三.共に生きる覚悟
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ーーなぜだろう。
理由は分からないが、鍛冶屋を襲い刀を持ち去った外道達の居場所を知っているかのように、足は迷うことなく進んでいった。
いや、迷わない理由ならある。
かつて周りにいる人間が全て敵だと思っていた頃、自分の神経や五感はその環境により酷く研ぎ澄まされていった。
それが何年も続いたせいか、血を求めて邪な行動を測っている連中の気配を、何となく感じるようになったからだ。
神威のように純粋に強さと闘いを求め、戦場を好むような真っ直ぐな殺意とはまた違い、酷く濁った血生臭い匂いと悪意を含めた殺気が、進む先に漂っているような気がした。
緋真はゆっくり一歩ずつ足を前へ前へと進み、ようやく森の中にある小さな小屋へと辿り着いた。
「……ここか。」
囲まれた木々に覆われていて月の光さえまともに通らず、薄明るい二つの炎だけで照らされているその小屋から、驚くほどの凶悪な殺意を感じる。
木刀の柄にそっと手を添えながら、再び一歩踏み出そうとしたその時。
カサカサと草と草鞋がこすれるような音と、刀の柄についた鉛が上下に動いて微かに鳴る音を耳にし、ぐっと木刀を握りしめては、口角を上げた。
「……少し聞きたいだが。ここにかぶき町で鍛冶屋を営んでる娘の刀はあるか?」
声を張り上げてそう言うと、目の前に三人の男が姿を現し、口元には笑みを浮かべ、腰にある刀の柄に手を添えては、その口をゆっくりと開けた。
「知らねぇなァ。そんなの…おい女。一体何の用だ?まさか森に迷って来た訳じゃァあるめぇな。」
「…そうか。最初から素直に話す連中なら、寝込みを襲って鍛冶屋に夜盗をはたらくような事はしないだろうからな。阿呆にしてはご最もな返事だ。」
「あんだと?!この女、大人しく聞いてりゃ馬鹿にしやがって……!」
「お、おいみろよ!あの女の目……左右で色が違ぇぞ。」
「ありゃアレか?オッドアイってやつじゃねぇのか?!」
「あの高値で売れるってやつか?!」
「丁度いい。今から江戸で血の雨降らせる資金にでもならァ。この女もとっ捕まえて売り捌いてやるッッ!」
夜盗達に完全に四方を囲まれ、緋真は腰にさした木刀を静かに抜いた。
「これだけの数に立ち向かうつもりだぜ、馬鹿かこの女。」
「おい女ァ。なんでてめぇみたいな奴があの鍛冶屋の刀をのこのこと一人で取り返しにくるんだ?もしかして、俺達が切り刻んでやったあの女のダチか?ひゃははっ!笑わせるぜ。」
「…」
「安心しなぁ。あの刀は俺達がこれから江戸の住民たちを斬り裂いていくのに使うんだ。刀としてこれほどの充分な使い方ァねぇだろーよ。刀も喜ぶってもんだ。」
「下手したらあんたのその白い肌にも傷つけちまうかもしれねぇがな。……かかれぇッッ!!」
男たちは次々と言葉を吐いては高笑いをして緋真を嘲笑ったかと思えば、そのまま抜刀して彼女に斬りかかった。
その場を動くことなく、向かい来る敵を一瞬の間に一太刀入れては数人が倒れていき、敵は圧倒的なスピードとその強さに一時足を止める。
そして緋真はゆっくりと口を開き、その刀の切っ先を下ろした。
「……つくづく呆れる奴らだな。」
「あぁっ?!」
「誤解してるみたいだから先に言っておくが、別にあんたらが斬った鍛冶屋の娘は友人でも何でもない。私はただ、人々を守ろうと必死で想いを込めてうったあの子の魂が入ったその刀を、テメェらなんぞの汚い手で触られるのが心底腹が立つだけだ。」
「こっ、このクソアマがッッ!!」
緋真の言葉に腹立てた連中がそれぞれ抜刀し、構えを取って再び足を踏み出す。
彼女もそれを目の当たりにして、再び闘いへと集中した。
そんな中、突然ふわりと宙から降りてきた人物が一人。
「あーなるほど。それであんなに怒ってたわけね。」
無意識に敵を薙ぎ倒していた緋真は、微かな殺意を向けてくるその新たな人物に、思いきり刀を振りかざした。
しかし倒れもせず、攻撃を受けてもその場で踏みとどまった人物をようやくその両目でしっかりと見ると、サッと顔が青ざめていった。
