短編
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◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆タソガレドキ・黒鷲隊内部、タソガレ三忍の口調(参考元:原作漫画)の捏造あり。
夢主の簡単な設定
・忍術学園の六年生と同い年(十五歳)。
・将来は、黒鷲隊へ入隊予定。
・良くも悪くも排他的な性格。懐いた者には、心を開く。それ以外の人間には、普通に接しているものの、肩書き等で相手の名を呼ぶ。
・一般常識が欠けている節があり、浮世絵離れしている。
・寝る・甘味物(最近は南蛮菓子)を食べる事が好き。
・
兄のように慕っている五条弾、椎良勘介、反屋壮太と鍛錬に励む予定であった○○だが、組頭の雑渡昆奈門の鶴の一声により、その予定は崩れ去ったのは、数刻前の話。
今現在は、目の前で威厳の無さを示すから止めろ指摘されている横座りをした雑渡。それと対照的に、自身が所属予定の隊の小頭、押都長烈は端然と座している。背筋は竹のように真っ直ぐ、袖や膝の置き方一つにしても揺るぎない。立ち姿だけでなく、座す姿までもが威厳を纏い、○○は心中にてーーー、冗談の一つすら、この場で軽々しく吐けはしないと思う。
『忍術学園……』
その名を聞き、何の学び舎であるのかと惚け、目の前にて横座りをして、自身を見つめる雑渡相手に聞き返してしまう阿呆ではない。
(凄腕忍者と謳われた大川平次 渦正殿が学園長を務めていらっしゃるという、忍者の養成機関……)
これまで、忍術学園とタソガレドキの付き合いとなれば、園田村の件を皮切りに、中立的関係を築いた。つい先刻、忍術学園主催の混合ダブルスオリエンテーリングにて、戦を仕掛けると勘違いを受けたタソガレドキ忍軍は、忍術学園に在籍する上級生(五・六年生)と雑渡が決闘。更には、元髪結い師の四年生が黄昏甚兵衛の南蛮ファッションのコーディネートを務めたという。
「中立的関係を築いて、戦を仕掛けずに過ごしていたおかげかな? それとも、忍術学園の事務員の不始末か何か……、まぁ、どれを取っても構わないけど。ほら、これを見なよ」
ひらひらと、雑渡が手にして掲げた紙が揺れる。そこには、"招待状"と墨字で書かれた三文字が綴られ、隅には"忍術学園"と克明に刻まれている始末。山奥の辺鄙な土地に、ひっそりと存在する忍者の養成機関とは何なのかと、秘匿という言葉と本来は無縁なのかと、疑問を呈したくなる。
「お前も知っているよね。十から十五までの少年少女達が在籍する全寮制の学び舎。ここタソガレドキと違って、かの凄腕忍者の大川平次渦正殿が学園長を務め、どんな人間も受け入れて、一流の忍者を育て上げ、野に放つ。何でもそこで文化祭を開催するみたいでさ、気晴らしにどう?」
雑渡にとって、前置きの説明に時間を割く必要はなく、最後に言い放った文化祭への誘いが本題だった。
「御父上からの承諾は得ている。あとは、息子の返事次第で構わないと」
○○が、押都に僅かながら視線を向ければ、忍者としての経験が豊富で、自分より年下である青年の視線を見逃す筈もなく、雑面越しに口を開く。
「良い刺激になると思っているよ。何せ、可能性のある子供達の集う学び舎だから」
ことある事に、雑渡は忍たま達をそのように例えては、忍術学園にお忍びで現れては、かつて自分の傷の手当を施した者が所属するという保健委員会を懇意にしている。
