三.共に生きる覚悟
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新八や神楽の道案内により、鍛冶屋が目に入るところまでたどり着いた。
彼ら二人は久しぶりに会う鉄子の元へ浮足立って会いに駆けていったが、緋真はその時ピタリと足を止めた。
「…どうした?緋真。」
神威が彼女に尋ねて顔を覗き込む。
緋真は鍛冶屋を見つめたまま、何か深刻そうな表情をしていた。
「…血の匂いがする。」
緋真がそう呟いたのを耳にした神威は、彼女の鋭い嗅覚に驚きつつもハッとして神楽たちの進んだ方へと視線を映した。
それとほぼ同時に神楽と新八が今しがた入ったばかりの店を飛び出すように出てきては、そのすぐ後ろを歩いていた銀時の名を呼んだ。
「大変アル!鉄子が、鉄子がッ!」
「…なに?!」
神楽の緊迫な雰囲気を感じ取ると、銀時は足早に鍛冶屋へと入る。阿伏兎と神威、それから緋真もその場に続けて駆け寄った。
最初に目に映った光景は、一人の女が血を流して倒れている姿だった。
銀時は彼女の名を呼んですかさず傍へ駆け寄る。
緋真はその女の小さな体から流れ落ちる血を見て、開いた口が塞がらなかった。
「…おい、しっかりしろっ!」
何度呼びかけても、返事が返ってこない。
焦る銀時の背中を見て、緋真は一歩ずつゆっくりと歩みだし、二人の傍へ行くとその場にしゃがみ込んで首に手を当てた。
「…大丈夫。まだ脈はあるから。でも出血が多いな……今病院に連絡して運んだところで、傷を負ってから随分時間が経っているし間に合わないかもしれないから、ここで治療するしか助ける手段はない。悪いんだけどみんな、少し手伝ってくれる?」
「…こ、ここでって緋真さん!こんなひどい傷を素人が治療するなんて無理ですよ!」
「病院に早く連絡するアル!救急車ぁぁぁぁ!」
慌てふためく二人を見て、銀時はその赤い瞳でしっかりと緋真を見た後、二人にこう言った。
「おい待て新八、神楽。…ここは緋真の言う通りにしろ。その方が今から医者に連れていくより確実だ。」
銀時の力のある言葉に、緋真も思わず驚いた。何年たっても変わらず自分を信じてくれる事が、こんな時に不謹慎ではあると思いつつも、ただ嬉しいと感じた。
銀時もまた、緋真を信じていた。戦争が何日も続いた中、適切な応急処置を取り何人もの仲間の命を繋いでくれたのは、紛れもなく彼女自身だという事をその目ではっきりと見てきたからだ。
「…大丈夫。絶対助けるから、私を信じて。」
「…わかりました。」
「わかったアル。」
「とりあえず大量の水とタオル、それから氷がいるから新八くんと神楽ちゃんは用意してくれるかな。銀兄はこの子を平らな柔らかい場所に寝かせて欲しい。それからあと、今から必要なもの全部言うから頭に叩き込んで。」
はきはきとした声で順番に指示を告げると、各々は短く返事をしてそれに従って素早く動き始めた。
神威と阿伏兎は邪魔にならないよう部屋の隅へと移動し、彼女が今から成すことをじっと見守った。
「大丈夫、絶対助ける。絶対助けるから、もう少し頑張って…!!」
鉄子を知らないはずの緋真が、青い顔をして意識を失っている彼女に何度も何度もそう言い続けた。
銀時はそんな彼女を見て、何年たっても目の前で命が途絶えていく事に未だに恐れているのだと悟った。
一通り処置を終えて窓の外に目を向けると、気づけば夕日が沈み始めていた。
緋真は鉄子の顔色を確認し、大きく息を吐いた。
「緋真姉ちゃん、どうアルか?」
「大丈夫。みんなのおかげで処置が早くできたし…。あとは意識が回復するのを待つだけだよ。」
そう笑顔で神楽に返すと、彼女はパッと明るい表情に変わり安堵の息を零した。
「それにしても、緋真さん凄いですね。ホントにお医者さんみたいに手際もよかったし…医学でも学んでらしたんですか?」
