二.渇きを満たすもの
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ようやくまともな服が着れた緋真は心の底から安堵の息を吐き、新八がいれてくれたお茶を飲もうとソファに腰を下ろそうとした。
だがその行為を神威がなぜか快く受け入れられず、その細い腕をしっかりと掴んだ。
「ーーッッ!」
緋真の顔が、物凄い勢いで歪む。
そんな彼女の険しい表情を誰もが見て、その掴まれた腕に視線を移すと、驚くほど真っ青な肌の色を露わにしていたのだ。
「その腕…もしかしてさっきのか……?」
沖田が恐る恐る尋ねると、彼女は苦笑いをして後ろ頭をかいた。
「あはは、バレちゃった。」
笑って誤魔化そうとする彼女を見て、神威は更に力を込める。
「いっ、いたたっ!神威、痛いよ!」
「何やってるバカ兄貴!その手を離すネ!」
「お、おい新八!救急箱持ってきてやんな!」
「は、はい!」
銀時の一声に、新八が慌てて救急箱を取りに走る。
神威はただ彼女のその腕をじっとみては、小さくため息を零した。
「…神威?」
緋真は神威の様子がおかしいのに気づく。
さっきから一体何に苛立っているのだろう。
自分の腕を見つめているだけで、何も言わない彼が何を思っているのか尋ねようとした時、一人の男が無理やり彼の手を離した。
「何やってんだよ、お前。いい加減その手ぇ離せや。」
「銀兄!」
緋真を守るように彼女と神威の間に入り、睨みつける。
神威はそんな彼を見て、ふいっと顔を逸らしては壁へ背中を預け、腕を組んで大人しくなった。
銀時は手際よく緋真の両腕を優しく触りながら手当をしていき、よし!と言って手を離す。
緋真はぐるぐるに包帯を巻かれた腕を見て、小さく笑った。
「懐かしいな…こうして怪我をした時、いつも銀兄達が手当してくれた子供の頃が。」
「オメェは怪我してもいつも我慢して誰にも言わねぇタチだからな。ったく、無茶するのは本当昔から変わってねぇしょうがねぇ奴だな。」
銀時がそう言って緋真を見上げた表情は、彼女のことを思うばかり、とても優しい顔をしていた。
「随分と旦那と顔見知りのようですねぇ。古くからのお知り合いで?」
「あぁ。コイツは俺と同じ寺子屋で育った、松下村塾の門下生の一人で、俺の妹分みてぇなもんだ。」
「えぇっ?!」
平然とした顔で答える銀時に、誰もが驚きの声を上げる。
神威はその言葉を聞いて、昨日見た緋真の闘い方や、虫唾が走る程の綺麗事を並べた物言いをする事に、妙に納得がいった。
「じゃ、じゃあ桂さんや坂本さん達のことも知ってるってことですか?!」
「わぁ、懐かしい名前。小太兄達のこともご存じなんですね。」
パッと緋真の表情が明るくなり、新八はその表情を見るなり、彼女が至って普通の女と大差ないことを実感した。
「なんだ。やっぱり瞳の色が少し変わってるだけで、普通の女の子じゃないですか。」
「まぁ俺たちの攻撃を止めたって奴が普通かどうかは別として、別に目の色が変わったところで俺たち人間と一緒だろ?気にすることじゃねーや。」
新八に続けて沖田がそう言うと、緋真は改めて先程助けて貰ったお礼を言うべく、彼らに深く頭を下げた。
「…さきほどは、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。それから、助けていただいてありがとうございます。」
「気にすることないアル。それよりお前、なんでうちのバカ兄貴と一緒にいるアルか?」
「え、バカ兄貴?」
緋真は神楽の言葉を聞いて首を傾げる。
そうしてよく神楽の容姿を見ると、後ろでじっとこちらを見ている神威の容姿と、どことなく似ていることに気がついた。
「えっ!も、もしかして神威の妹さん?!」
「…そうだよ。俺の出来損ないの妹の神楽。」
「そっ、そうなんだ。あんまりにも可愛らしい子だったから、全然気づかなかった。」
