短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
.
◆青年(モブ)が🌸に惚れる話。
◆マリオサンシャイン編本編/モブ視点/苦い
◆"マリオサンシャイン編"(長編)に出てきた場面・セリフが出てきます。長編を読んでいなくても大丈夫な様に執筆しましたので、読後推奨は特にございません。
・
島を汚すラクガキ犯が現れた。一刻も早く、島を包み込む黒い雲を消し去ってくれ______、青年はそう願っていた。
『任せて下さい! ポンプちゃんも一緒なら、どんな敵にも負けませんから!!』
手配書に似顔絵が描かれていた🌸は、住民達から犯罪者と呼ばれているにも関わらず、マリオと共に高らかにそう宣言し________、青年は視線を奪われていた。
「あの……、何だか大変ですね」
モンテ族達は、広場に出没したドロドロパックンが退治された事で一安心して、その場から解散していく。その中で、青年は勇気を出して異国の人間である🌸に声を掛けた。
『きみは、この島の人?』
「あっ、はい………、この島に来るのは、初めてですよね?」
青年は元々、異国の地で育った人間であったが仕事の関係で今はドルピック島に移住していた。島の人口は原住民のモンテ族やマーレ族が大半を占めており、人間はほとんど居ないといってもいい。
「ぼく、この島には何年も前から暮らしているので、美味しい料理を出してくれるオススメの店も知ってますよ………、もし良ければ、二人で______」
「おーい、🌸。何してんだ?」
「一緒に用意された宿に行きましょ」
青年の言葉を遮るようにして現れたのは、ポンプを装着したマリオとピーチ姫だった。
(この二人……確かさっき、あの変なドロドロの化け物と戦ってた時に一緒に居た………)
『あ、マリオ、ピーチ姫。この人がね、ご飯をご馳走してくれるだって』
(えっ!?)
二人で食事をしようと心の中で目論 でいた青年であったが、🌸がマリオとピーチ姫にそのように伝えてしまった為に、マリオは食事を取ろうという考えに、すっかりと脳内が支配されていた。
「おぉー、この島にも良い奴は居るんだな」
「いいのかしら?わたし達、ご馳走になっても」
「………、えぇ。皆さんのお口に合う料理が沢山ありますよ」
青年は何とか笑顔を取り繕い、🌸達を料理屋へと連れていくのである。入店してからも、席順は男同士、女同士と分けられ、真正面に座っていたのはピーチ姫だった。斜めに座る🌸を見るのはマリオ達に不自然に思われると察した青年は、いつもは美味いと感じていた料理の味を楽しめなかったのである。
・
🌸がマリオと共にシャイン集めを終えて、"ビアンコヒルズ"から帰って来た頃______、青年は気晴らしに浜辺を散歩していた。
青年がふと、穏やかに波打つ海を見ようと視線をそちらに向けた時______、岩場の影に置かれていた、緑色の斑点 模様が入っていた奇妙なタマゴを発見した。
(何だあれ……タマゴか?それにしても、やけに大きいし、変な斑点 模様が入ってて……気持ち悪いな)
スーパーで商品として売っているタマゴなら話が分かる。しかし青年は特徴的なタマゴは勿論、ヨッシーそのものも見た事が無かった為に不気味に感じた。いつタマゴが孵化 して、自分に襲いかかってくるかも分からない未知への恐怖と不安感に襲われた。青年は散歩を切り上げて、町へと戻っていく。
ドルピックタウンに戻って、自分の家へと帰ろうとした青年は大王像の前を通り過ぎようとした時に______、ヤシの木の下でトロピカルフルーツを飲んでいる🌸を偶然、発見した。
(🌸さん……こっちに帰ってきてたのか……!)
🌸は青年に気づいている様子など微塵 もなく、穏やかに波打ってさざめく海を眺めているだけだった。🌸がマリオと"ビアンコヒルズ"に出掛けるまで、ニセマリオがピーチ姫を攫う騒動が起きた為に、青年は食事をした日以降に関わる事はなかったのだ。
(あの髭面の男もお姫様も居ない……、話すなら、今がチャンスだ………!)
