短編
夢小説設定
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◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆タソガレドキ・黒鷲隊内部、タソガレ三忍の口調(参考元:原作漫画)の捏造あり。
夢主の簡単な設定
・忍術学園の六年生と同い年(十五歳)。
・将来は、黒鷲隊へ入隊予定。
・良くも悪くも排他的な性格。懐いた者には、心を開く。それ以外の人間には、普通に接しているものの、肩書き等で相手の名を呼ぶ。
・一般常識が欠けている節があり、浮世絵離れしている。
・寝る・甘味物(最近は南蛮菓子)を食べる事が好き。
・
雑渡の個人的な思惑により訪れた文化祭を機に、○○は忍術学園の生徒達との関わりが増え始めていた。
厳密に言えば、タソガレドキの思惑と忍術学園の都合が偶然に交錯し、思わぬ共闘に発展した末、最後の美味しい所を持っていく等と、そんな漁夫の利を得る展開も少なくない。
それでも、一年は組のいい子達とはじめとした、一癖も二癖もあり、個性豊かな忍術学園の生徒達との触れ合いは、○○にとって良くも悪くも刺激となっているのは事実。
組頭の雑渡昆奈門や山本陣内、諸泉尊奈門が個人的な理由で、忍術学園に足を運ぶ機会があれば、○○もまた、文化祭で知り合った善法寺伊作を中心に、保健委員会の面々が集う医務室へ向かうのだが、律儀に正門前で事務員の小松田秀作の相手をする。
「確かに入門票のサイン、頂きましたぁ」
雑渡、山本をはじめ、高坂や押都のように完全に気配を消し、サイドワインダーの異名を持つ小松田の監視の目を潜る実力を持ち合わせていないと自覚している○○は、こうして正門にて顔を出し、入門票に自らの名前を記すと本来の形で忍術学園に足を踏み入れる。
それはつまり、いずれ最強と名高い忍軍に所属する忍者としては未熟と自ら烙印を押しているものだが、だからこそ、己の未熟さを身に染みさせるのだ。
『むっ…』
風の揺らぎと共に、鋭い気配が漂う。○○は即座に、木々の影へと身を沈めて、息を潜める。葉擦れの音に紛れるように、六年い組の潮江文次郎、六年ろ組の七松小平太、六年は組の食満留三郎と、学園でも屈指の武闘派三名が勢揃い。
(あれは、会計委員長さん、体育委員長さん、善法寺くんの同室さん……、大方、おれの気配を察知して、勝負を申し込もうとここへ来たのかな)
姓名では呼ばず、それぞれが所属する委員会の肩書きや伊作の同室の肩書きで括られた渾名で、彼等の名を呼ぶ。気配の主が誰であるか把握していないものの、犬猿の仲である文次郎と留三郎の喧嘩が勃発。その隙を見た小平太が一人、曲者の捜索に出ると高らかに宣言すれば、文次郎と留三郎もまた、小平太の背中を追いかけて、走り出す。
(まぁ…、いずれ黒鷲隊に所属する忍者なら、この学園の最上級生に捕まるなんて失態、押都小頭に小突かれるだろうなぁ)
小松田秀作という特異点を除き、忍術学園に在籍する忍たまに気配を悟られ、背後を取られるなんて失態を見せたりはしない。
仮に見せてしまえば、兄のように慕う三人に何事かと言われ、小頭の押都に無言の圧で責められ、小突かれてしまうだろうと呑気に思う○○にとって、先程の六年生三名は、同い年とはいえ、赤子を相手にするとも同然。
(早く、善法寺くん達の所に行こう)
