幻太郎がいなくなっちゃった話【帝幻】
帝統が目を覚ますと、そこは見覚えのある簡易ベッドの上だった。
おそらく雰囲気から察すると夕方くらいだろうか。
頭と喉がズキズキするが、とにかくゆっくり起き上がってみると、そこが乱数の事務所の仮眠室だと理解する。
周囲を見るとその乱数が椅子に座ったまま下を向いて寝ていて、あぁなんとか渋谷に戻ってきたのか、と安堵し、小さなため息を漏らした。
「……帝統?起きたの?」
気配に気付いた乱数が顔をあげる。
すごいクマだ。おそらくずっと付き添っていてくれたのだろう。
「……すまねぇ、迷惑かけたみたいで」
「そんなことはいーのっ、ボク達ぽっせでしょ!それより、新宿でいったい何しててそんなことになるのさ?新宿のホストくんが寂雷のとこに担ぎ込んだって連絡来た時はまじでびっくりしたんだけど!」
そうだ、俺は気晴らしに賭場に行って、そんで。
「…………そうだ、幻太郎は?!」
「まだなんも音沙汰無し。ほーんと何してんだろね?」
「いたんだよ!新宿に!」
「は?」
自分が聞いたのは間違いなく幻太郎のリリックだった。
あとは新宿のホストの声も。
助けてもらったのは間違いないはずで、ただどうしてあそこに居たのかはまったくわからない。
それに、乱数の話によると病院に連れて行ってくれたのはホストだけだ。
なぜそのまま去るなんてことをしたんだろうか。
事のあらましを乱数に伝えると、しばらく考えるように下を見つめる。
「なるほど……行ってみよっか!新宿!」
そう言って乱数はニコッと笑うと、クローゼットを開きあれやこれやと準備をし始める。
そうして出来上がったのが、可愛らしいドレス姿の乱数とバシッと決まったスーツの帝統だ。
「らむだ、これは…」
「歌舞伎町のホストクラブ、遊びに行こっ!」
ネオンが眩しい。
タクシーで向かったのは、伊弉冉一二三がNo.1を勤めるホストクラブだ。
扉を開けると帝統は煌びやかな雰囲気に圧倒されるが、乱数はニコニコ笑って案内を受ける。
「ボクら男の子だけどいいかなー?」
「もちろんです。是非楽しんでいってくださいね」
そう言って席に案内して貰うと、隣に座ったホストに対して乱数がツンツンとつつき呼び掛ける。
「あのさ、ボクらNo.1の子に会いに来たんだけど、そういうのってお願いしたら来てもらえるのかな?」
「一二三ですか?申し訳ございませんがただいまご指名のお客様の接客中で。もう少し後になってしまいますが、それでもいいでしょうか」
「うんうん、もっちろんだよオニーサン!ありがとね!」
「それまでは僕とお話しましょう。飴村乱数くんと有栖川帝統くん」
そう言ってニコッと笑うホスト。
どうやら先日のバトル以降、本当に有名人になってしまったようだ。
この笑顔は歓迎か、あるいは敵意か。
「ボク達のこと知ってくれてるんだねっ。嬉しいな!ねっ帝統!」
「おう…」
帝統は慣れない場所にいることと、唯一と言える幻太郎の手掛かりを掴む機会にそわそわと落ち着かない。
本当なら今すぐにでも伊弉冉一二三のところへ行って胸ぐらでも掴んで幻太郎の居場所を聞き出したいくらいなのだが、生憎乱数にずっと手を掴まれているから動けやしない。
暗に勝手に行動するなと言われているのだろう。
わかっている。
伊弉冉一二三が悪いかどうかなんて確認していないのだから乱暴するのは違うし、後から来るというこのホストの言葉もある。
まぁおそらく乱数はこの状況を全力で楽しんでいるのも大いにあるのだろうけれど。
「あのよ、伊弉冉一二三、いつ頃くるんだ?」
「えーっと、おおよそですが、あと15分ほどで」
そう言いながらホストは帝統に、いつの間にか乱数が注文したシャンパンを注ぐ。