島のシャインを一緒に集めているマリオ、ガールズトークを楽しんでいるピーチ姫の姿が無かった事を確認してから、青年は体の向きを変えて、🌸の元へと行こうとした時だった_____。
『あれ、マリオ?ポンプちゃんもどうしたの?』
🌸の口からマリオ、という単語が出ると青年の足が止まった。顔を顰 めていたのは青年自身も分かり、再び🌸に視線を向けると_____、息切れし、汗だくの状態のマリオが浜辺の方角から走ってきていたのであった。
「き、来てくれよ……、ヨッシーが………ヨッシーが居たんだけどさ………」
『へっ?ヨッシー?』
「アイツがさ、タマゴから……、全然出てくんなくて………、🌸なら簡単に出せるだろ」
『よく分からないけど……、分かった。行くよ』
マリオの頼みも特に断る様子を見せず、🌸は浜辺の方角へと走り出して行った。自分が🌸と関わりを持とうとする時にいつも、あの髭面の男が現れると青年は心の中で怒る。偶然として片付けられる時もあれば_____、まるでタイミングを見計らっていたかの様に、話し掛けてくる場面はいくつもあった。
マリオは、🌸の事を仲間としか認識していない筈なのに何故なのか………、"もしかして、二人は付き合っているのか?"、…………、青年の頭には、その考えが浮かんだ。
けれど、青年はタマゴに潜 んでいるであろう化け物への恐怖心から、それを追いかける事も出来ずに🌸の後ろ姿を見ているしか無かった。
西の船着場にドロドロパックンが出没した事で、ドルピックタウンの住人達はパニックに陥った。マリオと🌸の活躍によって、ドロドロパックンが倒された事により町の安全は保たれたその日以降_____、マリオと🌸の冒険に同行するヨッシーが気になっていた。
(浜辺に居たタマゴの中に居た奴……、🌸さんとやけに距離が近くて、手を繋いだりしてベタベタ触りやがって………っ)
果物 を食べて、ドロドロパックンにジュース攻撃を仕掛けたヨッシーの姿が青年の脳裏に過 った。
(あのドロドロの化け物を一発で倒した奴だ、ぼくよりも強いに決まっている……、それに、アイツは🌸さんのペットか、髭面の男のペットが懐いてるだけだろ?)
恐竜という事は風の噂で知っていた為に、青年は無理くりそう解釈したのである。何故なら、青年は🌸とヨッシーの関係など一切、知らなかったのであるから______。
・
「パーティー会場の設営……、ですか?」
「あぁ。マリオと🌸がシャイン集めを頑張ってるって事で、おれ達でアイツらを祝ってやるんだよ」
"リコハーバー"、"マンマビーチ"のシャイン集めからもうじき帰ってくるマリオ達を労るためのパーティーを開催する事が決まり、町中のモンテ族が駆り出されていた。勿論、青年もこの場に呼ばれ、一緒になって設営を進める事となっていた。
「あの……、🌸さんって、手配書に似顔絵が書かれてましたけど………、悪いのって結局、マリオさんだけですよね?マリオさんと……、ヨッシーさんの二人で、シャインを集めても良いんじゃないんですか……?」
青年は以前から感じていた思いを警察官でも何でもないモンテ族にぶつけた。だがそれも、マリオ達と🌸を遠ざける為にわざわざ話した事である。自分に共感してくれる者が一人でも居れば、ドルピック警察に頼み込んで、🌸が手配書から似顔絵が消えて自由になった時、青年が少しでも🌸と関われる時間を増やせると______。
「何言ってんだ、お前。🌸は不思議な帽子で、マリオに変身する事が出来るからって事で、一緒に手配書に描かれたんだぞ。知らなかったのか?」
青年が考えていた計画は、その言葉であっさりと崩れ去った。口を開けたまま、言葉が出ずにいた青年を気にする事もなく「さぁ、準備を急ぐぞー」と、呑気な様子でモンテ族は会場の設営を再開していく。
その後、何事もなくパーティーは開催された。マリオ達だけでなく、町の住民であるモンテ族達や青年も参加出来た事で、広場は賑わっていた。
(そうだ。オードブルから、🌸さんに渡すご飯でも盛り付けよう)
青年は約束をしていないにも関わらず、自発的にオードブルからおかずを取っていき、皿に盛り付けていく。マリオと一緒に居るはずの🌸を探す為に一旦、皿をテーブルに置いた時だった______。
「いただきまーーす!!」
ヨッシーの声が聞こえると、会場に用意されていたオードブルを一瞬の内に食べ尽くしてしまった。勿論、青年が🌸の為にと用意していた皿も空となっていた。
「きゃー!ヨッシーが全部食べちゃったー!」
メスのモンテ族が悲鳴を上げて、ようやく青年も今の状況に気がついた。あの髭面の男だけでなく、あの恐竜までもが自分の恋路を邪魔しようとしている_____、そう思うと、青年の顳 かみには皺 が寄っていた。
「何やって______」
「全部食うなよー!」
何やってんだよ!!______、と言いかけた所で、マリオの怒声が被り、青年の怒りがヨッシーに向けられる事はなかった。
それにより、青年の中には発散されなかった怒りだけが残って悶々としていた。しまいには、ピーチ姫がニセマリオに攫われる騒動が起き、マリオと🌸はキノじいに声を掛けられた。
「マリオ殿! 🌸殿! 早くピーチ姫を!!」
「はいはい、分かりましたー!」
『元気いっぱい取れたよ〜っ』
ポンプを装着したマリオと、腕を伸ばしてストレッチをしていた🌸を見ると、青年は途端に焦りだした。
(だ、だめだっ!またアイツらと一緒に……!🌸さん、あなたは行かなくていいんだ!!ぼくがあなたを………!!)
