一.法度破り
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ーー無性にイライラする。
見たいと思っても見れなかった、那智の女の顔をいとも簡単に銀時が出したことを。
あの輝いた眼差しは、あの頬を赤らめて話す顔は、明らかに一時でもあの人を男として見ていた目だった。
確かに攘夷戦争で戦っていた、という過去の話から二人が顔見知りである、という結論に至ったことは考えれば納得のいく話だが、どうも腑に落ちなかった結果八つ当たり。
だが、言ってみれば、これで良かったのかもしれない。
確かにずっと男として偽り続けるのには限界もあるし、彼女自身を傷つけていたのかもしれない。
ただ、沖田としてはずっと彼女を傍に置いて、護ってやりたいと思っていた。
あの日彼女を真選組に勧誘し、わざわざ自分の隊員につけたのも、彼女を一番に護れるポジションにいるためだ。
そんな気も知らないで、那智は結成後、早々に密偵の仕事に自ら付き、真選組には一年近くも席を空けていたわけで、ようやく帰ってきたかと思えばこのザマだ。
深くため息をこぼし、あれだけ人望の厚い人間を急遽切りました、なんて言い訳をどうしようか、必死に頭の中で思考をこらしていると、早くも屯所へと戻ってきてしまった。
「あぁぁぁぁッ、らしくねぇ。」
頭を掻きむしり、目に焼き付いた彼女の女らしい表情を再び思い出しては、苛立ちをました。
「……俺はもう知らねぇ。クソッタレめ」
そう言葉を吐いて、近藤と土方のいる部屋へと向かったのであった。
ーーー
「はぁ?!那智を強制解雇?!どういうことだ、総悟!」
最初に怒鳴り声を上げたのは、土方の方だった。
それでも沖田は動じることなく、背筋をピンと伸ばしたまた話を続けた。
「いつまでも女を偽ってここの籍に置いておくのにも限界がありまさァ。隊の一部では、アイツが女じゃねぇか暴いてみてぇってよからぬ噂も出回ってる。ここらが潮時かと思いまして。」
「ま、まてよ総悟。そりゃ確かに限界はあるかもしれねぇが、まだバレてもいないのに解雇はねぇだろ、解雇は。」
近藤の言葉に彼は耳を傾けることなく、沖田は膝の上に置いてある拳を強く握りしめ、下唇を噛み締めた。
「……ダメなんすよ、もう。」
「……総悟?」
「一度アイツの女の顔見ちまったら、俺ァもう隠し通せる自信はありやせん。……アイツの処分は、隊長である俺が判断します。」
「……総悟、お前。」
何かを悔しそうにしている彼を見て、土方は二人の間に何かあったのだと悟る。
そして隣で動揺し、あたふたしている近藤を余所に、土方は厳しい目付きで彼にこう言った。
「…わかった。だが、上に黙って解雇にしたテメェにも責任はとってもらうぞ。なんせあいつの腕っぷしは、誰もが認める強さだったんだからな……。その味方を失ってどれほどうちの勢力が下がるのか、しっかりその目で見届けろ。」
「……して、俺はどんな処分を受ければいいんですかぃ。」
真っ直ぐ見つめてくる沖田の目から逸らすように、土方はタバコに火をつけて目を瞑った。
一息ついて、ようやく彼に指令を下すため、再び口を開いた。
「今夜、攘夷志士の二つの組織が手を結ぼうと密会を開くと山崎から情報が入った。それをテメェ一人でなんとかしてこい。」
「なっ……トシッッ!!」
厳しい副長からの処分に、近藤は思わず口を挟もうと立ち上がる。だが土方は、それを遮るように彼の前に腕を伸ばした。
「いいな、総悟。テメェ一人で全員片付けてこい。」
「……了解しやした。」
沖田は反論することも無く、その任務を素直に受け止めてその場を去る。
残った近藤は彼の背中を見つめ、平常心でタバコを咥えている土方を見ては、大きな声を上げたのだ。
「トシ!お前もなんでそんな無茶な任務を総悟に……ッ」
そんな必死な訴えに対し、土方は再び煙をゆっくりと吐き、ニヤッと笑みを浮かべて近藤を見た。
「大丈夫だよ、近藤さん。」
「……え?」
「俺の知ってるアイツなら、総悟にそんなこと言われたくれぇでこの真選組から姿を消したりしねぇさ。それに、さっき面白ぇ報告を受けてな……」
「お、おもしれぇ報告……?」
「あぁ、なんでも那智の奴、とっつぁんの所に一人で向かってるらしいぜ。」
「と、とっつぁんのところに?なんで!」
「さぁな。だがあいつもいっぱしのバラガキだ。ちょっとやそっとの事で俺たちの言うこと聞くやつじゃねぇのだけは、確かだろうよ。」
「……トシ」
「アイツらを信じてやりな、近藤さん。俺たちとアイツの絆は、ちょっとやそっとで切れるもんじゃねぇさ。」
