一,陽向
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一夜開けてからの総悟の様子は、まるで人形のように部屋から動くことなく、ただじっと窓の外を眺めていた。
状況が状況だけに他人事とは思えなかった土方は、被害者であった向葵という女の素性と、その婚約者であった男の素性を山崎に頼んで洗い出した。
婚約者の男の名は、橘陽介。
歳は今生きていれば、今年で三十四になる。
そして彼女は、それよりも下ではあるが正確な年齢は不詳。
どうやら元々孤児で、たまたま拾われた里で彼と共に育ったらしい。
幼い頃から一緒に生活してきた彼が通っていたのは侍を育てる寺子屋で、彼女もそこによく顔を出していたとか。
陽介の剣客としての名は広がり、やがて攘夷戦争にも駆り出されたという形跡があった。
しかし彼は江戸という国が生まれ、天人達との共存を認めたと聞いた際には、潔く剣を捨て、仲間も解散させたそうだ。
国が決めたのであれば、その新しい時代に抗うのではなくその時代にそって、人生を歩み直そうとしたらしい。
そうして彼女と共に立ち上げたのが、あの喫茶〝陽向〟だった。
だが事はそう簡単には運ばなかった。
かつて彼を尊敬し、背中を預けて戦ってきた仲間達が幕府に反発し、何か良からぬ事を起こそうと嗅ぎつけた陽介は、明日オープンを迎える店に彼女を一人残し、その仲間たちの元へと向かった。
どうやら誰からも好かれるお人好しの性格をしていたらしく、恐らくあの日彼らを逃がして真選組に立ち向かったのも、仲間を自らの意思で真っ当な道に歩ませるためだったのではないかと、彼を知っている人達は話したという。
そして山崎の調べによると、驚くことにその橘陽介と、白夜叉と名を上げた坂田銀時が顔見知りであったということ。
恐らく攘夷戦争で共に闘った事があるのであろう。
調べた結果は残酷かつ、受け入れ難いほど総悟と向葵は悲しい繋がりだった。
だがどんな事情であれ、真選組の一隊長が私情で自身を一般人に差し出そうとした行為を目の当たりにした以上、総悟は数日の謹慎処分を下さなければならない。
処罰を与えると、普段はわーわー文句を飛ばしてくる彼が、今回は黙ってそれに従ったことも、あの心ここに在らずのらしくない様子も、長い付き合いである土方にとっては見るに堪えない姿だった。
「…ったく、しょうがねぇなぁ。」
非番で外に出ることはあまりないが、土方はその重い腰を上げ、目的の場所へと向かったのだった。
状況が状況だけに他人事とは思えなかった土方は、被害者であった向葵という女の素性と、その婚約者であった男の素性を山崎に頼んで洗い出した。
婚約者の男の名は、橘陽介。
歳は今生きていれば、今年で三十四になる。
そして彼女は、それよりも下ではあるが正確な年齢は不詳。
どうやら元々孤児で、たまたま拾われた里で彼と共に育ったらしい。
幼い頃から一緒に生活してきた彼が通っていたのは侍を育てる寺子屋で、彼女もそこによく顔を出していたとか。
陽介の剣客としての名は広がり、やがて攘夷戦争にも駆り出されたという形跡があった。
しかし彼は江戸という国が生まれ、天人達との共存を認めたと聞いた際には、潔く剣を捨て、仲間も解散させたそうだ。
国が決めたのであれば、その新しい時代に抗うのではなくその時代にそって、人生を歩み直そうとしたらしい。
そうして彼女と共に立ち上げたのが、あの喫茶〝陽向〟だった。
だが事はそう簡単には運ばなかった。
かつて彼を尊敬し、背中を預けて戦ってきた仲間達が幕府に反発し、何か良からぬ事を起こそうと嗅ぎつけた陽介は、明日オープンを迎える店に彼女を一人残し、その仲間たちの元へと向かった。
どうやら誰からも好かれるお人好しの性格をしていたらしく、恐らくあの日彼らを逃がして真選組に立ち向かったのも、仲間を自らの意思で真っ当な道に歩ませるためだったのではないかと、彼を知っている人達は話したという。
そして山崎の調べによると、驚くことにその橘陽介と、白夜叉と名を上げた坂田銀時が顔見知りであったということ。
恐らく攘夷戦争で共に闘った事があるのであろう。
調べた結果は残酷かつ、受け入れ難いほど総悟と向葵は悲しい繋がりだった。
だがどんな事情であれ、真選組の一隊長が私情で自身を一般人に差し出そうとした行為を目の当たりにした以上、総悟は数日の謹慎処分を下さなければならない。
処罰を与えると、普段はわーわー文句を飛ばしてくる彼が、今回は黙ってそれに従ったことも、あの心ここに在らずのらしくない様子も、長い付き合いである土方にとっては見るに堪えない姿だった。
「…ったく、しょうがねぇなぁ。」
非番で外に出ることはあまりないが、土方はその重い腰を上げ、目的の場所へと向かったのだった。