元JKの記憶喪失空っぽ夢主は、忍たま達に囲まれて生き延びたい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
.
日は沈み、静寂の帳が山の背に降りた。
空には雲ひとつなく、辺りを渡る虫の声さえも、遠く潜もって聞こえる。その静けさは、ただの夜ではなく、嵐の前触れとしての沈黙。それは正に忍者達の時間が今、始まろうとしていた。
山中の楠木の洞には、山田伝蔵を中心に、六年生、五年生の面々が集結していた。闇の奥へと潜む敵を見据える様に、それぞれが静かに配置につく。
発端は、五年い組の尾浜勘右衛門の機転によるものだった。ドクタケ忍者隊の足軽の一人が、懐に忍ばせた不審な密書を発見した。尾浜は、五年ろ組の鉢屋三郎との連携により、見事に奪取された。そして密書は、竹谷八左ヱ門の手に渡り、今度は山田の手の中へ行き渡る。その場で確認された。
「どうして、は組の連中が………」
受け取った密書には、今や敵の手中にある一年は組のいい子達が囚われの身の状況であると、余す所なく記されていたのだ。
「八宝斎が居るなら、軍師もそこに居る確率が高い」
稗田八方斎ーーー。かのドクタケ忍者隊を統べる首領にして、数々の侵略と略奪を繰り返してきた人物。タソガレドキ忍軍もまた、その動静を注視し続けている存在である。
「久々知、竹谷、尾浜。お前達は引き続き、先程の場所で待機。東の砦の出入りを塞げ。鉢屋と不破は、私達に同行。門を抑えろ」
声を荒げず、それでいて一寸の揺らぎもない山田の命令が洞内に響く。戦場において、的確な布陣こそが、生死を分ける。誰もがその重みを知っているからこそ、無駄な言葉は要らなかった。
「六年生、全員で砦内を撹乱しつつ……食満・善法寺・中在家は、一年は組の救出。立花・潮江・七松は、天鬼の居場所を炙り出せ。天鬼を見たら、知らせろ。戦いが必要なら……儂がする」
そこまで言い切った山田の声に一瞬、冷えた風が洞の奥を吹き抜けた。緊張が、場の空気をぴんと張り詰めさせる。そして次の瞬間、すっと山田の視線がある一点を射抜いた。
「そして……、○○さん」
視線の先にはーーー、この場にいる他の誰とも違う時間を背負った存在が、沈黙を守って立っていた。同じく、六年生と五年生の面々も、その存在に向けて、視線を注ぐ。
「貴女には、天鬼の居場所を炙り出す為の囮となって頂こう」
沈黙が落ちる。誰も声を出さない。月光が静かに差し込み、○○の頬を照らした。
◇
(夢主視点)
楠の洞を出た先には、秋の空気が張り詰めていた。風が吹く度に、銀杏の葉がさらさらと舞い落ち、地面にかすかな音を添える。その夜風に混じって、衣擦れの音が微かに響く。
六年生がそれぞれの役割を果たすべく、黙々と準備を進めている。関節を回し、帯を締め直す音。空気は張りつめていて、刃を抜かずとも、そこに戦があると誰もが悟っていた。皆が、立花くんから受け取った鳥の子を懐にしまう時、わたしは立花くんと視線がかち合う。
「本当に、宜しかったのですか?」
それは、戦に臨む覚悟の有無を問う問いだったのかもしれない。
『うん。山田先生と学園長先生に頭を下げて、自分からお願いしたんだから。これで良かったの』
胸の奥が少しだけ軋む。けれどそれは、迷いじゃない。自分をもう一度、覚悟へと立て直すための痛みだ。
(忍術学園で、居場所を見つけたきり丸くんが……土井先生を失って、悲しむ顔を見るなんて、わたしが耐えられない)
だったら、“すまあとほん”に刻まれていた命日が今日であろうとも、恐れることは何もない。この命で、土井先生の記憶を取り戻し、きり丸くんの笑顔を取り戻す礎になるのなら、何も惜しくはなかった。
