短編
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◆ペパマリRPG本編中の🌸とチビヨッシーの話。
◆ペパマリRPG/恋愛(片思い)/
◆本短編の🌸
・マリオ兄弟と知り合い(マリオを「君」呼び)。
・キノコ王国出身。現在は、仕事の関係でウーロン街に住んでいる。
・防御・カウンター系の技が得意。
・
タマゴから孵化したチビヨッシーが最初に目にしたのは_____、闘技場の第二リーグ控え室に居た、マリオと🌸であった。
「よう! あんたのお陰で、こうして無事にタマゴから生まれる事が出来たよ。サンクスだぜ!」
ヨッシー族は、温厚で平和的と有名であるのだが、ミスター・チンミが南の国から取り寄せた不思議なタマゴに入っていたチビヨッシーは、好戦的かつ生意気で、ませた一面が見られたのだ。
『ねぇ、マリオ君。わたし、ヨッシー族ってヨースター島から来たキミの相棒ぐらいしか知らないけど……、みんな、こんな感じなの?』
「うーん……まぁ、ヨッシーにも色々な性格のヨッシーが居るのさ」
マリオもまた、温厚で好物の果物に目がない健啖家のヨッシーしか知らない事もあり、今回のようなチビヨッシーに会う機会は初めてに等しかった。
だが、二人がそのような事を考えているなど気にも留めず、チビヨッシーは無邪気な笑顔を浮かべながら、口を開いた。
「どんな相手でも、オレが丸ごと呑み込んでやるからさ。大舟に乗ったつもりで任せてくれよ!」
・
闘技場のトーナメントを勝ち抜き、更にはオーナーであるガンスの野望を打ち砕いたマリオ達は、三つ目のスターストーンを手に入れた。
キノシコワや行方不明として処理されていた他の選出達に見送られながら、マリオ達は闘技場を後にしていくと____、入口を出てすぐの所で、🌸が地面に座り込んだ。
「🌸、大丈夫?」
『ごめん。さっきのガンス社長とのバトルで、フラワーポイントを使い過ぎちゃって………』
パワーストーンの力を悪用し、強大な力を一時的に手に入れたガンスとの戦闘では、🌸はマリオとチビヨッシーのサポートに徹した。防御技を繰り出して技の威力を半減し、わざと攻撃を受けてカウンターを仕掛けるといった戦法を取り、フラワーポイントを大量に消費していたのであった。
「だったら、オレの背中に乗れよ。アンタみたいなデカい大人でも、楽勝なんだぜ」
🌸の元へ近づいたチビヨッシーは、自身の小さな背中を指しながら、そう言った。チビヨッシーといえど、成人男性のマリオを乗せるのは勿論、ふんばりジャンプをして移動するのも可能だったりと、ヨッシーと何ら変わらない性能である。
『じゃあ……、ゴロツキタウンに戻るまで、お願いしようかな』
「どーんと乗ってくれよ!」
ゆっくりと立ち上がった🌸は、チビヨッシーの負担を気にしてか、ソッと背中に体重を掛けていく。
「ゴンザレスより軽いから、どうって事ないな」
いつもと変わらぬ調子で言葉を発したチビヨッシーに、🌸は内心、ホッとしていた。もし、マリオ君よりも重いと言われたら、どうしよう……、と、気にしていたからである。
「この調子だと、今日は飛行船の中で寝泊まりする事になるな。まぁ、ボク達以外に客も居ないみたいだから……、ちび、今日は貸し切りだ」
「ホントかよ! へへっ、一回でもいいから、貸し切って乗ってみたいって思ってたんだ! まさか、こんなに早く叶うなんてな!」
飛行船を貸切で使用出来るとマリオに言われ、チビヨッシーは目を輝かせて、分かりやすくワクワクとした様子を見せる。
マリオ、クリスチーヌ、ノコタロウ、クラウダに続いて、チビヨッシーも飛行船に乗っていくと____、ふと、背中に乗っていた🌸の匂いを感じ取った。
(ゴンザレスよりは軽いけど………何か良い匂いもしてきて……、何でか分かんねぇけど、ちょっとだけドキドキすんなぁ)