「そんな大層なもんじゃないよ。でも今までたくさんの傷を負った人を診てきたから、何となく体が治療方法を覚えちゃってね…。こんなんでも役に立ってよかった。」
「何言ってんだよ。お前がいなきゃこいつの命は助からなかったかもしれねぇ。まぁそもそもお前の持つ医学のおかげで、俺も今こうして生きてんだしな。」
「確かに、銀兄たちの治療よりは楽だったかも。」
緋真は気を抜いては、くしゃりと笑った。
「…でも、一体だれが鉄子さんにこんな酷い事をしたんでしょうね。」
思いつきでそう口を開いた新八の言葉に、誰もがそれに疑問を抱いた。
緋真は少し考えては周囲を見渡して、気づけば神威と阿伏兎の姿がない事に気が付いた。
「…あれ、神威?阿伏兎?」
「おーい緋真。面白いモンが見れるから来てみなよ。」
家のどこかから聞こえてくる神威の声に、耳を傾ける。
しかし彼の姿はどこにも見つからず、奥の部屋の方へと顔を出した。
するとそこには地下へと繋がる階段の入り口があり、僅かに見えるオレンジ色のおさげが目に映った。
「神威、こんなところでなにして…」
その階段を降りていくと、驚きの光景を目の当たりにした。
地下室は刀を打つための道具や機材がずらりと並んでおり、鍛冶場となっていた。
そして神威は緋真の姿を見ては、大きな棚がある方に目を向けるよう、親指をさした。
「…これってまさか…!」
緋真が目を向けると、そこには刀鍛冶を営むにあたって欠かせない専門的な棚が置かれており、造り上げた刀を置く場所だというのは一目見れば分かる。だがそこに本来ずらりと並んでいるはずの刀は、一本すら見当たらなかったのだ。
緋真は目の前の光景と彼女が傷を負って倒れていた事から、一つの仮説を生み出した。
何者かが彼女のうった刀を狙い、夜盗を働いたとしたら。
それに気づいた彼女が止めようとして、その夜盗に斬られたとしたら。
「な?面白いだろ?」
「…冗談じゃない。」
緋真は静かに拳を握りしめ、下唇を噛みしめながらそう答えた。
神威は彼女の尋常じゃない怒りが、何を思ってのものなのか理解できないまま、ただその様子をじっと見つめていたのだった。
彼ら二人は久しぶりに会う鉄子の元へ浮足立って会いに駆けていったが、緋真はその時ピタリと足を止めた。
「…どうした?緋真。」
神威が彼女に尋ねて顔を覗き込む。
緋真は鍛冶屋を見つめたまま、何か深刻そうな表情をしていた。
「…血の匂いがする。」
緋真がそう呟いたのを耳にした神威は、彼女の鋭い嗅覚に驚きつつもハッとして神楽たちの進んだ方へと視線を映した。
それとほぼ同時に神楽と新八が今しがた入ったばかりの店を飛び出すように出てきては、そのすぐ後ろを歩いていた銀時の名を呼んだ。
「大変アル!鉄子が、鉄子がッ!」
「…なに?!」
神楽の緊迫な雰囲気を感じ取ると、銀時は足早に鍛冶屋へと入る。阿伏兎と神威、それから緋真もその場に続けて駆け寄った。
最初に目に映った光景は、一人の女が血を流して倒れている姿だった。
銀時は彼女の名を呼んですかさず傍へ駆け寄る。
緋真はその女の小さな体から流れ落ちる血を見て、開いた口が塞がらなかった。
「…おい、しっかりしろっ!」
何度呼びかけても、返事が返ってこない。
焦る銀時の背中を見て、緋真は一歩ずつゆっくりと歩みだし、二人の傍へ行くとその場にしゃがみ込んで首に手を当てた。
「…大丈夫。まだ脈はあるから。でも出血が多いな……今病院に連絡して運んだところで、傷を負ってから随分時間が経っているし間に合わないかもしれないから、ここで治療するしか助ける手段はない。悪いんだけどみんな、少し手伝ってくれる?」
「…こ、ここでって緋真さん!こんなひどい傷を素人が治療するなんて無理ですよ!」
「病院に早く連絡するアル!救急車ぁぁぁぁ!」
慌てふためく二人を見て、銀時はその赤い瞳でしっかりと緋真を見た後、二人にこう言った。
「おい待て新八、神楽。…ここは緋真の言う通りにしろ。その方が今から医者に連れていくより確実だ。」