それを飲もうとすると、乱数が持っていたグラスをテーブルに倒し、うわーごめんねー!なんて言っているもんだから、帝統は飲むのを一旦やめてダスターを貰いに行き、テーブルを拭いた。
「ったく、なにやってんだよお前は」
「えっへへへ、ごめーんね」
そう言いながら帝統にギュッと飛び付き、小さな声で釘を刺す。
「馬鹿!飲むな!まだ敵とも味方とも判断出来てないのに!」
つまり、何かを盛られているだとか潰されるだとか、そういったことを想定しろということか。
だったら来る前に言え、だいたい頼んだのはお前じゃないのか、と言いたいことはたくさんあったが、事実考えが甘いのは自分なので黙って頷く。
そんなことをしているうちに、乱数と帝統がいるボックス席にまっすぐ歩いてくる男がいた。
それはもちろん伊弉冉一二三で、2人の目の前に来ると深々とお辞儀をする。
「ようこそ、我がクラブへ。ご指名いただきありがとうございます」
一二三は、帝統の隣にゆっくり座ると、ニコッと笑いかける。
「身体の具合はもういいのかい?有栖川くん」
「おかげさまでな。少しズキズキしてるぐらいだ」
「それはよかった」
一二三が安心したように微笑む。
おそらくそこそこ心配してはくれたのだろうか。
帝統は、少し迷ったが、性格上まどろっこしいことは苦手で、単刀直入に問うことにした。
「幻太郎、どこにいるんだ。お前知ってんだろ?」
「そうだね…その話をしようと思ったら、僕の一存ではすべてを話すことは出来ないんだ。すまない」
「んだよそれ…幻太郎が俺らに会いたくないっつってんのか?」
「うーん、おそらく会いたくないどころか、会いたくてたまんないと思うけれどね」
「なにそれーっ、ボクまどろっこしいの嫌い!」
乱数は自前のロリポップを口に放り込み、ポケットからヒプノシスマイクをちらつかせた。
「喋るか案内するか、今ここでボク達にぶっ潰されるか選ばせてあげるよっ」
「おぉ怖い。それは勘弁していただきたいですね。一旦出ましょうか、プリンセス」
「きっも。ボク男なんだけど」
自分で女装しときながら言うセリフではないと思うが、とにかく外で一二三が出てくるのを数分待った。
すると店の裏口からパーカー姿の伊弉冉一二三がぴょんっと出てくる。
「チッチッチーーーッス!お待たせしてごめりんこ〜!」
「早く幻太郎んとこ連れてけよ」
そう言ったのは乱数で、苛立っているのがわかる。
この手の人間はイラつかせることに長けているから、それも無理はない。
一二三が歩き出すので二人もそれに続く。
「ゆめのセンセーはね〜、こないだ死んだ顔してたから、拾って俺っちの持ってる使ってないマンションにいるんだけどさ〜」
「死んだ顔…?ってなんなんだよ」
「うーん、俺っち馬鹿だから上手くぼかして喋ることが出来ねーんだけど、うーーーーん、うーーーーーーーーーん」
「つべこべうるさい、言え」
「うっひょー、こっわ!でも俺っち弱者には優しいから、怖いけどちょっち黙秘〜!」
そして、一旦黙って考え、あ、と思い出して帝統の方を見る。
「ギャンブラーくんはあいつの部下とか多分探してっから、あのへんうろうろすんのもヤバいんじゃね?うーーーん」
一二三はどうしようかと首を捻る。
だってあそこの真向かいに今から行くのだから。
すると乱数はタバコに火を付け、大きく煙を吐き出した。
「問題無い、これだけ人数居たらどうとでもなる。その賭場に近いのか」
「さっきからアメムラシグマこわひ〜!」
「………えっへへ、ごめーんね!幻太郎が心配だからさ、ついボクも真面目になっちゃったの〜。でも、嘘だったらその時は、わかってるよね?」
「ちょっと怖すぎ〜!だーいじょぶだいじょぶ、俺っちもゆめのセンセーは早く渋谷帰った方がいいと思うし!」
