手離れ
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緋那
『わかった。お前の諜報能力の高さは十分わかったから、もういい』
初対面の人間がここまで自分のことを知っていると気味が悪い。
真選組内部にスパイが紛れているのではと疑うレベルだ。
桂
『そうか?俺はまだまだ話足りないのだが』
桂はチラリと視線を送り、屋根を伝いながら此方に向かってくる土方の姿を確認する。
もうそんなに時間がない。
桂
『無粋な輩だ。人の逢瀬を邪魔しおって。名残惜しいが続きはまた今度にしよう』
緋那は心の中で「逢瀬?」と首を傾げながらも腰の刀に手をかける。
緋那
『悪ィけど此処は通さないぜ』
桂
『居合か。面白い』
じりじりと縮まる距離。
ヒュンッ
緋那の剣撃が桂の着物を切り裂く。
紙一重で躱された。
桂
『惜しかっ…』
キィンッ
しかし返す刀で逸速く放たれた追撃は躱すことが出来ず、桂は咄嗟に抜いた刀で何とか受け止める。
桂
『良い腕だ。ますます気に入った』
緋那
『よく喋る奴だな』
鍔迫り合いは分が悪い。
緋那は一度間合いと取ろうと強く押し返す。
瞬間、刀身はいなされ、刃は瓦を割った。
恐らく見計らっていたのだろう。
体勢を崩した緋那の首筋に背後から刃があてられる。
桂
『今日此所でお前と話せた記念に貰って行くぞ。お前の髪』
ザクッ
桂
『女の命を』
緋那
『なっ…』
土方
『大丈夫か緋那っ、待ちやがれ桂ッ』
土方が到着すると、桂は緋那の耳元で「逢えて嬉しかった」と囁き直ぐ様姿を消した。
・・・
屯所に近藤の怒号が響き渡るのと同時に、土方は障子ごと外に吹き飛ばされた。
土方
『…ッ』
近藤の剣幕に総悟も山崎も言葉を発せない。
緋那
『土方さんっ』
土方に駆け寄る緋那の髪は、胸の下まであったものが肩くらいまで短くなっている。
近藤
『トシ、お前自分が何をしたのかわかっているのか!?俺の許可も無しに勝手に緋那を連れ出し、あまつさえあの桂と刀を交えさせるなど何を考えているんだッ』
緋那には刀を抜かせるようなことはさせるなと、近藤は普段から口煩く言っていた。
近藤
『二人とも始末書と反省文、それに謹慎処分だ。謹慎中は刀に触れることすら許さん。暫く頭を冷やせ』
緋那
『近藤さん、、、』
近藤
『緋那、そんな未熟な腕で刀を握る資格はない。少しは自分の無力さを自覚しろ』
辛辣な言葉が緋那の胸にグサリと突き刺さる。