二.大切な人、大切な場所
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監察の山崎が任務遂行中に負傷して戻ってきたとの知らせがはいり、至急召集がかかった。
屯所内の空気は張り詰め、山崎を治療している一室に隊長クラスが集っている中、俺は小さく舌打ちを零した。
「一体なにがあったんでぃ。ザキをここまで追い込むなんて……。」
「あぁ…本人に直接事情を聞きてぇとこだが、門の見張りの奴ら曰く、屯所の前まで来てパタリと意識が途絶えちまったらしいからな。それからずっとこの状態だ。」
目の前の敷布団に横たわっている山崎は、体のあちこちが包帯に巻かれており、痛々しい姿で眠りについていた。
「近藤さん。山崎は一体何を調べ回ってたんだ?」
「あぁ…ここ最近はかぶき町周辺に怪しい動きをしてる奴がいないか確認して回ってもらってただけだ。特に深く潜り込むような任務もなかったし…俺にもよくわからんのだ。」
土方の質問に、近藤さんは静かに拳を作った。
そして部屋の中が重々しい空気になる中、突然眠っていたはずの山崎が呻き声をあげ、苦しそうに息をしながらようやく意識を取り戻したのだ。
「おい山崎、しっかりしろ!」
「大丈夫か?!何があった?!」
その様子を見て、二人が駆け寄り山崎が体を起こそうとするのを手伝う。
少し遠目でそれを見ていると、山崎は辺りをキョロキョロと見渡した。
「おっ、沖田隊長は?!」
「総悟ならここに…!」
「俺がどうしたんでさァ。ザキ、何があった。」
「向葵さんは…向葵さんは今どこですか?!」
酷く青ざめた様子でそう言う山崎に、誰もが動揺をした。
俺はなぜ山崎が彼女の安否を確認するのかを不思議に思い、言葉を返した。
「向葵ならとっくに家に…」
そう言いかけたところで、胸ポケットにしまっていた携帯電話が着信を知らせる。
ディスプレイを確認すると、今まさに話題にでていた向葵からの着信だった。
嫌な予感がする。
この慌てふためいた山崎の様子といい、タイミングよく彼女からかかってきた着信といい、偶然にしてはできすぎている。
周囲にいた連中の視線が集まる中、受話器のボタンを押した。
「…もしもし」
「総君助けてーっっ!」
「…!」
明らかに彼女の声ではない男の声を電話機越しに耳にし、身体が凍り付いたような感覚になった。
電話の向こうでは何人ものケラケラと嘲笑う声が聞こえてきては、ぐっと強く携帯電話を握りしめた。
「…おい、あの人はどうした。」
自分でも分かる程、地を這うような低い声でそう尋ねた。
高笑いをしていた男はその声を聞き、ピタリと笑いを止めてこう返した。
「丁重にお預かりしてるぜぇ。何せ大切な人質なんだからよぉ。」
「人質?何が目的だテメェら。」
「もちろんオメェさんの首に決まってんだろ?今から場所を教えてやるから一人で来いや。場所はーーー」
男は淡々と場所の説明をすると、何も言う間もなくプツンと電話を切った。
静かに手にした携帯を耳から下ろし、舌打ちをする。
「お、おい総悟…今の電話…」
「やっぱり、向葵さんは…!」
「おい山崎、どういう事だ!なんで向葵の心配してやがる!一体テメェに何があった!」
「すみません…実は巡回中にかぶき町付近で怪しい動きをしている連中を見つけて後を付けてたんです。そいつら、どうも沖田隊長に復讐をしようと計画を立ててたみたいで、もう少しで素性と奴らの計画の情報を掴めそうだったんですが、その中で一人勘が働く男がいてやられました…相手は名のある剣客かと。」
「……くそっ!」
気づけばその部屋を飛び出して、奴らに言われた場所へと走り出していた。
後方から仲間が名を呼ぶ声を耳にしても、振り返ってる暇はない。
こうなることを予想していないわけではなかった。
むしろここ数日前から彼女の周りで妙な気配を感じるようになり、寝る時間さえも惜しんでずっと傍で守り続けていたではないか。
奴らは自分が彼女の傍から離れる好機を伺っていたはずだ。
それが数日間の睡眠不足のせいか、こんな単純の手に引っかかるなんて…
考えれば分かったことだろうが!
