一.法度破り
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「と、取り乱して申し訳ありませんでした……」
那智がようやく泣き止み、団子屋の席に沖田と五人で改めて向かいあって腰を下ろす。
何故か既に沖田は不貞腐れた表情でそっぽを向いており、深々と頭を下げる那智を見て、新八は顔を上げるよう優しい声で言った。
「まさか、オメェがあの戦争から生きてこうして真選組の一員になってるたァ、さすがの俺も驚いたぜ。でもお前、大丈夫なわけ?」
「……どういう意味ですか?銀さん。」
「沖田くぅん、確か真選組って男だけの武闘集団だったよなぁ。こーんな魅力的な女の子の性別偽って籍置かせてていいわけ?」
「えぇっ?!那智さんって、女性なんですか?!」
「こっ、声が大きいです新八くんっ!」
口元に人差し指を立てる那智を見て、新八は思わず口を塞ぐ。
那智は周りに誰もいないことを確認してはホッと胸をなでおろし、再び話に戻った。
「確かに私は女性ですが、真選組に籍を置いている以上は男として成り立ってます。銀さん、申し訳ないんですが、そこは黙って見逃して貰えないでしょうか……。」
「そこまでして真選組にいる理由でもあるアルか?」
神楽の鋭い質問に、那智は肩を竦めた。
「それは……」
すぐに答えない那智に、沖田の苛立ちは頂点に達した。
露骨に苛立っている態度を顕にした彼は、酷く冷たい声で淡々と話し始めた。
「那智の剣術を見込んで近藤さんが真選組に勧誘したんでぃ。まぁ今となっちゃ、那智の実力を補えるような奴らもいるし、男と偽るのがそんなに苦ならさっさと真選組なんざ、抜けちまいな。」
「……そうっ、」
「俺ァ別にあんたが居ようとなかろうと、変わりゃしねぇ。ついでに出会った時に言ってた大切な人たちの中に旦那も入ってたんだろ。良かったじゃねぇか、こうして一人生きて会えて。これでテメェが真選組に居場所をすがる理由もなんもねぇ。旦那のとこでも好きなとこでも行きやがれってんだ。」
「お、沖田さん!!」
「なんて言い草アルか!今のはお前が悪いネッ!」
「部外者が知ったような口聞くんじゃねぇよ。……そういうことだ、那智。密偵から戻ってきて早々だが、近藤さんには俺から言っておく。お前は明日から女として生きればいい。じゃあな。」
「おい待てよ総一郎くん!」
「総悟でさァ、旦那。」
「……」
お代分はしっかりテーブルの上に置き、沖田はその場を去っていく。
何一つ反論どころか言葉を発さない那智は、ただただ、彼の背中を見送った。
「……なんか、偉いことになっちまったな、那智。」
「気にしないでください。今彼は少し気がたってますので。後でなんとかします。」
「なんとかって……」
「私は確かに、攘夷戦争で銀さん達が先陣をきれるよう、後方をサポートする頭としてずっと剣を振るってきました。」
「え、えぇ?!那智さんって、そんなに強かったんですか?!」
新八の驚きに、那智は謙遜して苦笑いを浮かべた。
「でもあの後……闘いの末、私には何も残らなかった。憧れていた銀さん達の姿も、自分と共に闘ってきた戦友たちの姿も、誰一人見ることもなかった。あの日、全てを失ったんです。」
「……」
「でも、そんな私に手を差し伸べてくれたのが、今の真選組の人達なんです。それに、あの時私を誘ってくれた彼らの目が、どことなく銀さん達に似てたので……今度こそ、護りたいと思ったんです。」
「…そうかい。そりゃ、返ってお節介なこと言っちまったな。」
「いえ、気にしないで下さい。彼はきっと、ずっと私が女であることを隠し通すために必死で守ってきてくれたんです。今バレずに真選組にいるのは、総悟のおかげですから。」
「……妬けるねぇ。」