○○は、雑渡の命の恩人が誰であるのかも、保健委員会とは何なのかも、よく理解していない。この閉鎖的で閉ざされた空間で育った○○は、学び舎という場所に赴いた事も無ければ、忍術学園に一度たりとも足を運んだ事が無いのだ。
『是非、御同行願いたいと思います』
それでも、○○に誘いに応じないという選択肢は、初めから存在していない。深く頭を垂れ、文化祭という催しに参加すべく、○○はタソガレドキの隠れ里を降り、雑渡達と共に忍術学園へと足を運ぶのだった。
◇
(看板が下ろされている……)
門前にて、日に焼けた木材と、不自然に残された薄色で、縦長の長方形の跡。学園側が来訪者に自分達の学園の素性を暴かれないようにと、意図的に看板を取り外したのだと、看板の影が如実に物語っており、○○は看破する。
忍術学園の敷地内に足を踏み入れた瞬間、自分達の姿を見るなり、どこからか甲高い悲鳴が風に裂け、地面に落ちるように散っていく。
『ん?』
声の主達は、自分よりも背丈が高く、声変わりを迎えてもいない。それが分かれば、○○は自分の足元に倒れ込む一年は組のいい子達を見下ろし、中には魂を口からふわりと吐き出し、白目を剥いて伸びている者までいる。
『この子達が、忍たま…?』
仰向けになる形で、地面に倒れ込む水色の忍装束を着た、もちもちとした丸みの帯びた子供達。自分よりも明らかに年下と分かるものの、あまりに稚い声と不格好な倒れ方に、○○は本当に忍者の卵かと訝しげに首を傾げてしまう。
「○○。いくら相手が自分より小さな子供だからといって、油断してはいけないよ」
思考を読み取ったのか、雑渡は○○に向けて、敵を侮ってはいけないという忍者の三禁の一つに触れた。
(そうだ…、いくら稚拙な声をあげ、倒れたとはいっても、この子達も忍者の卵。それに、オーカマドキの総攻撃から園田村を守り抜き、更にはオーカマドキの城主の褌を奪い取った実績を持つ学園の生徒達だ)
過去の出来事を想起し、秘めた実力について再確認する中、五年い組の尾浜勘右衛門が一年は組のいい子達と共に、タソガレドキ忍軍が招待状を持って、忍術学園に訪れたと話され、盛大にバランスを崩して地面に倒れ込んだ様子など、知った事ではない。
「本日は武器を持たず、財布を持て。文化祭を楽しもう」
雑渡の声は澄んだ鐘の音のように響き、緊張に固まっていた空気を和らげた。
山奥の広大な土地にて開拓された学園内には、若き事務員の不始末により、ドクタケ忍者隊や大川の命を狙う他国の暗殺者が潜んでいるものの、雑渡はあくまで、自分達は文化祭を楽しむ心意気を持とうという姿勢を貫く。
「いらっしゃいませー。体育委員会 委員長のパペット、ギニョールがあるんだなー」
「教科実技共に、学年トップのナンバーワン、平滝夜叉丸も制作に携わった小平太パペット、小平太ギニョールは絶賛、発売中でございまーす!」
一度、雑渡達と別れた○○も文化祭を楽しもうと足を進めると、四年い組の平滝夜叉丸、二年は組の時友四郎兵衛の体育委員会二名の呼び込みが、耳に入る。店頭には、彼等の所属する委員会の委員長を意匠し、新緑の忍装束を着用したパペットとギニョールが陳列されており、売上は上々。
(タソガレドキ購買組合で売られている、組頭のパペットを模倣したみたい)
余談だが、委員長であり、タソガレドキ忍軍に属する○○を見れば、血の気の盛んな一面から、反応を示す可能性の高い六年ろ組の七松小平太は、学園内で方向音痴を炸裂している三年ろ組の次屋三之助の回収に向かっている為、○○と視線をかち合わせる事なく、不在。更にいえば、一年は組の皆本金吾は、同じ組の面々と学園内の巡回に出ており、姿は見えない。
『じゃあ、小平太パペットとやらを一つ下さい』