また🌸が、髭面の男と恐竜と一緒に行ってしまう______、青年はマリオと🌸が居る場所へと走り出していく。人混みを掻き分けて、🌸の手を掴もうと腕を伸ばしていく。
モンテ族の図体 が大きい事を今回ばかりは恨み、無我夢中で伸ばしていた腕は誰かの手を掴んだ。
「🌸さん、あなたはマリオさん達なんかに付いていかなくて_____」
「やぁだ♡ あたし、ミス・モンテよ。何だかよく分からないけど、あたしもまだまだピチピチって事ね♡」
青年が🌸だと思って掴んだ手は、メスのモンテ族のものであった。無理やり振り払い、船着き場の方角を必死に走っていく青年であったが______、着いた頃には、"ピンナパーク"に向かって大砲で発射されたマリオと🌸の叫び声が頭上から聞こえた。
・
"シレナビーチ"、"マーレのいりえ"、"モンテのむら"、"コロナマウンテン"………、マリオと🌸の生活は非常に慌ただしく、シャイン集めの次には、クッパ親子との戦いが待っていた。
そして見事、マリオと🌸はクッパ親子に勝利し、囚われたピーチ姫とシャインを救い出した。太陽の門に全てのシャインが揃うと、巨大シャインも輝きを取り戻していた。モンテ族は元の平和な島に戻った事に喜び、歓喜の声を上げていた。
ただ一人、青年だけは______、目の前の光景が信じられないとばかりとしか思っていなかった。
(何で……何で、何で、なんで、なんでなんで…………、あの恐竜の腕の中に、🌸さんが………っ!!)
これまでの冒険疲れで、マリオと🌸は死んだ様に眠りについてしまっていた。マリオは地べたに寝転がる形となっていたが、🌸は着地の直前でヨッシーが抱き抱える体勢を取っていた事もあり、お姫様抱っこをされている形で眠りについていた。
ラクガキ騒動が起き始めた頃は、島全体を包み込む暗雲が一日でも早く晴れて欲しいと願っていたが、今の青年はその願いなどすっかりと消え去っていたのだ。
🌸が泊まっていた宿で休んでいるという話をモンテ族から聞きつけた青年は、お見舞い用として果物を用意すると、籠 の中に入れていく。一人で休んでいて、あわよくば室内に入って看病をして、話をしたり…………、青年は陳腐な妄想をしながら、軽やかな足取りで宿へと向かっていく。
玄関前に到着した青年は、インターホンのボタンを押した。こちらに近づいてくる足音が聞こえてくると、青年の口角が上がる。そして扉が開かれた瞬間______、青年の心は一気に絶望へと落とされた。
「あれ? あなた、誰ですか?」
インターホンに出て、扉を開けたのは_____、🌸の看病をしていたヨッシーであった。青年は顔を顰めてやりたかった。嫌悪感を露わにしたかった。決して威力の高くないパンチをぶつけてやろうかという事まで考えた。
青年は必死にその思いを押し殺していた中、ヨッシーは青年が手に持っていた籠 に目を向けた。
「あっ!それ、果物 ですね!もしかして、🌸さん用にって誰かに頼まれたんですか? それだったら、わたしが………」
「触るな!!」
ヨッシーが籠 を受け取ろうと両手を出した時____、青年は声を上げて拒否を示した。目の前で大声を出された事にヨッシーは驚いている様子を見せたが、玄関の扉が空いたままで、🌸の眠っている室内にまで響いたのではないかと思っていた。
「こ、これは………ぼくが🌸さんの為に渡しに、ここまで来たんだ!! お前みたいな奴が、勝手に触るなよ!! お前、あの髭面の男のペットなんだろ!? ペットにしか過ぎないんだか_____、」
「あの、」
青年が捲 し立てる様に、これまで抱いていた思いをぶつけようとしたが_____、ヨッシーの怒り顔を見て、言葉が詰まった。
「🌸さん、いま眠ってる所なんですよ。ずーっとラクガキ犯って言われ続けて、マリオさんと一緒にこの島の人達の為に、シャインを集めるのを頑張ってたんです。それが終わって、ようやく楽になって休んでる所で、そんな大声を出されちゃ困ります」
今まで遠目から、喜の感情を表出している場面を多く見ていた青年は、あまりにも静かに怒りを見せていたヨッシーを目の当たりにして、心臓がバクバクと鳴り出し、体が小さく震え出した。
