二.大切な人、大切な場所
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敵は全てその場で血を流して倒れ、気づけば自分だけが立ち残っていた。
サッと一振して刃先についた血を払い、鞘に収める。
向葵の方へ視線を戻せば、座ったまま土方さんにもたれ掛かるようにぐったりとその身を預けている様子を見て、慌てて掛けた。
「向葵ッッ!」
跪いて彼女の身体に触れると、かなり体温が下がっていた。
よく身体を見渡せば、傷自体は浅いが出血の量が多い。
「総悟、急いで屯所へ連れて手当を。」
「分かってまさァ。向葵、立てるか?」
「…ご、めん。総くん……」
「あんたが謝ることなんてひとつもねぇ。むしろ俺は……」
そう言いかけたところで、死に損ないの男の笑い声を耳にして、動きを止めた。
「クククッッ……これで勝ったつもりか、沖田総悟。」
「……あんだよ死に損ないが。どう見てもテメェらの負けだろーが。」
「あぁ、この場はな。だが、あんたらがここに気を取られてる間に、もうひとつの作戦は成功したはずだ。」
「おいテメェ。この期に及んで何しでかしやがった!」
土方さんが瀕死の男の胸倉を掴んで持ち上げると、男は力なく笑みを浮かべ、鼻で笑った。
「その女とあんたらが大事にしてたモンを、ぶっ壊してやったのさァ。」
「ーーッッ!!」
その言葉を耳にした瞬間、今しがたまで身体を動かすことが出来なかったはずの向葵が、気づけばその場から走り出していた。
「お、おい待て向葵!そんな状態で動いたら……!」
「土方さん!そいつらの後始末任せますぜ!」
「あ、あぁ…」
彼女に続いてその場を走り出し、去り際に彼にそう言うと顔をひきつらせたまま小さく頷いた。
向葵があの弱った体で向かった先は分かっている。
さっき言った男の指す場所で思い当たるのはひとつしかないはずだ。
あんな体になっていてもなお、少し前を走る彼女の足はその必死さが伝わってくるほど随分早く足を動かしていた。
そして走り続けているうちに、向かう先の方から半鐘の音が聞こえてくる。
くらいはずの夜空が、進むうちにみるみる明るみが指していくのを目にした。
ーーまさか!!
彼女に追いつくように加速し、店の通りまで出る頃にはようやくその肩を掴んだ。
しかし、その時既に彼女の足は止まっていた。
向葵が送る視線の先には、あまりにも酷な光景しかなかったからだ。
自分と初めて出会った場所。そして真選組を暖かく迎える唯一の場所でもある。
そして隣にいる彼女が亡き婚約者と夢を実現するために始め、何よりも大切にしてきたその場所はーー
燃え盛るオレンジの炎の中に飲み込まれていたのだった。
サッと一振して刃先についた血を払い、鞘に収める。
向葵の方へ視線を戻せば、座ったまま土方さんにもたれ掛かるようにぐったりとその身を預けている様子を見て、慌てて掛けた。
「向葵ッッ!」
跪いて彼女の身体に触れると、かなり体温が下がっていた。
よく身体を見渡せば、傷自体は浅いが出血の量が多い。
「総悟、急いで屯所へ連れて手当を。」
「分かってまさァ。向葵、立てるか?」
「…ご、めん。総くん……」
「あんたが謝ることなんてひとつもねぇ。むしろ俺は……」
そう言いかけたところで、死に損ないの男の笑い声を耳にして、動きを止めた。
「クククッッ……これで勝ったつもりか、沖田総悟。」
「……あんだよ死に損ないが。どう見てもテメェらの負けだろーが。」
「あぁ、この場はな。だが、あんたらがここに気を取られてる間に、もうひとつの作戦は成功したはずだ。」
「おいテメェ。この期に及んで何しでかしやがった!」
土方さんが瀕死の男の胸倉を掴んで持ち上げると、男は力なく笑みを浮かべ、鼻で笑った。
「その女とあんたらが大事にしてたモンを、ぶっ壊してやったのさァ。」
「ーーッッ!!」
その言葉を耳にした瞬間、今しがたまで身体を動かすことが出来なかったはずの向葵が、気づけばその場から走り出していた。
「お、おい待て向葵!そんな状態で動いたら……!」
「土方さん!そいつらの後始末任せますぜ!」
「あ、あぁ…」
彼女に続いてその場を走り出し、去り際に彼にそう言うと顔をひきつらせたまま小さく頷いた。
向葵があの弱った体で向かった先は分かっている。
さっき言った男の指す場所で思い当たるのはひとつしかないはずだ。
あんな体になっていてもなお、少し前を走る彼女の足はその必死さが伝わってくるほど随分早く足を動かしていた。
そして走り続けているうちに、向かう先の方から半鐘の音が聞こえてくる。
くらいはずの夜空が、進むうちにみるみる明るみが指していくのを目にした。
ーーまさか!!
彼女に追いつくように加速し、店の通りまで出る頃にはようやくその肩を掴んだ。
しかし、その時既に彼女の足は止まっていた。
向葵が送る視線の先には、あまりにも酷な光景しかなかったからだ。
自分と初めて出会った場所。そして真選組を暖かく迎える唯一の場所でもある。
そして隣にいる彼女が亡き婚約者と夢を実現するために始め、何よりも大切にしてきたその場所はーー
燃え盛るオレンジの炎の中に飲み込まれていたのだった。