メイド
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高杉
『ン?お前あの時の…』
緋那
『嬉しい、覚えててくれたんだ?』
解放された手を高杉の両頬に伸ばし、唇を色っぽく見つめる。
緋那
『あの日からずっとあのキスが忘れられなくて。ね、もう一度』
高杉
『はっ。そんなに気に入ったのか?』
桂
『緋那…?』
二人の間に何があったのか知らない桂はただ茫然と立ち尽くす他ない。
高杉
『悪ィな。据え膳食わぬは男の‥ってヤツだ』
上半身を屈め、唇を重ねる。
ガリッ
高杉
『‥ッ』
ガチャ ガチャッ
高杉
『!!!?』
唖然とする二人をよそに、片手に錠を掛けられ、もう一方を格子窓に繋がれた高杉に向かって緋那は悠然と微笑んだ。
緋那
『何勘違いしてンの?』
忘れられなかったのはあの時咬まれた唇の痛み。
やっぱりやられっぱなしは好きじゃない。
緋那
『あんな下手なキス、誰が気に入るかよ』
さて、これからどうしよう。
こっそりエプロンに忍ばせていた手錠を高杉に使ってしまった。
手錠なしで桂を店に戻せるだろうか。
桂
『ふっ。イイ男が台無しだな』
流血する唇を片手で覆い隠す高杉を見ていい気味だと嘲笑う。
高杉
『何‥なんだよ。あの口も手癖も悪ィじゃじゃ馬は』
桂
『じゃじゃ馬?お前にはそう見えるのか』
俺には―――。
不浄に咲く一輪の華。
緋色の髪を靡かせ、遠くを見つめながら物思いに耽る凛然たる横顔。
高嶺の華。
ずっと見ているだけだった。
余りにも遠すぎて、手を伸ばそうともしなかった。
だが、今は。
桂
『相変わらず見る目がないな。だがそれでいい、お前にアイツは不釣り合いだ』
桂は高杉の傍を離れ、緋那に歩み寄り何やら話し始める。
高杉
『おい、ちょっと待て。このままにして行く気か?』
手錠の鍵を持ってきてくれるものだとばかり思っていた。
連れ立ってその場を後にしようとする二人に慌てて声を掛けるが、桂は目もくれず去って行く。
桂
(ふん、軽々しく緋那に触れた報いだ。暫くそこで反省するがいい)
その後、高杉は緋那と同様、唇の傷が痛む度に、鏡で傷を見る度に今日の事を思い出し、苛々する日々を過ごすのであった。
緋那
『‥っくしゅ』
桂
『はは、随分可愛らしいくしゃみだな。あ、いや、気が回らなくてすまない』
羽織を脱いで緋那の肩に掛ける。
桂
『着ておけ。風邪を引いたら大変だ』
緋那
『…じゃ、遠慮なく』
このくらいの寒さで風邪を引くほどヤワではないが、ひらひらしたメイド服一枚では着ている気がしなくて落ち着かない。
緋那
『…………………』
袖を通して気付いた。
羽織に残る桂の温もり。
抱きすくめられているようで、さっきの抱擁を思い起こさせる。
緋那
(暗くてよかった)
熱った頬と耳に冷たい風が気持ち良い。
緋那
『さっきも、これも、ありがとな』
桂
『ああ』
二人が店に戻った時、そこは文字通り壊滅していた。
桂
『なんだこれは、、、』
緋那
『ま、大体の想像はつくよ』
売春を強要されそうになった総悟が変装しているのを良いことに思い切り暴れ、店を丸々潰していたのだった。
本来の目的とは違ったが、斡旋業者を摘発できたことにより今日もまた一つ江戸の平和が守られた。