「う、う……、うう、うるさいっ!!」
「わぁ!」
その場に居る事が耐えられなくなった青年は、果物が入った籠 をヨッシーに投げつける形で渡すと、逃げ出す様に走っていく。
「もう〜……、乱暴に投げちゃ、果物 が食べられくなっちゃうじゃないですか〜」
青年は籠を投げつける形でも渡したつもりであったが、ヨッシーの頬に籠 が当たった傷が出来ていた。いたた……、と、小さく唸りながら、ヨッシーは部屋の中へと戻っていく。
・
翌日_____、ここは地獄の世界であり、自分は今、閻魔大王の裁きを受けているのかと青年は疑った
『謝りなさい』
自宅の玄関前には、青年が好意を寄せていた🌸の姿があった。手には、昨日渡した果物が入った籠 を持っていたが______、目の前には怒りの表情を一切、隠していない🌸が居た。
「ぇ……、な、なに………何に対して、ですか……?」
青年は🌸から発せられる迫力に圧倒され、途切れ途切れに言葉を発してしまう程に恐怖していた。
『ヨッシーに謝りなさい』
「よ、……よ、よっしー………?」
その名前は既に知っており、何なら怒りの矛先の相手であったが、青年はあくまでも知らないフリを通そうとした。だが、それを見通していたのか🌸は、さらに目付きを悪くさせていく。
『あなたがペットと言った、わたしの大切な人の事よ』
ペット、大切な人______、それらのキーワードから、誰の事を指しているのか青年は理解してしまった。
『ヨッシー、あなたから籠 を受け取った時にケガをしたの。これって傷害罪になる?』
「ち、違う! ぼくはただ、あのペ……、いや、ヨッシーさんに籠を渡そうとしただけで……!」
『それで、ヨッシーがケガしてんでしょ。人にケガをさせたら、まず謝るって事を教わらなかった訳?』
🌸と一緒にヨッシーの姿もあったが、ケガをした箇所には絆創膏が貼られていた。
「そ、そいつも………、髭面の男も………、あのお姫様も………、みんな、みんな邪魔だっ____、」
『あ や ま れ』
ヨッシーのケガの件と全く無関係な話を始めようとした青年に対し、🌸は唸り声に近い低音で遮った。
これまで幾度となくマリオ達と冒険を共にしていた🌸は、沢山の強敵達と出会い、戦ってきた。青年の様な一般人から到底、理解出来ない生き方をしていたからこそ_____、🌸から発せられる強者のオーラに青年は完全に屈しており、「ごめんなさい」と小さな声でヨッシーに謝罪した。
『あぁ、あと………、わたしの事をストーカーみたいに、付け狙ってたのも知っているから』
「は……?」
『この島に来たばかりの時に、わたしに話しかけられない様にマリオがわざと絡みに行ってくれてたり。あとは、ミス・モンテがわたしに教えてくれたのよ。それに町のモンテ族もみんな、あなたの事を不審に思っていたそうだけど』
「ストーカーなんかじゃない! ぼくはただ、あなたの事が______、」
青年は声を上げながら、🌸の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしたが______、🌸が持っていた籠に遮られる形となり、掴む事すら出来なかった。
「あの〜、もうあなたは謝ったんだから……、わたし達、さっさとバカンスに行っていいですよね? それに、"あなたの事が〜"とか、わたしの目の前で言わないで貰えますか? すっっごくムカつきますので」
あんまり酷いと、マリオさんか警察でも呼びますよ?……、と、ヨッシーは青年に向けて言った。痴情 の縺 れに当てはまるか些 か微妙であるが、ヨッシーの頬に付けられた傷の事で警察を呼ぶならば______、この島の中でのルールならば、裁判沙汰になる可能性は高かった。
『じゃあ、もう二度とわたし達の前に姿を表さないでね』
これからバカンスを楽しむ為に、二人は青年の家を後にしていった。その道中で手を繋ぎながら、二人はドルピックタウンの船着き場まで目指していく。
それを見ていた青年は______、妨害があったとはいえ、これまで巡ってきたチャンスすらもろくに活かせず、挙句の果てに事故とはいえ、ヨッシーにケガを負わせた事で🌸の逆鱗 に触れてしまったのであった。