平時から、購買組合で雑渡のパペットを購入したらどうかと面倒な絡みをする椎良を思い出した○○は、ちょっとした趣と、それなりの思惑の二つを抱えながら、銭袋に仕舞われた銭を取り出し、パペットを購入する。
柔らかな布地の感触と、意外にしっかりした縫製。○○はそれを懐に仕舞い込み、ひとまず屋台を後にしていく。
「おーい、四郎兵衛! 滝夜叉丸!」
店を離れて暫くすると、三之助を連れた小平太が戻り、店番をする四郎兵衛と滝夜叉丸の元へ顔を見せる。
「七松先輩! 三之助を見つけ出し、こちらへ戻られたのですね!」
「丁度、パペットが一つ売り捌けた所でした〜」
体を縄で縛られ、自分の元から離れない様にと拘束された三之助をよそに、滝夜叉丸と四郎兵衛が順番に、パペットが売れたのだと話す。
小平太は陳列されたパペット達の中に空白の箇所が出来ていると分かれば先程、忍術学園では感じ取ったことの無い気配について思い出す。
「そういや、何かよく知らん奴の気配もしたけど、まぁいいか。この調子で、パペットもギニョールも売り捌くぞぉ! 押せ押せどんどーんっ!」
気配の正体の尻尾まで掴めなかったものの、その豪快な声が響き渡れば、懐に購入したパペットをしまい、別の模擬店へと足を運ぶ○○の耳にも聞こえてきた。
(でかい声だなぁ)
その主が、自身の購入したパペットの元となった人物だとは、この時の○○は結びつかない。
通りすがりに、香ばしい匂いを漂わせる店が目に映ると、そこは火薬委員会の模擬店である田楽豆腐屋。鉄板の上で、じゅうじゅうと音を立て、焦げ目の甘辛い味噌が香り立つ。しかし、○○は甘味ではないと分かれば、迷うことなく踵を返し、あっさりと素通りしてしまう。
(何かないかなぁ、)
本人も知らぬ内に、学園内の火薬の貯蔵庫とも呼ばれる焔硝蔵へと辿り着いた○○は、これもまた火薬委員会が模擬店として出店している、甘酒屋を発見した。
「いらっしゃいませー」
そこで店番をしていたのは、四年は組の斉藤タカ丸。過去のオリエンテーリングにて、黄昏甚兵衛がタカ丸の元髪結い師の才に目をつけ、南蛮ファッションのコーディネートを任命された人物だとは、またしてもこの時の○○は結びつかない。
「お兄さん。甘酒は、お好きですかぁ?」
『うん。銭は払うから、一杯下さい』
取り出した銭袋から銭を出せば、柔らかく間延びした口調で、礼を述べるタカ丸の手のひらに銭を乗せ、対価として甘酒一杯を受け取る。白濁した湯気が、鼻孔に柔らかな米麹の香りを運び、口に運んでいけば、舌に丸みのある甘みが広がり、冷えた肺の奥をゆっくり温める。
(やっぱり、甘酒が一番だな〜)
元服を迎え、酒を嗜める年頃となった○○。兄のように慕う五条・椎良・反屋と杯を交わす時は専ら、甘酒を嗜む。
『あれ…』
一杯分の甘酒を飲み干し、焔硝蔵を後にした○○は、一年ろ組の鶴見伏木蔵と六年は組の善法寺伊作と行動を共にする雑渡昆奈門、正門前で遭遇した一年は組のいい子達を発見した。
(小平太パペットさんと、同じ色の忍装束の忍たま。このパペットの売店の忍たま達が、委員長と話していたから、最上級生の六年生に位置する人なんだろうな……それに、一年生の忍たま……組頭とお知り合いなのかな)
○○の気配を察知した雑渡に続き、伊作も○○の方へと顔を向け、そこでようやく、伏木蔵をはじめ、一年は組のいい子達も誰か来たのかと、二人と同じ方向に顔を向けていく。
「ようやく御対面という時間だけれど…、○○、今はそんな悠長な時間を与えられなくて、御免ね」