一度も気配を察知される事なく、○○は医務室へ到着すれば、身軽に跳躍し、屋根の上に掛けられた簡素な板を音もなく外す。開口部から忍び込み、天井裏に潜り、狭い梁の上を這い進んでいく。鼻腔に漂う古木と薬草の混じった乾いた匂いが近づけば、○○は真上から、部屋の様子を伺う。そこには、保健委員達が薬草や包帯の整理をして、忙しなく動いていた。
『善法寺くん』
天井の隙間から声を落とすと、伊作は驚くどころか、顔を上げて、柔らかに微笑む。
「やぁ、○○。遊びに来たのかい?」
『保健委員会さんの顔を見に来ようと思って』
簡素な板を外し、一切の淀みなく身を翻し、医務室へと舞い降りた。軋む音ひとつ立てないその着地は、熟練の忍びの技。一年ろ組の鶴見伏木蔵と一年は組の猪名寺乱太郎は、感嘆の声を上げ、ぱちぱちと音を立て、拍手を送る。
『会計委員長さんと、体育委員長さんと、善法寺くんの同室さんに伝えて貰えないかな。今日入った曲者は、戦闘特化の忍びじゃない。きみ達の相手をするより、姿を消す方に特化しているから、捕まえるなんて真似は無理だって』
ここまでの道すがら、遠目ながらも発見した文次郎、小平太、留三郎をどうにかして欲しいと、淡々とした声色でその話題を出すな否や、乱太郎は苦笑を浮かべ、口を開く。
「○○さん……それは却って、六年生の先輩方を怒らせてしまうんじゃないでしょうか?」
『そうなの?』
あまりにも無垢だと言わざるを得ない問いの返しに、乱太郎は苦笑を浮かばざるを得ない。
「潮江先輩は、忍術学園一、ギンギンに忍者をしていらっしゃる。七松先輩は、有り余る体力だけでなく、いけいけどんどんでいらっしゃる。そして食満先輩は、勝負だー!と言って、誰彼構わず勝負を持ち込むのですから」
○○が、きょとんとした顔を作れば、二年い組の川西左近が解説を交えて、最上級生に位置する六年生の恐ろしさを本人なりに伝える。三年は組の三反田数馬が存在感を示そうとするも、それに気づくのはいつか。
『へぇ…、ギンギンに、いけいけどんどんに、勝負かぁ』
話を最後まで聞き終え、三人の特徴を一つひとつ言葉にし、反芻する。まるで脳裏に刻みつけるかのように繰り返して、その響きを確かめて。忍びとして情報を一字一句漏らさず持ち帰るーーー、プロ忍者の手法の一つだ。
「"色をかえる術"…、だね」
伊作の声色が、僅かながらに震えたのを、三年生の数馬だけは聞き逃さなかった。悲鳴を出さなかった自分を褒めて欲しいと、乱太郎や伏木蔵、左近の疑問に満ちた顔に今は救われると。医務室に一瞬、冷ややかな緊張が走った。薬草の香りさえも鋭くなる程の張り詰めた空気。
「いくらタソガレドキの忍者とはいえ、実戦形式の授業を披露しなくてもいいのに」
しかし伊作は、下級生達に悪影響を与えかねないと、意図的に柔らかな笑みを浮かべ、この場の雰囲気を和らげる。
「わぁ〜…、スリリング〜…」
そんな中、伏木蔵はスリリングな感触を本能的に感じ取ってしまえば、お決まりの口癖を恍惚とした表情を浮かべ、発する。
『こういうのをしないと、腕が鈍るから』
「誰かに言われるんですか?」
『おれより、偉い人達に』
誰とまでは名言しないものの、○○より偉い人となれば、雑渡や尊奈門だろうと乱太郎達は思う。しかし実際は、黒鷲隊の押都・五条・椎良・反屋が主な面々だ。
「こなもんさんって、厳しい御方なんだね」
『雑渡昆奈門さんと呼びなよ』
乱太郎の問いに答えてから、名前を呼び間違える伏木蔵を見てから、○○が窘める。声音は柔らかいが、律儀さが滲み出ていた。
「そうだ! もしよろしければ私達、保健委員会と一緒に、ピクニックへ出掛けませんか?」
脈絡もなく、乱太郎が声を弾ませ、ピクニックをしようと提案を投げかける。それには、保健委員会の面々と○○は揃って、首を傾げる。