「○○さんは、私達の仲間です」
そう言ってくれた立花くんの声に、あの頃の記憶が滲む。まだ小さかった自分が、忍術の手ほどきを受けていた日々。未来から来た異物のような自分に、自然と輪を作ってくれた彼ら。
「ドクタケ忍者隊に捕らわれたとしても、最後は絶対、忍術学園へ帰るんですから」
「俺達も土井先生と、一年は組を連れて帰るつもりなので……、○○さんもその輪の中に、居て下さい」
善法寺くんと食満くんまた、まるで“終わり”なんて言葉は存在しないかの様に、笑って言った。
潮江くんも、中在家くんも、七松くんもーーー、同じ想いを抱いていると、都合よく捉えても良いだろうか。
(この姿も、未来の日本で事故に遭った時から、変わらないんだよって話しても……、信じる訳ないよね)
本当は、もっと遠い時間を生きていた。それが事故に巻き込まれ、この時代に迷い込んだ。この姿だって、あの時から何ひとつ変わっていない。目の前にいる六人は、そんなわたしと違って、出会った頃よりも背が伸び、心も体も立派に成長していた。
(だから……、わたしは、躊躇わない)
この秋の夜に咲く覚悟は、月光よりも澄んで、風よりも冷たく、確かなもの。銀杏の葉が一枚、また一枚と舞い降りる。別れの鐘の様に感じられても、足は止めない。
(それに、わたしには"とっておきの秘密兵器"……みたいなものが、あるんだから)
わたしは、土井先生が忍術学園に帰ってくる為、きり丸くんがもう悲しまず、常の笑顔を取り戻す為に、自らの命を差し出す。それがこの世界で、"わたし”として生きられた、最後の証になるのだとしても。
◇
空には高く澄んだ満月。秋の夜気はひどく冴え、吐いた息さえ白くなりそうなほど。
ドクタケ忍者隊が設営した砦に潜入し、わたし達はそれぞれの役割に徹していく。門前を警備していた足軽達を拘束して間もなく、不破くん・鉢屋くん・食満くんの三人が、ドクタケ忍者隊に仕える足軽に扮していた。
砦内では、既に騒ぎが起きている。
潮江くん・立花くん・七松くんの捜索組が、要所を突いて撹乱を仕掛けている。彼らは気配を消しつつ、足軽達から天鬼の情報を炙り出そうと試み、どことなく目立つ様に動き回っている。それが逆に敵を混乱させ、情報の流れを寸断させていた。
一方、中在家くん・善法寺くん・再合流した食満くんは、一年は組のいい子達を探しながら、狼煙用の火薬や合図用の法螺貝、砦の中心に据えられた太鼓の破壊に着手していた。敵の連絡手段を断ち、混乱を更に深める為。短時間の間に、砦内の足軽達はすでに散り散りとなり、誰が味方で誰が敵かさえも、把握できていない様子だ。
その混沌の狭間を縫うように、わたしは音を立てずに砦の一角へと足を進める。
「何者だ!」
足軽達が焦りに任せて叫ぶ声が響く中、わたしは意図的に姿を晒した。月明かりの下で、わたしの装いはいま思えば、自分でも異質だと自虐する。
厚手の白いベスト、黒のスカート、脚に絡むタイツの感触。現代にいた頃、高校へ向かう日々の記憶と同じ制服姿。だが、そこに巻かれた黒の脚絆だけが、唯一この時代の名残だった。まるで、わたし自身が時代の裂け目そのもの。
『軍師殿の首を、狙いに来た』
静かに告げた言葉が、秋の夜気を裂いて落ちる。わたしの元へと集まり出した足軽達は、互いに目を見合わせた。
一瞬にして緊張が走り、どこからともなく煙が発生した。彼らは完全に混乱に陥った。誰が味方で、誰が敵か。何が本当で、何が罠か。そして目の前にいる異質なわたしが何者で、どこから来たのかーーー。足軽達の頭が、その問いで支配される前に、わたしは自らの身を足軽達に差し出していく。
.
