短編
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◆ペパマリRPG本編後の🌸とチビヨッシーの話。
◆ペパマリRPG/恋愛(片思い)/
◆本短編の🌸
・マリオ兄弟と知り合い(マリオを「君」呼び)。
・キノコ王国出身。現在は、仕事の関係でウーロン街に住んでいる。
・防御・カウンター系の技が得意。
・
スターストーン集めを終えた🌸は、チビヨッシーを連れてウーロン街へと帰ってきた。
まず始めに、闘技場でチビヨッシーの選手登録を済ませなければならず、🌸は新しくプロモーターに着任したキノシコワの元へ向かったが___、
「"グレート・ゴンザレス・ジュニア"の選手登録は、完了しました。しかし、いくら選手といえど彼は、まだタマゴから孵化したばかりの赤子です。闘技場の宿舎での寝泊まりは、推奨出来かねます」
プロモーター室のオフィスデスク越しに、キノシコワからそう伝えられた🌸は、隣に立っているチビヨッシーを見た。
「それじゃあ……闘技場の外で、泊まる宿を用意してくれるオレの保護者が居れば良いって訳だろ?」
「えぇ。宿舎を提供し且つ、幼いあなたの安全を保証してくれる保護者の方がいらっしゃるならば……」
チビヨッシーとキノシコワがそこまで言うと、二人の視線はウーロン街に住居を構えている🌸に向けられていた。
「🌸……ウーロン街に住居を構え、闘技場には仕事で顔を出す機会があり接触を図れるあなたが適任かと、わたしは思いました。しかし、仕事やプライベートに支障が出たりなど、都合が悪いようであれば……、先日、闘技場の真実を暴いて下さったお礼として、こちらで彼の下宿先をご用意させて頂きます」
キノシコワは推薦をしつつも、あくまで🌸の都合を考慮し、別の選択肢を提示した。しかし、下宿先の話題が出てくると、チビヨッシーは分かりやすくビックリした様子を見せ、🌸の顔を見上げた。
そんなチビヨッシーからの熱い視線を受けていた🌸は____、キノシコワと向き合い、口を開いた。
・
プロモーター室を後にした🌸とチビヨッシーは、闘技場のエントランスに戻ろうとした時____、入場口の扉が開き、チャンピオン防衛戦を行っていたゴールド・ホークが現れた。
「誰だ? オレ様の道を塞いでやがるのは………、何だ🌸、お前か」
『ゴールド・ホーク選手……お疲れ様です。先程のチャンピオン防衛戦、素晴らしかったですね』
「ふんっ。入場口で立ち見していた位でとは言わせてもらうが、試合を観戦していた事には変わりねぇ。素直に受け取るぜ」
毒を吐き捨てたものの、自分の試合を観戦した上で感想を述べた事に対しては否定せず、🌸の言葉を受け取った。
(この間は、ガンスの事で頭がいっぱいになってたのと、あんまり気にしてなかったけど……、🌸って、闘技場だとこんな感じなんだな)
旅をしていた中では見た事のなかった🌸の新たな一面を知り、🌸に視線を送っていたチビヨッシーの存在に、ゴールド・ホークが気がついた。
「お前、グレート・ゴンザレスと一緒に居た……おい、プロモーター室から出てきたって事は、もしかして選手登録したのか?」
「おれもゴンザレスみたいに、闘技場でチャンピオンを目指すつもりさ」
グレート・ゴンザレス____、闘技場でのマリオのリングネーム。かつてゴールド・ホークからチャンピオンの座を奪ったのは新しい記憶であったものの、ゴールド・ホークはチビヨッシーの発言を聞き、眉間に皺を寄せていく。
「へぇ、そりゃ大層な目標じゃねぇか。しかも、現チャンピオンのオレ様の前で堂々と言ってくれやがって……、相変わらず、礼儀がなってないようだな!」
「気に触ったなら、ごめんよ。でも、オレ……あんたをリングで倒して、チャンピオンになるつもりだぜ。覚えといてくれよ」
「その威勢、一部リーグに上がってくるまでに保てているのか……見物だな」
ゴールド・ホークとチビヨッシー___、現チャンピオンとルーキーの間でバチバチと火花が飛び散り、控え室や入場口の前に立っていたガードマン達が冷や汗を垂らしている。
『すみません。わたし達、そろそろここを出ていくので、今日はこれで失礼します』
そんな中に飛び込んできた🌸は、ゴールド・ホークに頭を下げてから、チビヨッシーを連れてエントランスへと向かっていく。
その後ろ姿を見つめていたゴールド・ホークとは対称的に、ガードマン達は内心、この場を収めてくれた🌸に感謝したのであった。
・
闘技場を後にして、🌸は久方ぶりに自宅へと帰ってきた。玄関を入ってから灯りを付けると、チビヨッシーは辺りをキョロキョロとしながら、ゆっくりと廊下を歩いていく。
「へぇ、ここが🌸の住んでる家なんだな」
『あんまり広くは無いけど、好きにくつろいでくれて良いからね』
「部屋の広さなんて、大して気にしてないぜ」
そう言いながら、チビヨッシーはベッドの上に乗ろうとしたものの___、僅かに届かず背伸びをして、必死に登ろうとしていた。
『ベッドに乗りたいの?』
🌸はチビヨッシーの体を掴むと、ベッドの上にソッと乗せていく。突然、🌸に体を掴まれた事に驚いたチビヨッシーは、ベッドの上に降ろされるまで硬直していた。
(く、くそ〜〜………、🌸に触られただけでも、また胸がドキドキしちまう……!)