仲間になって間もないチビヨッシーは、主にマリオを背中に乗せていた。マリオや乗せるとなれば、チビヨッシーも大して緊張もせずに居られた
しかし、女性の🌸を背中に乗せると、マリオ達と違って体は軽く、甘い匂いに鼻腔を刺激され、胸がドキドキする不思議な感覚に襲われたのである。
『ちび君? どうしたの?』
「な、なんでもねぇよ」
後ろから🌸に声を掛けられ、ハッとしたチビヨッシーは、ぶっきらぼうに返事をした。
(でも………この匂いは、嫌いな匂いじゃない)
・
「あらン……🌸ちゃんってば、すっかり眠っちゃってるわねン」
飛行船に揺られ、ガンスとの戦いの疲れが出てきた🌸は、チビヨッシーの背中の上で器用に眠りについていた。
「ちび君も、そろそろ寝た方が良いよ」
「うぅ〜ん……、オレ、まだ眠たくねぇよ」
孵化したばかりで、赤ん坊のチビヨッシーを気にかけるノコタロウであったが、眠気と必死に戦い、うつらうつらとなっているチビヨッシーは強がって見せた。
「ダメよ、強がっちゃ」
「🌸が疲れて寝ちゃってるなら……オレが、ちゃんと乗せてないと床に落としちゃうだろ………、むにゃ………」
しかし、クリスチーヌに強がりを見透かされると、チビヨッシーは"🌸を床に落としたくない"と、別の理由を見つけて中々、🌸を背中から降ろさせなかった。
「ちび。強いオトコになるんだったら、睡眠も大事だよ」
「ゴンザレス〜……オレ……、まだ眠くなんか………、………」
見かねてマリオがフォローに入ると、チビヨッシーの重たい瞼が下ろされ、眠りにつこうとしていた。
その隙を狙い、クラウダは🌸の体をソッと抱える。同じくマリオも、眠りについたチビヨッシーを腕の中に大事そうに抱えていた。
「それにしても……ちびちゃんってば随分、強情だったわね。🌸に頼られたのが、嬉しかったのかしら?」
「ちび君の可愛い所が見れましたね。本人を前にしたら、とても言えませんけど……」
クリスチーヌとノコタロウは、生意気ながらませているチビヨッシーの子供らしく、可愛い一面を見られ、微笑ましく思っていた。
「マリオちゃん。🌸ちゃんは、アタクシ達が責任持って、ベッドまで運んでいくわねぇン」
「頼むよ、クラウダ、クリスチーヌ」
・
マリオ達の仲間となったチビヨッシーは、「ちび」という愛称で皆から親しまれていた。微妙なネーミングセンスだと毒づくも、呼び慣れてくると悪くないとも思い始めていたのである。
次のパワーストーンの在り処として、チビヨッシーはマリオ達と共にウスグラ村に赴いた。紆余曲折がありながらもオドロン寺院に住み着くバケバケ族のランペルを撃破し、四つ目のパワーストーンを手に入れた。
「んんぅ〜〜………、んぁ〜…………」
ウスグラ村の宿に泊まり、寝床に付いていたチビヨッシーは目が覚めた。窓の外を見るも、まだ薄暗く、太陽の姿すら出ていなかった。
「いま、何時だ?、……、………あれ?」
ふわぁ…、と、欠伸をしながら隣のベッドに目を向けると_____、布団が捲られ、シーツに皺が出来ている状態のまま、ある人物の姿が無くなっていた。
「🌸が居ない……、トイレは灯りが付いてない……布団もまだ温かい………、もしかして、外に……!?」
同宿者の🌸の姿が見当たらなかった。バスルームは灯りが付いておらず、荷物も机に置いてあるままであった。チビヨッシーが🌸の眠っていたベッドのシーツに触れると、熱を感じ取った。
いくらランペルを倒したばかりとはいえ、薄暗く気味の悪いウスグラ村の夜道を大人一人で歩くなど、危険でしかない。そう思ったチビヨッシーはすぐに行動に移すと、部屋を飛び出ていく。
宿を出て行ったチビヨッシーが、夜道を駆け回っていると____、木の傍で座り込んでいる🌸の姿を発見した。
「あんな所に居たのかよ……、また足が疲れて、宿に帰れなくなっ____、」
ぐすん…、と、🌸が座り込んでいた方向から、涙ぐむ声が聞こえてくると、チビヨッシーの言葉が詰まった。
(ひょっとして……、泣いてんのか?)
