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ワンドロ参加作品

暖かい光を感じて目を開けると心配そうに自分を覗き込む顔と視線がぶつかった。
「……ん?」
その不安げな顔に疑問符を投げつけると、
「覚えてないのか?」
そう緑の瞳を少し伏せて問いかけられる。
その言葉に目を覚ます前の己の行動を思い返す。
先ほどの戦闘は敵に先手を取られ混戦模様と化した。目の前の敵を片し、振り向いたその時、彼に向け武器を振りかぶる敵の姿が目に入った。
それを見た後は何も考えていなかった。ただこのままでは彼が危険であると思い敵と彼の間に体を滑り込ませ、受け身も取らずにもろに攻撃を受けた所までは思い出すことができた。
自分を覗き込んだ彼の背に見えるのが、一点の曇りもない青空である事と、背中に当たるひんやりとした固い土の感触から仰向けに倒れている事を鑑みると、意識を飛ばしていたのだろう。
敵は粗方片付けていたとは言え敵の攻撃を受け倒れた自分のを庇いながら戦わせたのだ迷惑をかけた事だろう。
「すいません。貴方が危ないと思ったら無意識に身体が動いてしまって……。ご迷惑おかけしました」
ヘラっとら笑って謝ると、
「頼むから軽率な事はしてくれるな」
一言返した後口をへの字に引き結ぶ。
そんなグレイグにイレブンはまだ怠い腕をあげ手招きすると、訝しげな表情のまま「まだどこか痛むのか?」とグレイグの手か近づいてくる。その手をぐいっと引くと、近づいた頭を遠慮なく撫でる。
わしゃわしゃと紫の髪を乱されながら、
「おいっ!」
と抗議の声が上げるがイレブンはそれを無視してグレイグの頭を撫で回す。
「だってグレイグ、拾った時のルキみたいな顔してるから……」
ルキと聞いて一瞬誰の事かと思ったグレイグだったが、最後の砦にいる彼の幼馴染みの横にいつも控えていた大きな犬を思い出す。
「すいませんでした」
撫でる手は止めずもう一度呟くイレブンに、
「それはもう聞いた」
諦めて為すがままにされながらグレイグが応えると、
「さっきのは不用意なことをした事に対するお詫びです。今のは心配をかけた事に対してのお詫び。大丈夫ですちゃんと生きてます」
「……縁起でもないことを言うな」
「僕は勇者なので、死なないって確証があるわけじゃないですけど、死なない自信はあるんですよ。だから大丈夫です。大体グレイグだって砦を出てから気を張りすぎですよ? 度がすぎると疲れちゃいます」
全てを見透かされそうな蒼穹の瞳に射られグレイグは座りの悪い思いを味わう。そんなグレイグの気持ちを知ってか知らずかにこりと笑いながらイレブンは続ける。
「英雄だって人の子でしょう。まず自分の事を大事にして下さいね?」
そう言うと曲げていた腕を大の字になるように下ろし、
「あぁ〜、血を流しすぎました……。血の滴るような肉が食べたい……」
グレイグが言葉を返す前にぐったりと呟く。
「……本当にお前は」
「はい?」
「……いや、勇者とは難儀な物だなと改めて思ったまでだ」
そう言うとイレブンの背と膝裏に腕を入れ持ち上げる。
「わわっ!自分で歩けます!」
急に持ち上げられた事に慌てる勇者を横目に、親子ほど歳の違う勇者に肩の力を抜けと言われた事に苦笑いするしかないグレイグはとりあえず自分に出来ることから勇者を甘やかす事にした。
いずれ名実共に彼を守る盾となろうと改めて心に誓いながら。
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