一.守護神ー羅刹女ー
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戦場は幕を下ろし、静かな地へと戻った。
緋真はゆっくりと歩いては子供たちの身体を優しく抱き、一箇所へと集めた。
「…緋真。あんた、強かったんだね。驚いたよ。」
近くにいる神威が、初めて露となった緋真の右目を見つめて微笑んだ。
緋真は豆鉄砲を食らったようにポカンと口を開き彼を見つめ、小さくため息を吐いた。
「強くなんかない。強かったから、こんな小さな命くらい守れるよ。」
「別にあんたのせいじゃないだろ。間が悪かっただけだ。それにコイツらは弱かった。ただそれだけだ。」
「言ってくれるね。さすが戦闘民族様だ。まぁ、確かにこの時代に弱い奴は生きていけない。強い者だけが生き残っていくっていうのは、最もな話だけれど。」
「そうだろ。んでもって、あんたは強い奴だった。だから生き残った。何かを守るための強さなんて、本当の強さとは言わないよ。何も背負わず、何者にも囚われず勝ち進んでいくのが、本当に強い奴だ。」
「なるほど。神威の強さはそこから成り立ってるわけか。背負うもんも何も無い。守るもんも何も無い。闘いだけに、ただ集中できるからこそ、本当の力が発揮出来る。」
「……何か言いたげだね、緋真。」
口元に笑みを浮かべていた緋真を見て、神威は顔を覗き込んだ。
「いや、確かにそうかもしれない。でも私は、何かを守ろうとして、何かを必死に得ようとして闘う姿の方が、より強くて頑丈な魂を持って強く生きるような気がするんだ。大切な何かを失わないために振るう強さに、限界はない。侍ってのは、肉体が滅んだ時じゃなく、その芯の強い魂が死んだ時、自分が死んだ事になるのさ。」
「へぇ……俺の知ってる侍と、似たようなことを言うんだな。虫唾が走るよ。」
爽やかな笑顔を浮かべて、嫌悪する言葉を並べる神威を見て、緋真は目を閉じた。
そしてもう一度その目を開けた時、安らかに眠っている子供たちの顔を見て、優しい笑顔を見せた。
「……ねぇ、緋真。提案があるんだけど。」
「…なに?」
「俺のとこに来なよ。誰かと一緒にいたいんだろ?そうすれば、俺は守る必要も無いし、自分のためだけに剣を振れる。」
「今私に虫唾が走るって言ってなかった?だいたい、守るものがないのに私は剣を抜かないよ。」
「…じゃあ、本音を言おう。」
神威は表情を崩さぬまま、緋真の至近距離まで歩んでは止まり、片手で収まる彼女の小さな顎を自分の顔の方へと持ち上げた。
「あんたのその強さに興味が湧いた。そんでもって、俺はあんたを殺したくなった。でも、まだ殺す時じゃない
。俺は好物は最後まで取っといてから食べるタイプなんだ。だから、あんたをいつでも殺せるように、この手が届く距離にいて欲しい。この喉を掻っ切るその時が来るまで。」
おぞましい殺意を緋真に向け、神威はニヤリと笑みを浮かべた。
「あんたがどんな血を流して、どんな風に息絶えるのか見てたくなったんだ。俺は一度欲しいと思った獲物を横取りされるのは嫌いでさ。あんたを、他のやつなんかに易々と殺されたくない。」
「……」
緋真はその言葉に返すことなく、じっとただ彼を見つめた。
子供の前で一度たりともこんな表情を見せなかった彼が、今こうして自分に噛み付こうとしている。
そして何もかもを失ってしまった私にまた、いつでも死ねる居場所を与えてくれるとでも言うのだろうか。
気づけばフッと笑みを浮かべて、その金色の瞳で真っ直ぐ彼を見つめては、ゆっくり口を開いた。
「いいよ。言ったでしょ。どうせ殺されるなら、神威の手がいいって。その子供っぽい無邪気な顔をして、この手で私を、殺してくれるんでしょう?」
そう言ったら彼女の表情は、酷く柔らかで嬉しそうな気がした。
気づけば朝日が昇り始め、彼女の瞳がより一層輝きをまして神威を見つめていた。
