一.法度破り
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再び那智と事の発端となったあの団子屋へと向かうと、そこには先日と同じように〝万事屋銀ちゃん〟のメンバーが座っていた。
「おっ、きたな!」
銀時が二人に気づくと、ニカッと笑って手を振って迎える。
そして那智と沖田が席につこうとすると、新八があれ?!と大きな声をあげた。
「そういえば、那智さん服が違いますね!どうしたんですか?それ。」
「あぁこれ?実は真選組のメンバーに、女であることを暴露したんです。で、制服が変わって。」
「なんか、前来た時より随分オッパイが大きいアル。なんでネ。」
「それはサラシ巻いてたから…男でオッパイあったら変でしょう。」
那智は少し恥ずかしがりながら、神楽にそう返した。
那智の着ている制服は、デザイン自体は隣にいる沖田と変わらないが、太もも近くまであるスリッドが綺麗に入り、胸元も谷間が見えるような程ガラリと空いて、鎖骨が露骨にでていた。
そんな彼女の姿に、銀時が思わず鼻の下を伸ばしつつも、ハッと我に返り那智に尋ねた。
「っえ?!ってことはなに、女のまま一番隊副隊長継続したってこと?!」
食いつくように身を乗り出して尋ねる銀時に、那智はクスクスと笑ってはこう返した。
「いいえ。初の女隊員として、真選組の参謀を務めることになりました。改めて、よろしくお願いしますね、万事屋銀ちゃん。」
「お、おう。また派手に事を起こしたな、お前……」
爽やかな笑顔でしれっと言う那智の言葉には、様々な困難を乗り越えてきたのが必然と理解出来る。
法度を破り、更には新しい制度を設けるというのは、容易くできることではない。
「大変でしたよ。でも、そういうことが出来るように今まで苦労して信頼を買ってきたんです。ま、簡単に言えば長官を脅して解雇を免れたって感じですけど。」
「脅したって那智さん……じゃ、じゃあ今まで通り屯所で生活するんですか?」
「そうですよ。だって今更別で家を用意するのも面倒だし…私、自室結構気に入ってるんで。」
「大丈夫アルか?!あんな男の性欲の塊みたいなところに那智がいたら、野獣のように襲ってこないアルか?」
「それも大丈夫。鬼のように強い番犬と、私にはこれがありますから。」
ちらりと沖田を見ては、手にしている刀を銀時たちに見せる。
「……番犬って、俺のことですかぃ参謀殿。」
目を細めて那智を見る沖田と、呆れた目線が三方から向けられるも、当の彼女は、ふふっと穏やかな笑みを浮かべていた。
銀時はそんな彼女を見て、安堵の息を零しては静かに笑い、口を開いた。
「ま、那智に手を出したとしても、刀さえ手にしてりゃどーってことねぇだろ。むしろ手を出した奴があの世行きだ。」
「へぇ、那智さんってそんなに強いんですね。」
「銀ちゃんとどっちが強いアルか?」
「いや、まともにやり合ったとしたら那智だろ。俺と違って那智は、頭脳派だからな。」
「いいえ、それはもちろん銀さんですよッ!なんてったって、銀さんたちは私たちの憧れの侍でしたから…」
当時のことを思い出したのか、那智が上を見て頬をあからめる。
それを見て、沖田の顔が歪み始める。
そんな彼女の女らしい表情を見て、新八はごくりと息を飲み、恐れながら那智に尋ねた。
「も、もしかして那智さんって、銀さんのこと…」
「え?」
「好きだった、とか?」
その言葉に、気を紛らわして茶をすすっていた沖田の耳がぴくりと反応する。
那智はそんな空気も読まず、しれっと普通に答え始めた。
「好きでした、それはもう物凄くっ!」
「ま、マジでかッ!!」
その反応に最初に食らいついたのは、他でもなく神楽と新八。