『ピクニック…?』
生まれてこの方、そんな響きを体験と結びつけたことのない○○の表情は、無垢さと戸惑いに満ちていた。それはまさに、一般常識の欠けており、浮世絵離れした存在そのもの。
「私達に、実戦形式で忍術の勉強をして下さっていましたが、それじゃあ○○さんの体の疲れが簡単には取れないかと思いまして……」
「つまり、どういう事だ?」
「裏山の長閑な空気を味わって、食堂のおばちゃんの美味しいお弁当を食べながら、疲れを取って癒されようという訳です!」
野営も自給自足も当たり前な、タソガレドキの隠れ里育ちの○○には、命を懸けない登山など、想像の埒外にある。のほほんと景色を楽しみながら、食事をするその発想自体が、逆に世間離れしていると感じてしまう。
「食堂のおばちゃんのお弁当、美味しいからな〜」
『美味しい…?』
数馬の何気ない発言にも、きょとんとした顔を見せる。その人の存在は知っているが、料理を口にした事は無い、だからこそ、美味しいという響きに、子供のような驚きが宿る。
「そうだよ。食堂のおばちゃんのご飯は、どれも絶品さ」
『へぇ…、……保健委員会さんは、食堂のおばちゃんさんのお弁当が好きなの?』
○○の問いに、皆が一斉に「勿論!」と元気よく返事をした。その明るさは、医務室に漂っていた緊張をすっかり追いやり、温かさを取り戻していった。
(……、……もし、おれがタソガレドキ出身でなくて、この学園に身を置いていたら……保健委員会さんみたいな明るさを、おれも持っていたのかな)
脳裏には、同い年の六年生の面々に混じり、新緑の忍装束を着こなす○○。会話の輪に入り、何気ない会話に笑顔を見せ、盛り上がっては涙を流してしまう程、爆笑してしまう。時には、忍務を請け負い、生死を分ける世界に身を置く自分を想像した所で、タソガレドキの隠れ里にて、自分を待つ者の姿が過った。
(ーーーおれには、待っている人達が居る)
血の繋がりの無いとはいえ、幼少期の頃からの付き合いで、兄のように慕う五条弾、椎良勘介、反屋壮太。
蘇利古の雑面に覆われ、素顔を晒されてはいないものの、○○に対して擬似的な父親の感情を抱く押都長烈。
所属する予定の隊は違えど、厳しくもあり、○○の体調面等を陰ながらも、気にかけてくれる山本陣内、高坂陣内左衛門。
「さん」付けで、自らの名前を呼んでくれるのは嬉しいものの、一年は組の教科担当教員の土井半助に対して、律儀に謝罪する様子に突っ込みを入れ、遊び相手となってくれる諸泉尊奈門。
所属する忍軍の組頭を務め、忍術学園に在籍する忍たま達と自分を巡り合わせた、他人を振り回すマイペースな一面と妙な義理堅さを見せる雑渡昆奈門。
そして、戦や飢饉等の耐えない絶望と、その中で掬い上げた希望を見出し、ここまで育ててくれた両親。
自分の大切な人々の姿が浮かび、泡となって消えていく。そして次に、保健委員会の面々が小さいながらも、○○の脳裏に現れる。
(……、……………)
ピクニックの提案をした乱太郎に顔を向け、口を開く。何を話したのかは、保健委員会の面々にしか分からない。ただ言えるのは、今度の休みの際に、毒も何も仕込まれていない手作りの弁当を保健委員会の面々に振る舞うのも、悪くないのではないかと。
『じゃあ、帰るね』
医務室の外から、保健委員会の面々以外の第三者の気配を察知した○○は、天井裏へと華麗に移動すれば、一瞬にして姿を消してしまった。はじめから、そこに存在していなかったかのように。