日は沈み、静寂の帳が山の背に降りた。
空には雲ひとつなく、辺りを渡る虫の声さえも、遠く潜もって聞こえる。その静けさは、ただの夜ではなく、嵐の前触れとしての沈黙。それは正に忍者達の時間が今、始まろうとしていた。
山中の楠木の洞には、山田伝蔵を中心に、六年生、五年生の面々が集結していた。闇の奥へと潜む敵を見据える様に、それぞれが静かに配置につく。
発端は、五年い組の尾浜勘右衛門の機転によるものだった。ドクタケ忍者隊の足軽の一人が、懐に忍ばせた不審な密書を発見した。尾浜は、五年ろ組の鉢屋三郎との連携により、見事に奪取された。そして密書は、竹谷八左ヱ門の手に渡り、今度は山田の手の中へ行き渡る。その場で確認された。
「どうして、は組の連中が………」
受け取った密書には、今や敵の手中にある一年は組のいい子達が囚われの身の状況であると、余す所なく記されていたのだ。
「八宝斎が居るなら、軍師もそこに居る確率が高い」
稗田八方斎ーーー。かのドクタケ忍者隊を統べる首領にして、数々の侵略と略奪を繰り返してきた人物。タソガレドキ忍軍もまた、その動静を注視し続けている存在である。
「久々知、竹谷、尾浜。お前達は引き続き、先程の場所で待機。東の砦の出入りを塞げ。鉢屋と不破は、私達に同行。門を抑えろ」
声を荒げず、それでいて一寸の揺らぎもない山田の命令が洞内に響く。戦場において、的確な布陣こそが、生死を分ける。誰もがその重みを知っているからこそ、無駄な言葉は要らなかった。
「六年生、全員で砦内を撹乱しつつ……食満・善法寺・中在家は、一年は組の救出。立花・潮江・七松は、天鬼の居場所を炙り出せ。天鬼を見たら、知らせろ。戦いが必要なら……儂がする」
そこまで言い切った山田の声に一瞬、冷えた風が洞の奥を吹き抜けた。緊張が、場の空気をぴんと張り詰めさせる。そして次の瞬間、すっと山田の視線がある一点を射抜いた。
「そして……、○○さん」
視線の先にはーーー、この場にいる他の誰とも違う時間を背負った存在が、沈黙を守って立っていた。同じく、六年生と五年生の面々も、その存在に向けて、視線を注ぐ。
「貴女には、天鬼の居場所を炙り出す為の囮となって頂こう」
沈黙が落ちる。誰も声を出さない。月光が静かに差し込み、○○の頬を照らした。
◇
(夢主視点)
楠の洞を出た先には、秋の空気が張り詰めていた。風が吹く度に、銀杏の葉がさらさらと舞い落ち、地面にかすかな音を添える。その夜風に混じって、衣擦れの音が微かに響く。
六年生がそれぞれの役割を果たすべく、黙々と準備を進めている。関節を回し、帯を締め直す音。空気は張りつめていて、刃を抜かずとも、そこに戦があると誰もが悟っていた。皆が、立花くんから受け取った鳥の子を懐にしまう時、わたしは立花くんと視線がかち合う。
「本当に、宜しかったのですか?」
それは、戦に臨む覚悟の有無を問う問いだったのかもしれない。
『うん。山田先生と学園長先生に頭を下げて、自分からお願いしたんだから。これで良かったの』
胸の奥が少しだけ軋む。けれどそれは、迷いじゃない。自分をもう一度、覚悟へと立て直すための痛みだ。
(忍術学園で、居場所を見つけたきり丸くんが……土井先生を失って、悲しむ顔を見るなんて、わたしが耐えられない)
だったら、“すまあとほん”に刻まれていた命日が今日であろうとも、恐れることは何もない。この命で、土井先生の記憶を取り戻し、きり丸くんの笑顔を取り戻す礎になるのなら、何も惜しくはなかった。
「○○さんは、私達の仲間です」