彼らからしてみれば、どうしよもないダメな男に好意を抱いていた人物がいたと言う事が衝撃の事実。
沖田はわなわなと湯のみを持つ手に力が入り、思わずパリンと音を立てて割った。
「だって、凄いんですよ!?銀さんを初め、晋助さんや桂さん達の無駄のない剣さばきが!あの勇ましい姿が!私あの頃、死ぬならあの刀に貫かられて死にたいなって思ってました!!」
「……へ?」
「……は?」
自分に好意を寄せていたと思い込んでいた銀時は、思わず拍子抜けの答えに情けない声を上げる。
銀時だけではなく、それを聞いた沖田たちもその答えに情けない声が漏れていた。
「私たち後方を援護する部隊からしてみれば、みんな銀さん達が好きだったんだと思いますよ。強くて、凛々しくて、憧れでした。」
「あ、そーいう意味。」
「な、なぁんだ。やっぱりそうですよね!おかしいと思いましたよ!那智さんみたいな素敵な人が銀さんを好きだったなんて、あるわけないですよね!」
「っていうか、剣さばきに好意を抱くってどうよ。那智も相当頭イカれてらァ。」
「やっぱりバカ隊長についてた副隊長は、同じくバカネ。」
「えぇっ、何でそんな言われようなの!正直に答えたのに……」
自ら招いた誤解を未だ理解できず、散々言われた那智は納得のいかない不貞腐れた表情を浮かべている。
それを見て、沖田は声を殺して笑った。
「……ククッ。ほんっと、バカでぃ。……刀バカ。」
「ちょ、ちょっと!なんて心外なっ!」
ムッと頬をふくらませて沖田に怒ろうとするも、一本の電話が入り、那智は外へと出ていった。
「……なぁ、総一郎くん。」
「総悟でさァ、旦那。」
「那智はあんな明るくしてるが、昔、戦争でたくさんの仲間を失ったんだ。」
「……」
「あいつの仲間はみんな死んじまった。生き残ったのはアイツだけだったんだ。」
銀時が何を言おうとしているのか、イマイチ掴めない沖田は彼の方へと体を向ける。
銀時は優しい目で外で電話している彼女を見つめながら、再び口を開いた。
「仲間思いの強い、すげぇいい奴だった。だから年なんて関係なく、アイツについてくる奴らがいた。そいつらを全部失った時、きっと自分を物凄く責めたんだと思う。」
「……でしょうね。那智と初めてあった時、どん底にいるようなツラァしてやした。」
「当時はいい顔してたんだよ。毎日笑って、毎日必死に生きて……」
「……何が言いてぇんですかぃ、旦那。」
「でもあの頃より、今の方がいい顔してんだ。たぶん、放っといても死なねぇ、守らなくても生きてくテメェらのとこにいるからだろ。」
「ーー!」
「死ぬなよ、沖田。あいつのためにも。俺ァあいつの涙なんて見るのだけはもう、御免こうむるぜ。」
その言葉を聞いて、沖田は立ち上がり彼女の元へと足を動かした。
そうして暖簾をくぐる前に、銀時の方を振り返り、こう返した。
「俺だって御免こうむるぜ。あいつの泣き顔なんざ見たくもねぇ。もっとも、鳴くところはみてぇですがね。」
「おまっーーッッ!……たくぅ。」
腹黒くニヤリと笑って去っていく沖田に不満の言葉をぶつける間もなく、銀時は深いため息を零した。
新八と神楽はそのやり取りを見守り、小さく笑みを浮かべた。
「でも、良かったアル。なんだかんだ、うまくやっていきそうね。」
「真選組の中の紅一点が、あんな調子じゃ、沖田さんもほかの皆さんもなかなか苦戦しそうですね。」
「ハハッ、違ぇねぇ。」
そう彼らが話をしているところで、バッとのれんから再び那智が顔を出し、あまりにも驚いて銀時たちは椅子から転げ落ちた。
「銀さん、新八さん、神楽ちゃん、またゆっくりお茶でもしましょうね。これからは密偵じゃなくて、江戸担当なんで。よろしくです。」