・
チビヨッシーが🌸と同居し始めてから、数日が経過した_____、
毎日、闘技場に足を運んでいるチビヨッシーはランキングマッチにて、試合に出場している。チビヨッシーの勢いは凄まじく、彗星の如く現れた大型ルーキーとして一躍、注目を集め、ファンの数も日に日に増加していた。
そんなある日、休暇を取った🌸は____、自宅にある人物を招待した。
『いらっしゃい、ビビアン』
「お、お邪魔します……」
控えめに挨拶をすると、🌸の家に足を踏み入れたのは____、スターストーン集めの旅を共にしたビビアンであった。
「アタイ……誰かの家に遊びに行くなんて、初めてなの」
『そうなの? じゃあ、今日は楽しい日になるね』
「うん! それにしても、🌸の家は綺麗だね」
🌸とビビアンが他愛ない会話をしながら、廊下を歩いて、リビングに入るとチビヨッシーが出迎えた。
「ちび君、お久しぶりね」
「ビビアンも元気そうだな」
「よく見たら……、ちょっと筋肉ついたんじゃない? 鍛えたりしてるの?」
チビヨッシーと再会を果たしたビビアンは、以前よりどことなく腕に筋肉がつき、逞しくなった印象を覚える。
「毎日、闘技場で色々な奴らと試合してるからな。チャンピオンになるなら、もっと筋肉つけないとなんだぜ」
「そうなんだ……、アタイは筋肉がつくのは、大丈夫かな……」
その時___、🌸の携帯から着信音が響いた。リビングから離れて、キッチンで電話に出る。🌸は驚いた顔を見せるも、すぐにいつも通りの顔に戻ってから電話を終え、リビングへ戻っていく。
『ごめん、二人共。出前の宅配がトラブルで来れなくなったみたいで、店頭で受け取れって電話が来たの。少しの間だけ、留守番してもらってもいい?』
先程の電話は、ウーロン街のピザ屋の店主からだった。予約したパーティーセットの宅配をする予定だった従業員が急遽、休みになった事で宅配が出来なくなった旨を伝えられたのである。
「トラブルなら、しょうがないな。いいぜ、留守番なら任せとけ」
「アタイも大丈夫よ。いってらっしゃい」
チビヨッシーとビビアンは嫌な顔一つ見せずに、了承したのだった。🌸はキーケースを持ってから、玄関の扉を開けて家を出ていく。
🌸がピザ屋に到着した頃___、チビヨッシーとビビアンは、会話に花を咲かせて盛り上がっていた。
「なぁ、ビビアン」
すると、先程まで笑顔を見せていたチビヨッシーが神妙な面持ちを見せた事にビビアンが気がついた。
「どうしたの?」
「あのさ……、最近、オレ………、なんかおかしくってさ」
「おかしい……? 何かあったの?」
「最近っていうか……、ゴンザレス達と旅をしてた時からなんだけど………、🌸と一緒に居ると、すっげぇドキドキするんだよ」
チビヨッシー自身も理解出来ない複雑な気持ちについて、ビビアンなら何か分かるのではないかと思い、チビヨッシーは🌸への思いを話し始めた。
スターストーン集めの際に、泣いていた🌸を見た時に調子を狂わされた事、泣き止んで欲しいと思った事、🌸を背中に乗せるとドキドキする事、🌸が笑うと、自分まで嬉しくなる………、純粋故に、チビヨッシーはそれらを正直にビビアンに話したのだ。
「ちび君……、キミ、🌸に恋してるのよ」
「こ、恋? それって、誰かを好きになったりするって奴の事か?」
チビヨッシーに問い掛けられた際___、ビビアンの脳裏に、赤色の帽子にトレードマークの髭を生やした男性の後ろ姿が浮かんだ。
「そう。ずっとその人と一緒に居たいとか、その人が笑ったり幸せだと、自分も嬉しくなったり……、その人が困っている時に、どんな事をしても助けてあげたいって思うの」
「あれ……、それ全部、オレが🌸に思ってる事だ」
「ふふっ、ちび君が🌸に恋してるんだぁ……、でも、旅をしてる時にも何となく分かってたの」
ビビアンから、恋心についてカミングアウトされると、チビヨッシーは分かりやすく驚いた表情を浮かべ、ビビアンの方に顔を向けた。
「だってちび君、🌸が疲れてた時には絶対、自分の背中に乗せてあげてたでしょ? 自分が連れてくって、マリオを困らせてたじゃない」