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◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆タソガレドキ・黒鷲隊内部、タソガレ三忍の口調(参考元:原作漫画)の捏造あり。
夢主の簡単な設定
・忍術学園の六年生と同い年(十五歳)。
・将来は、黒鷲隊へ入隊予定。
・良くも悪くも排他的な性格。懐いた者には、心を開く。それ以外の人間には、普通に接しているものの、肩書き等で相手の名を呼ぶ。
・一般常識が欠けている節があり、浮世絵離れしている。
・寝る・甘味物(最近は南蛮菓子)を食べる事が好き。
・
雑渡の個人的な思惑により訪れた文化祭を機に、○○は忍術学園の生徒達との関わりが増え始めていた。
厳密に言えば、タソガレドキの思惑と忍術学園の都合が偶然に交錯し、思わぬ共闘に発展した末、最後の美味しい所を持っていく等と、そんな漁夫の利を得る展開も少なくない。
それでも、一年は組のいい子達とはじめとした、一癖も二癖もあり、個性豊かな忍術学園の生徒達との触れ合いは、○○にとって良くも悪くも刺激となっているのは事実。
組頭の雑渡昆奈門や山本陣内、諸泉尊奈門が個人的な理由で、忍術学園に足を運ぶ機会があれば、○○もまた、文化祭で知り合った善法寺伊作を中心に、保健委員会の面々が集う医務室へ向かうのだが、律儀に正門前で事務員の小松田秀作の相手をする。
「確かに入門票のサイン、頂きましたぁ」
雑渡、山本をはじめ、高坂や押都のように完全に気配を消し、サイドワインダーの異名を持つ小松田の監視の目を潜る実力を持ち合わせていないと自覚している○○は、こうして正門にて顔を出し、入門票に自らの名前を記すと本来の形で忍術学園に足を踏み入れる。
それはつまり、いずれ最強と名高い忍軍に所属する忍者としては未熟と自ら烙印を押しているものだが、だからこそ、己の未熟さを身に染みさせるのだ。
『むっ…』
風の揺らぎと共に、鋭い気配が漂う。○○は即座に、木々の影へと身を沈めて、息を潜める。葉擦れの音に紛れるように、六年い組の潮江文次郎、六年ろ組の七松小平太、六年は組の食満留三郎と、学園でも屈指の武闘派三名が勢揃い。
(あれは、会計委員長さん、体育委員長さん、善法寺くんの同室さん……、大方、おれの気配を察知して、勝負を申し込もうとここへ来たのかな)
姓名では呼ばず、それぞれが所属する委員会の肩書きや伊作の同室の肩書きで括られた渾名で、彼等の名を呼ぶ。気配の主が誰であるか把握していないものの、犬猿の仲である文次郎と留三郎の喧嘩が勃発。その隙を見た小平太が一人、曲者の捜索に出ると高らかに宣言すれば、文次郎と留三郎もまた、小平太の背中を追いかけて、走り出す。
(まぁ…、いずれ黒鷲隊に所属する忍者なら、この学園の最上級生に捕まるなんて失態、押都小頭に小突かれるだろうなぁ)
小松田秀作という特異点を除き、忍術学園に在籍する忍たまに気配を悟られ、背後を取られるなんて失態を見せたりはしない。
仮に見せてしまえば、兄のように慕う三人に何事かと言われ、小頭の押都に無言の圧で責められ、小突かれてしまうだろうと呑気に思う○○にとって、先程の六年生三名は、同い年とはいえ、赤子を相手にするとも同然。
(早く、善法寺くん達の所に行こう)
一度も気配を察知される事なく、○○は医務室へ到着すれば、身軽に跳躍し、屋根の上に掛けられた簡素な板を音もなく外す。開口部から忍び込み、天井裏に潜り、狭い梁の上を這い進んでいく。鼻腔に漂う古木と薬草の混じった乾いた匂いが近づけば、○○は真上から、部屋の様子を伺う。そこには、保健委員達が薬草や包帯の整理をして、忙しなく動いていた。
