頃、伴侶となる夫の家に嫁いでいる者が殆どであろう。
しかし、幼い頃に戦災孤児となり、家も家族も失った○○からして見れば、誰かの元へ嫁ぐなど、夢のまた夢。
ましてや、アルバイト先の武家や商人の子供にいたく気に入られる玉の輿なんて、果てなき夢に等しい。
「逞しく生きる方が、得をするとも言う……きり丸も、そんな○○ちゃんの生き方に、感化されたんじゃないか?」
ちらりと、文次郎の視線が移ろう。
自分の背後にて、○○との会話を盗み聞きするきり丸の気配を感じ取れば、そのような発言をしてみせたのだ。
『その逞しさが、潮江さん達に御迷惑を掛けていらっしゃらなければ。きり丸が銭の事になると目の色を変えるのは、わたしと一緒に過ごした時間で、培われたものでもありますから』
アルバイト生活に明け暮れた結果、ちゃりんと銭の音が聞こえれば、どこからともなく、きり丸が現れる。
姿を見せない彼の居所を簡単に探し当てられる奇癖であり、それは○○と過ごした時間で培われたものでもあった。
◇
その後も、落ち葉拾いに励む○○を気にしながらも、同じくきり丸も背負い籠に落ち葉を詰めて、銭へと還元させる妄想を膨らませては、あへあへと笑いを隠さない。
『きゃっ!』
しかし、○○の小さな悲鳴が聞こえれば、その特徴的な笑いは鳴りを潜める。
地面に足を奪われたのだと分かれば、きり丸は○○が転ばないようにと、駆けつけようとしたが、足が止まった。
「泥濘が、落ち葉に紛れていた」
自身が所属する図書委員会の委員長が発する、ぼそぼそとした声を聞き取れば――、長次が○○の背を支えて、助けに入ったのだと分かる。
『あ、ありがとうございますっ』
「……怪我は」
『大丈夫ですよ。足は、捻っていないみたいですし』
○○の足元には、泥濘に嵌った草履の跡が残されており、これといった怪我も見られない。
朗らかな笑みを見せる○○を見つめる長次は、足元に少量の泥が付着していると気がつく。土埃が払われた岩場に○○を座らせ、常服の懐から、手拭いを取り出す。
『中在家さん、細かい所をよく見ていらっしゃるんですね』
「……何かあれば、きり丸が悲しむ」
同じ委員会に所属し、アルバイトに勤しむきり丸を気にかけている長次が、自らの足に付着した泥を拭き取ってくれる様を見せられると、○○は眉を下げて、笑みを浮かべる。
『きり丸だったら、ドケチな性格が出て、怪我をしても、唾で治るって話してくる筈ですよ』
造花作りのアルバイトにて、指を切った際に、保健委員会 委員長を務める善法寺伊作特性の塗り薬を、たっぷりと塗る行為すら拒み、唾を付けたのは、きり丸の記憶に新しい。
「きり丸本人が、そのようにしても、大切に想う人が相手となれば、唾で治ると話はしないだろう」
じぃっと、○○に向けて注がれる熱い視線の主が、きり丸であると分かりきっている長次は敢えて、きり丸にも聞こえるようにと、ほんの少しだけ声量を上げた。
◇
雑木林にて、薪と落ち葉を一通り、拾い終えると、きり丸をはじめ、○○、六年生の三人が集合場所へと足を運び、背負い籠を地面へと下ろす。
「これだけあれば、駄賃も弾むに違いない…!」
先程の○○と六年生の三人とのやり取りなど、今のきり丸の頭から、すっぽり抜け落ちて、背負い籠と同じように、地面へと転がり落ちる。
「その薪と落ち葉は、ここに置いて行って貰おうか!」
あへあへと笑いを込み上げるきり丸だったが、突如として、背後から野太い男性の声が冷気を孕んだ風と共に、三つも聞こえてくれば、そちらに顔を向けていく。
『出たなぁ、山賊——、』
「わーっ! 駄目ーっ!」
依頼主が話していた山賊であると分かり、○○は気圧されないものの、そこへきり丸が止めに入り、静止。
きり丸は、○○の手を掴んで、離さない。
「何だ? 何だぁ?」
「"山賊"って言葉が、聞こえたぞぉ」
「もそっ」
わざとらしく、まるで芝居かがった白々しい台詞を吐き捨てたのは、文次郎・小平太・長次。
きり丸が彼等と励むアルバイトにて、山賊等の不届き者が出没するのは珍しくなく、今回もお待ちかねの時間がやってきたと分かれば、六年生の三人は、興奮を隠しきれない。
「な、何かあの大柄な三人組、やけに威勢がよくありません…?」
「まるで、おれ達が出てくるのを待ち侘びていたような……」
「んな訳があるかぁ! お前ら、行くぞ!」
