短編
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七松小平太は、非の打ち所のない人間だから、わたしじゃない相応しい人が隣に立っているべきだと思う話
七松 小平太×女夢主(同年齢)
◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
夢主の簡単な設定
・小平太の実家のある領地内に、両親と同居中。
・人並みに、感情を持ち合わせている。また、自分に持ち合わせていないものを、他者が持っていたら羨む等、人間らしい一面もある。
・
劣等感の溜息
(あぁ、まただ)
木々にとまる蝉の鳴き声は、以前よりも数が減っている。
それでも、七年七時を遂げようと、必死になって鳴いている生き様を、きゃあきゃあと声をあげる子供達は、知りもしない。
そんな広大な土地に建設された武家屋敷の縁側にて――、蒸し暑い空気の中、額から垂れる汗を拭い、名無し ○○は、"七松 小平太"と文末に記された文を最後まで目を通しては、溜息をついた。
「○○ちゃん。どうしたの?」
そんな姿を、この家の長男である小平太の弟妹達が、ぞろぞろと揃いも揃って、○○の顔色を伺う。
炎天下の中で駆け巡っていた彼等は、兄譲りの疲れ知らずなのか、まだ息を切れている様子を見せていない。
『ううん。何でもないの』
「お外で遊んだら、楽しくなるよ!」
上の双子の兄弟が、○○に向けて手を差し伸べる姿は宛ら、姫君を迎えに来た殿方のよう。
○○は拒む事もなく、草履を吐いてから、その手を受け取り、縁側の外へと駆け出していく。
(小平太ってば……、また中在家さんって人の事を書いたのね)
忍者になるべくして、忍術学園に通っている等、○○は知らない。
秘匿性のある職業故、公に公表出来ないのは勿論、学園に在籍する生徒(通称、忍たま)の知り合いとして、命を狙われる可能性もなくはないからだ。
○○宛に送られた文には、学園での生活だけでな、彼と同室であるという中在家長次という人間について綴られており、○○にとっては、口説いと言いたくなるものであった。
(文でしか知り得ていないけど……、中在家さんは、努力家で、強さと優しさを持ち合わせて……更には、甘味物を作るのが得意と……)
自分が持ち合わせていないものを、全て持ち合わせている手に届かない御方。
○○は、中在家長次をそのように認識しては、劣等感を抱く。
(……もしかして、中在家さんって男性じゃなくて、本当は女性なんじゃ?)
ふと、そのような飛躍した思考に行き着くものの、それに異議ありと突っ込みを入れる者は、この場において存在しない。
(わたしよりも家庭的な一面があって、優れている女子は居るって……わたしが、この家に顔を見せなくても、いいって……っ)
いつからか、○○が七松家に入り浸るようになっても、小平太と弟妹達の両親は嫌な顔を一つ見せず、快く迎え入れてくれた。
それに反して、○○の両親は、小平太くんの家に入り浸るのなら、花嫁修業の一つでもしたらどうだと小言を零しては、○○の顔を歪ませる。
(もし、そうなら……わたし、居る意味あるのかな?)
弟妹達に導かれ、敷地内を駆け巡る○○の双眸は、この武家屋敷を四方に囲む塀を捉えた。
まるで、この七松家に閉じ込めているようにも思えてくると、○○は途端に、ぽっかりと胸の真ん中に穴を開けられていく。
(それに、小平太はこの家の長男で、弟ちゃんや妹ちゃん達、親戚の子供達や御両親にも愛されて、学問にも励んで……今思えば、非の打ち所が無いなぁ)
隣に居た筈の小平太が、非の打ち所のない完璧人間であると再認識してしまえば、いつの間にか遠くの彼方へと離れ、手を手を取り合う事すら叶わない。
(そうだよね。非の打ち所のない人に相応しい女子の御方が、隣に居た方が良いよね。小平太も十五だから、許嫁の一人や二人、居てもおかしくなかったんだから)
言い分に納得いかない子供が、無理やり自分に言い聞かせている姿を彷彿とさせ、どこか痛々しいものの、それを咎めたり、慰める者は、またしても存在しない。
(あぁ。わたしって、小平太のことが好きだったんだなぁ)
胸が、ちくりと痛めば、押し入れにしまわれた裁縫道具の針が、現実を見ろと自分を痛めつけたのかと、○○は自虐した。
痛みの正体が、小平太を想う度に増幅し、無意識に好意を抱いていたのだと気がついたが、○○にとっては、もう遅いのだと。もう意味がないのだと、封を閉じて、好意と名付けられた物はしまいこまれていく。
独り善がりの努力
四季が夏から秋へと移ろえば、蝉はすっかりと生を終えて、夜に鈴虫の合唱が響き渡る清涼が吹き出していた。
