一,陽向
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銀時と鉢合わせをしたせいで、何時にあの店に行けば穏やかな時間が過ごせるのかと考えるとなかなか行けず、三週間が過ぎた。
あの一杯のコーヒーで連日の疲れが取れていた総悟は、つもりに積もった三週間分の疲労を溜めて、喫茶〝陽向〟へと足を運ぶ。
と言っても、今日はもう夜遅くて空いているとは思っちゃいない。
三度目にして未だその店の営業時間を知らなかったため、事前にチェックして明日は早起きしようという魂胆で、訪れたわけで。
どことなく自分にそんな言い訳をきかせながら店の前へと到着すると、もう時計は十時を回ろうとしているのに未だ店は灯りを灯していた。
店の外から中の様子を覗いてみるが、客がいないどころか店主である向葵の姿も見当たらない。
まさかまだ営業しているのか、と静かに扉を開けてみると、思いもよらぬ光景を目にしては硬直した。
高さ2メートル近くある脚立の上に、華奢な身体が上手くバランスを取って店の電球を変えているのだ。
しかし真剣な眼差しで電球と見つめあっていた彼女の視線は、ドアについている鈴の音で総悟の方へと変わり、パッと顔を晴らした。
「あ、総一郎さん!」
総悟はその言葉を聞き、思い切り肩を落として目を細める。
そうだ、確か旦那にはよくそう呼ばれているから、この前ここで鉢合わせた時に否定すらしてなかったっけ。
そんなことを考えている彼の心境を余所に、彼女はそのまま彼に続けた。
「珍しい時間にいらっしゃるんですね。コーヒー、飲んでいかれます?」
「…いいんですかぃ?もう店はとっくに閉めててもおかしくねぇ時間ですが…」
「いいんですよ、今おりますから待っててください。」
そう言って脚立を降りようと彼女が足を動かすと、木目の床でバランスが悪かったのか、脚立がぐらつき彼女の体がいとも簡単にそれからふり落とされる。
「危ねぇッ!!」
それを見ていた総悟は上から桜の花びらのようにふわりと落ちてくる向葵を素早く抱きとめ、そのまま床に尻もちをついた。
驚くほどの細身で軽い彼女の体に加え、衣服に染み付いたであろうコーヒーの豆の香りと、微かにするシャンプーの理性を擽る香りに、総悟は無意識に腕に力を込め、自身に引き寄せた。
「あっ、あの…」
「え、あぁ、大丈夫ですかぃ?」
「それはこちらの台詞です!すみません、重かったですよね?!お尻痛いですよね?!ごめんなさい、私の不注意で!」
あたふたした様子で眉を八の字にし、自分の体をあちこち見ながら怪我がないか確認する一面を見て、総悟は思わず吹き出した。
「わ、悪ぃ。普段あんた結構お淑やかな感じだったから、なんかちょっとテンパってる姿見んのが意外で…」
「テンパりますよそりゃ!だって私が上から落ちたんですよ?!ただでさえ重い私の体重に、更に重力が加算して、きっとそれはもう重かったんですから!」
真剣な顔をして謎の理屈を述べ、更にはそこに〝ごめんなさい、総一郎さん!〟なんて間違った名前で付け足すもんだから、総悟は更に声を出して笑ってしまったのだった。
あの一杯のコーヒーで連日の疲れが取れていた総悟は、つもりに積もった三週間分の疲労を溜めて、喫茶〝陽向〟へと足を運ぶ。
と言っても、今日はもう夜遅くて空いているとは思っちゃいない。
三度目にして未だその店の営業時間を知らなかったため、事前にチェックして明日は早起きしようという魂胆で、訪れたわけで。
どことなく自分にそんな言い訳をきかせながら店の前へと到着すると、もう時計は十時を回ろうとしているのに未だ店は灯りを灯していた。
店の外から中の様子を覗いてみるが、客がいないどころか店主である向葵の姿も見当たらない。
まさかまだ営業しているのか、と静かに扉を開けてみると、思いもよらぬ光景を目にしては硬直した。
高さ2メートル近くある脚立の上に、華奢な身体が上手くバランスを取って店の電球を変えているのだ。
しかし真剣な眼差しで電球と見つめあっていた彼女の視線は、ドアについている鈴の音で総悟の方へと変わり、パッと顔を晴らした。
「あ、総一郎さん!」
総悟はその言葉を聞き、思い切り肩を落として目を細める。
そうだ、確か旦那にはよくそう呼ばれているから、この前ここで鉢合わせた時に否定すらしてなかったっけ。
そんなことを考えている彼の心境を余所に、彼女はそのまま彼に続けた。
「珍しい時間にいらっしゃるんですね。コーヒー、飲んでいかれます?」
「…いいんですかぃ?もう店はとっくに閉めててもおかしくねぇ時間ですが…」
「いいんですよ、今おりますから待っててください。」
そう言って脚立を降りようと彼女が足を動かすと、木目の床でバランスが悪かったのか、脚立がぐらつき彼女の体がいとも簡単にそれからふり落とされる。
「危ねぇッ!!」
それを見ていた総悟は上から桜の花びらのようにふわりと落ちてくる向葵を素早く抱きとめ、そのまま床に尻もちをついた。
驚くほどの細身で軽い彼女の体に加え、衣服に染み付いたであろうコーヒーの豆の香りと、微かにするシャンプーの理性を擽る香りに、総悟は無意識に腕に力を込め、自身に引き寄せた。
「あっ、あの…」
「え、あぁ、大丈夫ですかぃ?」
「それはこちらの台詞です!すみません、重かったですよね?!お尻痛いですよね?!ごめんなさい、私の不注意で!」
あたふたした様子で眉を八の字にし、自分の体をあちこち見ながら怪我がないか確認する一面を見て、総悟は思わず吹き出した。
「わ、悪ぃ。普段あんた結構お淑やかな感じだったから、なんかちょっとテンパってる姿見んのが意外で…」
「テンパりますよそりゃ!だって私が上から落ちたんですよ?!ただでさえ重い私の体重に、更に重力が加算して、きっとそれはもう重かったんですから!」
真剣な顔をして謎の理屈を述べ、更にはそこに〝ごめんなさい、総一郎さん!〟なんて間違った名前で付け足すもんだから、総悟は更に声を出して笑ってしまったのだった。