一,陽向
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その日、いい知らせと悪い知らせが総悟の携帯に入ってきた。
いい知らせは、通ううちにすっかり仲良くなって連絡先を交換した陽向の向葵からのメールだった。
今日はちょっと事情があって、遅くまで店に居るつもりです。
明日非番だと言っていらしたので、もし仕事が早く終わって時間があれば、今日は個人的にお酒でも一緒に飲みませんか?
丁寧な口調の彼女からは安易に想像のできる誘い方だった。ただ、隊員たちの目を盗んですぐに返すことがなかなかできず、未だ返事ができていない。
もう一方の悪い知らせは、その自分を待っている彼女の店のすぐ近くで、最近真選組の中で話題になっていた、女子供を攫っては人身売買を測っている連中が動きを見せたことだった。
嫌な予感がしてたまらなかった。
頼む、無事でいてくれ。
何度も心の中で唱えては、急いで副長の土方と共にその場へと向かった。
「おい、総悟!」
いつもと何やら様子の違う彼の名を呼ぶが、その足は止まることを知らない。
陽向へとまっすぐ向かい、彼女がいつものように笑って待ってくれている姿を一目見て安心したい。
だが入口をあけ、無残に荒らされた店内を前にして、それは儚く消えていった。
「くそっ!!遅かったか…」
「おい総悟、どうしたんだよ!この店に何が……」
後方から息を切らして肩を掴んだ土方に目もくれず、その場で俯いて拳を握る。
「だから忠告したんでぃ…」
「総悟?」
「土方さん、奴らに連れていかれたのはこの店の店主の向葵でさァ。…間違いねぇ。はえぇとこ奴らの居場所をつきとめねぇと……!」
「おい、お前さっきから様子が変だぞ。何言って…」
「早く行かねぇとあの人が危ねぇんでさァ!」
「お、おい総悟待てッ!一人で突っ走んじゃねぇ!」
ヤケに切羽詰まった総悟は再び一人で走り出し、再び土方が後を追う。
そんな二人の足を止めたのは、突如入った山崎からの一本の無線だった。
「奴らの拠点を確認しました!場所はかぶき町から一里ほど離れた今は廃墟となった神社です!」
「ーーッ!」
身体中が熱い。
血管をはり巡る血液が沸騰しそうなほどだった。
総悟はそれを聞き、一目散にその場所へと走り出していき、彼を見失った土方は近くに停車していた車に乗り、ただならぬ様子の彼の後を一目散に追いかけたのだった。
※※
山崎の報告の通り、神社の周囲には見るからに悪人そうな奴らが周囲を固めていた。
狛犬の銅像の陰に隠れ、どの隊員よりも一足先に辿り着いた総悟は敵の人数の確認と、彼女の姿を探すために辺りを見渡した。
そんな時、一人の男が口を開いたのを耳にした。
「おい、向葵さんよぉ。どーしてそんなに落ち着いていられるんだ?今から知らねぇ男どもにその綺麗な身体をボロ雑巾になるまでたらい回されるっていう時によォ。」
「ーーッ、」
無意識に歯を食いしばり、口の中で血の味が広がる。
しかし怒りに充ちた脳でも、なぜ奴らが彼女の名を知っているのか疑問に抱き、直ぐには動かなかった。
「…あなた達、まだこんな事をしていたんですね。」
次に耳にしたのは、いつも優しく微笑む彼女の声とはまた別人のもののような低く冷たい声だった。
「はあ?まだってなんだよ。先に俺たちの仲を裏切ったのは、てめぇんとこのアイツだろうが!」
「あの人は裏切ったんじゃなくて、あなた達に新しいこの国で人生を歩み直して欲しかったからよ…あの人が死んでも、なお背筋を伸ばして生きていく事が出来ない弱虫なあなた達に、たとえ何をされようと全然怖くないし、泣いて喚くつもりもないですから。」
「こっ、このクソ女ッ!!」
男が声を荒立てたのを聞き、総悟は奴らの前に立ち姿を表した。
腰に指した刀の柄にそっと手を触れ、深く呼吸をしてなんとか荒立っている気持ちを落ち着かせる。
「おい、その人からその汚ぇ手を離せ。」
自分でも驚くほどの地を這うような低い声に、奴らは驚いてこちらへと振り返る。
そして手足の自由を奪われ、煌びやかな長い髪を引っ張られている痛いげな姿の彼女の視線も、自分へと向いた。
「そっ、総一郎さ……」
「ははっ!こりゃ驚いた!傑作じゃねぇか!」
いつの間にか追いついたのか、背後には土方が構えを取っていた。
しかしそんな真選組を前にしても、奴らは動揺するどころか高笑いを始めた。
「おい向葵、見ろよ!おめぇを助けに来た奴があの真選組だとは最高じゃねぇか!」
「しかも一番最初に駆けつけたのが、あの男を殺した〝一番隊隊長 沖田総悟〟とはな!」
「…どういう意味でぃ。」
眉を顰めて奴らにそう尋ねると、返ってきた言葉は総悟が想像もしていなかった残酷なものだった。
「向葵の婚約者であり、俺たちの元仲間を容赦なく斬り殺し、こいつを一人にした男がてめぇなんだよ、沖田総悟!」
いい知らせは、通ううちにすっかり仲良くなって連絡先を交換した陽向の向葵からのメールだった。
今日はちょっと事情があって、遅くまで店に居るつもりです。
明日非番だと言っていらしたので、もし仕事が早く終わって時間があれば、今日は個人的にお酒でも一緒に飲みませんか?