『善法寺くん』
天井の隙間から声を落とすと、伊作は驚くどころか、顔を上げて、柔らかに微笑む。
「やぁ、○○。遊びに来たのかい?」
『保健委員会さんの顔を見に来ようと思って』
簡素な板を外し、一切の淀みなく身を翻し、医務室へと舞い降りた。軋む音ひとつ立てないその着地は、熟練の忍びの技。一年ろ組の鶴見伏木蔵と一年は組の猪名寺乱太郎は、感嘆の声を上げ、ぱちぱちと音を立て、拍手を送る。
『会計委員長さんと、体育委員長さんと、善法寺くんの同室さんに伝えて貰えないかな。今日入った曲者は、戦闘特化の忍びじゃない。きみ達の相手をするより、姿を消す方に特化しているから、捕まえるなんて真似は無理だって』
ここまでの道すがら、遠目ながらも発見した文次郎、小平太、留三郎をどうにかして欲しいと、淡々とした声色でその話題を出すな否や、乱太郎は苦笑を浮かべ、口を開く。
「○○さん……それは却って、六年生の先輩方を怒らせてしまうんじゃないでしょうか?」
『そうなの?』
あまりにも無垢だと言わざるを得ない問いの返しに、乱太郎は苦笑を浮かばざるを得ない。
「潮江先輩は、忍術学園一、ギンギンに忍者をしていらっしゃる。七松先輩は、有り余る体力だけでなく、いけいけどんどんでいらっしゃる。そして食満先輩は、勝負だー!と言って、誰彼構わず勝負を持ち込むのですから」
○○が、きょとんとした顔を作れば、二年い組の川西左近が解説を交えて、最上級生に位置する六年生の恐ろしさを本人なりに伝える。三年は組の三反田数馬が存在感を示そうとするも、それに気づくのはいつか。
『へぇ…、ギンギンに、いけいけどんどんに、勝負かぁ』
話を最後まで聞き終え、三人の特徴を一つひとつ言葉にし、反芻する。まるで脳裏に刻みつけるかのように繰り返して、その響きを確かめて。忍びとして情報を一字一句漏らさず持ち帰るーーー、プロ忍者の手法の一つだ。
「"色をかえる術"…、だね」
伊作の声色が、僅かながらに震えたのを、三年生の数馬だけは聞き逃さなかった。悲鳴を出さなかった自分を褒めて欲しいと、乱太郎や伏木蔵、左近の疑問に満ちた顔に今は救われると。医務室に一瞬、冷ややかな緊張が走った。薬草の香りさえも鋭くなる程の張り詰めた空気。
「いくらタソガレドキの忍者とはいえ、実戦形式の授業を披露しなくてもいいのに」
しかし伊作は、下級生達に悪影響を与えかねないと、意図的に柔らかな笑みを浮かべ、この場の雰囲気を和らげる。
「わぁ〜…、スリリング〜…」
そんな中、伏木蔵はスリリングな感触を本能的に感じ取ってしまえば、お決まりの口癖を恍惚とした表情を浮かべ、発する。
『こういうのをしないと、腕が鈍るから』
「誰かに言われるんですか?」
『おれより、偉い人達に』
誰とまでは名言しないものの、○○より偉い人となれば、雑渡や尊奈門だろうと乱太郎達は思う。しかし実際は、黒鷲隊の押都・五条・椎良・反屋が主な面々だ。
「こなもんさんって、厳しい御方なんだね」
『雑渡昆奈門さんと呼びなよ』
乱太郎の問いに答えてから、名前を呼び間違える伏木蔵を見てから、○○が窘める。声音は柔らかいが、律儀さが滲み出ていた。
「そうだ! もしよろしければ私達、保健委員会と一緒に、ピクニックへ出掛けませんか?」
脈絡もなく、乱太郎が声を弾ませ、ピクニックをしようと提案を投げかける。それには、保健委員会の面々と○○は揃って、首を傾げる。
『ピクニック…?』