そう言った土方の目は、何かを悟ったような、優しく二人を見守るような瞳をしていた。
見たいと思っても見れなかった、那智の女の顔をいとも簡単に銀時が出したことを。
あの輝いた眼差しは、あの頬を赤らめて話す顔は、明らかに一時でもあの人を男として見ていた目だった。
確かに攘夷戦争で戦っていた、という過去の話から二人が顔見知りである、という結論に至ったことは考えれば納得のいく話だが、どうも腑に落ちなかった結果八つ当たり。
だが、言ってみれば、これで良かったのかもしれない。
確かにずっと男として偽り続けるのには限界もあるし、彼女自身を傷つけていたのかもしれない。
ただ、沖田としてはずっと彼女を傍に置いて、護ってやりたいと思っていた。
あの日彼女を真選組に勧誘し、わざわざ自分の隊員につけたのも、彼女を一番に護れるポジションにいるためだ。
そんな気も知らないで、那智は結成後、早々に密偵の仕事に自ら付き、真選組には一年近くも席を空けていたわけで、ようやく帰ってきたかと思えばこのザマだ。
深くため息をこぼし、あれだけ人望の厚い人間を急遽切りました、なんて言い訳をどうしようか、必死に頭の中で思考をこらしていると、早くも屯所へと戻ってきてしまった。
「あぁぁぁぁッ、らしくねぇ。」
頭を掻きむしり、目に焼き付いた彼女の女らしい表情を再び思い出しては、苛立ちをました。
「……俺はもう知らねぇ。クソッタレめ」
そう言葉を吐いて、近藤と土方のいる部屋へと向かったのであった。
ーーー
「はぁ?!那智を強制解雇?!どういうことだ、総悟!」
最初に怒鳴り声を上げたのは、土方の方だった。
それでも沖田は動じることなく、背筋をピンと伸ばしたまた話を続けた。
「いつまでも女を偽ってここの籍に置いておくのにも限界がありまさァ。隊の一部では、アイツが女じゃねぇか暴いてみてぇってよからぬ噂も出回ってる。ここらが潮時かと思いまして。」
「ま、まてよ総悟。そりゃ確かに限界はあるかもしれねぇが、まだバレてもいないのに解雇はねぇだろ、解雇は。」
近藤の言葉に彼は耳を傾けることなく、沖田は膝の上に置いてある拳を強く握りしめ、下唇を噛み締めた。
「……ダメなんすよ、もう。」
「……総悟?」
「一度アイツの女の顔見ちまったら、俺ァもう隠し通せる自信はありやせん。……アイツの処分は、隊長である俺が判断します。」
「……総悟、お前。」
何かを悔しそうにしている彼を見て、土方は二人の間に何かあったのだと悟る。
そして隣で動揺し、あたふたしている近藤を余所に、土方は厳しい目付きで彼にこう言った。
「…わかった。だが、上に黙って解雇にしたテメェにも責任はとってもらうぞ。なんせあいつの腕っぷしは、誰もが認める強さだったんだからな……。その味方を失ってどれほどうちの勢力が下がるのか、しっかりその目で見届けろ。」
「……して、俺はどんな処分を受ければいいんですかぃ。」
真っ直ぐ見つめてくる沖田の目から逸らすように、土方はタバコに火をつけて目を瞑った。
一息ついて、ようやく彼に指令を下すため、再び口を開いた。
「今夜、攘夷志士の二つの組織が手を結ぼうと密会を開くと山崎から情報が入った。それをテメェ一人でなんとかしてこい。」
「なっ……トシッッ!!」
厳しい副長からの処分に、近藤は思わず口を挟もうと立ち上がる。だが土方は、それを遮るように彼の前に腕を伸ばした。
「いいな、総悟。テメェ一人で全員片付けてこい。」
「……了解しやした。」
沖田は反論することも無く、その任務を素直に受け止めてその場を去る。
残った近藤は彼の背中を見つめ、平常心でタバコを咥えている土方を見ては、大きな声を上げたのだ。
「トシ!お前もなんでそんな無茶な任務を総悟に……ッ」
そんな必死な訴えに対し、土方は再び煙をゆっくりと吐き、ニヤッと笑みを浮かべて近藤を見た。
「大丈夫だよ、近藤さん。」
「……え?」
「俺の知ってるアイツなら、総悟にそんなこと言われたくれぇでこの真選組から姿を消したりしねぇさ。それに、さっき面白ぇ報告を受けてな……」
「お、おもしれぇ報告……?」
「あぁ、なんでも那智の奴、とっつぁんの所に一人で向かってるらしいぜ。」
「と、とっつぁんのところに?なんで!」
「さぁな。だがあいつもいっぱしのバラガキだ。ちょっとやそっとの事で俺たちの言うこと聞くやつじゃねぇのだけは、確かだろうよ。」
「……トシ」
「アイツらを信じてやりな、近藤さん。俺たちとアイツの絆は、ちょっとやそっとで切れるもんじゃねぇさ。」
そう言った土方の目は、何かを悟ったような、優しく二人を見守るような瞳をしていた。