二.渇きを満たすもの
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二人が本気になった瞬間を、見守るように観戦していた緋真は見逃さなかった。
神威の力の膨大さはだいたい理解しているが、今しがた出会ったばかりの男の力は未だ計り知れない。
ただ、真選組の一員と言うだけあって刀の太刀筋や身のこなしは、そこらの侍相手に劣る事はないのだというのは、見ていれば容易にわかる。
緋真はこの一撃をなんとか阻止せねばと、何か止める方法を探すため、フードの中から見える視界を充分に見渡した。
すると野次馬の中に、二人の男が腰に木刀をさしている光景を目にしたのだ。
刀ならどちらかを傷つけてしまう可能性があるから迂闊に間に入れないけれど、あれならなんとかーーー。
緋真は全速力でその二人の元へ向かっては、到着するなり口を開いた。
「あ、あのすみません、御二方!これ、少し貸してください!」
そう言って、返事を聞く間もなく抜き取り、踵を返して全速力で2人の元へ走る。
木刀を持っていた男の一人が恐らく自分に声をかけようとしていたが、今は一秒たりとも無駄にはできないので振り返りすらしなかった。
身体を前屈みにして素早く足を前へと動かし、神威達が一歩踏み出して攻撃をしかけたその瞬間。
両方の手にした木刀を逆手で持ち、間に入って真選組の刀と神威の拳を受け止めた。
その衝撃の反動で彼女のフードがパサリと落ち、腕には痺れるほどの痛みが走った。
突然二人の間合いに入り込んだ緋真を見て、どちらも驚いた表情を浮かべて硬直する。
「……なんとか間に合った。双方これに免じて一旦闘志を納めろ。」
緋真の地を這うような声に、二人はごくりと息を呑みつつも、今更退けぬと言わんばかりに、その手に更に力を込めた。
「…緋真、どけ。邪魔するならお前も殺すよ。」
「どけぇ女ッッ!!邪魔すんじゃねぇ!」
彼女に怒鳴り散らす二人を見て、緋真も負けずと腕に力を込めた。
「神威、ここで私がこの男に殺されたくなかったら、一旦その手を退けて。じゃないと、今すぐこの左手を離して、真選組の刀に切られて私の血の雨を降らすよ。」
「……」
「真選組のあんたも、こんな町中で力任せに刀を振ってたんじゃ、市民守るどころか町を一つ消すハメになるかもしれない。それにこれだけの野次馬が目を光らせて見てるんだ。あんただけじゃなくて、真選組そのものの立場が危うくなるかもしれないだろ。上司に辛い処分が下る前に、さっさとその刀を鞘に収めな。」
「……チッ。」
彼女の各々に対する言葉はしっかりと届き、双方は力を抜いて闘志を収めた。
緋真もそれを見て安堵し、ほっと胸をなでおろしては構えを解いた。
「よかった、うまく収まって。」
「…おいテメェ、一体何者だ。なんでそんな馬鹿力の野郎の攻撃も、俺の攻撃もいとも簡単に片手で受け止めてやがる。そんな華奢な身体のどこにそんな力があるってんでぃ。」
「まぁまぁ、そこはちょっと触れないでよ。っていうかいとも簡単じゃないし。普通に腕痺れてるから。」
「普通は腕痺れたどころじゃすまねぇんでぃ。だいたい何だよ、その目は。」
彼に言われてはっとした。
止めに入ろうと必死になっていたせいで、いつの間にかフードが取れてしまっている事に気づいていなかったのだ。
あの恐ろしい闘いを一人の女が止めたということだけで既に注目の的だと言うのに、緋真の両目を見て、誰もが息を飲んだ。
「ーーッッ!」
緋真は慌ててフードを被ろうとするが、先程と同じように何故かそれを沖田が腕を掴んで止める。
「何また隠そうとしてやがんでぃ。目の色が違うだけで別にどうってこと……」
「おい、あの女オッドアイってやつだったぞ……!」
「あれって確か確率が1%に満たない遺伝子の変質だったよな?!」
「あれ確か高く売れるって評判だって知ってっか?」
周囲にいた皆がざわめき始め、緋真の顔は青ざめて言った。
幼い頃、この目を見て気味が悪いと、両親は自分を捨てた。
町のどこへ行ってもおかしい、変だと言われ続け、呪いの子だと何度か殺されそうになった。
そうして、その目が珍しいが故に高値がつき始めた頃、大人たちは目の色を変えて緋真を売り飛ばそうと、姑息なあらゆる手を使って自分のモノにしようとしてきた。
「ーーッッ!」
緋真は過去に自分の身に振りかかった恐怖を集まる視線で思い出しては、耳を塞いだ。
肩を震わせ、今にも泣き出しそうなその表情に、初めて見た神威も首を傾げる。
「おまえ……」
沖田がその様子を見て、彼女の手をそっと離した。
しかしその時、再び緋真の腕をしっかりと掴んだのはーーー