緋真のそのさりげなく放った一言に、神楽はパッと喜ぶ表情を見せたが、その場にいる男達はげんなりした表情で彼女を見つめた。
「おいおい、緋真。お前コイツのどこが可愛く見えるんだよ。ゲロインだぜゲロイン。平気でゲロ吐くし、女の癖に力強いわウチの家計空にするほど大食いだわ、よく物壊すわワガママだわ、下品だわで大変なんだぞ。女のおの字も分かっちゃいねぇ。」
「そうだよ緋真。コイツが可愛く見えるなんて、どうかしてるよ。」
「緋真さん、人は見かけで判断しちゃダメですよ……」
「おいあんた、その色の違う目のせいでだいぶ視力悪ぃんじゃねぇのか、いや、ぜってぇそうだ。じゃなきゃこんなクソ女が可愛く見えるはずがねぇ。」
「ちょっとさっきから何あるかオマエら!こんな可愛くてキュートなヒロイン他にいないネ!そうだよね、緋真姉ちゃん!」
「いやお前なに可愛いって言われたからって、ちょっと呼び方尊敬した感じに変えてんの?単純すぎんだろ。っつーかお前バカだろ!」
「うるさいこのクソ天パ!私の魅力が分からないお前らなんてもはやクズね!地球上のゴミアル!」
目の前で彼らの言い合いをポカンと口を開けて見ていた緋真は、クスリと小さく微笑んだ。
「相変わらず、たくさんの人に囲まれて楽しそうだね。銀兄。」
「楽しそう?毎日毎日大変だっつーの。それに比べりゃ、妹みたいにいっつも傍を歩いてたオメェの方が、よっぽど面倒見がいがあったぜ。」
今度は鼻をほじりながらふんぞり返って話す銀時。
はたまた緋真はそれを見て、小さく笑った。
「ふぅん。で、なんであんたみてぇな奴が宇宙最悪の悪党と手を組んでるんでぃ。」
「…俺が一人になった緋真を拾ったんだよ。」
「拾ったって…緋真さんはものじゃないんですよ?!」
「あぁ、違うの違うの!神威は森で生活してた私を助けてくれた恩人というか……」
「恩人だァァ?!」
緋真が誤解をとこうと口を開けば、なぜか万事屋達の表情は更に険しくなる。
なんて言ったら伝わるんだろう、と彼女が必死に言葉を探している様子を見た神威は、小さく息をこぼして彼女の名を呼んだ。
「緋真、無駄だよ。コイツらに何を言ってもお前の言葉が伝わることは無い。言ったろ?俺は宇宙の悪党だ、って。」
「なるほど。まぁ事情はどうであれ、テメェのその感じからして、この人の目を利用して何かを企んでるっていう訳じゃァ無さそうだな。」
「元々緋真の目に何か価値があるなんて、俺は思ってもいないよ。俺が興味あるのは、緋真の強さと、その喉を掻っ切って死に様を見ることだけだ。」
「なっ……テメェッッ!」
神威の言葉に銀時がつっかかろうと身を乗り出せば、緋真が慌てて間に入った。
「あ、あの銀兄!心配かけてごめんなさい!でも、私も自分なりに考えて神威と今一緒に行動してるので、これ以上彼を悪くいうのは……!」
「まぁいいじゃん。あんたは俺の妹を、俺はあんたの妹分を仲間につけるってことで。これでおあいこだろ?」
「全然おあいこじゃねぇよッッ!何上手くいったって顔してやがんだテメェはッッ!……お前覚悟あんのかよッッ!緋真は人目に付くような場所を歩くだけでさっきのような……!」
銀時はそこまで言いかけて、ハッとした表情を浮かべた。
「確かにさっきの状況を見る限り、あんたろくな扱いを受けてこなかったんだろうな。そんな奴が、こんな悪党についてくとなりゃ、返ってその身も安心ってか?」
「いえ、私はただ…」
沖田の意地の悪い笑みと言葉に、緋真は否定しようと口を開けたが、言葉を詰まらせた。
自分にとっては、この目を見て何も言わなかった、殺したいからという理由で傍におきたい、と居場所をくれた彼についていきたいと言う理屈を、誰が共感してくれるとでもいうのだろうか。
そして未だ、緋真自身彼自身に隠している事実が一つだけある事も知られていない自分の口からどういう説明をしたらいいのか悩んでいた。