何故か、自分より二回りも年上かつ属する忍軍の組頭から、謝罪の言葉を受けた○○は、何事かと思う。哀車の術にしては稚拙過ぎると勘ぐるも、雑渡の視線は伊作と○○の交互を行き交う。
『何か都合の悪い事でも起きたのですか』
「菜園の迷路の中に、怪しい連中が次々と逃げ込んでいるんだ」
○○の問いに、伊作が答える。
菜園というのは、忍術学園の敷地内に備えられた施設。今は生物委員会の模擬店かつ出し物として、逃げ出した虫達の蔓延る巨大迷路へと変貌を遂げている。
「それにしても、タソガレドキのお兄さん。善法寺伊作 保健委員会 委員長と背丈も同じで、年も近いんですか?」
顔には、雑渡の意匠の施された面、左手にタソガレドキ購買組合で購入可能のパペットを装着し、器用に水風船までも操る伏木蔵は、伊作と○○を交互に見て、何気なく思った疑問を平然と口にした。
「伊作くんと彼は、同い年だからね」
雑渡は隠す必要も無いと、嘘偽りなく真実を告げる。それに対して、雑渡の恩人かつ懇意にしている保健委員会の委員長が、自分の目の前に居ると○○は一人、思う。
『えっと…、組頭の傷の手当をして下さった保健委員会の委員長さん。組頭を助けて頂き、有難うございました』
雑渡の命の危機を救った恩人である伊作に向ける所作や言葉使いは丁寧であるものの、"時と場合で使い分ける"という言葉が正しく、この状況において、一番似合うのだろう。
○○本人は、至って真面目に感謝を告げたものの、一年は組のいい子達は、暗殺者が巨大迷路に紛れ込んでいる緊迫とした空気の中、盛大にずっこければ、バランスを崩して倒れていく。
「○○はね、私達みたいな年上ばかりに囲まれて、年齢の近い子達との関わりが少なくてさ。だから、ちょっとしたズレのある行動にも目を瞑ってやってね」
タソガレドキの隠れ里において、○○と同い年の少年達の殆どが脱落してしまい、忍者にすらなれず、○○の隣から姿を消した数は両手で数え切れない程。
「タソガレドキ忍軍に、僕と同じ年の人が居るなんて、雑渡さんからお話を聞かされた時は驚きましたよ」
いくら、兄のように慕う五条・椎良・反屋が居れど、年齢差がある。比較的、年もそこそこ離れている諸泉尊奈門や山本高坂陣内でも、年齢の壁がある。ましてや、小頭の押都や山本陣内、組頭の雑渡相手となれば、世代間の感覚の壁は厚い。若者言葉の一つにすら、時折噛み合わない事も珍しくない。
(ここに居る忍たま達は、可能性のある子供達……、そんな彼等と○○を引き合わせれば、何か化学反応が生まれるかもしれないと思って、忍術学園へ連れてきたのは正解だったかもしれない。父親面をする押都に大分、無理を言ってしまったけれど)
わざわ招待状を見せてまで、○○と年の近い若者が集うこの場所へ連れてきたのは、雑渡の個人的な思惑。
それを見通していた押都は、いい気持ちがしなかったのが半分。いずれは黒鷲隊に所属する有望な若者であり、幼少期から五条・椎良・反屋と共に、鍛錬に励む幼き○○の姿を見ていた押都は、血の繋がりは無いとはいえ、父親が抱く庇護欲が密かに芽生えていたのも、また事実。
『組頭。ひょっとして、楽しんでいらっしゃいますか?』
変な所で義理堅く、それでも他者を振り回すマイペースな一面を貫く自身の組頭の楽しげな様子を眺めては、○○は伏し目で、そう言い放つ。
その後、菜園の巨大迷路にて繰り広げられた暗殺者捜しは、事務員の二度目の不始末により、手にしていた松明が、焔硝蔵から非難された火薬壺に投げ込まれ、大爆発を起こす光景を、○○は雑渡と共に目の当たりにしたのだった。
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◆名前変換夢の為、名前入力を推奨。