チビヨッシーがそう考えている間も、🌸の涙ぐむ声は収まらずに、鼻水を啜 る音も聞こえ出した。
宿を飛び出して、誰にも見つからない様に一人で泣いていた事が分かると____、チビヨッシーは一歩、足を前に出していく。🌸の背後にまで近づいてから、猫背になって泣いている🌸の名前を呼んだ。
『……っ、………、ちび君』
チビヨッシーの声が聞こえ、振り向いた🌸は____、両目から大粒の涙を流しており、それをチビヨッシーに見られまいと手で拭っている所であった。
「なんで、そんな所で泣いてんだよ」
『あっ……、ごめんね。変な所見せちゃって……もう大丈夫だから。宿に帰らな____、』
「我慢すんなよ! 全然、大丈夫そうじゃねぇだろ!」
子供相手に変な事を話せない…、と、はぐらかそうとした🌸を見たチビヨッシーは、🌸の態度に苛立つと、思わず声を上げた。
「ご、ごめん……オレ、そんな怒って言うつもりじゃなかったのに………」
感情任せに🌸を責め立てる様な言葉を発した事に、すぐに気がついたチビヨッシーはすぐに謝罪の言葉を述べた。
『う、ううん……、わたしの方こそ……、………本物のマリオ君の事を疑っちゃったの、凄く気にしてたの………ぐすっ……、………っ』
はぐらかす事を止めて、素直に自分の心中を吐き出した🌸であったが____、ケラケラと笑うランペルと、紫色の影と化したマリオにカウンターを仕掛けた自分の姿を思い出すと再び、目を潤わせてポロッと涙を流す。
「な、泣くなよ。オレだって、あいつがゴンザレスの偽者だって分からなかったんだぜ」
『本物だって訴えても、誰にも分かって貰えないのは……とても辛い事なんだよ』
ビビアンが付いてくれてたから、まだ良かったかもしれないけどね……、と、🌸の口から零れた。
キノコ王国で生まれ、マリオとルイージとそれとなく付き合いのあった🌸だったが、成人を迎えてから仕事の都合で、ゴロツキタウンに移住した。今回のパワーストーンを巡る旅で偶然、マリオと再会し、成り行きで旅に同行する事になったのである。
だが、ランペルの変身能力にまんまと騙された🌸は、本物のマリオにカウンター攻撃を仕掛けたりと、心の傷になり得ない事をしでかした事を自責していた。口頭で謝罪したものの、持ち前の陽気さでマリオは嫌な顔を一つ見せずに、謝罪を受け入れてくれたが、🌸はそれでも自分を責める事を止められずに、こうして涙を流している。
🌸の生い立ち等、知る由もないチビヨッシーは____、🌸が涙を流して、泣いている姿に衝撃を覚え、プルプルと小さな拳を震わせていた。
「アンタが泣いてる所を見ると……、なんか、こう……調子狂うんだよ! オレの方が子供なのに、放っておけないっていうかさ……、とにかく、そんな泣き虫な🌸は………、オレ、見たくねぇよ!」
🌸に泣き止んで欲しい___、そう思ったチビヨッシーであったが、何故だか自分の思いを上手く言語化出来ずに、自分の思いの丈を吐き出していく。
始めは、涙を流しながらポカンとしていた🌸であったが、クスッと小さく笑う。目を細めてから、笑みを浮かべてチビヨッシーを見た。
『……、……ちび君は、強いね。それに大人っぽくて、わたしの方が子供だ』
「止めろよ。今の🌸から、お世辞言われても全部、ネガティブな🌸の言葉にしか聞こえねぇ」
『本当に思ってる事だよ?』
「……っ、もう帰ろうぜ。扉も開けたままだから、ドロボーに入られちゃメンドーだしさ」
🌸と会話をする度に、心臓の鼓動が速まると、ドキドキが収まらずにチビヨッシーは話題を切り替えていく。
「なぁ……、背中に乗ってくか?」
頬に熱が集まり、紅潮しているのを隠す様にチビヨッシーは🌸から背を向けていくと、そう声を掛けた。
『いいの?』
「そんなに泣き虫じゃ、ちゃんと宿に帰って来るかも分からないんだよ。それに、🌸は軽いからどうって事ないぜ」
🌸の顔を見る事もなく、赤面しているチビヨッシーにそう言われた🌸は、素直に応じると、チビヨッシーの背中にソッと乗っていく。