・
◆あとがき
ドルピックタウンに移住した青年が、🌸に惚れるも散々な目に遭ってしまう話でした。モブ視点の話は書きたいと考えていましたが、想定したよりも長くなり且つ青年が可哀想な目にしか遭っていません……。
序盤のマリオセコムに関しては、【ピーチ姫づてに、🌸に謎の男が迫っているとヨッシーに伝わったら、おれがボコボコにされる】という目的から動いています(裏設定)、幼馴染故とかは萌えますが、それは置いときます。
没案として、長編で🌸とヨッシーがキスしていた現場を目撃してしまうとかも考えましたが、偶然的にヨッシーがケガを負い、🌸がキレるというのを書きたいのを優先して止めました。現実なら、「男性の自宅凸して女性ブチ切れなんて有り得んだろ」となりますが、🌸はマリオ達と同じ戦闘力を有しているので、一般人から見れば、どことなく怖いと思います。
.
◆青年(モブ)が🌸に惚れる話。
◆マリオサンシャイン編本編/モブ視点/苦い
◆"マリオサンシャイン編"(長編)に出てきた場面・セリフが出てきます。長編を読んでいなくても大丈夫な様に執筆しましたので、読後推奨は特にございません。
・
島を汚すラクガキ犯が現れた。一刻も早く、島を包み込む黒い雲を消し去ってくれ______、青年はそう願っていた。
『任せて下さい! ポンプちゃんも一緒なら、どんな敵にも負けませんから!!』
手配書に似顔絵が描かれていた🌸は、住民達から犯罪者と呼ばれているにも関わらず、マリオと共に高らかにそう宣言し________、青年は視線を奪われていた。
「あの……、何だか大変ですね」
モンテ族達は、広場に出没したドロドロパックンが退治された事で一安心して、その場から解散していく。その中で、青年は勇気を出して異国の人間である🌸に声を掛けた。
『きみは、この島の人?』
「あっ、はい………、この島に来るのは、初めてですよね?」
青年は元々、異国の地で育った人間であったが仕事の関係で今はドルピック島に移住していた。島の人口は原住民のモンテ族やマーレ族が大半を占めており、人間はほとんど居ないといってもいい。
「ぼく、この島には何年も前から暮らしているので、美味しい料理を出してくれるオススメの店も知ってますよ………、もし良ければ、二人で______」
「おーい、🌸。何してんだ?」
「一緒に用意された宿に行きましょ」
青年の言葉を遮るようにして現れたのは、ポンプを装着したマリオとピーチ姫だった。
(この二人……確かさっき、あの変なドロドロの化け物と戦ってた時に一緒に居た………)
『あ、マリオ、ピーチ姫。この人がね、ご飯をご馳走してくれるだって』
(えっ!?)
二人で食事をしようと心の中で
「おぉー、この島にも良い奴は居るんだな」
「いいのかしら?わたし達、ご馳走になっても」
「………、えぇ。皆さんのお口に合う料理が沢山ありますよ」
青年は何とか笑顔を取り繕い、🌸達を料理屋へと連れていくのである。入店してからも、席順は男同士、女同士と分けられ、真正面に座っていたのはピーチ姫だった。斜めに座る🌸を見るのはマリオ達に不自然に思われると察した青年は、いつもは美味いと感じていた料理の味を楽しめなかったのである。
・
🌸がマリオと共にシャイン集めを終えて、"ビアンコヒルズ"から帰って来た頃______、青年は気晴らしに浜辺を散歩していた。
青年がふと、穏やかに波打つ海を見ようと視線をそちらに向けた時______、岩場の影に置かれていた、緑色の
(何だあれ……タマゴか?それにしても、やけに大きいし、変な
スーパーで商品として売っているタマゴなら話が分かる。しかし青年は特徴的なタマゴは勿論、ヨッシーそのものも見た事が無かった為に不気味に感じた。いつタマゴが
ドルピックタウンに戻って、自分の家へと帰ろうとした青年は大王像の前を通り過ぎようとした時に______、ヤシの木の下でトロピカルフルーツを飲んでいる🌸を偶然、発見した。
(🌸さん……こっちに帰ってきてたのか……!)