「おい緋真。オメェ、そういやその髪の色どうした。」
唯一緋真の全てを知る銀時がそう尋ねた時、澄ましていた顔の神威がピクリと眉を動かしたのだった。
だがその行為を神威がなぜか快く受け入れられず、その細い腕をしっかりと掴んだ。
「ーーッッ!」
緋真の顔が、物凄い勢いで歪む。
そんな彼女の険しい表情を誰もが見て、その掴まれた腕に視線を移すと、驚くほど真っ青な肌の色を露わにしていたのだ。
「その腕…もしかしてさっきのか……?」
沖田が恐る恐る尋ねると、彼女は苦笑いをして後ろ頭をかいた。
「あはは、バレちゃった。」
笑って誤魔化そうとする彼女を見て、神威は更に力を込める。
「いっ、いたたっ!神威、痛いよ!」
「何やってるバカ兄貴!その手を離すネ!」
「お、おい新八!救急箱持ってきてやんな!」
「は、はい!」
銀時の一声に、新八が慌てて救急箱を取りに走る。
神威はただ彼女のその腕をじっとみては、小さくため息を零した。
「…神威?」
緋真は神威の様子がおかしいのに気づく。
さっきから一体何に苛立っているのだろう。
自分の腕を見つめているだけで、何も言わない彼が何を思っているのか尋ねようとした時、一人の男が無理やり彼の手を離した。
「何やってんだよ、お前。いい加減その手ぇ離せや。」
「銀兄!」
緋真を守るように彼女と神威の間に入り、睨みつける。
神威はそんな彼を見て、ふいっと顔を逸らしては壁へ背中を預け、腕を組んで大人しくなった。
銀時は手際よく緋真の両腕を優しく触りながら手当をしていき、よし!と言って手を離す。
緋真はぐるぐるに包帯を巻かれた腕を見て、小さく笑った。
「懐かしいな…こうして怪我をした時、いつも銀兄達が手当してくれた子供の頃が。」
「オメェは怪我してもいつも我慢して誰にも言わねぇタチだからな。ったく、無茶するのは本当昔から変わってねぇしょうがねぇ奴だな。」
銀時がそう言って緋真を見上げた表情は、彼女のことを思うばかり、とても優しい顔をしていた。
「随分と旦那と顔見知りのようですねぇ。古くからのお知り合いで?」
「あぁ。コイツは俺と同じ寺子屋で育った、松下村塾の門下生の一人で、俺の妹分みてぇなもんだ。」
「えぇっ?!」
平然とした顔で答える銀時に、誰もが驚きの声を上げる。
神威はその言葉を聞いて、昨日見た緋真の闘い方や、虫唾が走る程の綺麗事を並べた物言いをする事に、妙に納得がいった。
「じゃ、じゃあ桂さんや坂本さん達のことも知ってるってことですか?!」
「わぁ、懐かしい名前。小太兄達のこともご存じなんですね。」
パッと緋真の表情が明るくなり、新八はその表情を見るなり、彼女が至って普通の女と大差ないことを実感した。
「なんだ。やっぱり瞳の色が少し変わってるだけで、普通の女の子じゃないですか。」
「まぁ俺たちの攻撃を止めたって奴が普通かどうかは別として、別に目の色が変わったところで俺たち人間と一緒だろ?気にすることじゃねーや。」
新八に続けて沖田がそう言うと、緋真は改めて先程助けて貰ったお礼を言うべく、彼らに深く頭を下げた。
「…さきほどは、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。それから、助けていただいてありがとうございます。」
「気にすることないアル。それよりお前、なんでうちのバカ兄貴と一緒にいるアルか?」
「え、バカ兄貴?」
緋真は神楽の言葉を聞いて首を傾げる。
そうしてよく神楽の容姿を見ると、後ろでじっとこちらを見ている神威の容姿と、どことなく似ていることに気がついた。
「えっ!も、もしかして神威の妹さん?!」
「…そうだよ。俺の出来損ないの妹の神楽。」
「そっ、そうなんだ。あんまりにも可愛らしい子だったから、全然気づかなかった。」
緋真のそのさりげなく放った一言に、神楽はパッと喜ぶ表情を見せたが、その場にいる男達はげんなりした表情で彼女を見つめた。