(前にも、🌸を乗せた事はあるけど………、その時より、すげぇドキドキする。ほっぺは熱いし、🌸が笑ってると、オレも……ちょっとだけ嬉しくなって………なんだよ、これ。訳分かんねぇ………)
宿への帰路を辿っていく中で、チビヨッシーは🌸に対して、これまで抱いたことの無い思いを胸に秘め、一人で悶々としていた。
・
その後____、ゴロツキタウンを中心に、様々な場所を巡り、パワーストーンを全て集めたマリオは、復活したカゲの女王を見事に倒しきった。
ピーチ姫を無事に救出したマリオは、ゴロツキタウンでの用事を終えた。それは、クリスチーヌやノコタロウ……、🌸達との別れを示している。
早朝の港にて、これまで旅を共にしてきた仲間達に見送られながら、マリオとピーチ姫を乗せた船は出航し、キノコ王国に向けて旅立っていく。
(マリオ君とピーチ姫もキノコ王国に帰って……、わたしもウーロン街に帰らなきゃなぁ)
それぞれ自分の住んでいる街や島に帰るべく、準備を進めていた。同じく🌸もウーロン街に住居を構えている為、飛行船に乗って帰る事となる。
「🌸!!」
そう考えていた時____、🌸は背後から、チビヨッシーに声を掛けられる。
『ちび君?』
「オレも……、オレも、ウーロン街に連れてって!!」
チビヨッシー自らそう申し出たものの、🌸にとっては思いもよらぬ事であった為に、次に出たのは素っ頓狂な声であった。
『もしかして、マリオ君みたいに闘技場で……?』
「ゴンザレスみたいに、闘技場でチャンピオンを目指すものあるけど……、オレ、あんたと一緒に居たいんだよ!」
闘技場でマリオの様に、チャンピオンを目指したい目標があるのは本音であったが、🌸と二度と会えなくなる恐れがあるとも思い、チビヨッシー本人さえも理解していない恋心を胸に秘め、勢いでウーロン街への同行を望んだ。
対して、🌸は____、自分はここまでチビヨッシーに懐かれていたのかと困惑していたのであった。
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◆ペパマリRPG本編中の🌸とチビヨッシーの話。
◆ペパマリRPG/恋愛(片思い)/
◆本短編の🌸
・マリオ兄弟と知り合い(マリオを「君」呼び)。
・キノコ王国出身。現在は、仕事の関係でウーロン街に住んでいる。
・防御・カウンター系の技が得意。
・
タマゴから孵化したチビヨッシーが最初に目にしたのは_____、闘技場の第二リーグ控え室に居た、マリオと🌸であった。
「よう! あんたのお陰で、こうして無事にタマゴから生まれる事が出来たよ。サンクスだぜ!」
ヨッシー族は、温厚で平和的と有名であるのだが、ミスター・チンミが南の国から取り寄せた不思議なタマゴに入っていたチビヨッシーは、好戦的かつ生意気で、ませた一面が見られたのだ。
『ねぇ、マリオ君。わたし、ヨッシー族ってヨースター島から来たキミの相棒ぐらいしか知らないけど……、みんな、こんな感じなの?』
「うーん……まぁ、ヨッシーにも色々な性格のヨッシーが居るのさ」
マリオもまた、温厚で好物の果物に目がない健啖家のヨッシーしか知らない事もあり、今回のようなチビヨッシーに会う機会は初めてに等しかった。
だが、二人がそのような事を考えているなど気にも留めず、チビヨッシーは無邪気な笑顔を浮かべながら、口を開いた。
「どんな相手でも、オレが丸ごと呑み込んでやるからさ。大舟に乗ったつもりで任せてくれよ!」
・
闘技場のトーナメントを勝ち抜き、更にはオーナーであるガンスの野望を打ち砕いたマリオ達は、三つ目のスターストーンを手に入れた。
キノシコワや行方不明として処理されていた他の選出達に見送られながら、マリオ達は闘技場を後にしていくと____、入口を出てすぐの所で、🌸が地面に座り込んだ。
「🌸、大丈夫?」
『ごめん。さっきのガンス社長とのバトルで、フラワーポイントを使い過ぎちゃって………』