「うっ……、……、そ、そうだよ。オレが🌸を連れてかなきゃって思ってたんだよ」
旅での出来事を掘り起こされて、チビヨッシーは赤面しつつ、むくれた顔を見せてから、ビビアンから顔を逸らしていく。
「🌸には、好きって伝えるの?」
「あぁ。好きって分かったら、何だかスッキリしたしな。その……、チュチュリーナみたいなキスとか、好きな奴にはするんだしな。オレ……、初めてのキスは、🌸にあげたいな」
キスの話題が出た途端に、頬の赤みが濃くなり出していき、チビヨッシーのウブな一面が見られた。
その様子を見たビビアンは、🌸がチビヨッシーと同じ気持ちであるかは分からない為に、下手な事は言えないと思いつつも、健気な仲間に対してエールを送りたいという矛盾した思いも抱えていた。
「アタイは……、ちび君を応援するよ」
・
ビビアンとチビヨッシーとのパーティーは夕方でお開きとなり、ビビアンも満足気な表情を見せながら、姉達の元へ帰って行った。
軽く夕飯を食べ終え、風呂に入った🌸はベッドの上でチビヨッシーに絵本を読み聞かせていた。
内容は、魔法を使えるお姫様が悪の親玉に攫われ、姫の救出へと向かう男の物語であった。🌸は読み聞かせていた間、意外にもチビヨッシーが「飽きた」等と言ったり、駄々をこねる事もせずに大人しくしていた姿に驚いていた。
「何でお姫様は、主人公の男にキスして終わったんだ?」
『うーん……、主人公にとっては、ご褒美なんじゃないかな?』
「キスって……チュチュリーナが、ゴンザレスにしてた奴だろ?」
チビヨッシーが話した内容は、闘技場の倉庫で、仲間に加入する前のチュチュリーナがマリオの頬にキスした出来事である。
『そうだね。ちび君も興味あるの?』
背後から、何気なく問いかけた🌸の声が聞こえてくると____、チビヨッシーの胸の鼓動が速まる。
自分が🌸に恋をしていて、好きだからそのような状態になる。それは昼間にビビアンに相談した中で理解した事であった。🌸に好きだと伝えるとも______、
「🌸に、初めてのキスをあげたい」
布団にくるまっていたチビヨッシーが、🌸の顔を見ようとモゾモゾと動き出すと、シーツの擦れる音が響いた。
「オレ、🌸の事が好きだよ」
見上げる形で、チビヨッシーが自身の思いを告白をすると____、布団の上に、絵本が落ちていく音が聞こえた。
『……、……え、えっ?』
「🌸と一緒に居ると、ドキドキしてほっぺも赤くなるんだ。🌸が嬉しそうにしてると、オレも嬉しい。🌸が悲しそうにしてると、オレも悲しい。助けてやりたいって思うんだ」
チビヨッシーが🌸の元へ近づこうと、前へと進んでいく。突然の告白に頭が真っ白となっていた🌸であったが、チビヨッシーが迫っていた事に気がつくと、ビクッと肩を震わせた。
『ち、ちび君……、ま、待って………』
「ゴンザレス達と一緒に居た時から、そういうのがあったけど……、でも、やっと分かったんだ。🌸に恋してるから、そう思えるんだって」
🌸が声を掛けるも、チビヨッシーは体の動きを止めずに迫っており、胸部の位置にチビヨッシーの顔があり、距離が縮まっていた。
「オレ……🌸となら、キスした____、」
『待って! ちび君……、そういうの、闘技場の誰かに教えてもらったの?』
「違う! オレは、🌸が好きなんだよ!」
『じゃあ、わたしもちび君の事が好きって言ったら……、好きな人同士が何をするかも知ってるの?』
「………キス、じゃないのか?」
首を傾げて、純粋な眼をしてそう言ったチビヨッシーを見て、🌸は微妙な表情を浮かべてから、どうしようかと考えて唸り始める。
「おい、大丈夫か?」
(キスをするってだけかぁ……、いや、ちび君の口から変な事を言われたとしても、卒倒したかもしれないし……、………そっかぁ………)
チビヨッシーが心配そうにしている中で、🌸は腹を括るとある決心をしてから____、チャンピオン防衛戦…、と、呟いた。
『チャンピオン防衛戦まで、進めたら返事する』
・
(いや……、チャンピオンに挑むまでが相当長い道のりの筈なのに………、…………)
