一,陽向
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巡回を行っている途中、公園のベンチで酷く落胆している旦那を見かけた。
自販機でコーヒーを2つ買い、彼の元へと歩んだ。
陽向に通いつめている自分にとって、今となってはこの缶コーヒーはただのコーヒーの香りがる飲み物という認識程度しかできない程だった。
あの屈託のない優しい笑顔を缶コーヒー越しに思い出しては、ふっと笑みを浮かべて銀時へと差し出した。
「旦那ァ、ちょっといいですかぃ?」
「あぁ?何だてめぇかよ。なんの用だよ。そういやおめー、あれからあの店行ってなかったんだってな。向葵ちゃん、すんげぇ心配してたぞ。なんかムカつくけど。」
「その件についてはもう解決したんでご心配無用でさァ。それよりあんたに一つ、頼みてぇことがあるんでぃ。」
そう言ってコーヒーを差し出すと、彼は大きく首を傾げた。
「はぁ?向葵に真選組の沖田総悟であることを悟られないようにして欲しい?!」
「声がでけぇでさァ、旦那。」
ベンチで隣合って座る彼を細めで見ると、はぁと大きくため息をこぼし、銀時は空を見上げた。
「なんでまた、隠すんだよ。」
「あの人は、汚れを知らない純粋な人でさァ。だからこそ、俺のことをなんにも知らねぇからそんな風に接してくれるんでさァ。俺みたいな汚れもんが、毎週毎週コーヒーを飲みに行ってるってなっちゃ、あの人も気が引けるかもしれねぇ。何も知らねぇまま、一人の男として見ててもらえた方が都合がいいんでさァ。」
「……ふぅん。なにお前。もしかして向葵ちゃんに恋してんの?あの時なんとも思ってねぇとか言ってなかったっけ?!」
「旦那と一緒にしねぇでくだせぇよ。俺は別にそんなんじゃなくて、ただ俺が来るのを待っててくれるあの人に、余計な事を知って傷つかせたり、変なことに巻き込みたくねぇんでさァ。あの屈託のない優しい笑顔に、何度か救われてる部分もありやすんでね。」
「……」
銀時は、遠くを見つめながら彼女を思い出している総悟を横目で見ては、それが恋って言うんじゃねぇのかと突っ込みたい気持ちを必死に抑えた。
「…わぁったよ。俺は黙っといてやらァ。」
まぁ仮にもし恋だったとしても、こいつが真選組と知ったとしたら彼女は目の色を変え、この男と関わることを避ける可能性もある。
そしてあのいつも笑顔を絶やさない彼女が、もしかしたら壊れてしまうかもしれない。
彼女と真選組が深く悲しい繋がりがある事を知ってしまっているからこそ、自分の口からは決して言えないと分かっていた。
「…なぁ、おめぇよ。なんであの店をあの子が一人でやってっか、知ってるか?」
「…いや、知りやせんが。」
「あの店は前、あの子の婚約者がやるはずの店だったんだよ。」
「……婚約者?」
銀時の発した言葉に、なぜだかチクリと胸が痛む。
それでも興味深いその話に食いつくように、彼の方へと身を乗り出した。
「あの子があの店を大切に思い、あの店に来る客を思いやる心は、その婚約者の夢を受け継いだからなんだ。」
「……その婚約者、今は?」
「この世にもういねぇよ。ちょうど天人達が江戸を乗っ取りにきた頃に、あの子を残して死んじまいやがった。」
「…そうですかぃ。」
総悟は頭の中で、向葵が以前自分に話したことを思い出していた。
「そいつァまたとんだ不幸者でよ…その婚約者。事件に巻き込まれたんだそうだ。」
「……事件に?」
サッと強い風が吹いた気がした。
何か思い詰めたような銀時のその深みのある表情に、総悟の胸はざわめいたのだった。
そしてそれ以上のことは、彼の口から聞く勇気が湧かなかった。
自販機でコーヒーを2つ買い、彼の元へと歩んだ。
陽向に通いつめている自分にとって、今となってはこの缶コーヒーはただのコーヒーの香りがる飲み物という認識程度しかできない程だった。
あの屈託のない優しい笑顔を缶コーヒー越しに思い出しては、ふっと笑みを浮かべて銀時へと差し出した。
「旦那ァ、ちょっといいですかぃ?」
「あぁ?何だてめぇかよ。なんの用だよ。そういやおめー、あれからあの店行ってなかったんだってな。向葵ちゃん、すんげぇ心配してたぞ。なんかムカつくけど。」
「その件についてはもう解決したんでご心配無用でさァ。それよりあんたに一つ、頼みてぇことがあるんでぃ。」
そう言ってコーヒーを差し出すと、彼は大きく首を傾げた。
「はぁ?向葵に真選組の沖田総悟であることを悟られないようにして欲しい?!」
「声がでけぇでさァ、旦那。」
ベンチで隣合って座る彼を細めで見ると、はぁと大きくため息をこぼし、銀時は空を見上げた。
「なんでまた、隠すんだよ。」
「あの人は、汚れを知らない純粋な人でさァ。だからこそ、俺のことをなんにも知らねぇからそんな風に接してくれるんでさァ。俺みたいな汚れもんが、毎週毎週コーヒーを飲みに行ってるってなっちゃ、あの人も気が引けるかもしれねぇ。何も知らねぇまま、一人の男として見ててもらえた方が都合がいいんでさァ。」
「……ふぅん。なにお前。もしかして向葵ちゃんに恋してんの?あの時なんとも思ってねぇとか言ってなかったっけ?!」
「旦那と一緒にしねぇでくだせぇよ。俺は別にそんなんじゃなくて、ただ俺が来るのを待っててくれるあの人に、余計な事を知って傷つかせたり、変なことに巻き込みたくねぇんでさァ。あの屈託のない優しい笑顔に、何度か救われてる部分もありやすんでね。」
「……」
銀時は、遠くを見つめながら彼女を思い出している総悟を横目で見ては、それが恋って言うんじゃねぇのかと突っ込みたい気持ちを必死に抑えた。
「…わぁったよ。俺は黙っといてやらァ。」
まぁ仮にもし恋だったとしても、こいつが真選組と知ったとしたら彼女は目の色を変え、この男と関わることを避ける可能性もある。
そしてあのいつも笑顔を絶やさない彼女が、もしかしたら壊れてしまうかもしれない。
彼女と真選組が深く悲しい繋がりがある事を知ってしまっているからこそ、自分の口からは決して言えないと分かっていた。
「…なぁ、おめぇよ。なんであの店をあの子が一人でやってっか、知ってるか?」
「…いや、知りやせんが。」
「あの店は前、あの子の婚約者がやるはずの店だったんだよ。」
「……婚約者?」
銀時の発した言葉に、なぜだかチクリと胸が痛む。
それでも興味深いその話に食いつくように、彼の方へと身を乗り出した。
「あの子があの店を大切に思い、あの店に来る客を思いやる心は、その婚約者の夢を受け継いだからなんだ。」
「……その婚約者、今は?」
「この世にもういねぇよ。ちょうど天人達が江戸を乗っ取りにきた頃に、あの子を残して死んじまいやがった。」
「…そうですかぃ。」
総悟は頭の中で、向葵が以前自分に話したことを思い出していた。
「そいつァまたとんだ不幸者でよ…その婚約者。事件に巻き込まれたんだそうだ。」
「……事件に?」
サッと強い風が吹いた気がした。
何か思い詰めたような銀時のその深みのある表情に、総悟の胸はざわめいたのだった。
そしてそれ以上のことは、彼の口から聞く勇気が湧かなかった。