パワーストーンの力を悪用し、強大な力を一時的に手に入れたガンスとの戦闘では、🌸はマリオとチビヨッシーのサポートに徹した。防御技を繰り出して技の威力を半減し、わざと攻撃を受けてカウンターを仕掛けるといった戦法を取り、フラワーポイントを大量に消費していたのであった。
「だったら、オレの背中に乗れよ。アンタみたいなデカい大人でも、楽勝なんだぜ」
🌸の元へ近づいたチビヨッシーは、自身の小さな背中を指しながら、そう言った。チビヨッシーといえど、成人男性のマリオを乗せるのは勿論、ふんばりジャンプをして移動するのも可能だったりと、ヨッシーと何ら変わらない性能である。
『じゃあ……、ゴロツキタウンに戻るまで、お願いしようかな』
「どーんと乗ってくれよ!」
ゆっくりと立ち上がった🌸は、チビヨッシーの負担を気にしてか、ソッと背中に体重を掛けていく。
「ゴンザレスより軽いから、どうって事ないな」
いつもと変わらぬ調子で言葉を発したチビヨッシーに、🌸は内心、ホッとしていた。もし、マリオ君よりも重いと言われたら、どうしよう……、と、気にしていたからである。
「この調子だと、今日は飛行船の中で寝泊まりする事になるな。まぁ、ボク達以外に客も居ないみたいだから……、ちび、今日は貸し切りだ」
「ホントかよ! へへっ、一回でもいいから、貸し切って乗ってみたいって思ってたんだ! まさか、こんなに早く叶うなんてな!」
飛行船を貸切で使用出来るとマリオに言われ、チビヨッシーは目を輝かせて、分かりやすくワクワクとした様子を見せる。
マリオ、クリスチーヌ、ノコタロウ、クラウダに続いて、チビヨッシーも飛行船に乗っていくと____、ふと、背中に乗っていた🌸の匂いを感じ取った。
(ゴンザレスよりは軽いけど………何か良い匂いもしてきて……、何でか分かんねぇけど、ちょっとだけドキドキすんなぁ)
仲間になって間もないチビヨッシーは、主にマリオを背中に乗せていた。マリオや乗せるとなれば、チビヨッシーも大して緊張もせずに居られた
しかし、女性の🌸を背中に乗せると、マリオ達と違って体は軽く、甘い匂いに鼻腔を刺激され、胸がドキドキする不思議な感覚に襲われたのである。
『ちび君? どうしたの?』
「な、なんでもねぇよ」
後ろから🌸に声を掛けられ、ハッとしたチビヨッシーは、ぶっきらぼうに返事をした。
(でも………この匂いは、嫌いな匂いじゃない)
・
「あらン……🌸ちゃんってば、すっかり眠っちゃってるわねン」
飛行船に揺られ、ガンスとの戦いの疲れが出てきた🌸は、チビヨッシーの背中の上で器用に眠りについていた。
「ちび君も、そろそろ寝た方が良いよ」
「うぅ〜ん……、オレ、まだ眠たくねぇよ」
孵化したばかりで、赤ん坊のチビヨッシーを気にかけるノコタロウであったが、眠気と必死に戦い、うつらうつらとなっているチビヨッシーは強がって見せた。
「ダメよ、強がっちゃ」
「🌸が疲れて寝ちゃってるなら……オレが、ちゃんと乗せてないと床に落としちゃうだろ………、むにゃ………」
しかし、クリスチーヌに強がりを見透かされると、チビヨッシーは"🌸を床に落としたくない"と、別の理由を見つけて中々、🌸を背中から降ろさせなかった。
「ちび。強いオトコになるんだったら、睡眠も大事だよ」
「ゴンザレス〜……オレ……、まだ眠くなんか………、………」
見かねてマリオがフォローに入ると、チビヨッシーの重たい瞼が下ろされ、眠りにつこうとしていた。
その隙を狙い、クラウダは🌸の体をソッと抱える。同じくマリオも、眠りについたチビヨッシーを腕の中に大事そうに抱えていた。
「それにしても……ちびちゃんってば随分、強情だったわね。🌸に頼られたのが、嬉しかったのかしら?」
「ちび君の可愛い所が見れましたね。本人を前にしたら、とても言えませんけど……」
クリスチーヌとノコタロウは、生意気ながらませているチビヨッシーの子供らしく、可愛い一面を見られ、微笑ましく思っていた。