◆三人称(神の目線)視点で進みます。
◆既存キャラの解釈違い(口調や性格)が出てくると思われますので予め、ご了承下さい。
◆タソガレドキ・黒鷲隊内部、タソガレ三忍の口調(参考元:原作漫画)の捏造あり。
夢主の簡単な設定
・忍術学園の六年生と同い年(十五歳)。
・将来は、黒鷲隊へ入隊予定。
・良くも悪くも排他的な性格。懐いた者には、心を開く。それ以外の人間には、普通に接しているものの、肩書き等で相手の名を呼ぶ。
・一般常識が欠けている節があり、浮世絵離れしている。
・寝る・甘味物(最近は南蛮菓子)を食べる事が好き。
・
兄のように慕っている五条弾、椎良勘介、反屋壮太と鍛錬に励む予定であった○○だが、組頭の雑渡昆奈門の鶴の一声により、その予定は崩れ去ったのは、数刻前の話。
今現在は、目の前で威厳の無さを示すから止めろ指摘されている横座りをした雑渡。それと対照的に、自身が所属予定の隊の小頭、押都長烈は端然と座している。背筋は竹のように真っ直ぐ、袖や膝の置き方一つにしても揺るぎない。立ち姿だけでなく、座す姿までもが威厳を纏い、○○は心中にてーーー、冗談の一つすら、この場で軽々しく吐けはしないと思う。
『忍術学園……』
その名を聞き、何の学び舎であるのかと惚け、目の前にて横座りをして、自身を見つめる雑渡相手に聞き返してしまう阿呆ではない。
(凄腕忍者と謳われた大川平次 渦正殿が学園長を務めていらっしゃるという、忍者の養成機関……)
これまで、忍術学園とタソガレドキの付き合いとなれば、園田村の件を皮切りに、中立的関係を築いた。つい先刻、忍術学園主催の混合ダブルスオリエンテーリングにて、戦を仕掛けると勘違いを受けたタソガレドキ忍軍は、忍術学園に在籍する上級生(五・六年生)と雑渡が決闘。更には、元髪結い師の四年生が黄昏甚兵衛の南蛮ファッションのコーディネートを務めたという。
「中立的関係を築いて、戦を仕掛けずに過ごしていたおかげかな? それとも、忍術学園の事務員の不始末か何か……、まぁ、どれを取っても構わないけど。ほら、これを見なよ」
ひらひらと、雑渡が手にして掲げた紙が揺れる。そこには、"招待状"と墨字で書かれた三文字が綴られ、隅には"忍術学園"と克明に刻まれている始末。山奥の辺鄙な土地に、ひっそりと存在する忍者の養成機関とは何なのかと、秘匿という言葉と本来は無縁なのかと、疑問を呈したくなる。
「お前も知っているよね。十から十五までの少年少女達が在籍する全寮制の学び舎。ここタソガレドキと違って、かの凄腕忍者の大川平次渦正殿が学園長を務め、どんな人間も受け入れて、一流の忍者を育て上げ、野に放つ。何でもそこで文化祭を開催するみたいでさ、気晴らしにどう?」
雑渡にとって、前置きの説明に時間を割く必要はなく、最後に言い放った文化祭への誘いが本題だった。
「御父上からの承諾は得ている。あとは、息子の返事次第で構わないと」
○○が、押都に僅かながら視線を向ければ、忍者としての経験が豊富で、自分より年下である青年の視線を見逃す筈もなく、雑面越しに口を開く。
「良い刺激になると思っているよ。何せ、可能性のある子供達の集う学び舎だから」
ことある事に、雑渡は忍たま達をそのように例えては、忍術学園にお忍びで現れては、かつて自分の傷の手当を施した者が所属するという保健委員会を懇意にしている。
○○は、雑渡の命の恩人が誰であるのかも、保健委員会とは何なのかも、よく理解していない。この閉鎖的で閉ざされた空間で育った○○は、学び舎という場所に赴いた事も無ければ、忍術学園に一度たりとも足を運んだ事が無いのだ。