銀時は頬杖をついてそんな独り言をこぼし、とうに去っていった沖田の面影を見るように、遠くを眺めた。
那智がようやく泣き止み、団子屋の席に沖田と五人で改めて向かいあって腰を下ろす。
何故か既に沖田は不貞腐れた表情でそっぽを向いており、深々と頭を下げる那智を見て、新八は顔を上げるよう優しい声で言った。
「まさか、オメェがあの戦争から生きてこうして真選組の一員になってるたァ、さすがの俺も驚いたぜ。でもお前、大丈夫なわけ?」
「……どういう意味ですか?銀さん。」
「沖田くぅん、確か真選組って男だけの武闘集団だったよなぁ。こーんな魅力的な女の子の性別偽って籍置かせてていいわけ?」
「えぇっ?!那智さんって、女性なんですか?!」
「こっ、声が大きいです新八くんっ!」
口元に人差し指を立てる那智を見て、新八は思わず口を塞ぐ。
那智は周りに誰もいないことを確認してはホッと胸をなでおろし、再び話に戻った。
「確かに私は女性ですが、真選組に籍を置いている以上は男として成り立ってます。銀さん、申し訳ないんですが、そこは黙って見逃して貰えないでしょうか……。」
「そこまでして真選組にいる理由でもあるアルか?」
神楽の鋭い質問に、那智は肩を竦めた。
「それは……」
すぐに答えない那智に、沖田の苛立ちは頂点に達した。
露骨に苛立っている態度を顕にした彼は、酷く冷たい声で淡々と話し始めた。
「那智の剣術を見込んで近藤さんが真選組に勧誘したんでぃ。まぁ今となっちゃ、那智の実力を補えるような奴らもいるし、男と偽るのがそんなに苦ならさっさと真選組なんざ、抜けちまいな。」
「……そうっ、」
「俺ァ別にあんたが居ようとなかろうと、変わりゃしねぇ。ついでに出会った時に言ってた大切な人たちの中に旦那も入ってたんだろ。良かったじゃねぇか、こうして一人生きて会えて。これでテメェが真選組に居場所をすがる理由もなんもねぇ。旦那のとこでも好きなとこでも行きやがれってんだ。」
「お、沖田さん!!」
「なんて言い草アルか!今のはお前が悪いネッ!」
「部外者が知ったような口聞くんじゃねぇよ。……そういうことだ、那智。密偵から戻ってきて早々だが、近藤さんには俺から言っておく。お前は明日から女として生きればいい。じゃあな。」
「おい待てよ総一郎くん!」
「総悟でさァ、旦那。」
「……」
お代分はしっかりテーブルの上に置き、沖田はその場を去っていく。
何一つ反論どころか言葉を発さない那智は、ただただ、彼の背中を見送った。
「……なんか、偉いことになっちまったな、那智。」
「気にしないでください。今彼は少し気がたってますので。後でなんとかします。」
「なんとかって……」
「私は確かに、攘夷戦争で銀さん達が先陣をきれるよう、後方をサポートする頭としてずっと剣を振るってきました。」
「え、えぇ?!那智さんって、そんなに強かったんですか?!」
新八の驚きに、那智は謙遜して苦笑いを浮かべた。
「でもあの後……闘いの末、私には何も残らなかった。憧れていた銀さん達の姿も、自分と共に闘ってきた戦友たちの姿も、誰一人見ることもなかった。あの日、全てを失ったんです。」
「……」
「でも、そんな私に手を差し伸べてくれたのが、今の真選組の人達なんです。それに、あの時私を誘ってくれた彼らの目が、どことなく銀さん達に似てたので……今度こそ、護りたいと思ったんです。」
「…そうかい。そりゃ、返ってお節介なこと言っちまったな。」
「いえ、気にしないで下さい。彼はきっと、ずっと私が女であることを隠し通すために必死で守ってきてくれたんです。今バレずに真選組にいるのは、総悟のおかげですから。」
「……妬けるねぇ。」
銀時は頬杖をついてそんな独り言をこぼし、とうに去っていった沖田の面影を見るように、遠くを眺めた。