ブリッグズ要塞へ
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「……貴様が遭難者か」
「……は、はい…。この度は助けていただいて有難うございました……」
「名前は」
「さっき聞いたんじゃ」
「いいから名乗れ」
「はい!##NAME1##・##NAME2##です!」
「……」
こっ、怖い!
めっちゃ睨まれてる!
晴れた空の色を切り取った、まさにブリッグズの空のようにきれいな澄んだ青色の目をして、綺麗な金髪の軍人に睨まれています。
ただ道に迷った遭難者なんですが、なぜこんなにも睨まれているのかは不明です。しかも長い剣を携えていらっしゃる……!
「貴様の名を、一度だけ耳にした事があったが……容姿が異なるな。本当に貴様か?」
「……有名人を騙る詐欺みたいな疑い方ですね」
「ふん、このブリッグズに近付くものは疑うのは当然だ。いつドラクマの手が伸びるか分からない地、それがここだ。」
「ですよねぇ……」
ちらりと見えた階級はかなり上官クラスの人間らしい星の数。大佐クラスかはたまたもっと上かな……?
「単刀直入に聞こうか、貴様の目的はなんだ」
「……さっきの方にもお話しましたけど、私の目的はノースウッドに行くことで、方向を間違えてブリッグズに来てしまったといいますか」
「下手な嘘だな」
「本当ですってば!何の用もなく軍事施設に来るわけないでしょ!」
「……ほう、ブリッグズ要塞の事は一応、知っているわけか」
「そりゃ街の人に『ブリッグズの要塞には間違っても行くもんじゃない。殺されるぞ』なんて言われたら…」
「間違ってはいないな。しかし……」
とんとん、と剣を叩いていた指が動きを止めて、じっと私を見据える。迷いのない曇りもないまっさらな青に私が映る。
「貴様の名が事実ならば、貴様の場合は、別の理由があるだろう?ブリッグズ要塞ではなくとも、軍に関わりたくない理由が」
「……その通りです」
今、動けば寸分違わず剣先が喉をかき切る気配がした。彼女の目は本気で人を殺せる目だった。あの頃の私のように、冷たい。
「##NAME1##・##NAME2##。国家錬金術師。イシュヴァール戦においても活躍した英雄。二つ名は確か……」
「やめてください!昔の話だ!」
あの頃には戻りたくない……!
ぎゅっと私は手を握り締めた。
「……だから、髪の色と目の色を変えたのか?別人を装うために」
「……」
「貴様は過去、茶色の目と髪の色だった筈だ。今は見る影もなく、両方が銀色。髪はまだしも目も変えるとなると……相当だろうしな」
そうだ、私はもう、軍人ではない。
それなのに軍人に関わり、こうして尋問されている。嘘をつけばよかったのに、私は私自身で自分の首を絞めていた。
「……研究の代償で、失敗したんです。私であることを隠すのには丁度いいですし。」
「貴様の研究は続けているのか?」
「止めようと、思いました。あんなものに使う事が正しい訳がないのに、愚かでした」
「……おこがましいと思ったから、軍人を辞めたのか?お前も臆病者か」
「う、っ……」
顔を背けた彼女の横顔は、じっと窓の外を見ていた。……臆病者、確かにそうかもしれない。だから私が選んだのは、
「でも、誰かの為に使う力を、どう活かすのかは私次第です。軍人ではなく個人で誰かの為に、役に立ちたかったから……止めていません。」
「……そうか」
再びこちらを見た彼女の目は変わらず、睨み付けていたけど、私は反らさずに見つめ返す。正直、とてもとても怖いけど…彼女の目に嘘はない。
私はそれを信じたいから、きっと嘘をつけなかったのかもしれない。
「なら、貴様には働いてもらおうか」
「……はい?」
「錬金術師なのだろう?助けた等価交換として、しばらく働いてもらう」
「え、あのちょ……はい?っ!」
「出ろ」
腕をいきなり捕まれたと思ったら、牢から自由の外ではなく勢い余って壁にぶつけられそうになる!
「っー!あぶな、っ!」
「フラフラしてないなら、自力で歩けるだろう。」
「あのですね、さっきまで気絶してたんだからもう少し優しくしてくださっても……!」
「うるさい、働けないなら追い出すぞ。昼間以上のブリザードだ、お前はひとたまりもなく、このブリッグズで死ぬことになるぞ?」
「……」
背水の陣。二択も何もない!
「……精一杯、働かせてもらいます……」
「最初からそうしろ」
「あの、」
「なんだ」
「ところで、貴方の名前を聞いてもよろしいですか?」
「オリヴィエ・ミラ・アームストロングだ。階級は少将だ。」
『ブリッグズ要塞には、ブリッグズの北壁という名の女将軍がいる。美人だが……あれは恐ろしく強いぞ』
『へぇ……』
街の会話を思い出す。きっと彼女のことだろうな……って、アームストロングってまさか……
「アームストロング!あぁ、少佐のお姉さんですか?」
「……貴様はアレックスの知り合いか」
「同じ国家錬金術師でしたから……彼は元気ですか?」
「知らん。貴様のような臆病者は」
「……」
仲が悪いのかな……
「……えっと、アームストロング少将」
「なんだ」
「いい加減、貴様って呼ぶのやめてくださいませんか?」
「貴様はその敬語をやめろ」
「分かったから、せめて名前か名字で呼んで……っ」
「アームストロング少将!」
「……バッカニアか」
「あ。さっきの人……」
前から歩いてきたモヒカンの大男が、アームストロング少将を呼ぶ。うおお、おっきい!さすが北国!頭は寒くないのかな……。
「丁度いい。こいつを働かせろ」
「了解しました。で、何をさせましょうか?」
「やり手の錬金術師だ、なんでもさせろ」
「アイマム!」
「え、ちょっ!アームストロング少将?!」
丸投げって、まって!ひどい!
錬金術師っていっても、名を馳せてる鋼の錬金術師だったり、マスタング大佐のようにはすごいこと出来ないのに!
「終わり次第、私の部屋へ」
「イェッサー」
「ちょ、ま、バッカニア大尉!」
「##NAME1##と言ったな?ブリッグズ要塞は仕事が多くある、飽きることもないぞ」
「私は一般人だからね!?」
「何、気にするな。死ぬことはさせんさ」
「……それまではこきつかう気か!」
「全く、うるさいやつがきたもんだな……」
オリヴィエの呟きに答えるものはおらず、一人言は続いた。
「まぁいい。ドラクマの動きがそろそろ活発になる。その時は存分に働いてもらうぞ……『天理の錬金術師』よ。」
end.