どうにか誰にも絡まれずにマンションに到着すると、一二三は合鍵で中に入る。
プライバシーは相変わらず皆無であるが、匿ってもらっている以上は文句も言えない幻太郎はちょうどシャワーの最中で、鍵の音を聞くと予想外の時間の訪問に気付き、慌てて風呂を出る。
すると、ソファーに座っているのは一二三と、あと二人。
幻太郎はその場で固まって動けなくなった。
「あっ、幻太郎〜!心配したじゃーん!」
そう言いながらロリポップを手に取り、それを片手に怒っているような演技を見せる。
その格好が女性の装いだったので少し笑ってしまった幻太郎は、すみませんと微笑む。
「妾、怖い人に誘拐されてしまって、そちらの方に拾って頂いたのですぅ」
「あっはは、また嘘?幻太郎元気そうじゃん!」
ニコニコしている乱数の隣で、怖い顔で下を向いている帝統に気付くと、一瞬たじろいだがすぐに傍に近付いた。
「帝統は〜ん、わっちに会えなくて寂しかったでおじゃるか〜」
いつも通りの自分を精一杯演じて、ちらりと顔色を伺う。
すると帝統は、顔を上げて幻太郎を睨みつけ、怒ったようにため息をつく。
「嘘じゃねぇんだろさっきの」
幻太郎は言葉を失う。
この流れでそれを言うのか。
「お前、嘘ついたらちゃんと嘘って言うし」
「えー、帝統ってば妾のことそんなに見ててくれてるんですか〜嬉し〜」
帝統の顔は真剣で、本当に怒っているのか心配しているのかは定かではないにしろ、普段のクズな帝統は今は影を潜めている。
こんな雰囲気なのに、幻太郎にとっては帝統が自分のことを真剣に考えてくれているという事実が嬉しくて、下を向いて思わず笑ってしまう。
面白くて笑うでもなく嘲笑うでもない、1番的確な表現をするならニヤニヤが止まらないとでも言えばしっくりくる。
帝統が自分のことをこんなに考えてくれている。
これがニヤニヤせずにいられるだろうか。
「ちょっとゆめのセンセーウケるんですけど」
「今喋りかけないで貰えますか」
ニヤニヤを隠すので必死な幻太郎は、早口でそう告げると一度顔を隠す事にした。
見られないためにはそれが一番手っ取り早い。
「まって、なに幻太郎どーしたのぉ?具合悪いの?」
「ちが……ちょっと時間をください……むり…」
人気小説家夢野幻太郎先生の本来の語彙力は影を潜めて、まるで言葉を失った腐女子のようになってしまう。
しかし帝統の方はというと真剣にこちらを見ていて、どうやら心配してくれているのか表情を読み取ろうとしてくる。
「おい幻太郎。ふざけてねぇでちゃんと話せよ」
「そん、なに、心配してくれるんですか…」
「ったりめーだろ!ダチが嫌な思いしたっつってんのに心配しないやつがあるか」
「ダチ、ですもんね、……そっ…か」
今までは嬉しくて仕方が無かったその言葉が、重くのしかかる。
彼と自分は友達で、それ以上でもそれ以下でもない。
あんなに嬉しかった言葉なのに、心が締め付けられている自分はなんて贅沢なんだろうか。
さっきまでニヤニヤして浮かれていたというのに、この感情の起伏はどうしたらいいのだ。
「誘拐されて、そんでどうやって逃げて来たんだ?」
そう問い掛ける帝統に、一二三が待ったをかけようとするが、幻太郎は構わないと首を横に振り、口を開いた。
「ゲイの方に薬を盛られて、連れて行かれてレイプされて、そのまま金置いて出ていったので、逃げたっていうわけでもなくてですね」
「はぁ?!」
「そんなに傷付いたわけでも…ないですし…自業自得というか……ちょっとお尻が痛かったくらいで…あと多分舐められた…?とかそんな…程度のことです…」
そう言いながら、少し思い出して吐き気を感じ、口を抑える。
帝統じゃない人に有り得ない所を暴かれ、舐められ、中に直接。