(ふぅ、出来たっ)
七松家と比較すれば、こじんまりとした長屋の炊事場にて、前掛け姿の○○が立っており、夕餉の準備を終えた所。
秋になったものの、火を取り扱っていたのもあり、○○の額からは汗が垂れる。
自分と両親の分であり、支度が出来たと告げれば、○○の母が料理を皿に乗せ、それらが小さな膳の上へと置かれると、居間へ運ばれていく。
(今日は、お焦げが少なくて済んだわ。前よりも成長した気がして、何だか嬉しい)
炊きたての白米から、ほんわりと湯気が立てば、天井へと上がっていく。
この高揚感を表現したく、鼻歌を歌いたくなってしまう○○だが、父が居る手前、その衝動を何とか抑え込む。
(苦手な事も挑戦して、成功した時って楽しいものね)
あの日以来、○○は七松家に足を運ぶだけでなく、小平太に文を送らず、自ら筆を下ろした。
その代わりに、これまで避けてきた家事に取り組むと両親の前で宣言し、現在に至るまで、継続していたのである。
(物理的にも、精神的にも距離を離せば、何か変わるとは思っていたけど……まぁ、一気に変わる事も無いか)
○○が七松家に足を運ばなくても、七松家の人間が実家に、わざわざ足を運んで迎えに来ない。
○○が文を送らなくても、小平太から息災であるか等の気遣いが綴られた文は届きもしない。
とどのつまり、○○が居なくても、七松家では時間の針は止まらず、動き続けるのだと結論づけられた。
「使いを頼みたいんだけど、良いかしら」
朝餉の片付けを共に行っている母から、市中にてお使いを頼まれた○○は、断る事もなく、承諾の返事を告げる。
「最近、頑張っているから」
ふふっと穏やかな笑みを浮かべた母が、そのような発言をすると、○○は訳が分からず、きょとんとした顔を見せた。
どうやら、日頃の頑張りを褒め称える対価として、市中の小間物屋で櫛や簪などで欲しい物があれば、購入してもいいと許可が下りた。
そのような動機で始めた訳ではないと思いつつ、○○は母からの厚意を受け止めれば、有難うと言葉を口にする。
◇
秋の実りの象徴である里芋、茶色の表面が、艶やかな栗、乾燥し終えて、見た目からは想像もつかない甘さを隠し持つ干し柿を買い終え、○○は小間物屋へと足を運ぶ。
『わぁ、可愛い』
棚に陳列された櫛や簪は、秋の到来と同時に新商品が入荷されたそうで、秋の花々が掘られたものをはじめ、どれも○○の購入意欲を掻き立たせる。
(……もう、小平太達の分もわざわざ買わなくて良いんだよね)
足を運ぶのを自ら止め、顔を見る機会の減った子供達や小平太が浮かぶも、すぐに消え去った。
こうして疎遠になっていくんだなと、どこか他人事のように捉えれば、竜胆の花が掘られた櫛を手に取れば、店主に声を掛けていく。
思いを分かち合う竜胆の花
市場にて、収穫したての稲穂を纏めた米俵が入荷され、米欲しさに町人達が店の前に集えば、群衆が出来上がる。
そんな中、物陰に隠れるようにして、貧相な小袖を着用せざるを得ず、穴の空いた木材を屋根代わりに、風を凌ぐ母と娘の姿も見られた。
(…、……)
光と闇を交互に視点を切り替えて見つめていた一人の青年は、足を止める事もせず、ある場所へと目指して、前へ前へと足を進ませていく。
『……ふふっ』
長屋の一人部屋にて、先日購入したばかりの竜胆の花が掘られた櫛は、今や○○のお気に入りの品の一つへと地位が伸し上がっていた。
髪の毛に櫛を通していけば、途中で絡まる事もなく、すぅっと綺麗に通り抜ければ、髪の質をより高貴なものへと変貌させて。
「○○」
そんな時、長屋の引き戸が開かれると、○○の母が顔を見せた。
鏡の前で、ふにゃっと笑みが零れていた娘に、目を丸くさせたものの、特に気にするも様子もない。
「小平太くんよ。秋休みで、御実家へ帰る途中みたい」
久方ぶりに聞いた名を前に、○○は、どくんっと胸が鼓動を打ち、反応を示した。
『……うん。分かった』
あくまで、笑みを取り繕った○○だが、内心は穏やかではない。
母は表面上の笑みだけを受け取れば、部屋を後にする。
来客の小平太を自分が対応しなくてはと、○○はその場から立ち上がり、重くなりかけている足を前へと動かして、玄関へと向かう。
「久しいな、○○」
濁った声色ながらも、元服済みの成人男性であるのには変わらない。
萌黄色の上衣に、紫色の袴を着用したその姿は、学園外での"彼"の姿。
『そうだね、小平太』
"彼"の名を呼べば、整えられていない紺色の長髪が、まるで意志を宿ったかのように、ぶわんっと大きく跳ねて、小平太は満面の笑みを浮かべて見せた。
「時間、あるか?」
簡潔ながらも、どこか言葉足らずな物言い。