『是非、御同行願いたいと思います』
それでも、○○に誘いに応じないという選択肢は、初めから存在していない。深く頭を垂れ、文化祭という催しに参加すべく、○○はタソガレドキの隠れ里を降り、雑渡達と共に忍術学園へと足を運ぶのだった。
◇
(看板が下ろされている……)
門前にて、日に焼けた木材と、不自然に残された薄色で、縦長の長方形の跡。学園側が来訪者に自分達の学園の素性を暴かれないようにと、意図的に看板を取り外したのだと、看板の影が如実に物語っており、○○は看破する。
忍術学園の敷地内に足を踏み入れた瞬間、自分達の姿を見るなり、どこからか甲高い悲鳴が風に裂け、地面に落ちるように散っていく。
『ん?』
声の主達は、自分よりも背丈が高く、声変わりを迎えてもいない。それが分かれば、○○は自分の足元に倒れ込む一年は組のいい子達を見下ろし、中には魂を口からふわりと吐き出し、白目を剥いて伸びている者までいる。
『この子達が、忍たま…?』
仰向けになる形で、地面に倒れ込む水色の忍装束を着た、もちもちとした丸みの帯びた子供達。自分よりも明らかに年下と分かるものの、あまりに稚い声と不格好な倒れ方に、○○は本当に忍者の卵かと訝しげに首を傾げてしまう。
「○○。いくら相手が自分より小さな子供だからといって、油断してはいけないよ」
思考を読み取ったのか、雑渡は○○に向けて、敵を侮ってはいけないという忍者の三禁の一つに触れた。
(そうだ…、いくら稚拙な声をあげ、倒れたとはいっても、この子達も忍者の卵。それに、オーカマドキの総攻撃から園田村を守り抜き、更にはオーカマドキの城主の褌を奪い取った実績を持つ学園の生徒達だ)
過去の出来事を想起し、秘めた実力について再確認する中、五年い組の尾浜勘右衛門が一年は組のいい子達と共に、タソガレドキ忍軍が招待状を持って、忍術学園に訪れたと話され、盛大にバランスを崩して地面に倒れ込んだ様子など、知った事ではない。
「本日は武器を持たず、財布を持て。文化祭を楽しもう」
雑渡の声は澄んだ鐘の音のように響き、緊張に固まっていた空気を和らげた。
山奥の広大な土地にて開拓された学園内には、若き事務員の不始末により、ドクタケ忍者隊や大川の命を狙う他国の暗殺者が潜んでいるものの、雑渡はあくまで、自分達は文化祭を楽しむ心意気を持とうという姿勢を貫く。
「いらっしゃいませー。体育委員会 委員長のパペット、ギニョールがあるんだなー」
「教科実技共に、学年トップのナンバーワン、平滝夜叉丸も制作に携わった小平太パペット、小平太ギニョールは絶賛、発売中でございまーす!」
一度、雑渡達と別れた○○も文化祭を楽しもうと足を進めると、四年い組の平滝夜叉丸、二年は組の時友四郎兵衛の体育委員会二名の呼び込みが、耳に入る。店頭には、彼等の所属する委員会の委員長を意匠し、新緑の忍装束を着用したパペットとギニョールが陳列されており、売上は上々。
(タソガレドキ購買組合で売られている、組頭のパペットを模倣したみたい)
余談だが、委員長であり、タソガレドキ忍軍に属する○○を見れば、血の気の盛んな一面から、反応を示す可能性の高い六年ろ組の七松小平太は、学園内で方向音痴を炸裂している三年ろ組の次屋三之助の回収に向かっている為、○○と視線をかち合わせる事なく、不在。更にいえば、一年は組の皆本金吾は、同じ組の面々と学園内の巡回に出ており、姿は見えない。
『じゃあ、小平太パペットとやらを一つ下さい』