闘技場は、熱狂の嵐に包まれていた。観客席はほぼ満員であり、皆が今か今かと試合開始を待ち望んでいた。
(もう防衛戦まで進むって、どんだけ強いの! ちび君!)
何故、これ程までに人で溢れ返っているのか____、それは、本日のメインタイトルともいえる、チビヨッシーとゴールド・ホークの試合だからだ。
🌸に告白の返事を先延ばしされたチビヨッシーは、ひたすらに闘技場に通いつめた。自分が一部リーグに上がって、ゴールド・ホークと勝負出来る機会を作れれば、🌸から返事を貰える………、そこからのチビヨッシーの行動は早かったのである。
そして、会場の灯りが暗くなり、リング上の照明が一気に灯されると、観客席から熱狂の声が飛び始めた。
プロモーターのキノシコワの挨拶が終えると____、ゴールド・ホークとチビヨッシーが入場し、リング上で対峙する。
「へっ、ようやくチャンピオンとのご対面だ」
「まさか本当に、ここまで登り詰めてくるとはな……、だけど、ナンバー・ワンはこのオレ様だ! チビ相手でも、おれは手加減しないぜ」
「その言葉、おれがチャンピオンになった時の参考にさせて貰うよ……、なぁ、ここでアピールしてもいいよな?」
双方の煽り文句で会場のボルテージが高まっている中、チビヨッシーがキノシコワに問いかけた。
「えぇ、どうぞ。今回のあなたに課せられた命令でもありますので」
「サンクスだぜ」
キノシコワに感謝の言葉を述べ、チビヨッシーは観客席の方へと体の向きを変えた。観客の黄色い歓声が飛び、ファンサービスを求める声までも聞こえてきたが____、チビヨッシーはそれらを気にする様子を見せず、大きく口を開けた。
「🌸ーーーっっ!!」
突然、自分の名前が会場全体に響き渡り、🌸はビクッと大きく肩を震わせた。🌸以外の観客も誰かの名前を発した事が分かると、途端にシーン…、と、静かになった。
「オレが、世界で一番愛してる女の名前だーーーっっ!! ここまで進んだから、絶対に告白の返事しろーー!! おれの初めてのキスは、🌸にしかあげねーって決めてんだからさーー!!」
突然、そのような事を口走ったチビヨッシーであったが、それがアピールだと分かると____、観客達は驚きと困惑の声を上げ、その次に歓喜の声を上げていく。
「おい、グレート・ゴンザレス・ジュニア。ここを告白会場だと勘違いしてるのか?」
「悪いね、オレはここに来る為に、死ぬ気で頑張ったんだ。チャンピオンのアンタを倒したら、ベルトを土産に持って帰って返事も聞いてやるぜ」
リング上では、チャンピオン防衛戦を🌸への告白の場へと変えたチビヨッシーに苛立つゴールド・ホークと、闘志を燃やすチビヨッシーの姿があったものの_____、🌸は、闘技場に居る観客を含め、選手達の前で自分が返事をする前に、公開告白をしたチビヨッシーに驚きを隠せなかったのである。
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◆ペパマリRPG本編後の🌸とチビヨッシーの話。
◆ペパマリRPG/恋愛(片思い)/
◆本短編の🌸
・マリオ兄弟と知り合い(マリオを「君」呼び)。
・キノコ王国出身。現在は、仕事の関係でウーロン街に住んでいる。
・防御・カウンター系の技が得意。
・
スターストーン集めを終えた🌸は、チビヨッシーを連れてウーロン街へと帰ってきた。
まず始めに、闘技場でチビヨッシーの選手登録を済ませなければならず、🌸は新しくプロモーターに着任したキノシコワの元へ向かったが___、
「"グレート・ゴンザレス・ジュニア"の選手登録は、完了しました。しかし、いくら選手といえど彼は、まだタマゴから孵化したばかりの赤子です。闘技場の宿舎での寝泊まりは、推奨出来かねます」
プロモーター室のオフィスデスク越しに、キノシコワからそう伝えられた🌸は、隣に立っているチビヨッシーを見た。
「それじゃあ……闘技場の外で、泊まる宿を用意してくれるオレの保護者が居れば良いって訳だろ?」