そう言ってくれた立花くんの声に、あの頃の記憶が滲む。まだ小さかった自分が、忍術の手ほどきを受けていた日々。未来から来た異物のような自分に、自然と輪を作ってくれた彼ら。
「ドクタケ忍者隊に捕らわれたとしても、最後は絶対、忍術学園へ帰るんですから」
「俺達も土井先生と、一年は組を連れて帰るつもりなので……、○○さんもその輪の中に、居て下さい」
善法寺くんと食満くんまた、まるで“終わり”なんて言葉は存在しないかの様に、笑って言った。
潮江くんも、中在家くんも、七松くんもーーー、同じ想いを抱いていると、都合よく捉えても良いだろうか。
(この姿も、未来の日本で事故に遭った時から、変わらないんだよって話しても……、信じる訳ないよね)
本当は、もっと遠い時間を生きていた。それが事故に巻き込まれ、この時代に迷い込んだ。この姿だって、あの時から何ひとつ変わっていない。目の前にいる六人は、そんなわたしと違って、出会った頃よりも背が伸び、心も体も立派に成長していた。
(だから……、わたしは、躊躇わない)
この秋の夜に咲く覚悟は、月光よりも澄んで、風よりも冷たく、確かなもの。銀杏の葉が一枚、また一枚と舞い降りる。別れの鐘の様に感じられても、足は止めない。
(それに、わたしには"とっておきの秘密兵器"……みたいなものが、あるんだから)
わたしは、土井先生が忍術学園に帰ってくる為、きり丸くんがもう悲しまず、常の笑顔を取り戻す為に、自らの命を差し出す。それがこの世界で、"わたし”として生きられた、最後の証になるのだとしても。
◇
空には高く澄んだ満月。秋の夜気はひどく冴え、吐いた息さえ白くなりそうなほど。
ドクタケ忍者隊が設営した砦に潜入し、わたし達はそれぞれの役割に徹していく。門前を警備していた足軽達を拘束して間もなく、不破くん・鉢屋くん・食満くんの三人が、ドクタケ忍者隊に仕える足軽に扮していた。
砦内では、既に騒ぎが起きている。
潮江くん・立花くん・七松くんの捜索組が、要所を突いて撹乱を仕掛けている。彼らは気配を消しつつ、足軽達から天鬼の情報を炙り出そうと試み、どことなく目立つ様に動き回っている。それが逆に敵を混乱させ、情報の流れを寸断させていた。
一方、中在家くん・善法寺くん・再合流した食満くんは、一年は組のいい子達を探しながら、狼煙用の火薬や合図用の法螺貝、砦の中心に据えられた太鼓の破壊に着手していた。敵の連絡手段を断ち、混乱を更に深める為。短時間の間に、砦内の足軽達はすでに散り散りとなり、誰が味方で誰が敵かさえも、把握できていない様子だ。
その混沌の狭間を縫うように、わたしは音を立てずに砦の一角へと足を進める。
「何者だ!」
足軽達が焦りに任せて叫ぶ声が響く中、わたしは意図的に姿を晒した。月明かりの下で、わたしの装いはいま思えば、自分でも異質だと自虐する。
厚手の白いベスト、黒のスカート、脚に絡むタイツの感触。現代にいた頃、高校へ向かう日々の記憶と同じ制服姿。だが、そこに巻かれた黒の脚絆だけが、唯一この時代の名残だった。まるで、わたし自身が時代の裂け目そのもの。
『軍師殿の首を、狙いに来た』
静かに告げた言葉が、秋の夜気を裂いて落ちる。わたしの元へと集まり出した足軽達は、互いに目を見合わせた。
一瞬にして緊張が走り、どこからともなく煙が発生した。彼らは完全に混乱に陥った。誰が味方で、誰が敵か。何が本当で、何が罠か。そして目の前にいる異質なわたしが何者で、どこから来たのかーーー。足軽達の頭が、その問いで支配される前に、わたしは自らの身を足軽達に差し出していく。
.