「マリオちゃん。🌸ちゃんは、アタクシ達が責任持って、ベッドまで運んでいくわねぇン」
「頼むよ、クラウダ、クリスチーヌ」
・
マリオ達の仲間となったチビヨッシーは、「ちび」という愛称で皆から親しまれていた。微妙なネーミングセンスだと毒づくも、呼び慣れてくると悪くないとも思い始めていたのである。
次のパワーストーンの在り処として、チビヨッシーはマリオ達と共にウスグラ村に赴いた。紆余曲折がありながらもオドロン寺院に住み着くバケバケ族のランペルを撃破し、四つ目のパワーストーンを手に入れた。
「んんぅ〜〜………、んぁ〜…………」
ウスグラ村の宿に泊まり、寝床に付いていたチビヨッシーは目が覚めた。窓の外を見るも、まだ薄暗く、太陽の姿すら出ていなかった。
「いま、何時だ?、……、………あれ?」
ふわぁ…、と、欠伸をしながら隣のベッドに目を向けると_____、布団が捲られ、シーツに皺が出来ている状態のまま、ある人物の姿が無くなっていた。
「🌸が居ない……、トイレは灯りが付いてない……布団もまだ温かい………、もしかして、外に……!?」
同宿者の🌸の姿が見当たらなかった。バスルームは灯りが付いておらず、荷物も机に置いてあるままであった。チビヨッシーが🌸の眠っていたベッドのシーツに触れると、熱を感じ取った。
いくらランペルを倒したばかりとはいえ、薄暗く気味の悪いウスグラ村の夜道を大人一人で歩くなど、危険でしかない。そう思ったチビヨッシーはすぐに行動に移すと、部屋を飛び出ていく。
宿を出て行ったチビヨッシーが、夜道を駆け回っていると____、木の傍で座り込んでいる🌸の姿を発見した。
「あんな所に居たのかよ……、また足が疲れて、宿に帰れなくなっ____、」
ぐすん…、と、🌸が座り込んでいた方向から、涙ぐむ声が聞こえてくると、チビヨッシーの言葉が詰まった。
(ひょっとして……、泣いてんのか?)
チビヨッシーがそう考えている間も、🌸の涙ぐむ声は収まらずに、鼻水を
宿を飛び出して、誰にも見つからない様に一人で泣いていた事が分かると____、チビヨッシーは一歩、足を前に出していく。🌸の背後にまで近づいてから、猫背になって泣いている🌸の名前を呼んだ。
『……っ、………、ちび君』
チビヨッシーの声が聞こえ、振り向いた🌸は____、両目から大粒の涙を流しており、それをチビヨッシーに見られまいと手で拭っている所であった。
「なんで、そんな所で泣いてんだよ」
『あっ……、ごめんね。変な所見せちゃって……もう大丈夫だから。宿に帰らな____、』
「我慢すんなよ! 全然、大丈夫そうじゃねぇだろ!」
子供相手に変な事を話せない…、と、はぐらかそうとした🌸を見たチビヨッシーは、🌸の態度に苛立つと、思わず声を上げた。
「ご、ごめん……オレ、そんな怒って言うつもりじゃなかったのに………」
感情任せに🌸を責め立てる様な言葉を発した事に、すぐに気がついたチビヨッシーはすぐに謝罪の言葉を述べた。
『う、ううん……、わたしの方こそ……、………本物のマリオ君の事を疑っちゃったの、凄く気にしてたの………ぐすっ……、………っ』
はぐらかす事を止めて、素直に自分の心中を吐き出した🌸であったが____、ケラケラと笑うランペルと、紫色の影と化したマリオにカウンターを仕掛けた自分の姿を思い出すと再び、目を潤わせてポロッと涙を流す。
「な、泣くなよ。オレだって、あいつがゴンザレスの偽者だって分からなかったんだぜ」
『本物だって訴えても、誰にも分かって貰えないのは……とても辛い事なんだよ』
ビビアンが付いてくれてたから、まだ良かったかもしれないけどね……、と、🌸の口から零れた。
キノコ王国で生まれ、マリオとルイージとそれとなく付き合いのあった🌸だったが、成人を迎えてから仕事の都合で、ゴロツキタウンに移住した。今回のパワーストーンを巡る旅で偶然、マリオと再会し、成り行きで旅に同行する事になったのである。