「えぇ。宿舎を提供し且つ、幼いあなたの安全を保証してくれる保護者の方がいらっしゃるならば……」
チビヨッシーとキノシコワがそこまで言うと、二人の視線はウーロン街に住居を構えている🌸に向けられていた。
「🌸……ウーロン街に住居を構え、闘技場には仕事で顔を出す機会があり接触を図れるあなたが適任かと、わたしは思いました。しかし、仕事やプライベートに支障が出たりなど、都合が悪いようであれば……、先日、闘技場の真実を暴いて下さったお礼として、こちらで彼の下宿先をご用意させて頂きます」
キノシコワは推薦をしつつも、あくまで🌸の都合を考慮し、別の選択肢を提示した。しかし、下宿先の話題が出てくると、チビヨッシーは分かりやすくビックリした様子を見せ、🌸の顔を見上げた。
そんなチビヨッシーからの熱い視線を受けていた🌸は____、キノシコワと向き合い、口を開いた。
・
プロモーター室を後にした🌸とチビヨッシーは、闘技場のエントランスに戻ろうとした時____、入場口の扉が開き、チャンピオン防衛戦を行っていたゴールド・ホークが現れた。
「誰だ? オレ様の道を塞いでやがるのは………、何だ🌸、お前か」
『ゴールド・ホーク選手……お疲れ様です。先程のチャンピオン防衛戦、素晴らしかったですね』
「ふんっ。入場口で立ち見していた位でとは言わせてもらうが、試合を観戦していた事には変わりねぇ。素直に受け取るぜ」
毒を吐き捨てたものの、自分の試合を観戦した上で感想を述べた事に対しては否定せず、🌸の言葉を受け取った。
(この間は、ガンスの事で頭がいっぱいになってたのと、あんまり気にしてなかったけど……、🌸って、闘技場だとこんな感じなんだな)
旅をしていた中では見た事のなかった🌸の新たな一面を知り、🌸に視線を送っていたチビヨッシーの存在に、ゴールド・ホークが気がついた。
「お前、グレート・ゴンザレスと一緒に居た……おい、プロモーター室から出てきたって事は、もしかして選手登録したのか?」
「おれもゴンザレスみたいに、闘技場でチャンピオンを目指すつもりさ」
グレート・ゴンザレス____、闘技場でのマリオのリングネーム。かつてゴールド・ホークからチャンピオンの座を奪ったのは新しい記憶であったものの、ゴールド・ホークはチビヨッシーの発言を聞き、眉間に皺を寄せていく。
「へぇ、そりゃ大層な目標じゃねぇか。しかも、現チャンピオンのオレ様の前で堂々と言ってくれやがって……、相変わらず、礼儀がなってないようだな!」
「気に触ったなら、ごめんよ。でも、オレ……あんたをリングで倒して、チャンピオンになるつもりだぜ。覚えといてくれよ」
「その威勢、一部リーグに上がってくるまでに保てているのか……見物だな」
ゴールド・ホークとチビヨッシー___、現チャンピオンとルーキーの間でバチバチと火花が飛び散り、控え室や入場口の前に立っていたガードマン達が冷や汗を垂らしている。
『すみません。わたし達、そろそろここを出ていくので、今日はこれで失礼します』
そんな中に飛び込んできた🌸は、ゴールド・ホークに頭を下げてから、チビヨッシーを連れてエントランスへと向かっていく。
その後ろ姿を見つめていたゴールド・ホークとは対称的に、ガードマン達は内心、この場を収めてくれた🌸に感謝したのであった。
・
闘技場を後にして、🌸は久方ぶりに自宅へと帰ってきた。玄関を入ってから灯りを付けると、チビヨッシーは辺りをキョロキョロとしながら、ゆっくりと廊下を歩いていく。
「へぇ、ここが🌸の住んでる家なんだな」
『あんまり広くは無いけど、好きにくつろいでくれて良いからね』
「部屋の広さなんて、大して気にしてないぜ」
そう言いながら、チビヨッシーはベッドの上に乗ろうとしたものの___、僅かに届かず背伸びをして、必死に登ろうとしていた。
『ベッドに乗りたいの?』
🌸はチビヨッシーの体を掴むと、ベッドの上にソッと乗せていく。突然、🌸に体を掴まれた事に驚いたチビヨッシーは、ベッドの上に降ろされるまで硬直していた。
(く、くそ〜〜………、🌸に触られただけでも、また胸がドキドキしちまう……!)
