帝幻ワンドロまとめ
雨がしとしと降っている夕方。
こんなとき頭痛が酷くなる体質の幻太郎は、薬を飲んで布団に包まる。
薬が効くまで少し時間がかかるので、その間は雨の音を聴きながらしばらく目を閉じる。
洗濯は明日、まとめてやろうと決め、ポタポタ聴こえる雨粒の音色に物語をつけて遊んでいた。
地面を跳ねた雨粒のひとつが、たまたま通り掛かったサラリーマン風の男性に恋をするお話だ。
せっかく地面を跳ねたので、このまま男性の背広にくっついて行こうと飛び付いたのだが、そこを遮った若いギャンブラーの上着に間違えてくっついてしまう。
どうにか降りようにも、なんだかギャンブラーに気に入られてしまい、そのまま一緒にいるようになる。
太陽が出れば雨粒は乾いて消えてしまう運命で、ギャンブラーもそれはわかっていた。
それでも雨が降っている間、そばにいてわかったことがある。
このギャンブラーは、自分の天敵である太陽のようにキラキラしていて、それが不思議と心地よいのだ。
恋をしたサラリーマン風の男性の話も楽しそうに聞いてくれて、探してやろうか?とまで言ってくれる。
一緒にいると、雨でじとじとした自分の気持ちがどんどんキラキラしていく。
一緒にいたい。
自分はいったい誰に恋をしたのだ?
自問自答を繰り返す雨粒にも、終わりが近付いてくる。
空には太陽が登って、これぞまさにカンカン照りというやつだ。
雨粒は、自分の想いを伝えようとした瞬間、蒸発して消えてしまった。
そんな話。
考えている間に頭痛は酷くなっていた。
雨粒の自問自答を幻太郎は繰り返す。
今、会うことが出来たら、答えが出るかもしれないのに。
そしてそんな時に、タイミング良くやってこられるのもあのギャンブラーの資質なのだろうか、小さめに設定したインターホンが控えめに響く。
痛む頭を抑えながら玄関をあけると、キラキラと笑うギャンブラーが立っていて、雨を凌がせてくれ、と言う。
あぁ、答えなんてとうに出ていた。
消えていった雨粒の代わりに、雨でずぶ濡れの帝統に、濡れるのも構わずしがみついた。
おわり
1/3ページ