手離れ
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土方
『こっち来てから明らさまによそよそしくなりやがって。俺が一体何したっつーんだ』
緋那
『だってほら、他の隊士の目もあるし』
土方
『あぁん?』
緋那
『だーかーらー、俺みたいな平隊士が十四郎なんて気安く呼んでたら副局長の威厳が薄れるだろ?』
土方
(コイツなりに考えて、俺の為を想って…?)
距離を置かれた理由をずっと誤解していた。
自分が近藤の右腕、副長の座に就けなかったことが気に入らなくて、その当て付けのようなものかと。
緋那
『???何?』
土方
『いや、ちょっと罪悪感が、、、』
償いの気持ちを込めて緋那の髪をくしゃくしゃと撫でると前髪から軽く砂埃が舞った。
土下座なんかしたのも、規則だ何だって人一倍厳しく言ってる本人が謹慎じゃ格好つかないとか、そういう理由なのだろうか。
緋那
『わけわかんないこと言ってないで、手も見せて』
頭に置かれている手を煩わしそうに掴み、手の甲の擦り傷の手当てを始める。
緋那
『十四郎』
土方
『ん?』
緋那
『ありがとう。すごく嬉しかった』
土方
『…おう』
二人は顔を見合わせ笑った。
・・・
近藤
(過保護は緋那の為にならない、か)
あれから一人部屋に閉じ籠り、土方に言われたことを繰り返し考えていた。
近藤
(あいつが実働部隊でも充分やっていける力があるのはわかってる。けど―――)
コンコン
緋那
『緋那です。入ってもいいですか?』
返事がない。
緋那
『ダメならそう言って下さい』
これも返事がない。
緋那
『ダメじゃないなら入りますよ?』
遠慮がちに戸を開け、中を覗く。
近藤
『謝罪ならもう要らねぇぞ』
緋那
『う…』
出端を折られ意気消沈する緋那に近藤は右手を差し出した。
近藤
『それよりこれ、頼む』
緋那
『は、はいっ』
その手を取り、持参した氷嚢を当てる。
緋那
(………………)
近藤
(………………)
話す言葉が見つからない。
それでも腫れた拳が冷える頃にはお互い強張っていた表情が和らいでいた。
緋那
『近藤さん』
近藤
『ん?』
緋那
『心配かけてごめんなさい』
近藤
『いや。俺も、カッとなって悪かった』
掠り傷一つ負っていないのにあれだけ取り乱してしまうとは。
近藤
(もっと精神面を鍛えねぇとな)
自分の為にも緋那の為にも、緋那を一人前の侍として見ている土方に任せた方が良いのかもしれない。
湿布の上からクルクルと器用に巻かれていく包帯を見つめながら、近藤は前向きにそんな事を考えていた。