どうやら、実家に寄る前に○○と両親の住む家を訪ね、○○と話をしたいとの事。
『御実家、まだ寄ってないんでしょ? 先に、御両親や弟くん、妹ちゃん、親戚の子達に顔を見せて来なよ』
「○○の家から、私の家までそう時間は掛からないだろう。少し遅くなったとしても、気にしない」
○○の提案を、すぱっと斬っては、自らの意思を突き通す。
この状態となった小平太は、非常事態にでも陥らない限り、自らの意思を決して曲げはしないと理解している○○は、自ら折れる事を選択した。
『立ち話もなんだから、縁側で話そ?』
そう言えば、小平太からの同意を得られ、来客用の盆と湯呑みを取りに行くと、○○は玄関から席を外す。
慣れた動作で、湯呑みに茶を注いでいけば、二人分の湯呑みを盆に乗せた姿を小平太の前に晒していく。
それを見た小平太が、ほんの少しだけ目を丸くさせたものの、縁側へと案内されれば、その場に腰掛ける。
「どうして、文を送らなくなった」
○○の実家に着いて、茶を飲んで落ち着く間もなく、小平太の口から放たれたのは、○○には身に覚えのある出来事。
「家にも足を運ばなくなったと、聞いている」
文だけでなく、七松家に足を運ばなくなった事も続けて話せば、○○は観念したかのように、眉を下げて、困ったように笑みを作る。
『花嫁修業に、集中したくなったから』
「花嫁修業……?」
ぴくりと、その言葉に反応を示した小平太の凛々しい眉の片方が動く。
『十五にもなって何も出来ないままじゃ、嫁の貰い手が、更に遅くなるから』
それは、この時代においては至極当然な台詞。
○○より年上の女性ならば、行き遅れと指をさされ、中には嘲笑される者や、蔑まれたりと、未婚である自身の存在を否定されかねないのだ。
『何も無い自分を嫁に貰ってくれる人は居ないから。少しでも努力しないと、誰も見てくれないから』
十五になって、ようやく花嫁修業とは何事かと驚いたり、笑われたりしてもおかしくはなかったと。
しかし、両親は○○の心変わりに感動し、彼女の努力している姿を影から見守り、必要以上の声掛けはしなかった。
○○の脳裏に以前、小平太から送られた文に綴られた中在家長次の人間性が過ぎると、小平太の口が開く。
「私が、居るだろう」
あっけらかんと言い放った言葉に、○○は言葉を失う。
正確には、自分の言葉の返答として、意味のわからない言葉を述べられ、理解に苦しんでいたのだ。
『……いや、小平太には、もう居るでしょ?』
ようやく発した言葉に、小平太もまた、首を傾げて顔を顰めている。
「何が居る?」
『奥方さん』
「はっ?」
双方ともに、すれ違いを起こしている。
そんな事など露知らず、自分の思いが相手に通じていないと、○○と小平太は、どうしたもんかと首を傾げては、顎に手を当てて、困惑している様子を隠さない。
「少し待て。私達……、何が勘違いを起こしていないか?」
一番に気づきを見せたのは、小平太。
平時において、溌剌とした面と人並外れた体力と怪力に目が行きやすい彼だが、感情は二の次に、冷静さを一番という一面も併せ持っており、この場においても、それが発揮された。
『勘違い?』
「あぁ」
『……だって小平太、中在家さんって人が奥方の御方じゃないの?』
ずずっと飲み込もうとした茶を、小平太は吹き出してしまい、粗相を見せてしまう。
紫色の袴が茶によって濡れてしまうも、今はそれを気にするよりか、○○の発言に意識が向けられていく。
「ちょ、ちょっと待て! 中在家さんって、長次の事か! 何故、私の奥方となる御方が、長次になる!」
『えっ、違うの?』
「当たり前だ!」
長次は、男子だぞ。
その言葉を聞いて、○○はこれまで、中在家長次という人間が女性であると思い込み、勘違いを起こしていたとようやく気がついたものの、それで納得して、心に澄み渡った空が出来上がる訳でもなかった。
『……で、でも』
「でも、とは何だ」
同室を女性と勘違いを起こしていた○○に、小平太は、じりっと距離を縮めて、この場から逃がしはしないという意思を静かに感じさせる。
『な、中在家さんが…女性って誤解してたのは失礼なのは分かっているけど……、中在家さんと仲良しなら、わたしって別に、小平太の前に顔を見せなくても良いんじゃないのかなって』
最初は、宙を彷徨っていた○○の視線は、次第に小平太を捉えて離さなくなり、自らの思いを述べていく。
『さっきも、私が居るって励ましてくれたけど…、小平太はさ、御家族から愛されて…きっと、学園でも他の人達から好かれて、勉学にも励んでて、非の打ち所が無いから……わたしよりも、もっと相応しい人の方が、さっきの小平太の言葉、嬉しいと思うよ』
そこまで言い切って、○○はようやく、自分の思いを小平太に告げられたと一人で達成感を得た。