「お、おう…」
言うだけ言って去っていく那智に、彼らはしばらくポカンと口を開けたまま、ただ背中を見送ったのであった。
「おっ、きたな!」
銀時が二人に気づくと、ニカッと笑って手を振って迎える。
そして那智と沖田が席につこうとすると、新八があれ?!と大きな声をあげた。
「そういえば、那智さん服が違いますね!どうしたんですか?それ。」
「あぁこれ?実は真選組のメンバーに、女であることを暴露したんです。で、制服が変わって。」
「なんか、前来た時より随分オッパイが大きいアル。なんでネ。」
「それはサラシ巻いてたから…男でオッパイあったら変でしょう。」
那智は少し恥ずかしがりながら、神楽にそう返した。
那智の着ている制服は、デザイン自体は隣にいる沖田と変わらないが、太もも近くまであるスリッドが綺麗に入り、胸元も谷間が見えるような程ガラリと空いて、鎖骨が露骨にでていた。
そんな彼女の姿に、銀時が思わず鼻の下を伸ばしつつも、ハッと我に返り那智に尋ねた。
「っえ?!ってことはなに、女のまま一番隊副隊長継続したってこと?!」
食いつくように身を乗り出して尋ねる銀時に、那智はクスクスと笑ってはこう返した。
「いいえ。初の女隊員として、真選組の参謀を務めることになりました。改めて、よろしくお願いしますね、万事屋銀ちゃん。」
「お、おう。また派手に事を起こしたな、お前……」
爽やかな笑顔でしれっと言う那智の言葉には、様々な困難を乗り越えてきたのが必然と理解出来る。
法度を破り、更には新しい制度を設けるというのは、容易くできることではない。
「大変でしたよ。でも、そういうことが出来るように今まで苦労して信頼を買ってきたんです。ま、簡単に言えば長官を脅して解雇を免れたって感じですけど。」
「脅したって那智さん……じゃ、じゃあ今まで通り屯所で生活するんですか?」
「そうですよ。だって今更別で家を用意するのも面倒だし…私、自室結構気に入ってるんで。」
「大丈夫アルか?!あんな男の性欲の塊みたいなところに那智がいたら、野獣のように襲ってこないアルか?」
「それも大丈夫。鬼のように強い番犬と、私にはこれがありますから。」
ちらりと沖田を見ては、手にしている刀を銀時たちに見せる。
「……番犬って、俺のことですかぃ参謀殿。」
目を細めて那智を見る沖田と、呆れた目線が三方から向けられるも、当の彼女は、ふふっと穏やかな笑みを浮かべていた。
銀時はそんな彼女を見て、安堵の息を零しては静かに笑い、口を開いた。
「ま、那智に手を出したとしても、刀さえ手にしてりゃどーってことねぇだろ。むしろ手を出した奴があの世行きだ。」
「へぇ、那智さんってそんなに強いんですね。」
「銀ちゃんとどっちが強いアルか?」
「いや、まともにやり合ったとしたら那智だろ。俺と違って那智は、頭脳派だからな。」
「いいえ、それはもちろん銀さんですよッ!なんてったって、銀さんたちは私たちの憧れの侍でしたから…」
当時のことを思い出したのか、那智が上を見て頬をあからめる。
それを見て、沖田の顔が歪み始める。
そんな彼女の女らしい表情を見て、新八はごくりと息を飲み、恐れながら那智に尋ねた。
「も、もしかして那智さんって、銀さんのこと…」
「え?」
「好きだった、とか?」
その言葉に、気を紛らわして茶をすすっていた沖田の耳がぴくりと反応する。
那智はそんな空気も読まず、しれっと普通に答え始めた。
「好きでした、それはもう物凄くっ!」
「ま、マジでかッ!!」
その反応に最初に食らいついたのは、他でもなく神楽と新八。
彼らからしてみれば、どうしよもないダメな男に好意を抱いていた人物がいたと言う事が衝撃の事実。