・
チビヨッシーが🌸と同居し始めてから、数日が経過した_____、
毎日、闘技場に足を運んでいるチビヨッシーはランキングマッチにて、試合に出場している。チビヨッシーの勢いは凄まじく、彗星の如く現れた大型ルーキーとして一躍、注目を集め、ファンの数も日に日に増加していた。
そんなある日、休暇を取った🌸は____、自宅にある人物を招待した。
『いらっしゃい、ビビアン』
「お、お邪魔します……」
控えめに挨拶をすると、🌸の家に足を踏み入れたのは____、スターストーン集めの旅を共にしたビビアンであった。
「アタイ……誰かの家に遊びに行くなんて、初めてなの」
『そうなの? じゃあ、今日は楽しい日になるね』
「うん! それにしても、🌸の家は綺麗だね」
🌸とビビアンが他愛ない会話をしながら、廊下を歩いて、リビングに入るとチビヨッシーが出迎えた。
「ちび君、お久しぶりね」
「ビビアンも元気そうだな」
「よく見たら……、ちょっと筋肉ついたんじゃない? 鍛えたりしてるの?」
チビヨッシーと再会を果たしたビビアンは、以前よりどことなく腕に筋肉がつき、逞しくなった印象を覚える。
「毎日、闘技場で色々な奴らと試合してるからな。チャンピオンになるなら、もっと筋肉つけないとなんだぜ」
「そうなんだ……、アタイは筋肉がつくのは、大丈夫かな……」
その時___、🌸の携帯から着信音が響いた。リビングから離れて、キッチンで電話に出る。🌸は驚いた顔を見せるも、すぐにいつも通りの顔に戻ってから電話を終え、リビングへ戻っていく。
『ごめん、二人共。出前の宅配がトラブルで来れなくなったみたいで、店頭で受け取れって電話が来たの。少しの間だけ、留守番してもらってもいい?』
先程の電話は、ウーロン街のピザ屋の店主からだった。予約したパーティーセットの宅配をする予定だった従業員が急遽、休みになった事で宅配が出来なくなった旨を伝えられたのである。
「トラブルなら、しょうがないな。いいぜ、留守番なら任せとけ」
「アタイも大丈夫よ。いってらっしゃい」
チビヨッシーとビビアンは嫌な顔一つ見せずに、了承したのだった。🌸はキーケースを持ってから、玄関の扉を開けて家を出ていく。
🌸がピザ屋に到着した頃___、チビヨッシーとビビアンは、会話に花を咲かせて盛り上がっていた。
「なぁ、ビビアン」
すると、先程まで笑顔を見せていたチビヨッシーが神妙な面持ちを見せた事にビビアンが気がついた。
「どうしたの?」
「あのさ……、最近、オレ………、なんかおかしくってさ」
「おかしい……? 何かあったの?」
「最近っていうか……、ゴンザレス達と旅をしてた時からなんだけど………、🌸と一緒に居ると、すっげぇドキドキするんだよ」
チビヨッシー自身も理解出来ない複雑な気持ちについて、ビビアンなら何か分かるのではないかと思い、チビヨッシーは🌸への思いを話し始めた。
スターストーン集めの際に、泣いていた🌸を見た時に調子を狂わされた事、泣き止んで欲しいと思った事、🌸を背中に乗せるとドキドキする事、🌸が笑うと、自分まで嬉しくなる………、純粋故に、チビヨッシーはそれらを正直にビビアンに話したのだ。
「ちび君……、キミ、🌸に恋してるのよ」
「こ、恋? それって、誰かを好きになったりするって奴の事か?」
チビヨッシーに問い掛けられた際___、ビビアンの脳裏に、赤色の帽子にトレードマークの髭を生やした男性の後ろ姿が浮かんだ。
「そう。ずっとその人と一緒に居たいとか、その人が笑ったり幸せだと、自分も嬉しくなったり……、その人が困っている時に、どんな事をしても助けてあげたいって思うの」
「あれ……、それ全部、オレが🌸に思ってる事だ」