彼の事を好きだと無意識に思っていたものの、自分よりも小平太に相応しい相手が居るならば、その人が隣に立つべきだと。自らの思いをこれからも封に収めようと。
物思いに耽けていると、平時の溌剌とした笑みが消え去った小平太が、○○の前に晒された。
「お前は、私の言葉を嬉しく思わないのか」
『えっ?』
次の瞬間、○○の体がふわっと宙に浮いたかと思えば、小平太の両腕の中に閉じ込められている。
『こ、こへ――』
「舌、噛むぞ」
地面を蹴り、小平太は○○の実家を飛び出ると、木々の枝を伝い、俊敏な動きを披露すれば、○○は突然の事に状況が飲み込めず、小平太の腕から落とされないよう、必死になるしかない。
しばらくすると、小平太の足が止まり、目を瞑っていた○○も、ゆっくりと目を開けていく。
『こ、これ……!』
「綺麗だろう?」
小平太に振り回された困惑、疲労などが全て吹っ飛んでしまう程に、○○は目の前の光景に魅了されて、それらの感情を含んだ言葉は、すっかりと飲み込まれた。
○○と小平太の目の前に広がるのは、秋の開花時期を迎え、○○と小平太の住む領地内の丘に、ひっそりと水面が揺れるため池のすぐ傍にて、咲き誇る竜胆の小さな花畑。
広大な土地とは言い難い場所であるが、その花々全てが開花しており、青色と紫色の竜胆が堂々たる姿で咲き誇っており、土地の広さなど、ものともしていない。
「つい最近、この時期になると、竜胆の花が咲くと知ってな。○○と一緒に見に行きたいと思っていたのに……文は寄越さない、家にも立ち寄らない……まるで、私を避けているかのような立ち振る舞いが、どうも気に食わなくて」
にっと弾けた笑みを見せたものの、○○のこれまでの行動を振り返った途端、唇を尖らせて、不貞腐れている様を隠さない。冷静さを持つ小平太が、感情を一番に見せた瞬間だ。
それよりも、○○は先程から、自分にこの花畑を見せたかったと、まるで他の女子など眼中になく、自分の名ばかり出す小平太に、封じ込めていた筈の淡い期待を抱いてしまう。
「もう少し近くで、見たいだろう?」
腕の中に包み込んでいた○○を、小平太は地上へと下ろしていく。
地に足がついた○○は、足の感覚を取り戻してから、ゆっくりと竜胆の花畑に近づいて、観賞に浸る。
『綺麗……っ』
口から零れ落ちた感嘆の言葉と共に、○○の横顔をじっと見つめる小平太は、口角が上がった。
「なははっ。○○に喜んで貰えて、私は幸せだ」
竜胆の花畑に広がる、小さくて囁かな平和な光景。
自身が通う忍術学園において、忍術について学び、時には忍務に勤しむ小平太だが、そんな世界とは無縁で、竜胆の花を眺めては、煌々とした輝きを放ち、花本来の美しさに感動を覚える○○が喜ぶ姿を見れて、満足げ。
『……あの、御免なさい』
「ん?」
『小平太の御友達の方を誤解していた事とか……文、送らなかったり、家にも寄らなくなって……』
「んっ。もう気にするな」
ぱっと明るい声が響けば、小平太は先程のような無表情ではなくなり、笑みを浮かべていた。
それは、○○の知っている小平太の姿。
「さっきも話したけどな。○○がどんなに自分を卑下しようが、私が○○の良い所を伝えてやろう……後は、嫁の貰い手が無いと、悩んでいたな?」
『へっ?』
目を細めて、にいっと笑みを見せる小平太を前にして、○○の心臓が先程よりも鼓動が早くなり、大人の顔を見せる彼に、動揺を隠せない。
秋風に揺られて、一輪の竜胆の花が揺れた際に、花弁が散り、○○と小平太の間を通り過ぎていく。
「私、好いてもいない女子の為に、文を送ったり、こうして花畑に送ってやる程、優しい男では、ないんだけどなぁ」
―――――――――――――――
◆名無し ○○
七松家のある領地内に住む子女。
自分を卑下したり、無い物ねだりをして羨んだりと人間らしい一面があるものの、中在家を女性と勘違いを起こす。
しかし、その勘違いをきっかけに、花嫁修業に取り組んで、以前より家事が得意になったらしい。
小平太の事は、無意識に好意を抱いていた。
◆七松 小平太
お馴染み、いけいけどんどんの体力お化け。
○○とは、忍術学園入学前に知り合う。
○○から文が送られなくなり、自宅にも顔を見せなくなったと聞かされ、秋休みの帰省時に○○の自宅を突撃(それでも、強引な手段は行わない)。
竜胆の花畑を見せ、自らも○○に好意を抱いていると、それとなく告白してみせた。
◆中在家 長次
名前のみの登場。
文を送られて間もない頃、男性であると教えられた筈が、女性と勘違いされてしまう。
