銀時は自宅兼店でもある〝万事屋銀ちゃん〟へ緋真を連れて駆け込んでは、ゼェゼェと肩で息をしながら呼吸を整えた。

「はぁっ、はぁっ、あーしんどかった。まじもう無理。今日仕事して既に疲れてたってのによォ、あそこから全速力で家に帰って来るなんざ、もう二度とやんねぇ。あー今ので糖分足りねぇ。」

まるで一人でいるかのような大きな独り言を呟いては、靴を脱いで上がっていく。

銀時の背中を見つめるようにして玄関で立ち止まってる緋真に気づき、くるりと顔を振り向けた。

「何やってんだよ、緋真。早く上がれよ。俺ん家だ。」

「ぎ、銀兄なんだよね。ほんとに…」

「そうだよ。何しけたツラしてんだよ。言っとくけど、俺ァ幽霊でもなんでもねぇからな？！足だって生えてるしウンコだってちゃんとでらァ。」

耳の穴をほじりながら目を細めて言う彼らしい様子を見て、緋真はようやく彼があの銀時であると言うことを実感した。

「こんな所で会えるなんて、元気そうでよかった！！」

緋真が嬉しさのあまり、ついつい昔の幼い頃のように銀時に勢いよく飛びつこうとジャンプする。

銀時も以前こうしてよく懐いて抱きついてきたのを思い出しては、そっと手を差し伸べて優しい笑顔を向けた。

が、その感動の再会を遮るかのように銀時の頭の上に、人影がずしりと乗ってきたのだった。

「ぐぁｯｯ！！」

「何やってんの、緋真。」

「あ、神威。」

彼を目の前にしてようやくはっと我に返り、銀時に抱きつこうとしていたその身体をピタリととめた。

「そんなに俺に殺されたい？それとも先にこのバカ侍を殺されたい？」

「ーーｯｯてめぇ！何俺の頭に乗ってやがるバカ兄貴ｯｯ！今すぐ降りやがれコノヤロウ！」

「えっ……」

突然目の前に現れた神威は、微笑んではいるものの妙に苛立ちを顕に出していた。
それに加えどういうわけか、今目の前にいる二人が顔見知りのような雰囲気にすら見える。
緋真が二人の関係性を尋ねようと口を開けると、後ろの玄関の扉が勢いよく開いて、どどどと人が押し寄せてきたのだ。

「銀ちゃん、何で置いてくアルか！」

「そうですよ！せっかく僕らも銀さんに言われて迫真の演技してたっていうのに、置いてくなんてあんまりです！」

「旦那ァ、俺に一芝居うたせといて何も言わずにずらかるたァ酷いじゃねぇですか。」

鋭い目が三人分、銀時に刺さる。
彼は癖のある銀色の髪をわしゃわしゃとかきながら、大きくため息を零した。

「…ま、とりあえず緋真に免じて一旦冷静になろうや。話すんのは中に入って茶ァでも飲みながらでもいいだろ。な？緋真。」

銀時が親指を立てて居間へと案内すると、緋真は子供のようにパッと晴れた表情をして、中へと足を運んだ。

それに続くように、玄関にいた全員がゾロゾロと中へと入っていったのだった。