今になって、帝統を前にして、急に実感が湧いてしまった。
せめて初めての行為くらい帝統とがよかった。
それはもちろん叶わないのだけれど。
叶わないとわかっているのに、そんな気持ちがぐるぐるして、幻太郎はトイレに走った。
あんな気持ち悪いことをされ、そして自分はあんなことを帝統としたいとすら思っている。
二重の気持ち悪さで吐き気が止まらない。
幻太郎は悔しさと罪悪感に思わず壁を叩きながら、溢れてくる涙を手の甲で乱暴に拭った。
「………………しっかり傷付いてるじゃねーか…」
「そんなの当たり前だよぉ!きれいなおねーさんならともかく、見知らぬオッサンにケツ掘られたってことでしょ?さいあくだよそんなの…」
乱数は一二三の方を向くと、ポケットからキャンディを取り出してひとつ渡す。
「幻太郎落ち着くまでここに居させてくれてたんでしょ、ありがとね」
「さっきまで怖い顔してたじゃーん!ウケる!」
「喋んないからだよっ、もー。でも言えなかったのも無理ないけどさっ。」
乱数はそう言って自分用にもう一つロリポップキャンディを出し、口に放り込んだ。
帝統もいる?と一つ差し出すが、帝統はそれを無視して額を押さえている。
「なんで、俺らに頼ってくんねーんだよアイツ…ダチじゃねーのかよ…」
「それは〜、ダチだからじゃん?」
心配かけたくないみたいな?と、正解でも不正解でもないようなことを言う一二三を、帝統はキッと睨む。
「お前、ムカつくわ。幻太郎の何を知ってんだよ。たかが数日喋っただけのお前が」
「だって、ダチなんだよねー?その関係壊したくないってゆめのセンセーが思ってんじゃないの?」
「なんで心配かけたくらいで関係壊れるとかになるんだよ!わかんねーよ!」
そう言って帝統は立ち上がり、トイレの扉の前に立つ。
「おい幻太郎、大丈夫か」
「えぇ、少しばかり食べ過ぎたみたいで、でも大丈夫ですから」
見え透いた嘘へ突っ込むことをやめ、帝統は少し黙ってから小さめの声で話しかけた。
「気持ち悪いこと思い出させて悪ぃ。でも何があっても俺はお前のダチでいることに変わりねぇから、少しは俺らのこと頼れよな。」
それを聞いている一二三は、あーあと小さく呟き頭を抱える。
乱数もさすがにこの流れでいろいろ察しはついたのか、あちゃーなんて言っているのだが。
「……もちろん、頼りにしてますよ。なので今は、帰ってくれませんか?」
蚊の鳴くような声でそう告げる幻太郎。
それだけ絞り出すのが精一杯だった。
わかっているし、自分でもその関係がベストだと思っている。
それなのにダチと言われてこんなに悲しくなってしまうなんて、こんなに自分は愚かだったのだろうか。
かすかな息づかいで、扉の向こうで帝統が怒り狂っているのが手に取るようにわかる。
「…んでだよ。一緒に帰ればいいだろ?!」
「どうして、よりによってあなたが、それを言うんでしょう……っ、」
会話が噛み合っていないことはわかっているが、幻太郎に冷静に対応できるほどの精神力は無くて、言い終わると同時に涙がまた溢れる。
だってどうしたらいいのか、どうしたいのか、自分でもわかっていないのだ。
こんなにも好きで好きでたまらない相手が、自分の友人なんて。
「放っておけばいいでしょう?!どうせ近くに賭場があったら今すぐ行くくせに、小生に構わないでください!」
「あぁ?!賭場があったら行くに決まってんだろが!」
「ほら見なさいこのクズ!人でなし!常識もなくて知識も知恵も何もない万年素寒貧のくせに!!」
「なんっでディスられてんのかわかんねー!」
「帝統、小生は大切なお友達ですか?」
「あぁ、さっきからそう言ってるだろ」
「だったらすぐに出ていけ。チームの活動はちゃんとするから」