銀時の力のある言葉に、緋真も思わず驚いた。何年たっても変わらず自分を信じてくれる事が、こんな時に不謹慎ではあると思いつつも、ただ嬉しいと感じた。
銀時もまた、緋真を信じていた。戦争が何日も続いた中、適切な応急処置を取り何人もの仲間の命を繋いでくれたのは、紛れもなく彼女自身だという事をその目ではっきりと見てきたからだ。
「…大丈夫。絶対助けるから、私を信じて。」
「…わかりました。」
「わかったアル。」
「とりあえず大量の水とタオル、それから氷がいるから新八くんと神楽ちゃんは用意してくれるかな。銀兄はこの子を平らな柔らかい場所に寝かせて欲しい。それからあと、今から必要なもの全部言うから頭に叩き込んで。」
はきはきとした声で順番に指示を告げると、各々は短く返事をしてそれに従って素早く動き始めた。
神威と阿伏兎は邪魔にならないよう部屋の隅へと移動し、彼女が今から成すことをじっと見守った。
「大丈夫、絶対助ける。絶対助けるから、もう少し頑張って…!!」
鉄子を知らないはずの緋真が、青い顔をして意識を失っている彼女に何度も何度もそう言い続けた。
銀時はそんな彼女を見て、何年たっても目の前で命が途絶えていく事に未だに恐れているのだと悟った。
一通り処置を終えて窓の外に目を向けると、気づけば夕日が沈み始めていた。
緋真は鉄子の顔色を確認し、大きく息を吐いた。
「緋真姉ちゃん、どうアルか?」
「大丈夫。みんなのおかげで処置が早くできたし…。あとは意識が回復するのを待つだけだよ。」
そう笑顔で神楽に返すと、彼女はパッと明るい表情に変わり安堵の息を零した。
「それにしても、緋真さん凄いですね。ホントにお医者さんみたいに手際もよかったし…医学でも学んでらしたんですか?」
「そんな大層なもんじゃないよ。でも今までたくさんの傷を負った人を診てきたから、何となく体が治療方法を覚えちゃってね…。こんなんでも役に立ってよかった。」
「何言ってんだよ。お前がいなきゃこいつの命は助からなかったかもしれねぇ。まぁそもそもお前の持つ医学のおかげで、俺も今こうして生きてんだしな。」
「確かに、銀兄たちの治療よりは楽だったかも。」
緋真は気を抜いては、くしゃりと笑った。
「…でも、一体だれが鉄子さんにこんな酷い事をしたんでしょうね。」
思いつきでそう口を開いた新八の言葉に、誰もがそれに疑問を抱いた。
緋真は少し考えては周囲を見渡して、気づけば神威と阿伏兎の姿がない事に気が付いた。
「…あれ、神威?阿伏兎?」
「おーい緋真。面白いモンが見れるから来てみなよ。」
家のどこかから聞こえてくる神威の声に、耳を傾ける。
しかし彼の姿はどこにも見つからず、奥の部屋の方へと顔を出した。
するとそこには地下へと繋がる階段の入り口があり、僅かに見えるオレンジ色のおさげが目に映った。
「神威、こんなところでなにして…」
その階段を降りていくと、驚きの光景を目の当たりにした。
地下室は刀を打つための道具や機材がずらりと並んでおり、鍛冶場となっていた。
そして神威は緋真の姿を見ては、大きな棚がある方に目を向けるよう、親指をさした。
「…これってまさか…!」
緋真が目を向けると、そこには刀鍛冶を営むにあたって欠かせない専門的な棚が置かれており、造り上げた刀を置く場所だというのは一目見れば分かる。だがそこに本来ずらりと並んでいるはずの刀は、一本すら見当たらなかったのだ。
緋真は目の前の光景と彼女が傷を負って倒れていた事から、一つの仮説を生み出した。
何者かが彼女のうった刀を狙い、夜盗を働いたとしたら。
それに気づいた彼女が止めようとして、その夜盗に斬られたとしたら。
「な?面白いだろ?」
「…冗談じゃない。」
緋真は静かに拳を握りしめ、下唇を噛みしめながらそう答えた。
神威は彼女の尋常じゃない怒りが、何を思ってのものなのか理解できないまま、ただその様子をじっと見つめていたのだった。