「ふふっ、ちび君が🌸に恋してるんだぁ……、でも、旅をしてる時にも何となく分かってたの」
ビビアンから、恋心についてカミングアウトされると、チビヨッシーは分かりやすく驚いた表情を浮かべ、ビビアンの方に顔を向けた。
「だってちび君、🌸が疲れてた時には絶対、自分の背中に乗せてあげてたでしょ? 自分が連れてくって、マリオを困らせてたじゃない」
「うっ……、……、そ、そうだよ。オレが🌸を連れてかなきゃって思ってたんだよ」
旅での出来事を掘り起こされて、チビヨッシーは赤面しつつ、むくれた顔を見せてから、ビビアンから顔を逸らしていく。
「🌸には、好きって伝えるの?」
「あぁ。好きって分かったら、何だかスッキリしたしな。その……、チュチュリーナみたいなキスとか、好きな奴にはするんだしな。オレ……、初めてのキスは、🌸にあげたいな」
キスの話題が出た途端に、頬の赤みが濃くなり出していき、チビヨッシーのウブな一面が見られた。
その様子を見たビビアンは、🌸がチビヨッシーと同じ気持ちであるかは分からない為に、下手な事は言えないと思いつつも、健気な仲間に対してエールを送りたいという矛盾した思いも抱えていた。
「アタイは……、ちび君を応援するよ」
・
ビビアンとチビヨッシーとのパーティーは夕方でお開きとなり、ビビアンも満足気な表情を見せながら、姉達の元へ帰って行った。
軽く夕飯を食べ終え、風呂に入った🌸はベッドの上でチビヨッシーに絵本を読み聞かせていた。
内容は、魔法を使えるお姫様が悪の親玉に攫われ、姫の救出へと向かう男の物語であった。🌸は読み聞かせていた間、意外にもチビヨッシーが「飽きた」等と言ったり、駄々をこねる事もせずに大人しくしていた姿に驚いていた。
「何でお姫様は、主人公の男にキスして終わったんだ?」
『うーん……、主人公にとっては、ご褒美なんじゃないかな?』
「キスって……チュチュリーナが、ゴンザレスにしてた奴だろ?」
チビヨッシーが話した内容は、闘技場の倉庫で、仲間に加入する前のチュチュリーナがマリオの頬にキスした出来事である。
『そうだね。ちび君も興味あるの?』
背後から、何気なく問いかけた🌸の声が聞こえてくると____、チビヨッシーの胸の鼓動が速まる。
自分が🌸に恋をしていて、好きだからそのような状態になる。それは昼間にビビアンに相談した中で理解した事であった。🌸に好きだと伝えるとも______、
「🌸に、初めてのキスをあげたい」
布団にくるまっていたチビヨッシーが、🌸の顔を見ようとモゾモゾと動き出すと、シーツの擦れる音が響いた。
「オレ、🌸の事が好きだよ」
見上げる形で、チビヨッシーが自身の思いを告白をすると____、布団の上に、絵本が落ちていく音が聞こえた。
『……、……え、えっ?』
「🌸と一緒に居ると、ドキドキしてほっぺも赤くなるんだ。🌸が嬉しそうにしてると、オレも嬉しい。🌸が悲しそうにしてると、オレも悲しい。助けてやりたいって思うんだ」
チビヨッシーが🌸の元へ近づこうと、前へと進んでいく。突然の告白に頭が真っ白となっていた🌸であったが、チビヨッシーが迫っていた事に気がつくと、ビクッと肩を震わせた。
『ち、ちび君……、ま、待って………』
「ゴンザレス達と一緒に居た時から、そういうのがあったけど……、でも、やっと分かったんだ。🌸に恋してるから、そう思えるんだって」
🌸が声を掛けるも、チビヨッシーは体の動きを止めずに迫っており、胸部の位置にチビヨッシーの顔があり、距離が縮まっていた。
「オレ……🌸となら、キスした____、」
『待って! ちび君……、そういうの、闘技場の誰かに教えてもらったの?』
「違う! オレは、🌸が好きなんだよ!」