🌸は青年に気づいている様子など
(あの髭面の男もお姫様も居ない……、話すなら、今がチャンスだ………!)
島のシャインを一緒に集めているマリオ、ガールズトークを楽しんでいるピーチ姫の姿が無かった事を確認してから、青年は体の向きを変えて、🌸の元へと行こうとした時だった_____。
『あれ、マリオ?ポンプちゃんもどうしたの?』
🌸の口からマリオ、という単語が出ると青年の足が止まった。顔を
「き、来てくれよ……、ヨッシーが………ヨッシーが居たんだけどさ………」
『へっ?ヨッシー?』
「アイツがさ、タマゴから……、全然出てくんなくて………、🌸なら簡単に出せるだろ」
『よく分からないけど……、分かった。行くよ』
マリオの頼みも特に断る様子を見せず、🌸は浜辺の方角へと走り出して行った。自分が🌸と関わりを持とうとする時にいつも、あの髭面の男が現れると青年は心の中で怒る。偶然として片付けられる時もあれば_____、まるでタイミングを見計らっていたかの様に、話し掛けてくる場面はいくつもあった。
マリオは、🌸の事を仲間としか認識していない筈なのに何故なのか………、"もしかして、二人は付き合っているのか?"、…………、青年の頭には、その考えが浮かんだ。
けれど、青年はタマゴに
西の船着場にドロドロパックンが出没した事で、ドルピックタウンの住人達はパニックに陥った。マリオと🌸の活躍によって、ドロドロパックンが倒された事により町の安全は保たれたその日以降_____、マリオと🌸の冒険に同行するヨッシーが気になっていた。
(浜辺に居たタマゴの中に居た奴……、🌸さんとやけに距離が近くて、手を繋いだりしてベタベタ触りやがって………っ)
(あのドロドロの化け物を一発で倒した奴だ、ぼくよりも強いに決まっている……、それに、アイツは🌸さんのペットか、髭面の男のペットが懐いてるだけだろ?)
恐竜という事は風の噂で知っていた為に、青年は無理くりそう解釈したのである。何故なら、青年は🌸とヨッシーの関係など一切、知らなかったのであるから______。
・
「パーティー会場の設営……、ですか?」
「あぁ。マリオと🌸がシャイン集めを頑張ってるって事で、おれ達でアイツらを祝ってやるんだよ」
"リコハーバー"、"マンマビーチ"のシャイン集めからもうじき帰ってくるマリオ達を労るためのパーティーを開催する事が決まり、町中のモンテ族が駆り出されていた。勿論、青年もこの場に呼ばれ、一緒になって設営を進める事となっていた。
「あの……、🌸さんって、手配書に似顔絵が書かれてましたけど………、悪いのって結局、マリオさんだけですよね?マリオさんと……、ヨッシーさんの二人で、シャインを集めても良いんじゃないんですか……?」
青年は以前から感じていた思いを警察官でも何でもないモンテ族にぶつけた。だがそれも、マリオ達と🌸を遠ざける為にわざわざ話した事である。自分に共感してくれる者が一人でも居れば、ドルピック警察に頼み込んで、🌸が手配書から似顔絵が消えて自由になった時、青年が少しでも🌸と関われる時間を増やせると______。
「何言ってんだ、お前。🌸は不思議な帽子で、マリオに変身する事が出来るからって事で、一緒に手配書に描かれたんだぞ。知らなかったのか?」
青年が考えていた計画は、その言葉であっさりと崩れ去った。口を開けたまま、言葉が出ずにいた青年を気にする事もなく「さぁ、準備を急ぐぞー」と、呑気な様子でモンテ族は会場の設営を再開していく。
その後、何事もなくパーティーは開催された。マリオ達だけでなく、町の住民であるモンテ族達や青年も参加出来た事で、広場は賑わっていた。
(そうだ。オードブルから、🌸さんに渡すご飯でも盛り付けよう)
青年は約束をしていないにも関わらず、自発的にオードブルからおかずを取っていき、皿に盛り付けていく。マリオと一緒に居るはずの🌸を探す為に一旦、皿をテーブルに置いた時だった______。
「いただきまーーす!!」
ヨッシーの声が聞こえると、会場に用意されていたオードブルを一瞬の内に食べ尽くしてしまった。勿論、青年が🌸の為にと用意していた皿も空となっていた。
「きゃー!ヨッシーが全部食べちゃったー!」
メスのモンテ族が悲鳴を上げて、ようやく青年も今の状況に気がついた。あの髭面の男だけでなく、あの恐竜までもが自分の恋路を邪魔しようとしている_____、そう思うと、青年の
「何やって______」
「全部食うなよー!」
何やってんだよ!!______、と言いかけた所で、マリオの怒声が被り、青年の怒りがヨッシーに向けられる事はなかった。
それにより、青年の中には発散されなかった怒りだけが残って悶々としていた。しまいには、ピーチ姫がニセマリオに攫われる騒動が起き、マリオと🌸はキノじいに声を掛けられた。
「マリオ殿! 🌸殿! 早くピーチ姫を!!」
「はいはい、分かりましたー!」
『元気いっぱい取れたよ〜っ』
ポンプを装着したマリオと、腕を伸ばしてストレッチをしていた🌸を見ると、青年は途端に焦りだした。
(だ、だめだっ!またアイツらと一緒に……!🌸さん、あなたは行かなくていいんだ!!ぼくがあなたを………!!)
