合コン帰り。【いずはる】
日付が変わるまであと二時間弱。まだまだ賑わう夜の繫華街を疲れた顔したおっさんが二人で歩いている。
「和泉さんすんません……合コンとか付き合わせて」
春田は和泉に平謝りした。もう何度、今夜のことで和泉に頭を下げたかわからない。
大学時代の友人から久しぶりに連絡があったかと思ったら、合コンのメンバーが足りないから春田も来いという話。
今どき四十歳になって未婚も珍しくはないが、友人はかなり焦っていた。早く嫁を取れ孫の顔を見せろの圧力がやばいらしい。
マッチングアプリで相手を探しているのは聞いていた。それでは足りずに合コンでおじさん好きな女性を募ってセッティングに漕ぎ付けるまでに至ったが――家庭持ちは呼べないし役職持ちにもおいそれと連絡できないので、春田に白羽の矢が立った形だった。
そこで春田も頑張って、この友人のいいところをプレゼンしたのだが……参加した女性陣の注目はもっぱら和泉にあったのだった。今夜のメンバー内では最年長の和泉がいちばんモテた。
和泉は和泉で春田に誘われて、というかほとんど付き添いだった。それなのに質問責めに遭い、電話やメッセージアプリのID交換まで迫られた始末。
ぱっと見落ち着いていて、背も高く、モデルのような容姿なのでモテて当然と春田が思っていたのは言うまでもない。
「いえ、むしろご友人に悪かったと思います……」
「いいんすよ、あんまり気にしないで。和泉さんかっこいいから」
言いつつも春田は、和泉の空いている左手に右手を絡めた。内心、和泉が若い女の子に取られそうで気が気ではなかった。
恋人としてお付き合いはしていても、時々和泉がどこかへ飛んで行ってしまいそうで、不安になることもあるから――。
「……俺は、春田さんの恋人ですよ?」
絡んだ指先にきゅっと力が入った。想いを汲み取ってくれたかのように、和泉はやわらかく微笑む。
その微笑みに胸が高鳴りを覚えたのはいつ頃だったかははっきり覚えていない春田だが、和泉を愛しいと想う心に嘘はつけない。
「和泉さん……キスしていい?」
我慢できずに言ってしまうと、和泉は小さく頷いた。
誰が見ているかわからない。いや、誰も興味なんか持たない。有名人でもないふたりの恋をわざわざ見物するような物好き……暇を持て余している人間もいないだろう。
和泉のくちびるが軽く触れてくるのに春田は目を閉じた。最後に飲んでいた甘いカクテルの味がする。
「……春田さん、俺の部屋で飲み直しませんか――……キスも」
甘い声がが掠れて、色気を含む。断る理由もないので春田はすぐに頷いた。
「和泉さんにお持ち帰りされちゃう~」
「お持ち帰りしちゃいます」
合コンだからこういうこともあるでしょう? 珍しく悪戯な笑顔になる和泉に、春田は少し照れた。
和泉の部屋までお持ち帰りされたら飲み直しではなく、肌色めいた行為になるだろう。今夜はどうやって愛してくれるのか、脳内に拡がる妄想で照れてしまっていた。
「春田さん……その、エロい顔はもう少し取っておいてくださいね」
「はい……」
妄想していたのが和泉にバレた。エスパーなのか、それとも自分が顔に出やすいだけか……。
手を繋いだままだから勝手に伝わってしまったのかも知れない。好きなひとになら知られてもいいけど。
夜は更けゆく。まだまだ眠らないのは街だけではなく――。
「和泉さんすんません……合コンとか付き合わせて」
春田は和泉に平謝りした。もう何度、今夜のことで和泉に頭を下げたかわからない。
大学時代の友人から久しぶりに連絡があったかと思ったら、合コンのメンバーが足りないから春田も来いという話。
今どき四十歳になって未婚も珍しくはないが、友人はかなり焦っていた。早く嫁を取れ孫の顔を見せろの圧力がやばいらしい。
マッチングアプリで相手を探しているのは聞いていた。それでは足りずに合コンでおじさん好きな女性を募ってセッティングに漕ぎ付けるまでに至ったが――家庭持ちは呼べないし役職持ちにもおいそれと連絡できないので、春田に白羽の矢が立った形だった。
そこで春田も頑張って、この友人のいいところをプレゼンしたのだが……参加した女性陣の注目はもっぱら和泉にあったのだった。今夜のメンバー内では最年長の和泉がいちばんモテた。
和泉は和泉で春田に誘われて、というかほとんど付き添いだった。それなのに質問責めに遭い、電話やメッセージアプリのID交換まで迫られた始末。
ぱっと見落ち着いていて、背も高く、モデルのような容姿なのでモテて当然と春田が思っていたのは言うまでもない。
「いえ、むしろご友人に悪かったと思います……」
「いいんすよ、あんまり気にしないで。和泉さんかっこいいから」
言いつつも春田は、和泉の空いている左手に右手を絡めた。内心、和泉が若い女の子に取られそうで気が気ではなかった。
恋人としてお付き合いはしていても、時々和泉がどこかへ飛んで行ってしまいそうで、不安になることもあるから――。
「……俺は、春田さんの恋人ですよ?」
絡んだ指先にきゅっと力が入った。想いを汲み取ってくれたかのように、和泉はやわらかく微笑む。
その微笑みに胸が高鳴りを覚えたのはいつ頃だったかははっきり覚えていない春田だが、和泉を愛しいと想う心に嘘はつけない。
「和泉さん……キスしていい?」
我慢できずに言ってしまうと、和泉は小さく頷いた。
誰が見ているかわからない。いや、誰も興味なんか持たない。有名人でもないふたりの恋をわざわざ見物するような物好き……暇を持て余している人間もいないだろう。
和泉のくちびるが軽く触れてくるのに春田は目を閉じた。最後に飲んでいた甘いカクテルの味がする。
「……春田さん、俺の部屋で飲み直しませんか――……キスも」
甘い声がが掠れて、色気を含む。断る理由もないので春田はすぐに頷いた。
「和泉さんにお持ち帰りされちゃう~」
「お持ち帰りしちゃいます」
合コンだからこういうこともあるでしょう? 珍しく悪戯な笑顔になる和泉に、春田は少し照れた。
和泉の部屋までお持ち帰りされたら飲み直しではなく、肌色めいた行為になるだろう。今夜はどうやって愛してくれるのか、脳内に拡がる妄想で照れてしまっていた。
「春田さん……その、エロい顔はもう少し取っておいてくださいね」
「はい……」
妄想していたのが和泉にバレた。エスパーなのか、それとも自分が顔に出やすいだけか……。
手を繋いだままだから勝手に伝わってしまったのかも知れない。好きなひとになら知られてもいいけど。
夜は更けゆく。まだまだ眠らないのは街だけではなく――。
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