だが、ランペルの変身能力にまんまと騙された🌸は、本物のマリオにカウンター攻撃を仕掛けたりと、心の傷になり得ない事をしでかした事を自責していた。口頭で謝罪したものの、持ち前の陽気さでマリオは嫌な顔を一つ見せずに、謝罪を受け入れてくれたが、🌸はそれでも自分を責める事を止められずに、こうして涙を流している。
🌸の生い立ち等、知る由もないチビヨッシーは____、🌸が涙を流して、泣いている姿に衝撃を覚え、プルプルと小さな拳を震わせていた。
「アンタが泣いてる所を見ると……、なんか、こう……調子狂うんだよ! オレの方が子供なのに、放っておけないっていうかさ……、とにかく、そんな泣き虫な🌸は………、オレ、見たくねぇよ!」
🌸に泣き止んで欲しい___、そう思ったチビヨッシーであったが、何故だか自分の思いを上手く言語化出来ずに、自分の思いの丈を吐き出していく。
始めは、涙を流しながらポカンとしていた🌸であったが、クスッと小さく笑う。目を細めてから、笑みを浮かべてチビヨッシーを見た。
『……、……ちび君は、強いね。それに大人っぽくて、わたしの方が子供だ』
「止めろよ。今の🌸から、お世辞言われても全部、ネガティブな🌸の言葉にしか聞こえねぇ」
『本当に思ってる事だよ?』
「……っ、もう帰ろうぜ。扉も開けたままだから、ドロボーに入られちゃメンドーだしさ」
🌸と会話をする度に、心臓の鼓動が速まると、ドキドキが収まらずにチビヨッシーは話題を切り替えていく。
「なぁ……、背中に乗ってくか?」
頬に熱が集まり、紅潮しているのを隠す様にチビヨッシーは🌸から背を向けていくと、そう声を掛けた。
『いいの?』
「そんなに泣き虫じゃ、ちゃんと宿に帰って来るかも分からないんだよ。それに、🌸は軽いからどうって事ないぜ」
🌸の顔を見る事もなく、赤面しているチビヨッシーにそう言われた🌸は、素直に応じると、チビヨッシーの背中にソッと乗っていく。
(前にも、🌸を乗せた事はあるけど………、その時より、すげぇドキドキする。ほっぺは熱いし、🌸が笑ってると、オレも……ちょっとだけ嬉しくなって………なんだよ、これ。訳分かんねぇ………)
宿への帰路を辿っていく中で、チビヨッシーは🌸に対して、これまで抱いたことの無い思いを胸に秘め、一人で悶々としていた。
・
その後____、ゴロツキタウンを中心に、様々な場所を巡り、パワーストーンを全て集めたマリオは、復活したカゲの女王を見事に倒しきった。
ピーチ姫を無事に救出したマリオは、ゴロツキタウンでの用事を終えた。それは、クリスチーヌやノコタロウ……、🌸達との別れを示している。
早朝の港にて、これまで旅を共にしてきた仲間達に見送られながら、マリオとピーチ姫を乗せた船は出航し、キノコ王国に向けて旅立っていく。
(マリオ君とピーチ姫もキノコ王国に帰って……、わたしもウーロン街に帰らなきゃなぁ)
それぞれ自分の住んでいる街や島に帰るべく、準備を進めていた。同じく🌸もウーロン街に住居を構えている為、飛行船に乗って帰る事となる。
「🌸!!」
そう考えていた時____、🌸は背後から、チビヨッシーに声を掛けられる。
『ちび君?』
「オレも……、オレも、ウーロン街に連れてって!!」
チビヨッシー自らそう申し出たものの、🌸にとっては思いもよらぬ事であった為に、次に出たのは素っ頓狂な声であった。
『もしかして、マリオ君みたいに闘技場で……?』
「ゴンザレスみたいに、闘技場でチャンピオンを目指すものあるけど……、オレ、あんたと一緒に居たいんだよ!」
闘技場でマリオの様に、チャンピオンを目指したい目標があるのは本音であったが、🌸と二度と会えなくなる恐れがあるとも思い、チビヨッシー本人さえも理解していない恋心を胸に秘め、勢いでウーロン街への同行を望んだ。
対して、🌸は____、自分はここまでチビヨッシーに懐かれていたのかと困惑していたのであった。
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