また🌸が、髭面の男と恐竜と一緒に行ってしまう______、青年はマリオと🌸が居る場所へと走り出していく。人混みを掻き分けて、🌸の手を掴もうと腕を伸ばしていく。
モンテ族の
「🌸さん、あなたはマリオさん達なんかに付いていかなくて_____」
「やぁだ♡ あたし、ミス・モンテよ。何だかよく分からないけど、あたしもまだまだピチピチって事ね♡」
青年が🌸だと思って掴んだ手は、メスのモンテ族のものであった。無理やり振り払い、船着き場の方角を必死に走っていく青年であったが______、着いた頃には、"ピンナパーク"に向かって大砲で発射されたマリオと🌸の叫び声が頭上から聞こえた。
・
"シレナビーチ"、"マーレのいりえ"、"モンテのむら"、"コロナマウンテン"………、マリオと🌸の生活は非常に慌ただしく、シャイン集めの次には、クッパ親子との戦いが待っていた。
そして見事、マリオと🌸はクッパ親子に勝利し、囚われたピーチ姫とシャインを救い出した。太陽の門に全てのシャインが揃うと、巨大シャインも輝きを取り戻していた。モンテ族は元の平和な島に戻った事に喜び、歓喜の声を上げていた。
ただ一人、青年だけは______、目の前の光景が信じられないとばかりとしか思っていなかった。
(何で……何で、何で、なんで、なんでなんで…………、あの恐竜の腕の中に、🌸さんが………っ!!)
これまでの冒険疲れで、マリオと🌸は死んだ様に眠りについてしまっていた。マリオは地べたに寝転がる形となっていたが、🌸は着地の直前でヨッシーが抱き抱える体勢を取っていた事もあり、お姫様抱っこをされている形で眠りについていた。
ラクガキ騒動が起き始めた頃は、島全体を包み込む暗雲が一日でも早く晴れて欲しいと願っていたが、今の青年はその願いなどすっかりと消え去っていたのだ。
🌸が泊まっていた宿で休んでいるという話をモンテ族から聞きつけた青年は、お見舞い用として果物を用意すると、
玄関前に到着した青年は、インターホンのボタンを押した。こちらに近づいてくる足音が聞こえてくると、青年の口角が上がる。そして扉が開かれた瞬間______、青年の心は一気に絶望へと落とされた。
「あれ? あなた、誰ですか?」
インターホンに出て、扉を開けたのは_____、🌸の看病をしていたヨッシーであった。青年は顔を顰めてやりたかった。嫌悪感を露わにしたかった。決して威力の高くないパンチをぶつけてやろうかという事まで考えた。
青年は必死にその思いを押し殺していた中、ヨッシーは青年が手に持っていた
「あっ!それ、
「触るな!!」
ヨッシーが
「こ、これは………ぼくが🌸さんの為に渡しに、ここまで来たんだ!! お前みたいな奴が、勝手に触るなよ!! お前、あの髭面の男のペットなんだろ!? ペットにしか過ぎないんだか_____、」
「あの、」
青年が
「🌸さん、いま眠ってる所なんですよ。ずーっとラクガキ犯って言われ続けて、マリオさんと一緒にこの島の人達の為に、シャインを集めるのを頑張ってたんです。それが終わって、ようやく楽になって休んでる所で、そんな大声を出されちゃ困ります」
今まで遠目から、喜の感情を表出している場面を多く見ていた青年は、あまりにも静かに怒りを見せていたヨッシーを目の当たりにして、心臓がバクバクと鳴り出し、体が小さく震え出した。
「う、う……、うう、うるさいっ!!」
「わぁ!」
その場に居る事が耐えられなくなった青年は、果物が入った
「もう〜……、乱暴に投げちゃ、
青年は籠を投げつける形でも渡したつもりであったが、ヨッシーの頬に
・
翌日_____、ここは地獄の世界であり、自分は今、閻魔大王の裁きを受けているのかと青年は疑った
『謝りなさい』
自宅の玄関前には、青年が好意を寄せていた🌸の姿があった。手には、昨日渡した果物が入った
「ぇ……、な、なに………何に対して、ですか……?」