平時から、購買組合で雑渡のパペットを購入したらどうかと面倒な絡みをする椎良を思い出した○○は、ちょっとした趣と、それなりの思惑の二つを抱えながら、銭袋に仕舞われた銭を取り出し、パペットを購入する。
柔らかな布地の感触と、意外にしっかりした縫製。○○はそれを懐に仕舞い込み、ひとまず屋台を後にしていく。
「おーい、四郎兵衛! 滝夜叉丸!」
店を離れて暫くすると、三之助を連れた小平太が戻り、店番をする四郎兵衛と滝夜叉丸の元へ顔を見せる。
「七松先輩! 三之助を見つけ出し、こちらへ戻られたのですね!」
「丁度、パペットが一つ売り捌けた所でした〜」
体を縄で縛られ、自分の元から離れない様にと拘束された三之助をよそに、滝夜叉丸と四郎兵衛が順番に、パペットが売れたのだと話す。
小平太は陳列されたパペット達の中に空白の箇所が出来ていると分かれば先程、忍術学園では感じ取ったことの無い気配について思い出す。
「そういや、何かよく知らん奴の気配もしたけど、まぁいいか。この調子で、パペットもギニョールも売り捌くぞぉ! 押せ押せどんどーんっ!」
気配の正体の尻尾まで掴めなかったものの、その豪快な声が響き渡れば、懐に購入したパペットをしまい、別の模擬店へと足を運ぶ○○の耳にも聞こえてきた。
(でかい声だなぁ)
その主が、自身の購入したパペットの元となった人物だとは、この時の○○は結びつかない。
通りすがりに、香ばしい匂いを漂わせる店が目に映ると、そこは火薬委員会の模擬店である田楽豆腐屋。鉄板の上で、じゅうじゅうと音を立て、焦げ目の甘辛い味噌が香り立つ。しかし、○○は甘味ではないと分かれば、迷うことなく踵を返し、あっさりと素通りしてしまう。
(何かないかなぁ、)
本人も知らぬ内に、学園内の火薬の貯蔵庫とも呼ばれる焔硝蔵へと辿り着いた○○は、これもまた火薬委員会が模擬店として出店している、甘酒屋を発見した。
「いらっしゃいませー」
そこで店番をしていたのは、四年は組の斉藤タカ丸。過去のオリエンテーリングにて、黄昏甚兵衛がタカ丸の元髪結い師の才に目をつけ、南蛮ファッションのコーディネートを任命された人物だとは、またしてもこの時の○○は結びつかない。
「お兄さん。甘酒は、お好きですかぁ?」
『うん。銭は払うから、一杯下さい』
取り出した銭袋から銭を出せば、柔らかく間延びした口調で、礼を述べるタカ丸の手のひらに銭を乗せ、対価として甘酒一杯を受け取る。白濁した湯気が、鼻孔に柔らかな米麹の香りを運び、口に運んでいけば、舌に丸みのある甘みが広がり、冷えた肺の奥をゆっくり温める。
(やっぱり、甘酒が一番だな〜)
元服を迎え、酒を嗜める年頃となった○○。兄のように慕う五条・椎良・反屋と杯を交わす時は専ら、甘酒を嗜む。
『あれ…』
一杯分の甘酒を飲み干し、焔硝蔵を後にした○○は、一年ろ組の鶴見伏木蔵と六年は組の善法寺伊作と行動を共にする雑渡昆奈門、正門前で遭遇した一年は組のいい子達を発見した。
(小平太パペットさんと、同じ色の忍装束の忍たま。このパペットの売店の忍たま達が、委員長と話していたから、最上級生の六年生に位置する人なんだろうな……それに、一年生の忍たま……組頭とお知り合いなのかな)
○○の気配を察知した雑渡に続き、伊作も○○の方へと顔を向け、そこでようやく、伏木蔵をはじめ、一年は組のいい子達も誰か来たのかと、二人と同じ方向に顔を向けていく。
「ようやく御対面という時間だけれど…、○○、今はそんな悠長な時間を与えられなくて、御免ね」
何故か、自分より二回りも年上かつ属する忍軍の組頭から、謝罪の言葉を受けた○○は、何事かと思う。哀車の術にしては稚拙過ぎると勘ぐるも、雑渡の視線は伊作と○○の交互を行き交う。
