二.渇きを満たすもの
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神威は緋真を抱えたまま、自分の船へと一目散に戻り、自室へと向かった。
「ね、ねぇ、部下探さなくていいの?!ていうか、さっきから何にイライラしてるの?とりあえず自分で歩けるから、もう降ろしてよ!」
当然いきなり抱き抱えられてここまで運んできた緋真も、何度も同じ内容の不満の声をあげる。
しかし当の本人はそれに応じることも無く、ただただ足を動かした。
「ねぇってば、神威ッッ!」
何度も強く彼の名前を呼ぶと、ようやく足を止めた。
全く周りの景色など気にはしていなかったが、緋真が連れてこられたのは他でもなくシャワールーム。
神威はそこで抱き抱えていた緋真を下ろし、限界まで蛇口を捻って、彼女の頭から水をかけた。
「ちょっ、何して……!」
「全部見せてみろよ。だいたい…なんでイライラしてるかって?そんなのこっちが聞きたいくらいだ。」
「……」
何度かめの問に応えた彼の声は、酷く怒りに充ちた声色をしていた。
今まで見た事のない神威の苦しげな表情に、緋真も思わず言葉を失う。
神威の右手は緋真の肩を壁に押し当てて逃がさぬようにし、その指の爪は彼女の白い肌に血を滲みさせた。
そしてもう左手は指先までピンと伸ばし、彼女の喉へ突き立てた。
ここで今殺せば、俺の苛立ちははれるのだろうか。
そう考えてとった行動により、首元から深紅の血がゆっくりと水に混ざって流れ落ちていった。俯いていた神威はそれを見て、ようやくハッと我に返り、勢いよく顔を上げてはその顔を見つめた。
「……神威。」
もう一度彼女が弱々しい声で名を呼ぶ。
神威はようやく、緋真の姿に異変がある事に気がついた。
「ーーッッ!」
思わずその色に目を奪われる。
水をかけられた緋真の髪の色が藍色から緋色に変わっていたのだ。
したたかに流れ落ちる水はその藍色の髪の色を徐々に落としていき、より一層煌びやかに魅せる。
彼女の真の髪の色は、神威が闘いに常に求める美しい〝血〟そのものの色だった。
その色に魅せられた神威は、ただ彼女のありのままの姿に鼓動を走らせた。
「なんだよ、それ……」
「…血の色に、似てるでしょう?」
緋真はそう言っては、弱々しくくしゃりと笑った。
泣いているようにも見えるその顔を見て、神威の沸騰するように燃え上がっていた身体の熱は収まり、彼女の血が伝う傷口に目をやった。
「…似てる。この流れる、緋真の血と同じだ。」
「…神威?」
ようやく苛立った様子がなくなった彼の名を呼べば、突然首元についた傷に彼の舌が触れた。
「いっーーッッ!」
舌で何度もそこを舐めては、吸血鬼のようにその血を吸う。
首元の次は、肩の爪痕を何度も吸っては舐め、味わうように舌を這わせた。
彼の体温が舌から伝わり、触れられる事にピクリと身体が反応してしまう。
「かっ、神威ッッ…」
余りにもの恥ずかしさに耐えられなくなった緋真は、もう一度彼の名を呼んだ。
ようやくそれに応じてくれた神威の表情を見ると、今までにない程の穏やかな表情で、小さく笑っていた。
「……緋真。お前のその目とその髪。もう隠すのはやめろ。」
「……え?」
「お前を殺すまで、その髪もその目を蔑んでみる奴も、全部俺が殺してやる。だから俺にその髪を…ずっと見させてくれ。」
「……神威?」
そう言っては緋真の胸に頭をつけて俯いた。
「…他の奴らは薄気味悪いだの、呪いだのなんだの言ってようが、俺の目にはそう映らない。その血の色と似ている…緋色のその髪の色が、闘わなくても俺の渇きを癒してくれる。こんなの初めてだ。」
彼の顔は見えなかったが、その声はどうしてか、彼が心の底から喜んで笑っているような気がした。
「緋真…その髪のままでいてよ。あんたの髪色はたぶん、俺にとって戒めの色だ。緋真の髪が……好きなんだ。」
女や酒で渇きが潤うことは無いと思っていた。
闘って血をを求めてきた自分にとっては、それが全てでこの渇きを満たすものだと思っていた。
でも違った。
何処ぞの誰かもわからない血を見るよりも、彼女の髪の方がずっと綺麗で、自身の心を落ち着かせる。