生まれてこの方、そんな響きを体験と結びつけたことのない○○の表情は、無垢さと戸惑いに満ちていた。それはまさに、一般常識の欠けており、浮世絵離れした存在そのもの。
「私達に、実戦形式で忍術の勉強をして下さっていましたが、それじゃあ○○さんの体の疲れが簡単には取れないかと思いまして……」
「つまり、どういう事だ?」
「裏山の長閑な空気を味わって、食堂のおばちゃんの美味しいお弁当を食べながら、疲れを取って癒されようという訳です!」
野営も自給自足も当たり前な、タソガレドキの隠れ里育ちの○○には、命を懸けない登山など、想像の埒外にある。のほほんと景色を楽しみながら、食事をするその発想自体が、逆に世間離れしていると感じてしまう。
「食堂のおばちゃんのお弁当、美味しいからな〜」
『美味しい…?』
数馬の何気ない発言にも、きょとんとした顔を見せる。その人の存在は知っているが、料理を口にした事は無い、だからこそ、美味しいという響きに、子供のような驚きが宿る。
「そうだよ。食堂のおばちゃんのご飯は、どれも絶品さ」
『へぇ…、……保健委員会さんは、食堂のおばちゃんさんのお弁当が好きなの?』
○○の問いに、皆が一斉に「勿論!」と元気よく返事をした。その明るさは、医務室に漂っていた緊張をすっかり追いやり、温かさを取り戻していった。
(……、……もし、おれがタソガレドキ出身でなくて、この学園に身を置いていたら……保健委員会さんみたいな明るさを、おれも持っていたのかな)
脳裏には、同い年の六年生の面々に混じり、新緑の忍装束を着こなす○○。会話の輪に入り、何気ない会話に笑顔を見せ、盛り上がっては涙を流してしまう程、爆笑してしまう。時には、忍務を請け負い、生死を分ける世界に身を置く自分を想像した所で、タソガレドキの隠れ里にて、自分を待つ者の姿が過った。
(ーーーおれには、待っている人達が居る)
血の繋がりの無いとはいえ、幼少期の頃からの付き合いで、兄のように慕う五条弾、椎良勘介、反屋壮太。
蘇利古の雑面に覆われ、素顔を晒されてはいないものの、○○に対して擬似的な父親の感情を抱く押都長烈。
所属する予定の隊は違えど、厳しくもあり、○○の体調面等を陰ながらも、気にかけてくれる山本陣内、高坂陣内左衛門。
「さん」付けで、自らの名前を呼んでくれるのは嬉しいものの、一年は組の教科担当教員の土井半助に対して、律儀に謝罪する様子に突っ込みを入れ、遊び相手となってくれる諸泉尊奈門。
所属する忍軍の組頭を務め、忍術学園に在籍する忍たま達と自分を巡り合わせた、他人を振り回すマイペースな一面と妙な義理堅さを見せる雑渡昆奈門。
そして、戦や飢饉等の耐えない絶望と、その中で掬い上げた希望を見出し、ここまで育ててくれた両親。
自分の大切な人々の姿が浮かび、泡となって消えていく。そして次に、保健委員会の面々が小さいながらも、○○の脳裏に現れる。
(……、……………)
ピクニックの提案をした乱太郎に顔を向け、口を開く。何を話したのかは、保健委員会の面々にしか分からない。ただ言えるのは、今度の休みの際に、毒も何も仕込まれていない手作りの弁当を保健委員会の面々に振る舞うのも、悪くないのではないかと。
『じゃあ、帰るね』
医務室の外から、保健委員会の面々以外の第三者の気配を察知した○○は、天井裏へと華麗に移動すれば、一瞬にして姿を消してしまった。はじめから、そこに存在していなかったかのように。
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