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七松小平太は、非の打ち所のない人間だから、わたしじゃない相応しい人が隣に立っているべきだと思う話
七松 小平太×女夢主(同年齢)
◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
夢主の簡単な設定
・小平太の実家のある領地内に、両親と同居中。
・人並みに、感情を持ち合わせている。また、自分に持ち合わせていないものを、他者が持っていたら羨む等、人間らしい一面もある。
・
劣等感の溜息
(あぁ、まただ)
木々にとまる蝉の鳴き声は、以前よりも数が減っている。
それでも、七年七時を遂げようと、必死になって鳴いている生き様を、きゃあきゃあと声をあげる子供達は、知りもしない。
そんな広大な土地に建設された武家屋敷の縁側にて――、蒸し暑い空気の中、額から垂れる汗を拭い、名無し ○○は、"七松 小平太"と文末に記された文を最後まで目を通しては、溜息をついた。
「○○ちゃん。どうしたの?」
そんな姿を、この家の長男である小平太の弟妹達が、ぞろぞろと揃いも揃って、○○の顔色を伺う。
炎天下の中で駆け巡っていた彼等は、兄譲りの疲れ知らずなのか、まだ息を切れている様子を見せていない。
『ううん。何でもないの』
「お外で遊んだら、楽しくなるよ!」
上の双子の兄弟が、○○に向けて手を差し伸べる姿は宛ら、姫君を迎えに来た殿方のよう。
○○は拒む事もなく、草履を吐いてから、その手を受け取り、縁側の外へと駆け出していく。
(小平太ってば……、また中在家さんって人の事を書いたのね)
忍者になるべくして、忍術学園に通っている等、○○は知らない。
秘匿性のある職業故、公に公表出来ないのは勿論、学園に在籍する生徒(通称、忍たま)の知り合いとして、命を狙われる可能性もなくはないからだ。
○○宛に送られた文には、学園での生活だけでな、彼と同室であるという中在家長次という人間について綴られており、○○にとっては、口説いと言いたくなるものであった。
(文でしか知り得ていないけど……、中在家さんは、努力家で、強さと優しさを持ち合わせて……更には、甘味物を作るのが得意と……)
自分が持ち合わせていないものを、全て持ち合わせている手に届かない御方。
○○は、中在家長次をそのように認識しては、劣等感を抱く。
(……もしかして、中在家さんって男性じゃなくて、本当は女性なんじゃ?)
ふと、そのような飛躍した思考に行き着くものの、それに異議ありと突っ込みを入れる者は、この場において存在しない。
(わたしよりも家庭的な一面があって、優れている女子は居るって……わたしが、この家に顔を見せなくても、いいって……っ)
いつからか、○○が七松家に入り浸るようになっても、小平太と弟妹達の両親は嫌な顔を一つ見せず、快く迎え入れてくれた。
それに反して、○○の両親は、小平太くんの家に入り浸るのなら、花嫁修業の一つでもしたらどうだと小言を零しては、○○の顔を歪ませる。
(もし、そうなら……わたし、居る意味あるのかな?)
弟妹達に導かれ、敷地内を駆け巡る○○の双眸は、この武家屋敷を四方に囲む塀を捉えた。
まるで、この七松家に閉じ込めているようにも思えてくると、○○は途端に、ぽっかりと胸の真ん中に穴を開けられていく。
(それに、小平太はこの家の長男で、弟ちゃんや妹ちゃん達、親戚の子供達や御両親にも愛されて、学問にも励んで……今思えば、非の打ち所が無いなぁ)
隣に居た筈の小平太が、非の打ち所のない完璧人間であると再認識してしまえば、いつの間にか遠くの彼方へと離れ、手を手を取り合う事すら叶わない。
(そうだよね。非の打ち所のない人に相応しい女子の御方が、隣に居た方が良いよね。小平太も十五だから、許嫁の一人や二人、居てもおかしくなかったんだから)
言い分に納得いかない子供が、無理やり自分に言い聞かせている姿を彷彿とさせ、どこか痛々しいものの、それを咎めたり、慰める者は、またしても存在しない。
(あぁ。わたしって、小平太のことが好きだったんだなぁ)
胸が、ちくりと痛めば、押し入れにしまわれた裁縫道具の針が、現実を見ろと自分を痛めつけたのかと、○○は自虐した。
痛みの正体が、小平太を想う度に増幅し、無意識に好意を抱いていたのだと気がついたが、○○にとっては、もう遅いのだと。もう意味がないのだと、封を閉じて、好意と名付けられた物はしまいこまれていく。
独り善がりの努力
四季が夏から秋へと移ろえば、蝉はすっかりと生を終えて、夜に鈴虫の合唱が響き渡る清涼が吹き出していた。
(ふぅ、出来たっ)
七松家と比較すれば、こじんまりとした長屋の炊事場にて、前掛け姿の○○が立っており、夕餉の準備を終えた所。