自分達の討伐を心から待ち詫びて、各々が意気揚々と得意武器を取り出せば、山賊の頭に仕える手下の二人は、どことなく違和感を覚えた。
しかし、薪と落ち葉を自分達に差し出せと脅し言葉を放った手前、逃げるという選択肢は、山賊の頭には無い。
「きり丸は、○○ちゃんを守っていないといけないから、俺達が山賊を倒さないとなぁ!」
「一度掴んだ物は手放せないのが、きり丸の癖だから、ここは私達の出番という訳かぁ!」
「うへ、うへへっ……!」
袋槍・苦無・縄鏢が、山賊に降り掛かると、雑木林では、野太い悲鳴が飛び交う。
それぞれが特徴的な口癖を発しながら、意図も容易く山賊を撃退してしまえば、その光景に目が眩むきり丸と、六年生の三人の強さに目を輝かせる○○は、すっかり観客と化していた。
『きり丸……、潮江さん、中在家さん、七松さんって、お強いんだねっ』
「結局、こうなるのか〜……っ」
感嘆とした声をあげて、肩を落とすきり丸を見つめる○○。
それに対して、あっさりと山賊を撃退してしまい、物足りないと思う六年生の三人は、今も○○の手を握って離さないきり丸を見れば、面白いものを見たと心に留める。
◇
薪と落ち葉を回収し、ついでに山賊までも退治し終えれば、依頼主からは、感謝の言葉の雨が四人に降り注がれた。
きり丸と○○の読み通り、駄賃は倍以上に弾まれ、銭の模様を浮かばせたきり丸と、頬を真っ赤に染め上がる○○を交互に見て思うのは、やはり似たもの同士であるという事。
「きり丸。山賊は、もう居ないぞ?」
忍術学園までの帰り道にて、空一面を包み込む橙色の空を見上げてから、目を細め、にやにやとした面を見せる小平太が、○○の手を握って歩くきり丸に、声を掛けてみせた。
「へっ?」
「……無自覚か」
ぽつりと、長次のぼそぼそとした声を聞き取れたきり丸は、自分が今の今まで、○○の手を握って歩いていたのだと気付かされるも、離しはしない。
『このまま忍術学園まで歩いていたら、乱太郎くんとしんベヱくんに、揶揄われてたよ?』
平時から行動を共にしている乱太郎としんベヱと比較して、学園内でのきり丸は、どこか大人びているようだと、ここ何日か足を運んでいた○○の気づいた一面。
きっと、自分の発言に照れて、うるせぇ等と可愛げのない台詞を吐いてくるのだろうと待ち構えていたが、きり丸の口から言葉が発せられない。それには、○○もどうしたのかと首を傾げた。
「○○は、忍術学園まで来てくれるの?」
我に返ったかのように放たれた言葉は、○○が自分と共に忍術学園へ帰るのかと問いかけたもの。
しかし、その疑問を口にする前から、○○が忍術学園には帰らず、農閑期前に、新たな働き口を見つけるべく旅立つと、きり丸は知っている。
『きり丸が、今日のアルバイトを手伝って欲しいって言ったんじゃない。わたしが、きり丸の所に居られるのは、忍術学園の門の前まで』
まるで無垢な残酷さを持ち合わせる子供のようにして、○○は現実を口にしてみれば、きり丸の胸の奥が、きゅっと呻いた。
『元気な顔を見れて、良かった』
幼い頃に知り合い、数年間を共にした彼女の温もりが込められた掌が、きり丸の頭をそっと撫でていく。
きり丸は、今の自分の顔を見られたくないと、○○から視線を反らして俯く。
商売上手で、余計な一言を言い放つお喋りな口も今だけは、一文字にして、塞がれている。
『忍術学園の事は、口外しちゃいけないって言われたから、誰にも話したりはしないよ。例え、銭を出されてもね――、』
「ずっと、居ろよ」
震えた声色を鼓膜が聞き取れば、○○は眉を下げ、自らきり丸の手を離せば、その場に屈んで、きり丸と目線を合わせようとする。
『きり丸』
「成り上がる為に、おれと別れたのにっ」
『こっち見て』
「会いに来れるんだったら、何で付いてきてくれなかったんだよっ」
その時、俯いていたきり丸の両頬を、○○が両手で掴む。
無理やり顔を上げさせられると、目尻に小さな輝きを放つきり丸が、○○と目が合う。
『なに、泣いてるの?』
「泣いてないっ」
『わたしと居た時は、強がって泣かないようにしてた時もあったのに?』
「だから、泣いてなんかないっ」
忍術学園では、滅多に見られないきり丸の姿。
それでもつい最近、土井が"とある一件"にて、行方を眩ませ、焦燥しきった時と酷似している。
そう思いつつも、文次郎・長次・小平太は茶化したりはせず、きり丸と○○の二人を見守る。