青年は🌸から発せられる迫力に圧倒され、途切れ途切れに言葉を発してしまう程に恐怖していた。
『ヨッシーに謝りなさい』
「よ、……よ、よっしー………?」
その名前は既に知っており、何なら怒りの矛先の相手であったが、青年はあくまでも知らないフリを通そうとした。だが、それを見通していたのか🌸は、さらに目付きを悪くさせていく。
『あなたがペットと言った、わたしの大切な人の事よ』
ペット、大切な人______、それらのキーワードから、誰の事を指しているのか青年は理解してしまった。
『ヨッシー、あなたから
「ち、違う! ぼくはただ、あのペ……、いや、ヨッシーさんに籠を渡そうとしただけで……!」
『それで、ヨッシーがケガしてんでしょ。人にケガをさせたら、まず謝るって事を教わらなかった訳?』
🌸と一緒にヨッシーの姿もあったが、ケガをした箇所には絆創膏が貼られていた。
「そ、そいつも………、髭面の男も………、あのお姫様も………、みんな、みんな邪魔だっ____、」
『あ や ま れ』
ヨッシーのケガの件と全く無関係な話を始めようとした青年に対し、🌸は唸り声に近い低音で遮った。
これまで幾度となくマリオ達と冒険を共にしていた🌸は、沢山の強敵達と出会い、戦ってきた。青年の様な一般人から到底、理解出来ない生き方をしていたからこそ_____、🌸から発せられる強者のオーラに青年は完全に屈しており、「ごめんなさい」と小さな声でヨッシーに謝罪した。
『あぁ、あと………、わたしの事をストーカーみたいに、付け狙ってたのも知っているから』
「は……?」
『この島に来たばかりの時に、わたしに話しかけられない様にマリオがわざと絡みに行ってくれてたり。あとは、ミス・モンテがわたしに教えてくれたのよ。それに町のモンテ族もみんな、あなたの事を不審に思っていたそうだけど』
「ストーカーなんかじゃない! ぼくはただ、あなたの事が______、」
青年は声を上げながら、🌸の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしたが______、🌸が持っていた籠に遮られる形となり、掴む事すら出来なかった。
「あの〜、もうあなたは謝ったんだから……、わたし達、さっさとバカンスに行っていいですよね? それに、"あなたの事が〜"とか、わたしの目の前で言わないで貰えますか? すっっごくムカつきますので」
あんまり酷いと、マリオさんか警察でも呼びますよ?……、と、ヨッシーは青年に向けて言った。
『じゃあ、もう二度とわたし達の前に姿を表さないでね』
これからバカンスを楽しむ為に、二人は青年の家を後にしていった。その道中で手を繋ぎながら、二人はドルピックタウンの船着き場まで目指していく。
それを見ていた青年は______、妨害があったとはいえ、これまで巡ってきたチャンスすらもろくに活かせず、挙句の果てに事故とはいえ、ヨッシーにケガを負わせた事で🌸の
・
◆あとがき
ドルピックタウンに移住した青年が、🌸に惚れるも散々な目に遭ってしまう話でした。モブ視点の話は書きたいと考えていましたが、想定したよりも長くなり且つ青年が可哀想な目にしか遭っていません……。
序盤のマリオセコムに関しては、【ピーチ姫づてに、🌸に謎の男が迫っているとヨッシーに伝わったら、おれがボコボコにされる】という目的から動いています(裏設定)、幼馴染故とかは萌えますが、それは置いときます。
没案として、長編で🌸とヨッシーがキスしていた現場を目撃してしまうとかも考えましたが、偶然的にヨッシーがケガを負い、🌸がキレるというのを書きたいのを優先して止めました。現実なら、「男性の自宅凸して女性ブチ切れなんて有り得んだろ」となりますが、🌸はマリオ達と同じ戦闘力を有しているので、一般人から見れば、どことなく怖いと思います。
.