秋になったものの、火を取り扱っていたのもあり、○○の額からは汗が垂れる。
自分と両親の分であり、支度が出来たと告げれば、○○の母が料理を皿に乗せ、それらが小さな膳の上へと置かれると、居間へ運ばれていく。
(今日は、お焦げが少なくて済んだわ。前よりも成長した気がして、何だか嬉しい)
炊きたての白米から、ほんわりと湯気が立てば、天井へと上がっていく。
この高揚感を表現したく、鼻歌を歌いたくなってしまう○○だが、父が居る手前、その衝動を何とか抑え込む。
(苦手な事も挑戦して、成功した時って楽しいものね)
あの日以来、○○は七松家に足を運ぶだけでなく、小平太に文を送らず、自ら筆を下ろした。
その代わりに、これまで避けてきた家事に取り組むと両親の前で宣言し、現在に至るまで、継続していたのである。
(物理的にも、精神的にも距離を離せば、何か変わるとは思っていたけど……まぁ、一気に変わる事も無いか)
○○が七松家に足を運ばなくても、七松家の人間が実家に、わざわざ足を運んで迎えに来ない。
○○が文を送らなくても、小平太から息災であるか等の気遣いが綴られた文は届きもしない。
とどのつまり、○○が居なくても、七松家では時間の針は止まらず、動き続けるのだと結論づけられた。
「使いを頼みたいんだけど、良いかしら」
朝餉の片付けを共に行っている母から、市中にてお使いを頼まれた○○は、断る事もなく、承諾の返事を告げる。
「最近、頑張っているから」
ふふっと穏やかな笑みを浮かべた母が、そのような発言をすると、○○は訳が分からず、きょとんとした顔を見せた。
どうやら、日頃の頑張りを褒め称える対価として、市中の小間物屋で櫛や簪などで欲しい物があれば、購入してもいいと許可が下りた。
そのような動機で始めた訳ではないと思いつつ、○○は母からの厚意を受け止めれば、有難うと言葉を口にする。
◇
秋の実りの象徴である里芋、茶色の表面が、艶やかな栗、乾燥し終えて、見た目からは想像もつかない甘さを隠し持つ干し柿を買い終え、○○は小間物屋へと足を運ぶ。
『わぁ、可愛い』
棚に陳列された櫛や簪は、秋の到来と同時に新商品が入荷されたそうで、秋の花々が掘られたものをはじめ、どれも○○の購入意欲を掻き立たせる。
(……もう、小平太達の分もわざわざ買わなくて良いんだよね)
足を運ぶのを自ら止め、顔を見る機会の減った子供達や小平太が浮かぶも、すぐに消え去った。
こうして疎遠になっていくんだなと、どこか他人事のように捉えれば、竜胆の花が掘られた櫛を手に取れば、店主に声を掛けていく。
思いを分かち合う竜胆の花
市場にて、収穫したての稲穂を纏めた米俵が入荷され、米欲しさに町人達が店の前に集えば、群衆が出来上がる。
そんな中、物陰に隠れるようにして、貧相な小袖を着用せざるを得ず、穴の空いた木材を屋根代わりに、風を凌ぐ母と娘の姿も見られた。
(…、……)
光と闇を交互に視点を切り替えて見つめていた一人の青年は、足を止める事もせず、ある場所へと目指して、前へ前へと足を進ませていく。
『……ふふっ』
長屋の一人部屋にて、先日購入したばかりの竜胆の花が掘られた櫛は、今や○○のお気に入りの品の一つへと地位が伸し上がっていた。
髪の毛に櫛を通していけば、途中で絡まる事もなく、すぅっと綺麗に通り抜ければ、髪の質をより高貴なものへと変貌させて。
「○○」
そんな時、長屋の引き戸が開かれると、○○の母が顔を見せた。
鏡の前で、ふにゃっと笑みが零れていた娘に、目を丸くさせたものの、特に気にするも様子もない。
「小平太くんよ。秋休みで、御実家へ帰る途中みたい」
久方ぶりに聞いた名を前に、○○は、どくんっと胸が鼓動を打ち、反応を示した。
『……うん。分かった』
あくまで、笑みを取り繕った○○だが、内心は穏やかではない。
母は表面上の笑みだけを受け取れば、部屋を後にする。
来客の小平太を自分が対応しなくてはと、○○はその場から立ち上がり、重くなりかけている足を前へと動かして、玄関へと向かう。
「久しいな、○○」
濁った声色ながらも、元服済みの成人男性であるのには変わらない。
萌黄色の上衣に、紫色の袴を着用したその姿は、学園外での"彼"の姿。
『そうだね、小平太』
"彼"の名を呼べば、整えられていない紺色の長髪が、まるで意志を宿ったかのように、ぶわんっと大きく跳ねて、小平太は満面の笑みを浮かべて見せた。
「時間、あるか?」
簡潔ながらも、どこか言葉足らずな物言い。
どうやら、実家に寄る前に○○と両親の住む家を訪ね、○○と話をしたいとの事。
『御実家、まだ寄ってないんでしょ? 先に、御両親や弟くん、妹ちゃん、親戚の子達に顔を見せて来なよ』