『何か都合の悪い事でも起きたのですか』
「菜園の迷路の中に、怪しい連中が次々と逃げ込んでいるんだ」
○○の問いに、伊作が答える。
菜園というのは、忍術学園の敷地内に備えられた施設。今は生物委員会の模擬店かつ出し物として、逃げ出した虫達の蔓延る巨大迷路へと変貌を遂げている。
「それにしても、タソガレドキのお兄さん。善法寺伊作 保健委員会 委員長と背丈も同じで、年も近いんですか?」
顔には、雑渡の意匠の施された面、左手にタソガレドキ購買組合で購入可能のパペットを装着し、器用に水風船までも操る伏木蔵は、伊作と○○を交互に見て、何気なく思った疑問を平然と口にした。
「伊作くんと彼は、同い年だからね」
雑渡は隠す必要も無いと、嘘偽りなく真実を告げる。それに対して、雑渡の恩人かつ懇意にしている保健委員会の委員長が、自分の目の前に居ると○○は一人、思う。
『えっと…、組頭の傷の手当をして下さった保健委員会の委員長さん。組頭を助けて頂き、有難うございました』
雑渡の命の危機を救った恩人である伊作に向ける所作や言葉使いは丁寧であるものの、"時と場合で使い分ける"という言葉が正しく、この状況において、一番似合うのだろう。
○○本人は、至って真面目に感謝を告げたものの、一年は組のいい子達は、暗殺者が巨大迷路に紛れ込んでいる緊迫とした空気の中、盛大にずっこければ、バランスを崩して倒れていく。
「○○はね、私達みたいな年上ばかりに囲まれて、年齢の近い子達との関わりが少なくてさ。だから、ちょっとしたズレのある行動にも目を瞑ってやってね」
タソガレドキの隠れ里において、○○と同い年の少年達の殆どが脱落してしまい、忍者にすらなれず、○○の隣から姿を消した数は両手で数え切れない程。
「タソガレドキ忍軍に、僕と同じ年の人が居るなんて、雑渡さんからお話を聞かされた時は驚きましたよ」
いくら、兄のように慕う五条・椎良・反屋が居れど、年齢差がある。比較的、年もそこそこ離れている諸泉尊奈門や山本高坂陣内でも、年齢の壁がある。ましてや、小頭の押都や山本陣内、組頭の雑渡相手となれば、世代間の感覚の壁は厚い。若者言葉の一つにすら、時折噛み合わない事も珍しくない。
(ここに居る忍たま達は、可能性のある子供達……、そんな彼等と○○を引き合わせれば、何か化学反応が生まれるかもしれないと思って、忍術学園へ連れてきたのは正解だったかもしれない。父親面をする押都に大分、無理を言ってしまったけれど)
わざわ招待状を見せてまで、○○と年の近い若者が集うこの場所へ連れてきたのは、雑渡の個人的な思惑。
それを見通していた押都は、いい気持ちがしなかったのが半分。いずれは黒鷲隊に所属する有望な若者であり、幼少期から五条・椎良・反屋と共に、鍛錬に励む幼き○○の姿を見ていた押都は、血の繋がりは無いとはいえ、父親が抱く庇護欲が密かに芽生えていたのも、また事実。
『組頭。ひょっとして、楽しんでいらっしゃいますか?』
変な所で義理堅く、それでも他者を振り回すマイペースな一面を貫く自身の組頭の楽しげな様子を眺めては、○○は伏し目で、そう言い放つ。
その後、菜園の巨大迷路にて繰り広げられた暗殺者捜しは、事務員の二度目の不始末により、手にしていた松明が、焔硝蔵から非難された火薬壺に投げ込まれ、大爆発を起こす光景を、○○は雑渡と共に目の当たりにしたのだった。
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