自分を責め続けながらも、ただ彼女の無事を祈りながら、必死にその両足を動かしたのだった。
屯所内の空気は張り詰め、山崎を治療している一室に隊長クラスが集っている中、俺は小さく舌打ちを零した。
「一体なにがあったんでぃ。ザキをここまで追い込むなんて……。」
「あぁ…本人に直接事情を聞きてぇとこだが、門の見張りの奴ら曰く、屯所の前まで来てパタリと意識が途絶えちまったらしいからな。それからずっとこの状態だ。」
目の前の敷布団に横たわっている山崎は、体のあちこちが包帯に巻かれており、痛々しい姿で眠りについていた。
「近藤さん。山崎は一体何を調べ回ってたんだ?」
「あぁ…ここ最近はかぶき町周辺に怪しい動きをしてる奴がいないか確認して回ってもらってただけだ。特に深く潜り込むような任務もなかったし…俺にもよくわからんのだ。」
土方の質問に、近藤さんは静かに拳を作った。
そして部屋の中が重々しい空気になる中、突然眠っていたはずの山崎が呻き声をあげ、苦しそうに息をしながらようやく意識を取り戻したのだ。
「おい山崎、しっかりしろ!」
「大丈夫か?!何があった?!」
その様子を見て、二人が駆け寄り山崎が体を起こそうとするのを手伝う。
少し遠目でそれを見ていると、山崎は辺りをキョロキョロと見渡した。
「おっ、沖田隊長は?!」
「総悟ならここに…!」
「俺がどうしたんでさァ。ザキ、何があった。」
「向葵さんは…向葵さんは今どこですか?!」
酷く青ざめた様子でそう言う山崎に、誰もが動揺をした。
俺はなぜ山崎が彼女の安否を確認するのかを不思議に思い、言葉を返した。
「向葵ならとっくに家に…」
そう言いかけたところで、胸ポケットにしまっていた携帯電話が着信を知らせる。
ディスプレイを確認すると、今まさに話題にでていた向葵からの着信だった。
嫌な予感がする。
この慌てふためいた山崎の様子といい、タイミングよく彼女からかかってきた着信といい、偶然にしてはできすぎている。
周囲にいた連中の視線が集まる中、受話器のボタンを押した。
「…もしもし」
「総君助けてーっっ!」
「…!」
明らかに彼女の声ではない男の声を電話機越しに耳にし、身体が凍り付いたような感覚になった。
電話の向こうでは何人ものケラケラと嘲笑う声が聞こえてきては、ぐっと強く携帯電話を握りしめた。
「…おい、あの人はどうした。」
自分でも分かる程、地を這うような低い声でそう尋ねた。
高笑いをしていた男はその声を聞き、ピタリと笑いを止めてこう返した。
「丁重にお預かりしてるぜぇ。何せ大切な人質なんだからよぉ。」
「人質?何が目的だテメェら。」
「もちろんオメェさんの首に決まってんだろ?今から場所を教えてやるから一人で来いや。場所はーーー」
男は淡々と場所の説明をすると、何も言う間もなくプツンと電話を切った。
静かに手にした携帯を耳から下ろし、舌打ちをする。
「お、おい総悟…今の電話…」
「やっぱり、向葵さんは…!」
「おい山崎、どういう事だ!なんで向葵の心配してやがる!一体テメェに何があった!」
「すみません…実は巡回中にかぶき町付近で怪しい動きをしている連中を見つけて後を付けてたんです。そいつら、どうも沖田隊長に復讐をしようと計画を立ててたみたいで、もう少しで素性と奴らの計画の情報を掴めそうだったんですが、その中で一人勘が働く男がいてやられました…相手は名のある剣客かと。」
「……くそっ!」
気づけばその部屋を飛び出して、奴らに言われた場所へと走り出していた。
後方から仲間が名を呼ぶ声を耳にしても、振り返ってる暇はない。
こうなることを予想していないわけではなかった。
むしろここ数日前から彼女の周りで妙な気配を感じるようになり、寝る時間さえも惜しんでずっと傍で守り続けていたではないか。
奴らは自分が彼女の傍から離れる好機を伺っていたはずだ。
それが数日間の睡眠不足のせいか、こんな単純の手に引っかかるなんて…
考えれば分かったことだろうが!
自分を責め続けながらも、ただ彼女の無事を祈りながら、必死にその両足を動かしたのだった。