「納得がいかねぇよ。」
「納得などしていただかなくて結構。乱数、その人連れてってください」
突然呼びかけられた乱数はぴょんっと立ち上がり、近くまで行くといつもの調子でニコニコしながら問い掛ける。
「うん、わかったよっ。でもぉ、最後に心配だから、顔だけ見せてよ。ねっ幻太郎」
そしたらボクら帰るからさっ、と言いながら、鍵の辺りをトントンとつつく。
すると、がちゃりと音がしてゆっくり扉が開いたかと思うと、顔を半分だけ覗かせ、これでいいでしょう、とまた閉めようとする。
しかし何故か扉は閉まらなくて、それもそのはず乱数が足を突っ込んでいたから、閉まらなくて当然だ。
「んな…っ、宗教の勧誘はお断りです!」
「あっはは、素直にあけてくれちゃうなんて、幻太郎かわいー!あなたは神を信じますか〜?なーんて〜」
そのまま乱数が無理矢理扉をあけて幻太郎の腕を掴み、その小さな身体からは想像もできないくらいの力で引っ張り出される。
「いった…なにするんですか」
乱数は幻太郎の両手を掴むと、へらっと笑った。
「幻太郎〜、逃げてたらずっと逃げ続けることになっちゃうよ。」
そして小さな声で、例えば、と呟くと、乱数は帝統の目の前で幻太郎のほっぺたに軽くキスをして見せる。
「なっ………にしてやがんだテメェ!お前も幻太郎に近付くんじゃねぇこのヤリチンが!」
「えー?!なんで?!なんで帝統は幻太郎に近付いていいのにボクはだめなのお?!」
「ムカつくからだろーがよ!」
「えーそれなら帝統は、俺に近付くなって言うべきじゃん!なんで幻太郎に近付くのがだめなのお?」
「あぁ?!………あ?なんでって……なんでだ?幻太郎」
何を言ってるんだこいつは。
どうしようもなく鈍感で、とんでもないレベルの馬鹿なんだなぁ、と今までもわかっていたことを改めて実感した幻太郎は、大きなため息をつくと、知りませんよと言い捨てリビングに向かう。
「伊弉冉さん、ありがとうございました。帰ります」
「あっそ〜?」
「観音坂さんと神宮寺先生にもお礼を伝えておいてください」
「おっけっけ〜!ゆめのセンセイふっきれたの?」
「いや、なんかもう、馬鹿相手に悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなりまして」
「ウケる〜!やっぱ1回くらいえっちしとけばよかった〜!」
「そうかもしれないですね」
帝統が、なんだ今のは、聞き捨てならないぞと大騒ぎしているのを横目に見ながら、財布とスマホを抱えて玄関に向かう。
一二三が手を振ると、幻太郎も笑って手を振った。
「……いつのまにあのホストとそんなに仲良くなったんだよ?」
「帝統が妾のことを蔑ろにするからです〜。心の隙間をあの方に埋めてもらってまして〜。ちっすまではしました」
「あぁ?!てめーそれどういうことだ?!」
「おやおやぁ、ダチが誰と接吻かまそうと帝統には関係無いのでは?あと数日居たら多分えっちもしたかもですね〜」
「あっはは!さっきまでゲロってたとは思えないくらい元気じゃん!」
「こんなやつ相手に悩んでゲロ吐いてる時間が勿体無いことに気付いちゃいまして」
「確かに〜!!もしかして帝統ドーテーかなあ?」
「童貞で何が悪ぃんだよ!とにかく幻太郎はあいつとも乱数ともキスしちゃダメだからな!セックスも!!」
「鈍感なくせに独占欲だけはいっちょ前ですねぇ、まったく」
決定的な言葉を交わすのはまだ当分先のことになりそうだけれど、幻太郎はなんだか幸せな気持ちになりながら、乱数と帝統の腕を掴んで3人で渋谷まで歩いた。
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