神威はフッと口元を緩め、またいつものように無邪気な微笑みを見せて、決まりだね。と呟いたのだった。
緋真はゆっくりと歩いては子供たちの身体を優しく抱き、一箇所へと集めた。
「…緋真。あんた、強かったんだね。驚いたよ。」
近くにいる神威が、初めて露となった緋真の右目を見つめて微笑んだ。
緋真は豆鉄砲を食らったようにポカンと口を開き彼を見つめ、小さくため息を吐いた。
「強くなんかない。強かったから、こんな小さな命くらい守れるよ。」
「別にあんたのせいじゃないだろ。間が悪かっただけだ。それにコイツらは弱かった。ただそれだけだ。」
「言ってくれるね。さすが戦闘民族様だ。まぁ、確かにこの時代に弱い奴は生きていけない。強い者だけが生き残っていくっていうのは、最もな話だけれど。」
「そうだろ。んでもって、あんたは強い奴だった。だから生き残った。何かを守るための強さなんて、本当の強さとは言わないよ。何も背負わず、何者にも囚われず勝ち進んでいくのが、本当に強い奴だ。」
「なるほど。神威の強さはそこから成り立ってるわけか。背負うもんも何も無い。守るもんも何も無い。闘いだけに、ただ集中できるからこそ、本当の力が発揮出来る。」
「……何か言いたげだね、緋真。」
口元に笑みを浮かべていた緋真を見て、神威は顔を覗き込んだ。
「いや、確かにそうかもしれない。でも私は、何かを守ろうとして、何かを必死に得ようとして闘う姿の方が、より強くて頑丈な魂を持って強く生きるような気がするんだ。大切な何かを失わないために振るう強さに、限界はない。侍ってのは、肉体が滅んだ時じゃなく、その芯の強い魂が死んだ時、自分が死んだ事になるのさ。」
「へぇ……俺の知ってる侍と、似たようなことを言うんだな。虫唾が走るよ。」
爽やかな笑顔を浮かべて、嫌悪する言葉を並べる神威を見て、緋真は目を閉じた。
そしてもう一度その目を開けた時、安らかに眠っている子供たちの顔を見て、優しい笑顔を見せた。
「……ねぇ、緋真。提案があるんだけど。」
「…なに?」
「俺のとこに来なよ。誰かと一緒にいたいんだろ?そうすれば、俺は守る必要も無いし、自分のためだけに剣を振れる。」
「今私に虫唾が走るって言ってなかった?だいたい、守るものがないのに私は剣を抜かないよ。」
「…じゃあ、本音を言おう。」
神威は表情を崩さぬまま、緋真の至近距離まで歩んでは止まり、片手で収まる彼女の小さな顎を自分の顔の方へと持ち上げた。
「あんたのその強さに興味が湧いた。そんでもって、俺はあんたを殺したくなった。でも、まだ殺す時じゃない
。俺は好物は最後まで取っといてから食べるタイプなんだ。だから、あんたをいつでも殺せるように、この手が届く距離にいて欲しい。この喉を掻っ切るその時が来るまで。」
おぞましい殺意を緋真に向け、神威はニヤリと笑みを浮かべた。
「あんたがどんな血を流して、どんな風に息絶えるのか見てたくなったんだ。俺は一度欲しいと思った獲物を横取りされるのは嫌いでさ。あんたを、他のやつなんかに易々と殺されたくない。」
「……」
緋真はその言葉に返すことなく、じっとただ彼を見つめた。
子供の前で一度たりともこんな表情を見せなかった彼が、今こうして自分に噛み付こうとしている。
そして何もかもを失ってしまった私にまた、いつでも死ねる居場所を与えてくれるとでも言うのだろうか。
気づけばフッと笑みを浮かべて、その金色の瞳で真っ直ぐ彼を見つめては、ゆっくり口を開いた。
「いいよ。言ったでしょ。どうせ殺されるなら、神威の手がいいって。その子供っぽい無邪気な顔をして、この手で私を、殺してくれるんでしょう?」
そう言ったら彼女の表情は、酷く柔らかで嬉しそうな気がした。
気づけば朝日が昇り始め、彼女の瞳がより一層輝きをまして神威を見つめていた。
神威はフッと口元を緩め、またいつものように無邪気な微笑みを見せて、決まりだね。と呟いたのだった。