「○○の家から、私の家までそう時間は掛からないだろう。少し遅くなったとしても、気にしない」
○○の提案を、すぱっと斬っては、自らの意思を突き通す。
この状態となった小平太は、非常事態にでも陥らない限り、自らの意思を決して曲げはしないと理解している○○は、自ら折れる事を選択した。
『立ち話もなんだから、縁側で話そ?』
そう言えば、小平太からの同意を得られ、来客用の盆と湯呑みを取りに行くと、○○は玄関から席を外す。
慣れた動作で、湯呑みに茶を注いでいけば、二人分の湯呑みを盆に乗せた姿を小平太の前に晒していく。
それを見た小平太が、ほんの少しだけ目を丸くさせたものの、縁側へと案内されれば、その場に腰掛ける。
「どうして、文を送らなくなった」
○○の実家に着いて、茶を飲んで落ち着く間もなく、小平太の口から放たれたのは、○○には身に覚えのある出来事。
「家にも足を運ばなくなったと、聞いている」
文だけでなく、七松家に足を運ばなくなった事も続けて話せば、○○は観念したかのように、眉を下げて、困ったように笑みを作る。
『花嫁修業に、集中したくなったから』
「花嫁修業……?」
ぴくりと、その言葉に反応を示した小平太の凛々しい眉の片方が動く。
『十五にもなって何も出来ないままじゃ、嫁の貰い手が、更に遅くなるから』
それは、この時代においては至極当然な台詞。
○○より年上の女性ならば、行き遅れと指をさされ、中には嘲笑される者や、蔑まれたりと、未婚である自身の存在を否定されかねないのだ。
『何も無い自分を嫁に貰ってくれる人は居ないから。少しでも努力しないと、誰も見てくれないから』
十五になって、ようやく花嫁修業とは何事かと驚いたり、笑われたりしてもおかしくはなかったと。
しかし、両親は○○の心変わりに感動し、彼女の努力している姿を影から見守り、必要以上の声掛けはしなかった。
○○の脳裏に以前、小平太から送られた文に綴られた中在家長次の人間性が過ぎると、小平太の口が開く。
「私が、居るだろう」
あっけらかんと言い放った言葉に、○○は言葉を失う。
正確には、自分の言葉の返答として、意味のわからない言葉を述べられ、理解に苦しんでいたのだ。
『……いや、小平太には、もう居るでしょ?』
ようやく発した言葉に、小平太もまた、首を傾げて顔を顰めている。
「何が居る?」
『奥方さん』
「はっ?」
双方ともに、すれ違いを起こしている。
そんな事など露知らず、自分の思いが相手に通じていないと、○○と小平太は、どうしたもんかと首を傾げては、顎に手を当てて、困惑している様子を隠さない。
「少し待て。私達……、何が勘違いを起こしていないか?」
一番に気づきを見せたのは、小平太。
平時において、溌剌とした面と人並外れた体力と怪力に目が行きやすい彼だが、感情は二の次に、冷静さを一番という一面も併せ持っており、この場においても、それが発揮された。
『勘違い?』
「あぁ」
『……だって小平太、中在家さんって人が奥方の御方じゃないの?』
ずずっと飲み込もうとした茶を、小平太は吹き出してしまい、粗相を見せてしまう。
紫色の袴が茶によって濡れてしまうも、今はそれを気にするよりか、○○の発言に意識が向けられていく。
「ちょ、ちょっと待て! 中在家さんって、長次の事か! 何故、私の奥方となる御方が、長次になる!」
『えっ、違うの?』
「当たり前だ!」
長次は、男子だぞ。
その言葉を聞いて、○○はこれまで、中在家長次という人間が女性であると思い込み、勘違いを起こしていたとようやく気がついたものの、それで納得して、心に澄み渡った空が出来上がる訳でもなかった。
『……で、でも』
「でも、とは何だ」
同室を女性と勘違いを起こしていた○○に、小平太は、じりっと距離を縮めて、この場から逃がしはしないという意思を静かに感じさせる。
『な、中在家さんが…女性って誤解してたのは失礼なのは分かっているけど……、中在家さんと仲良しなら、わたしって別に、小平太の前に顔を見せなくても良いんじゃないのかなって』
最初は、宙を彷徨っていた○○の視線は、次第に小平太を捉えて離さなくなり、自らの思いを述べていく。
『さっきも、私が居るって励ましてくれたけど…、小平太はさ、御家族から愛されて…きっと、学園でも他の人達から好かれて、勉学にも励んでて、非の打ち所が無いから……わたしよりも、もっと相応しい人の方が、さっきの小平太の言葉、嬉しいと思うよ』
そこまで言い切って、○○はようやく、自分の思いを小平太に告げられたと一人で達成感を得た。