そんな存在を知ってしまった神威は、この時緋真を一生離したくないと、密かに思ったのであった。
「ね、ねぇ、部下探さなくていいの?!ていうか、さっきから何にイライラしてるの?とりあえず自分で歩けるから、もう降ろしてよ!」
当然いきなり抱き抱えられてここまで運んできた緋真も、何度も同じ内容の不満の声をあげる。
しかし当の本人はそれに応じることも無く、ただただ足を動かした。
「ねぇってば、神威ッッ!」
何度も強く彼の名前を呼ぶと、ようやく足を止めた。
全く周りの景色など気にはしていなかったが、緋真が連れてこられたのは他でもなくシャワールーム。
神威はそこで抱き抱えていた緋真を下ろし、限界まで蛇口を捻って、彼女の頭から水をかけた。
「ちょっ、何して……!」
「全部見せてみろよ。だいたい…なんでイライラしてるかって?そんなのこっちが聞きたいくらいだ。」
「……」
何度かめの問に応えた彼の声は、酷く怒りに充ちた声色をしていた。
今まで見た事のない神威の苦しげな表情に、緋真も思わず言葉を失う。
神威の右手は緋真の肩を壁に押し当てて逃がさぬようにし、その指の爪は彼女の白い肌に血を滲みさせた。
そしてもう左手は指先までピンと伸ばし、彼女の喉へ突き立てた。
ここで今殺せば、俺の苛立ちははれるのだろうか。
そう考えてとった行動により、首元から深紅の血がゆっくりと水に混ざって流れ落ちていった。俯いていた神威はそれを見て、ようやくハッと我に返り、勢いよく顔を上げてはその顔を見つめた。
「……神威。」
もう一度彼女が弱々しい声で名を呼ぶ。
神威はようやく、緋真の姿に異変がある事に気がついた。
「ーーッッ!」
思わずその色に目を奪われる。
水をかけられた緋真の髪の色が藍色から緋色に変わっていたのだ。
したたかに流れ落ちる水はその藍色の髪の色を徐々に落としていき、より一層煌びやかに魅せる。
彼女の真の髪の色は、神威が闘いに常に求める美しい〝血〟そのものの色だった。
その色に魅せられた神威は、ただ彼女のありのままの姿に鼓動を走らせた。
「なんだよ、それ……」
「…血の色に、似てるでしょう?」
緋真はそう言っては、弱々しくくしゃりと笑った。
泣いているようにも見えるその顔を見て、神威の沸騰するように燃え上がっていた身体の熱は収まり、彼女の血が伝う傷口に目をやった。
「…似てる。この流れる、緋真の血と同じだ。」
「…神威?」
ようやく苛立った様子がなくなった彼の名を呼べば、突然首元についた傷に彼の舌が触れた。
「いっーーッッ!」
舌で何度もそこを舐めては、吸血鬼のようにその血を吸う。
首元の次は、肩の爪痕を何度も吸っては舐め、味わうように舌を這わせた。
彼の体温が舌から伝わり、触れられる事にピクリと身体が反応してしまう。
「かっ、神威ッッ…」
余りにもの恥ずかしさに耐えられなくなった緋真は、もう一度彼の名を呼んだ。
ようやくそれに応じてくれた神威の表情を見ると、今までにない程の穏やかな表情で、小さく笑っていた。
「……緋真。お前のその目とその髪。もう隠すのはやめろ。」
「……え?」
「お前を殺すまで、その髪もその目を蔑んでみる奴も、全部俺が殺してやる。だから俺にその髪を…ずっと見させてくれ。」
「……神威?」
そう言っては緋真の胸に頭をつけて俯いた。
「…他の奴らは薄気味悪いだの、呪いだのなんだの言ってようが、俺の目にはそう映らない。その血の色と似ている…緋色のその髪の色が、闘わなくても俺の渇きを癒してくれる。こんなの初めてだ。」
彼の顔は見えなかったが、その声はどうしてか、彼が心の底から喜んで笑っているような気がした。
「緋真…その髪のままでいてよ。あんたの髪色はたぶん、俺にとって戒めの色だ。緋真の髪が……好きなんだ。」
女や酒で渇きが潤うことは無いと思っていた。
闘って血をを求めてきた自分にとっては、それが全てでこの渇きを満たすものだと思っていた。
でも違った。
何処ぞの誰かもわからない血を見るよりも、彼女の髪の方がずっと綺麗で、自身の心を落ち着かせる。
そんな存在を知ってしまった神威は、この時緋真を一生離したくないと、密かに思ったのであった。