「おい、緋真。しっかりしろ!」
必死に彼女を助けようとする銀色の髪の侍だった。
神威の力の膨大さはだいたい理解しているが、今しがた出会ったばかりの男の力は未だ計り知れない。
ただ、真選組の一員と言うだけあって刀の太刀筋や身のこなしは、そこらの侍相手に劣る事はないのだというのは、見ていれば容易にわかる。
緋真はこの一撃をなんとか阻止せねばと、何か止める方法を探すため、フードの中から見える視界を充分に見渡した。
すると野次馬の中に、二人の男が腰に木刀をさしている光景を目にしたのだ。
刀ならどちらかを傷つけてしまう可能性があるから迂闊に間に入れないけれど、あれならなんとかーーー。
緋真は全速力でその二人の元へ向かっては、到着するなり口を開いた。
「あ、あのすみません、御二方!これ、少し貸してください!」
そう言って、返事を聞く間もなく抜き取り、踵を返して全速力で2人の元へ走る。
木刀を持っていた男の一人が恐らく自分に声をかけようとしていたが、今は一秒たりとも無駄にはできないので振り返りすらしなかった。
身体を前屈みにして素早く足を前へと動かし、神威達が一歩踏み出して攻撃をしかけたその瞬間。
両方の手にした木刀を逆手で持ち、間に入って真選組の刀と神威の拳を受け止めた。
その衝撃の反動で彼女のフードがパサリと落ち、腕には痺れるほどの痛みが走った。
突然二人の間合いに入り込んだ緋真を見て、どちらも驚いた表情を浮かべて硬直する。
「……なんとか間に合った。双方これに免じて一旦闘志を納めろ。」
緋真の地を這うような声に、二人はごくりと息を呑みつつも、今更退けぬと言わんばかりに、その手に更に力を込めた。
「…緋真、どけ。邪魔するならお前も殺すよ。」
「どけぇ女ッッ!!邪魔すんじゃねぇ!」
彼女に怒鳴り散らす二人を見て、緋真も負けずと腕に力を込めた。
「神威、ここで私がこの男に殺されたくなかったら、一旦その手を退けて。じゃないと、今すぐこの左手を離して、真選組の刀に切られて私の血の雨を降らすよ。」
「……」
「真選組のあんたも、こんな町中で力任せに刀を振ってたんじゃ、市民守るどころか町を一つ消すハメになるかもしれない。それにこれだけの野次馬が目を光らせて見てるんだ。あんただけじゃなくて、真選組そのものの立場が危うくなるかもしれないだろ。上司に辛い処分が下る前に、さっさとその刀を鞘に収めな。」
「……チッ。」
彼女の各々に対する言葉はしっかりと届き、双方は力を抜いて闘志を収めた。
緋真もそれを見て安堵し、ほっと胸をなでおろしては構えを解いた。
「よかった、うまく収まって。」
「…おいテメェ、一体何者だ。なんでそんな馬鹿力の野郎の攻撃も、俺の攻撃もいとも簡単に片手で受け止めてやがる。そんな華奢な身体のどこにそんな力があるってんでぃ。」
「まぁまぁ、そこはちょっと触れないでよ。っていうかいとも簡単じゃないし。普通に腕痺れてるから。」
「普通は腕痺れたどころじゃすまねぇんでぃ。だいたい何だよ、その目は。」
彼に言われてはっとした。
止めに入ろうと必死になっていたせいで、いつの間にかフードが取れてしまっている事に気づいていなかったのだ。
あの恐ろしい闘いを一人の女が止めたということだけで既に注目の的だと言うのに、緋真の両目を見て、誰もが息を飲んだ。
「ーーッッ!」
緋真は慌ててフードを被ろうとするが、先程と同じように何故かそれを沖田が腕を掴んで止める。
「何また隠そうとしてやがんでぃ。目の色が違うだけで別にどうってこと……」
「おい、あの女オッドアイってやつだったぞ……!」
「あれって確か確率が1%に満たない遺伝子の変質だったよな?!」
「あれ確か高く売れるって評判だって知ってっか?」
周囲にいた皆がざわめき始め、緋真の顔は青ざめて言った。
幼い頃、この目を見て気味が悪いと、両親は自分を捨てた。
町のどこへ行ってもおかしい、変だと言われ続け、呪いの子だと何度か殺されそうになった。
そうして、その目が珍しいが故に高値がつき始めた頃、大人たちは目の色を変えて緋真を売り飛ばそうと、姑息なあらゆる手を使って自分のモノにしようとしてきた。
「ーーッッ!」
緋真は過去に自分の身に振りかかった恐怖を集まる視線で思い出しては、耳を塞いだ。
肩を震わせ、今にも泣き出しそうなその表情に、初めて見た神威も首を傾げる。
「おまえ……」
沖田がその様子を見て、彼女の手をそっと離した。
しかしその時、再び緋真の腕をしっかりと掴んだのはーーー
「おい、緋真。しっかりしろ!」
必死に彼女を助けようとする銀色の髪の侍だった。