沖田はわなわなと湯のみを持つ手に力が入り、思わずパリンと音を立てて割った。
「だって、凄いんですよ!?銀さんを初め、晋助さんや桂さん達の無駄のない剣さばきが!あの勇ましい姿が!私あの頃、死ぬならあの刀に貫かられて死にたいなって思ってました!!」
「……へ?」
「……は?」
自分に好意を寄せていたと思い込んでいた銀時は、思わず拍子抜けの答えに情けない声を上げる。
銀時だけではなく、それを聞いた沖田たちもその答えに情けない声が漏れていた。
「私たち後方を援護する部隊からしてみれば、みんな銀さん達が好きだったんだと思いますよ。強くて、凛々しくて、憧れでした。」
「あ、そーいう意味。」
「な、なぁんだ。やっぱりそうですよね!おかしいと思いましたよ!那智さんみたいな素敵な人が銀さんを好きだったなんて、あるわけないですよね!」
「っていうか、剣さばきに好意を抱くってどうよ。那智も相当頭イカれてらァ。」
「やっぱりバカ隊長についてた副隊長は、同じくバカネ。」
「えぇっ、何でそんな言われようなの!正直に答えたのに……」
自ら招いた誤解を未だ理解できず、散々言われた那智は納得のいかない不貞腐れた表情を浮かべている。
それを見て、沖田は声を殺して笑った。
「……ククッ。ほんっと、バカでぃ。……刀バカ。」
「ちょ、ちょっと!なんて心外なっ!」
ムッと頬をふくらませて沖田に怒ろうとするも、一本の電話が入り、那智は外へと出ていった。
「……なぁ、総一郎くん。」
「総悟でさァ、旦那。」
「那智はあんな明るくしてるが、昔、戦争でたくさんの仲間を失ったんだ。」
「……」
「あいつの仲間はみんな死んじまった。生き残ったのはアイツだけだったんだ。」
銀時が何を言おうとしているのか、イマイチ掴めない沖田は彼の方へと体を向ける。
銀時は優しい目で外で電話している彼女を見つめながら、再び口を開いた。
「仲間思いの強い、すげぇいい奴だった。だから年なんて関係なく、アイツについてくる奴らがいた。そいつらを全部失った時、きっと自分を物凄く責めたんだと思う。」
「……でしょうね。那智と初めてあった時、どん底にいるようなツラァしてやした。」
「当時はいい顔してたんだよ。毎日笑って、毎日必死に生きて……」
「……何が言いてぇんですかぃ、旦那。」
「でもあの頃より、今の方がいい顔してんだ。たぶん、放っといても死なねぇ、守らなくても生きてくテメェらのとこにいるからだろ。」
「ーー!」
「死ぬなよ、沖田。あいつのためにも。俺ァあいつの涙なんて見るのだけはもう、御免こうむるぜ。」
その言葉を聞いて、沖田は立ち上がり彼女の元へと足を動かした。
そうして暖簾をくぐる前に、銀時の方を振り返り、こう返した。
「俺だって御免こうむるぜ。あいつの泣き顔なんざ見たくもねぇ。もっとも、鳴くところはみてぇですがね。」
「おまっーーッッ!……たくぅ。」
腹黒くニヤリと笑って去っていく沖田に不満の言葉をぶつける間もなく、銀時は深いため息を零した。
新八と神楽はそのやり取りを見守り、小さく笑みを浮かべた。
「でも、良かったアル。なんだかんだ、うまくやっていきそうね。」
「真選組の中の紅一点が、あんな調子じゃ、沖田さんもほかの皆さんもなかなか苦戦しそうですね。」
「ハハッ、違ぇねぇ。」
そう彼らが話をしているところで、バッとのれんから再び那智が顔を出し、あまりにも驚いて銀時たちは椅子から転げ落ちた。
「銀さん、新八さん、神楽ちゃん、またゆっくりお茶でもしましょうね。これからは密偵じゃなくて、江戸担当なんで。よろしくです。」
「お、おう…」
言うだけ言って去っていく那智に、彼らはしばらくポカンと口を開けたまま、ただ背中を見送ったのであった。