二.大切な人、大切な場所
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不動産の店員には、引渡しは一ヶ月後と言い渡されたものの、総くんの半ば強引なやり取りにより、一週間後に早まった。
私はどっと疲れた状態で店を後にし、早速今の賃貸の管理会社に電話して退去の手続きを取り、荷造りをするために早々に自宅へと戻った。
もちろん総くんも手伝うと言い張るので、一緒に連れてきた訳ではあるが。
「…ねぇ、総くん何やってんの?」
「何って、向葵の昔のアルバム見てるんでさァ。」
「ちょっ…!堂々と見ないでよ!」
ここの棚は任せろと言われて数分後、妙に静かだと思い部屋を覗いてみれば、荷物を片すどころか棚の中に閉まっておいた昔のアルバムを広げている彼を見て、慌てて駆け寄った。
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし。」
「嫌だよ恥ずかしいし、それに…」
そのアルバムは、数年前までの写真が全て保管されてある。
そして人生の大半は陽介と過ごしていたため、彼と写っているものが圧倒的に多い。
ただの元婚約者だけならまだしも、総くんにとってはきっとそれだけではない。
できればもうこれ以上、自分を責めて欲しくない。
そう思い、そのアルバムを少々強引に奪おうと手を伸ばすと、彼はひょいと軽く交し、私はそのまま胡座を書いた彼の上へと倒れた。
「なっ、なにす……」
「それはこっちのセリフでぃ。せっかく見てんのにスキをついて取り上げようとすんな。」
「だって…」
彼は私を見下ろしては、頭をわしゃわしゃと撫でて優しい声色で呟いた。
「俺ァあんたからあの人を奪って、あの人からあんたを奪っちまった。それがどれだけ大それたことか、ちゃんと分かってるつもりでぃ。だからこそしっかり見とかなきゃいけねぇ。あの人が愛した向葵を、向葵が愛したあの人を。」
陽介のことを〝あの人〟と呼ぶ彼はどこか切なげで、私は彼の顔を見てそれ以上何も言うことが出来なかった。
私はどっと疲れた状態で店を後にし、早速今の賃貸の管理会社に電話して退去の手続きを取り、荷造りをするために早々に自宅へと戻った。
もちろん総くんも手伝うと言い張るので、一緒に連れてきた訳ではあるが。
「…ねぇ、総くん何やってんの?」
「何って、向葵の昔のアルバム見てるんでさァ。」
「ちょっ…!堂々と見ないでよ!」
ここの棚は任せろと言われて数分後、妙に静かだと思い部屋を覗いてみれば、荷物を片すどころか棚の中に閉まっておいた昔のアルバムを広げている彼を見て、慌てて駆け寄った。
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし。」
「嫌だよ恥ずかしいし、それに…」
そのアルバムは、数年前までの写真が全て保管されてある。
そして人生の大半は陽介と過ごしていたため、彼と写っているものが圧倒的に多い。
ただの元婚約者だけならまだしも、総くんにとってはきっとそれだけではない。
できればもうこれ以上、自分を責めて欲しくない。
そう思い、そのアルバムを少々強引に奪おうと手を伸ばすと、彼はひょいと軽く交し、私はそのまま胡座を書いた彼の上へと倒れた。
「なっ、なにす……」
「それはこっちのセリフでぃ。せっかく見てんのにスキをついて取り上げようとすんな。」
「だって…」
彼は私を見下ろしては、頭をわしゃわしゃと撫でて優しい声色で呟いた。
「俺ァあんたからあの人を奪って、あの人からあんたを奪っちまった。それがどれだけ大それたことか、ちゃんと分かってるつもりでぃ。だからこそしっかり見とかなきゃいけねぇ。あの人が愛した向葵を、向葵が愛したあの人を。」
陽介のことを〝あの人〟と呼ぶ彼はどこか切なげで、私は彼の顔を見てそれ以上何も言うことが出来なかった。