二.大切な人、大切な場所
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それから引越し当日までの六日間、彼は本当に仕事をしているのか疑いたくなるほど、毎日店に顔を出しては家に帰るまで送ってくれた。
ただこの数日の間で気づいたこと。
彼が日に日にぼぅっとする時間が増えていて、どことなく顔色が悪いような気がする。
最初気づいた時に体調が悪いのかと尋ねてみたが、分かってはいたが素直に首を縦には振らなかった。
まだ彼と知り合って長くはないが、いつも見ている自分にとって、小さな変化に気づくのは容易い。
ただ本人が言いたくないのであれば、それ以上問い詰めることも出来ず、出来るだけそばにいる時は目を離さないようにしていた。
ーーそして引越し前日の夜。
「…今夜限りでこの家ともおさらばでさァ。荷造りの方は済んだんで?」
店から自宅までの帰路で、彼は私に尋ねた。
私は彼の方に顔を向け、小さく頷いた。
「うん、大方終わってるよ。明日は確か、非番の人達が手伝ってくれるんだったよね?なんか申し訳ないなぁほんと…」
「あぁ。向葵が引っ越すって話をしたら、みんな乗り気になっちまいやした。……それより向葵。」
急に鋭い眼差しに変わり、声色も緊迫感のあるものに変わる。
冷たい風が体をすり抜け、私は小さく息を飲んだ。
「…ここ最近何か変わったことはなかったですかぃ?」
「変わったこと?特にないけど、どうかしたの?」
「いや…俺の思い過ごしかもしんねぇんで、気にしねぇでくれ。」
フッと息を吐いて笑う彼に、私はどことなく違和感を感じた。
私は彼の名をもう一度呼ぼうと口を開けたが、そのタイミングで電話がなり、口を閉ざした。
少し待つように手を挙げて話し込む彼の表情がみるみる変わっていき、私は真選組にて一大事が起きているのだと悟った。
「わかりやした。すぐ戻りやす。」
最後にそう言って電話を切ると、くるりと踵を返してこちらを見る。
そのままそっと頬に触れ、優しい声色でこう言った。
「すまねぇ。ちと面倒な事になったんで、屯所に行ってきやす。明日の朝には迎えに来ますんで。」
「私は大丈夫。早く行ってあげて。」
「…気をつけて帰ってくだせぇ。」
「うん。ちゃんと寄り道しずに帰るからそんなに心配しないで。」
そう応えると、彼は名残惜しそうにその手を離しては屯所に向かって走り出して行った。
あの深刻そうな表情からして、何かあったのだろう。
職業柄、きっと話せることと話せないことがあるはずだ。
彼が話してくれない限りは、自分から聞こうともしないと決めている。
私は彼の背中を見送ったあと、再び自宅へと続く道を歩み始めた。
しかしその直後、タイミングを見計らったかのように突然現れた複数人の男たちに囲まれて、その姿をしっかり確認する前に意識を手放してしまったのだった。
ただこの数日の間で気づいたこと。
彼が日に日にぼぅっとする時間が増えていて、どことなく顔色が悪いような気がする。
最初気づいた時に体調が悪いのかと尋ねてみたが、分かってはいたが素直に首を縦には振らなかった。
まだ彼と知り合って長くはないが、いつも見ている自分にとって、小さな変化に気づくのは容易い。
ただ本人が言いたくないのであれば、それ以上問い詰めることも出来ず、出来るだけそばにいる時は目を離さないようにしていた。
ーーそして引越し前日の夜。
「…今夜限りでこの家ともおさらばでさァ。荷造りの方は済んだんで?」
店から自宅までの帰路で、彼は私に尋ねた。
私は彼の方に顔を向け、小さく頷いた。
「うん、大方終わってるよ。明日は確か、非番の人達が手伝ってくれるんだったよね?なんか申し訳ないなぁほんと…」
「あぁ。向葵が引っ越すって話をしたら、みんな乗り気になっちまいやした。……それより向葵。」
急に鋭い眼差しに変わり、声色も緊迫感のあるものに変わる。
冷たい風が体をすり抜け、私は小さく息を飲んだ。
「…ここ最近何か変わったことはなかったですかぃ?」
「変わったこと?特にないけど、どうかしたの?」
「いや…俺の思い過ごしかもしんねぇんで、気にしねぇでくれ。」
フッと息を吐いて笑う彼に、私はどことなく違和感を感じた。
私は彼の名をもう一度呼ぼうと口を開けたが、そのタイミングで電話がなり、口を閉ざした。
少し待つように手を挙げて話し込む彼の表情がみるみる変わっていき、私は真選組にて一大事が起きているのだと悟った。
「わかりやした。すぐ戻りやす。」
最後にそう言って電話を切ると、くるりと踵を返してこちらを見る。
そのままそっと頬に触れ、優しい声色でこう言った。
「すまねぇ。ちと面倒な事になったんで、屯所に行ってきやす。明日の朝には迎えに来ますんで。」
「私は大丈夫。早く行ってあげて。」
「…気をつけて帰ってくだせぇ。」
「うん。ちゃんと寄り道しずに帰るからそんなに心配しないで。」
そう応えると、彼は名残惜しそうにその手を離しては屯所に向かって走り出して行った。
あの深刻そうな表情からして、何かあったのだろう。
職業柄、きっと話せることと話せないことがあるはずだ。
彼が話してくれない限りは、自分から聞こうともしないと決めている。
私は彼の背中を見送ったあと、再び自宅へと続く道を歩み始めた。
しかしその直後、タイミングを見計らったかのように突然現れた複数人の男たちに囲まれて、その姿をしっかり確認する前に意識を手放してしまったのだった。