「おいおい、緋真。お前コイツのどこが可愛く見えるんだよ。ゲロインだぜゲロイン。平気でゲロ吐くし、女の癖に力強いわウチの家計空にするほど大食いだわ、よく物壊すわワガママだわ、下品だわで大変なんだぞ。女のおの字も分かっちゃいねぇ。」
「そうだよ緋真。コイツが可愛く見えるなんて、どうかしてるよ。」
「緋真さん、人は見かけで判断しちゃダメですよ……」
「おいあんた、その色の違う目のせいでだいぶ視力悪ぃんじゃねぇのか、いや、ぜってぇそうだ。じゃなきゃこんなクソ女が可愛く見えるはずがねぇ。」
「ちょっとさっきから何あるかオマエら!こんな可愛くてキュートなヒロイン他にいないネ!そうだよね、緋真姉ちゃん!」
「いやお前なに可愛いって言われたからって、ちょっと呼び方尊敬した感じに変えてんの?単純すぎんだろ。っつーかお前バカだろ!」
「うるさいこのクソ天パ!私の魅力が分からないお前らなんてもはやクズね!地球上のゴミアル!」
目の前で彼らの言い合いをポカンと口を開けて見ていた緋真は、クスリと小さく微笑んだ。
「相変わらず、たくさんの人に囲まれて楽しそうだね。銀兄。」
「楽しそう?毎日毎日大変だっつーの。それに比べりゃ、妹みたいにいっつも傍を歩いてたオメェの方が、よっぽど面倒見がいがあったぜ。」
今度は鼻をほじりながらふんぞり返って話す銀時。
はたまた緋真はそれを見て、小さく笑った。
「ふぅん。で、なんであんたみてぇな奴が宇宙最悪の悪党と手を組んでるんでぃ。」
「…俺が一人になった緋真を拾ったんだよ。」
「拾ったって…緋真さんはものじゃないんですよ?!」
「あぁ、違うの違うの!神威は森で生活してた私を助けてくれた恩人というか……」
「恩人だァァ?!」
緋真が誤解をとこうと口を開けば、なぜか万事屋達の表情は更に険しくなる。
なんて言ったら伝わるんだろう、と彼女が必死に言葉を探している様子を見た神威は、小さく息をこぼして彼女の名を呼んだ。
「緋真、無駄だよ。コイツらに何を言ってもお前の言葉が伝わることは無い。言ったろ?俺は宇宙の悪党だ、って。」
「なるほど。まぁ事情はどうであれ、テメェのその感じからして、この人の目を利用して何かを企んでるっていう訳じゃァ無さそうだな。」
「元々緋真の目に何か価値があるなんて、俺は思ってもいないよ。俺が興味あるのは、緋真の強さと、その喉を掻っ切って死に様を見ることだけだ。」
「なっ……テメェッッ!」
神威の言葉に銀時がつっかかろうと身を乗り出せば、緋真が慌てて間に入った。
「あ、あの銀兄!心配かけてごめんなさい!でも、私も自分なりに考えて神威と今一緒に行動してるので、これ以上彼を悪くいうのは……!」
「まぁいいじゃん。あんたは俺の妹を、俺はあんたの妹分を仲間につけるってことで。これでおあいこだろ?」
「全然おあいこじゃねぇよッッ!何上手くいったって顔してやがんだテメェはッッ!……お前覚悟あんのかよッッ!緋真は人目に付くような場所を歩くだけでさっきのような……!」
銀時はそこまで言いかけて、ハッとした表情を浮かべた。
「確かにさっきの状況を見る限り、あんたろくな扱いを受けてこなかったんだろうな。そんな奴が、こんな悪党についてくとなりゃ、返ってその身も安心ってか?」
「いえ、私はただ…」
沖田の意地の悪い笑みと言葉に、緋真は否定しようと口を開けたが、言葉を詰まらせた。
自分にとっては、この目を見て何も言わなかった、殺したいからという理由で傍におきたい、と居場所をくれた彼についていきたいと言う理屈を、誰が共感してくれるとでもいうのだろうか。
そして未だ、緋真自身彼自身に隠している事実が一つだけある事も知られていない自分の口からどういう説明をしたらいいのか悩んでいた。
「おい緋真。オメェ、そういやその髪の色どうした。」
唯一緋真の全てを知る銀時がそう尋ねた時、澄ましていた顔の神威がピクリと眉を動かしたのだった。