丁寧な口調の彼女からは安易に想像のできる誘い方だった。ただ、隊員たちの目を盗んですぐに返すことがなかなかできず、未だ返事ができていない。
もう一方の悪い知らせは、その自分を待っている彼女の店のすぐ近くで、最近真選組の中で話題になっていた、女子供を攫っては人身売買を測っている連中が動きを見せたことだった。
嫌な予感がしてたまらなかった。
頼む、無事でいてくれ。
何度も心の中で唱えては、急いで副長の土方と共にその場へと向かった。
「おい、総悟!」
いつもと何やら様子の違う彼の名を呼ぶが、その足は止まることを知らない。
陽向へとまっすぐ向かい、彼女がいつものように笑って待ってくれている姿を一目見て安心したい。
だが入口をあけ、無残に荒らされた店内を前にして、それは儚く消えていった。
「くそっ!!遅かったか…」
「おい総悟、どうしたんだよ!この店に何が……」
後方から息を切らして肩を掴んだ土方に目もくれず、その場で俯いて拳を握る。
「だから忠告したんでぃ…」
「総悟?」
「土方さん、奴らに連れていかれたのはこの店の店主の向葵でさァ。…間違いねぇ。はえぇとこ奴らの居場所をつきとめねぇと……!」
「おい、お前さっきから様子が変だぞ。何言って…」
「早く行かねぇとあの人が危ねぇんでさァ!」
「お、おい総悟待てッ!一人で突っ走んじゃねぇ!」
ヤケに切羽詰まった総悟は再び一人で走り出し、再び土方が後を追う。
そんな二人の足を止めたのは、突如入った山崎からの一本の無線だった。
「奴らの拠点を確認しました!場所はかぶき町から一里ほど離れた今は廃墟となった神社です!」
「ーーッ!」
身体中が熱い。
血管をはり巡る血液が沸騰しそうなほどだった。
総悟はそれを聞き、一目散にその場所へと走り出していき、彼を見失った土方は近くに停車していた車に乗り、ただならぬ様子の彼の後を一目散に追いかけたのだった。
※※
山崎の報告の通り、神社の周囲には見るからに悪人そうな奴らが周囲を固めていた。
狛犬の銅像の陰に隠れ、どの隊員よりも一足先に辿り着いた総悟は敵の人数の確認と、彼女の姿を探すために辺りを見渡した。
そんな時、一人の男が口を開いたのを耳にした。
「おい、向葵さんよぉ。どーしてそんなに落ち着いていられるんだ?今から知らねぇ男どもにその綺麗な身体をボロ雑巾になるまでたらい回されるっていう時によォ。」
「ーーッ、」
無意識に歯を食いしばり、口の中で血の味が広がる。
しかし怒りに充ちた脳でも、なぜ奴らが彼女の名を知っているのか疑問に抱き、直ぐには動かなかった。
「…あなた達、まだこんな事をしていたんですね。」
次に耳にしたのは、いつも優しく微笑む彼女の声とはまた別人のもののような低く冷たい声だった。
「はあ?まだってなんだよ。先に俺たちの仲を裏切ったのは、てめぇんとこのアイツだろうが!」
「あの人は裏切ったんじゃなくて、あなた達に新しいこの国で人生を歩み直して欲しかったからよ…あの人が死んでも、なお背筋を伸ばして生きていく事が出来ない弱虫なあなた達に、たとえ何をされようと全然怖くないし、泣いて喚くつもりもないですから。」
「こっ、このクソ女ッ!!」
男が声を荒立てたのを聞き、総悟は奴らの前に立ち姿を表した。
腰に指した刀の柄にそっと手を触れ、深く呼吸をしてなんとか荒立っている気持ちを落ち着かせる。
「おい、その人からその汚ぇ手を離せ。」
自分でも驚くほどの地を這うような低い声に、奴らは驚いてこちらへと振り返る。
そして手足の自由を奪われ、煌びやかな長い髪を引っ張られている痛いげな姿の彼女の視線も、自分へと向いた。
「そっ、総一郎さ……」
「ははっ!こりゃ驚いた!傑作じゃねぇか!」
いつの間にか追いついたのか、背後には土方が構えを取っていた。
しかしそんな真選組を前にしても、奴らは動揺するどころか高笑いを始めた。
「おい向葵、見ろよ!おめぇを助けに来た奴があの真選組だとは最高じゃねぇか!」
「しかも一番最初に駆けつけたのが、あの男を殺した〝一番隊隊長 沖田総悟〟とはな!」
「…どういう意味でぃ。」
眉を顰めて奴らにそう尋ねると、返ってきた言葉は総悟が想像もしていなかった残酷なものだった。
「向葵の婚約者であり、俺たちの元仲間を容赦なく斬り殺し、こいつを一人にした男がてめぇなんだよ、沖田総悟!」