ブリッグズ要塞へ
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「私からはこの要塞の案内をさせてもらう。遭難者とはいえ、敵ではないわけだから、一応はこちらのメンバーと同等に扱わせてもらう」
「あの、私……一応、恩返ししたらここを出ていく予定なので、はい」
「錬金術は等価交換だと聞いている。命の恩人とも言えるこのブリッグズ要塞が、もしドラクマの手に落ちる事など、万が一でもあってはならない。その時に##NAME1##、君の力が欲しい。有事の際は呼ばせてもらうという条件を飲むなら、解放は可能だ。」
「……いわゆる、放し飼いですかね?」
「まぁ、首輪が軍ではなく北国の女王になる位だ
」
「余計怖いんですが……」
マイルズ少佐と名乗ったこの人も、中々くせ者だ。便利屋に認定されてしまったのは、もう間違いない。
「ちなみに拒否権はないと思ってくれていい。アームストロング少将からの命令だからな。」
「はい?」
「早い話が、諦めろ」
「……ここは地獄か」
要塞の中を歩きながら、幾つかの部屋を越えてブリッグズ要塞の屋上へと案内された。見晴らしのよい高台に、ブリッグズ山の山肌が見えて雪が所々に積もっていた。先程のブリザードはすっかり止んだみたいで、済みきった青が眩しい。
「うわー!すごい!」
「あのブリッグズ山の向こうが敵対するドラクマだ。そしてあの辺りがノースウッドとネルトンの町、小さく見えるのが北方司令部。」
「……ほんとに反対だ……」
「そうか、##NAME1##はノースウッドへ行くんだったな?何をする予定だったのか、聞いてもいいか?」
「くだらない事なら、要塞に拘束するって言われそうなんですが……」
「……考慮はするさ」
雪を払って出っ張りに腰を降ろす。隣にマイルズ少佐が座るのを待って、足を組んだ。
「……もう、マイルズ少佐も知ってると思いますけど、私は国家錬金術師だった人間です。」
「……あぁ、聞いてる」
「沢山の犠牲の上に、私の命は……皆の命は立っています。その事を私は忘れてはならないから、この力を軍事のためではなく、誰かの役に立つ為に使いたいから、軍を辞めたんです。沢山、人を殺めてしまったから、罪滅ぼしなんて綺麗事じゃないですけど……そのつもりで。」
「……」
国家錬金術師として、「人間兵器」として働いた人間たちは、イシュヴァール戦の後、多くが辞めた。その一人に##NAME1##もいた。
罪悪感に苛まれ、命を絶った人間もいた。
おごまかしい、勝手だ。生きたいと願った人間は無惨に死んでいく、
マイルズは、歯がゆさを覚えた。
これが正義の執行か。何を信じたらいい?
その迷いを晴らせなくて、##NAME1##もまた答えを模索して、導きだした今があった。
「……」
何もない私の右手と、左手を包んで意識を集中させるだけでいい。
一瞬、青く光る錬成反応の後、##NAME1##は手を開く。
「!」
「こうやって、雪だるまとかを作ると子どもたちがすごい喜ぶんですよね……大したことをしてるわけでもないのに。そういうことをひとつ、ひとつ積み重ねていってるんです。今の私は、ただの人として。」
「……そうか。」
マイルズ少佐の手に渡して、私は掌の雪を払う。
「ノースウッドに行く目的は、森林伐採によるブリッグズ山の清流整備と河川氾濫の防止のためです。この辺は多くの水害が出ていると聞いて、ダブリスで耳にして」
「あぁ、あちらでは最近大雨による洪水があったとか」
「そういうのは、全て自然災害だから元を正せば私たちのせいでもあるんですよね。だからと言って責めるのは違いますけど、よい方向に流れを作る。水は自由だから、形を整えてあげるだけでいいんです。そのお手伝いを私の錬金術でしてあげたいんです」
「……そうか」
誰かの役に立つ為に、か。
手荷物にあったとされる地図や錬金術の道具などは、ノースウッドで使うための材料だったけど、##NAME1##は後悔していなかった。
マイルズが先に立ち上がると、雪だるまを座らせて手を差し出した。
「……私は君を誤解していたようだな」
「へ?」
「いや、独り言だ。お望み通り、飯にしようか。ここの食堂はうまいぞ」
「有難うございます!やっとご飯食べられる……!」
##NAME1##はマイルズの手を握り返し、立ち上がった。途端に響く地鳴りの音に身体が揺れた。
「!」
「う、わわわっ!なんだなんだ?!」
「ちっ、まずいな……ドラクマの奴らだ」
「どっ、ドラクマ?!どこ、どこ?」
「あれだ。……くそ、山岳警備兵を倒してきていたのか……!」
「……!」
遠くの雪道に眼を凝らすと、ぞろぞろと蟻のように群れを成していた。遠くに見えるのは可動式の砲台で、何発かをこちらに向けて撃ち込んできている。その衝撃で雪が崩れ、ブリッグズ要塞を揺らしていた。
「##NAME1##、すまないが飯は後になる。先に少将の指示を待つ」
「う、っうう……マイルズ少佐……!」
「下に降りるぞ」
「……はぁい」
本当についてない。
今頃ならもう、ノースウッドの復興は終わって、名物のビーフシチューが食べられた筈なのに……!なんで私はさっきから霞ばっかり食べてるんだ……!ああああもう……!
「ドラクマー!邪魔するなー!あほー!」
「おい、行くぞ!」
「……大きな声出したら、余計お腹すいてきた……」
##NAME1##は、とぼとぼとマイルズの後を追いかけた。
end.