『じゃあ、わたしもちび君の事が好きって言ったら……、好きな人同士が何をするかも知ってるの?』
「………キス、じゃないのか?」
首を傾げて、純粋な眼をしてそう言ったチビヨッシーを見て、🌸は微妙な表情を浮かべてから、どうしようかと考えて唸り始める。
「おい、大丈夫か?」
(キスをするってだけかぁ……、いや、ちび君の口から変な事を言われたとしても、卒倒したかもしれないし……、………そっかぁ………)
チビヨッシーが心配そうにしている中で、🌸は腹を括るとある決心をしてから____、チャンピオン防衛戦…、と、呟いた。
『チャンピオン防衛戦まで、進めたら返事する』
・
(いや……、チャンピオンに挑むまでが相当長い道のりの筈なのに………、…………)
闘技場は、熱狂の嵐に包まれていた。観客席はほぼ満員であり、皆が今か今かと試合開始を待ち望んでいた。
(もう防衛戦まで進むって、どんだけ強いの! ちび君!)
何故、これ程までに人で溢れ返っているのか____、それは、本日のメインタイトルともいえる、チビヨッシーとゴールド・ホークの試合だからだ。
🌸に告白の返事を先延ばしされたチビヨッシーは、ひたすらに闘技場に通いつめた。自分が一部リーグに上がって、ゴールド・ホークと勝負出来る機会を作れれば、🌸から返事を貰える………、そこからのチビヨッシーの行動は早かったのである。
そして、会場の灯りが暗くなり、リング上の照明が一気に灯されると、観客席から熱狂の声が飛び始めた。
プロモーターのキノシコワの挨拶が終えると____、ゴールド・ホークとチビヨッシーが入場し、リング上で対峙する。
「へっ、ようやくチャンピオンとのご対面だ」
「まさか本当に、ここまで登り詰めてくるとはな……、だけど、ナンバー・ワンはこのオレ様だ! チビ相手でも、おれは手加減しないぜ」
「その言葉、おれがチャンピオンになった時の参考にさせて貰うよ……、なぁ、ここでアピールしてもいいよな?」
双方の煽り文句で会場のボルテージが高まっている中、チビヨッシーがキノシコワに問いかけた。
「えぇ、どうぞ。今回のあなたに課せられた命令でもありますので」
「サンクスだぜ」
キノシコワに感謝の言葉を述べ、チビヨッシーは観客席の方へと体の向きを変えた。観客の黄色い歓声が飛び、ファンサービスを求める声までも聞こえてきたが____、チビヨッシーはそれらを気にする様子を見せず、大きく口を開けた。
「🌸ーーーっっ!!」
突然、自分の名前が会場全体に響き渡り、🌸はビクッと大きく肩を震わせた。🌸以外の観客も誰かの名前を発した事が分かると、途端にシーン…、と、静かになった。
「オレが、世界で一番愛してる女の名前だーーーっっ!! ここまで進んだから、絶対に告白の返事しろーー!! おれの初めてのキスは、🌸にしかあげねーって決めてんだからさーー!!」
突然、そのような事を口走ったチビヨッシーであったが、それがアピールだと分かると____、観客達は驚きと困惑の声を上げ、その次に歓喜の声を上げていく。
「おい、グレート・ゴンザレス・ジュニア。ここを告白会場だと勘違いしてるのか?」
「悪いね、オレはここに来る為に、死ぬ気で頑張ったんだ。チャンピオンのアンタを倒したら、ベルトを土産に持って帰って返事も聞いてやるぜ」
リング上では、チャンピオン防衛戦を🌸への告白の場へと変えたチビヨッシーに苛立つゴールド・ホークと、闘志を燃やすチビヨッシーの姿があったものの_____、🌸は、闘技場に居る観客を含め、選手達の前で自分が返事をする前に、公開告白をしたチビヨッシーに驚きを隠せなかったのである。
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