『忍術学園で、大切な人達を見つけられて、心が温かくなったんだね』
目尻に浮かぶ輝きを、○○が指で掬い取れば、水気を含んでいた。
『ごめんね、きり丸』
ふわりと、○○の言葉が夕暮れ時の空にて、舞い上がる。
『あの時、わたしと居たら、今の温かい心を持ったきり丸は居なかったと思う。わたしじゃ、そんな風に、きみを成長させられなかったから』
今の○○は、元服を控える子女。
しかし、きり丸と行動を共にしていた当時は、齢一桁の時期もあり、子供だけで戦や飢饉、災害の絶えない戦乱の世を生き抜けないと、心の奥底にふと湧き上がってきたのだ。
『孤児を馬鹿にする人達を見返そうと、成り上がりたい夢があったのは本当だよ。今だってそう……、でもね、』
成り上がりよりも、きり丸と過ごすアルバイト生活が楽しくなっていたの。
○○の口から、本音が零れ落ちたものの、本人は至って冷静。
『幸せだなぁって思ったの……、けど、きり丸が同じ幸せを感じているか分からなかったから、この生活を無理に続ける必要なんてないんじゃないかって思えば、きり丸が忍術学園の噂を小耳にしたのを聞いて、ここでお別れなんだって、勝手に思っちゃった』
「おれの気持ち、勝手に決めつけるなよっ!」
始めて出会った時から、○○は自分勝手な奴なんだ。
それは、きり丸と○○の出会いにまで遡る。
――ここ、わたしの家。ここに居るんなら、銭の一銭でもちょうだいよ
―ーねぇ、死なないの?
――遠くの町か、なんばんで、どれいにでもなったら、簡単に死ねるよ
きり丸が孤児になって間もない頃、とある寺院の縁框の下に暮らしていた○○の住処に、きり丸が入り込んだ。
整えられておらず、清潔感の欠片もなく、死んだように生きていたきり丸に、○○が掛けた言葉達。
それらは、配慮の至らないものが殆どで、当時の○○の自己中心的な一面を特徴づけている。
――触らないで! これは、わたしが自分で手に入れた銭! 何もしていないきみなんかに、触らせない!
アルバイトで手にした銭が、ちゃりんと雪の上に落ちた時、咄嗟に拾おうとしたきり丸に声を荒らげ、威嚇した○○。
その迫力に圧倒され、目を潤わせて、涙が零れそうだったのをきり丸は覚えている。
――教えて。おれにも、銭を手に入れられるやり方を教えてくれよ
これが、アルバイトという生きる術を持たなかった頃のきり丸が、○○に教えを乞うべく、震えながら発した言葉。
それから、きり丸は○○と共に、南瓜の売り子をはじめ、子守り、茸取り、合戦場の弁当売り等と多種多様なアルバイトに励み、銭一筋であり、それでも他者を思いやる心を忘れない少年へと成長していった。
――この辺りの山奥に、忍術学園って所があるみたいでさ
きり丸が十歳を迎える間際――、忍術学園の存在を知り、その学園へ入学する為の資金が必要だと話す姿を見ては、○○は別れを察して、自らその退路を作ろうという思惑が脳裏に浮かんで。
――きり丸
――何だよ
――明日で、わたしとお別れね
――はっ?
それはあまりにも、あっさりとした別れを予期させる言葉。
――きり丸。きみは、幸せになりなよ
そして、別れる直前に告げられた、きり丸への言葉。
幸せになって欲しいという言葉は、これから忍術学園で出会う心の温かい人達に囲まれ、人並みの生活が送れますようにと、○○からの囁かな幸せが込められていたものであった。
しかし、それはあくまで、○○の中でのみ。
「○○と一緒に、幸せになりたい。○○が居てくれたから、乱太郎やしんベヱ、一年は組の皆に、忍術学園の先輩方……土井先生に会えたってのに」
気がつけば、きり丸は○○の両手を握っていた。
掴んだ物を離さない奇癖が表出しているが、それはまるで、また自分の元から去って行かないでと願う子供のよう。
「おれ…、忍術学園に入学して、○○に言いたい面白い話がまだ沢山残ってるから……、まだ時間が、足りないんだよ……っ」
だから、行かないで。
最後の一言が、喉元をつっかえてしまい、○○に伝わらない。
橙色の空が、漆黒色に包まれてしまったら、忍術学園に到着したら、○○はまた隣に居なくなる。
時間が経つにつれて、その現実が近づいていたのを、きり丸が恐れていたから。
(きり丸……っ)
言葉にせずとも、自分を引き留めようしているのが分かった○○。
けれども、仕事の働き口がこの領地内では見つからず、別の領地に顔を出さなければ、生き抜く事は出来ない。