彼の事を好きだと無意識に思っていたものの、自分よりも小平太に相応しい相手が居るならば、その人が隣に立つべきだと。自らの思いをこれからも封に収めようと。
物思いに耽けていると、平時の溌剌とした笑みが消え去った小平太が、○○の前に晒された。
「お前は、私の言葉を嬉しく思わないのか」
『えっ?』
次の瞬間、○○の体がふわっと宙に浮いたかと思えば、小平太の両腕の中に閉じ込められている。
『こ、こへ――』
「舌、噛むぞ」
地面を蹴り、小平太は○○の実家を飛び出ると、木々の枝を伝い、俊敏な動きを披露すれば、○○は突然の事に状況が飲み込めず、小平太の腕から落とされないよう、必死になるしかない。
しばらくすると、小平太の足が止まり、目を瞑っていた○○も、ゆっくりと目を開けていく。
『こ、これ……!』
「綺麗だろう?」
小平太に振り回された困惑、疲労などが全て吹っ飛んでしまう程に、○○は目の前の光景に魅了されて、それらの感情を含んだ言葉は、すっかりと飲み込まれた。
○○と小平太の目の前に広がるのは、秋の開花時期を迎え、○○と小平太の住む領地内の丘に、ひっそりと水面が揺れるため池のすぐ傍にて、咲き誇る竜胆の小さな花畑。
広大な土地とは言い難い場所であるが、その花々全てが開花しており、青色と紫色の竜胆が堂々たる姿で咲き誇っており、土地の広さなど、ものともしていない。
「つい最近、この時期になると、竜胆の花が咲くと知ってな。○○と一緒に見に行きたいと思っていたのに……文は寄越さない、家にも立ち寄らない……まるで、私を避けているかのような立ち振る舞いが、どうも気に食わなくて」
にっと弾けた笑みを見せたものの、○○のこれまでの行動を振り返った途端、唇を尖らせて、不貞腐れている様を隠さない。冷静さを持つ小平太が、感情を一番に見せた瞬間だ。
それよりも、○○は先程から、自分にこの花畑を見せたかったと、まるで他の女子など眼中になく、自分の名ばかり出す小平太に、封じ込めていた筈の淡い期待を抱いてしまう。
「もう少し近くで、見たいだろう?」
腕の中に包み込んでいた○○を、小平太は地上へと下ろしていく。
地に足がついた○○は、足の感覚を取り戻してから、ゆっくりと竜胆の花畑に近づいて、観賞に浸る。
『綺麗……っ』
口から零れ落ちた感嘆の言葉と共に、○○の横顔をじっと見つめる小平太は、口角が上がった。
「なははっ。○○に喜んで貰えて、私は幸せだ」
竜胆の花畑に広がる、小さくて囁かな平和な光景。
自身が通う忍術学園において、忍術について学び、時には忍務に勤しむ小平太だが、そんな世界とは無縁で、竜胆の花を眺めては、煌々とした輝きを放ち、花本来の美しさに感動を覚える○○が喜ぶ姿を見れて、満足げ。
『……あの、御免なさい』
「ん?」
『小平太の御友達の方を誤解していた事とか……文、送らなかったり、家にも寄らなくなって……』
「んっ。もう気にするな」
ぱっと明るい声が響けば、小平太は先程のような無表情ではなくなり、笑みを浮かべていた。
それは、○○の知っている小平太の姿。
「さっきも話したけどな。○○がどんなに自分を卑下しようが、私が○○の良い所を伝えてやろう……後は、嫁の貰い手が無いと、悩んでいたな?」
『へっ?』
目を細めて、にいっと笑みを見せる小平太を前にして、○○の心臓が先程よりも鼓動が早くなり、大人の顔を見せる彼に、動揺を隠せない。
秋風に揺られて、一輪の竜胆の花が揺れた際に、花弁が散り、○○と小平太の間を通り過ぎていく。
「私、好いてもいない女子の為に、文を送ったり、こうして花畑に送ってやる程、優しい男では、ないんだけどなぁ」
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◆名無し ○○
七松家のある領地内に住む子女。
自分を卑下したり、無い物ねだりをして羨んだりと人間らしい一面があるものの、中在家を女性と勘違いを起こす。
しかし、その勘違いをきっかけに、花嫁修業に取り組んで、以前より家事が得意になったらしい。
小平太の事は、無意識に好意を抱いていた。
◆七松 小平太
お馴染み、いけいけどんどんの体力お化け。
○○とは、忍術学園入学前に知り合う。
○○から文が送られなくなり、自宅にも顔を見せなくなったと聞かされ、秋休みの帰省時に○○の自宅を突撃(それでも、強引な手段は行わない)。
竜胆の花畑を見せ、自らも○○に好意を抱いていると、それとなく告白してみせた。
◆中在家 長次
名前のみの登場。
文を送られて間もない頃、男性であると教えられた筈が、女性と勘違いされてしまう。
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