「ごっ、ごめん……」
そう呟くと、彼はただ笑って緋真をじっと見つめるのであった。
理由は分からないが、鍛冶屋を襲い刀を持ち去った外道達の居場所を知っているかのように、足は迷うことなく進んでいった。
いや、迷わない理由ならある。
かつて周りにいる人間が全て敵だと思っていた頃、自分の神経や五感はその環境により酷く研ぎ澄まされていった。
それが何年も続いたせいか、血を求めて邪な行動を測っている連中の気配を、何となく感じるようになったからだ。
神威のように純粋に強さと闘いを求め、戦場を好むような真っ直ぐな殺意とはまた違い、酷く濁った血生臭い匂いと悪意を含めた殺気が、進む先に漂っているような気がした。
緋真はゆっくり一歩ずつ足を前へ前へと進み、ようやく森の中にある小さな小屋へと辿り着いた。
「……ここか。」
囲まれた木々に覆われていて月の光さえまともに通らず、薄明るい二つの炎だけで照らされているその小屋から、驚くほどの凶悪な殺意を感じる。
木刀の柄にそっと手を添えながら、再び一歩踏み出そうとしたその時。
カサカサと草と草鞋がこすれるような音と、刀の柄についた鉛が上下に動いて微かに鳴る音を耳にし、ぐっと木刀を握りしめては、口角を上げた。
「……少し聞きたいだが。ここにかぶき町で鍛冶屋を営んでる娘の刀はあるか?」
声を張り上げてそう言うと、目の前に三人の男が姿を現し、口元には笑みを浮かべ、腰にある刀の柄に手を添えては、その口をゆっくりと開けた。
「知らねぇなァ。そんなの…おい女。一体何の用だ?まさか森に迷って来た訳じゃァあるめぇな。」
「…そうか。最初から素直に話す連中なら、寝込みを襲って鍛冶屋に夜盗をはたらくような事はしないだろうからな。阿呆にしてはご最もな返事だ。」
「あんだと?!この女、大人しく聞いてりゃ馬鹿にしやがって……!」
「お、おいみろよ!あの女の目……左右で色が違ぇぞ。」
「ありゃアレか?オッドアイってやつじゃねぇのか?!」
「あの高値で売れるってやつか?!」
「丁度いい。今から江戸で血の雨降らせる資金にでもならァ。この女もとっ捕まえて売り捌いてやるッッ!」
夜盗達に完全に四方を囲まれ、緋真は腰にさした木刀を静かに抜いた。
「これだけの数に立ち向かうつもりだぜ、馬鹿かこの女。」
「おい女ァ。なんでてめぇみたいな奴があの鍛冶屋の刀をのこのこと一人で取り返しにくるんだ?もしかして、俺達が切り刻んでやったあの女のダチか?ひゃははっ!笑わせるぜ。」
「…」
「安心しなぁ。あの刀は俺達がこれから江戸の住民たちを斬り裂いていくのに使うんだ。刀としてこれほどの充分な使い方ァねぇだろーよ。刀も喜ぶってもんだ。」
「下手したらあんたのその白い肌にも傷つけちまうかもしれねぇがな。……かかれぇッッ!!」
男たちは次々と言葉を吐いては高笑いをして緋真を嘲笑ったかと思えば、そのまま抜刀して彼女に斬りかかった。
その場を動くことなく、向かい来る敵を一瞬の間に一太刀入れては数人が倒れていき、敵は圧倒的なスピードとその強さに一時足を止める。
そして緋真はゆっくりと口を開き、その刀の切っ先を下ろした。
「……つくづく呆れる奴らだな。」
「あぁっ?!」
「誤解してるみたいだから先に言っておくが、別にあんたらが斬った鍛冶屋の娘は友人でも何でもない。私はただ、人々を守ろうと必死で想いを込めてうったあの子の魂が入ったその刀を、テメェらなんぞの汚い手で触られるのが心底腹が立つだけだ。」
「こっ、このクソアマがッッ!!」
緋真の言葉に腹立てた連中がそれぞれ抜刀し、構えを取って再び足を踏み出す。
彼女もそれを目の当たりにして、再び闘いへと集中した。
そんな中、突然ふわりと宙から降りてきた人物が一人。
「あーなるほど。それであんなに怒ってたわけね。」
無意識に敵を薙ぎ倒していた緋真は、微かな殺意を向けてくるその新たな人物に、思いきり刀を振りかざした。
しかし倒れもせず、攻撃を受けてもその場で踏みとどまった人物をようやくその両目でしっかりと見ると、サッと顔が青ざめていった。
「ごっ、ごめん……」
そう呟くと、彼はただ笑って緋真をじっと見つめるのであった。