温室で、ぬくぬくとした生活を送れない○○は、きり丸の思いに答えてやれない、大人未満な自分を恨めしく思う。
「そういえば、学園長先生が、このような事をおっしゃられていたなぁ」
その時、きり丸と○○の頭上から、またしてもわざとらしく、白々しい芝居がかった文次郎の台詞が聞こえてきた。
「きり丸のような、生活苦に陥っている忍たまへ向けて、仕事の斡旋に強い人材は居ないのかってなぁ」
「確かに言ってなぁ、そんな事。私ってば、うっかり忘れてしまっていたぁ」
「もそっ」
文次郎に続き、小平太と長次も一緒になって、芝居がかった台詞を言い放つも、それらは全て、○○を引き留めようとするきり丸を思いやる言葉。
「……そうだ! 学園長先生の突然の思いつき!」
日頃から、突然の思いつきが発動されれば、げんなりとした顔を隠す事なく、学園長に振り回されるのが恒例。
しかし、今となれば救いの元。
目尻に溜まった輝きを拭うべく、きり丸は腕で擦っていけば、○○の手を掴む。
「○○、忍術学園に行こう!」
『えっ?』
「新しい働き口、見つかるかもしれない!」
西日を受けて、きり丸と○○の影が大きく伸びていく。
かつて引き離された二人の影は、今は手を握られている事で、しっかりと繋がっている。
きり丸が生気を取り戻したと分かれば、六年生の三人は、お決まりの口癖を発しながら、忍術学園へと向かうきり丸と○○を追いかけるべく、走り出していく。
◇
半鐘台にて、ヘムヘムが自らの頭を打ち付けると、学園中に鐘の音が鳴り響いた。
午後の授業が終わり、放課後の時間が訪れたのだと分かれば、各々が与えられた時間を有効かつ自由に使う事が出来る。
日頃、世話になっている金楽寺では、自然の恵みに感謝すべくと収穫祭を目前に控え、和尚と顔見知りの学園長が何故かやる気に満ち溢れていたと、忍たま達の間では話題に。
「○○さーん!」
アルバイトの為に市中へ出掛ける、くの一教室の生徒を見送る○○の背を、乱太郎・きり丸・しんベヱが見つければ、駆け寄って行く。
『乱太郎くん、きり丸、しんベヱくん』
今日も土井の補習授業を受けた三人を、○○は朗らかな笑みを浮かべて、迎え入れた。
「なぁ、アルバイトの天才様〜」
突然、猫撫で声を発したきり丸を見ては、何かを察した○○は、怪訝そうな顔を浮かべたものの、きり丸には通用しない。
「おれにも、アルバイト紹介してくれよ〜」
『自分で見つけてくるじゃない。それに、土井先生に押し付けるって聞いたけれど?』
「土井先生も、快く引き受けて下さってるから」
『何か前に、胃痛に襲われている所を目撃したんだけど……』
きり丸と○○の会話劇が繰り広げられる中、乱太郎としんベヱは、○○とまたこうして、一緒に過ごす事が出来て、頬が緩んでいるきり丸に視線を送る。
「きりちゃん、嬉しそう」
「うんっ」
青い鳥は、もう少年の傍から離れない
――――――――――――――――
◇○○
忍術学園入学前のきり丸と、アルバイト生活をしていた。
元々は孤児で、自分を馬鹿にした人達を見返すべく、成り上がりを夢見ていたが、きり丸とのアルバイト生活が楽しくなっていた。
子供二人だけの生活(現代で言う、血縁関係のない機能不全家族)では限界が訪れると自ら悟り、一方的にきり丸と別れた過去がありつつ、再会。
その後は、学園長先生の許可を得て、生活苦に陥っている忍たまを手助けする事務員(仮)として、新たな働き口を得た。
きり丸への想いは、親愛寄り。
◇摂津のきり丸
忍術学園入学前、○○からこの世界を生きる術として、アルバイトを教えて貰った。
入学後に、○○と再会して、短期の住み込みのアルバイトが終わると、別の領地へと足を運ぼうとする○○を無理やり引き留め、薪と落ち葉拾いのアルバイト後、秘めていた胸の内を打ち明ける。
○○への想いは、親愛寄り。
◇猪名寺乱太郎、福富しんベヱ
お馴染みの一年は組の二人。
○○と一緒に居るきり丸は、どこか嬉しそうであると微笑ましく思う。
◇鍛錬組(潮江文次郎・中在家長次・七松小平太)
きり丸のアルバイトを手伝う先輩方。
忍術学園に顔を見せていた○○ときり丸の距離が近い現場を目撃し、互いに想い合っているかと思えばそうではなく、距離感が近いと解釈。
○○が短期の住み込みアルバイトを終えて、別の領地へと旅立つのが嫌なきり丸を見て、忍術学園へ○○の働き口を作るべく、ひと芝居打った。
