一.法度破り
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片方の手はズボンのポケットに。
片方は大きな欠伸を隠すために、口に手のひらを覆う。
どんな時でも男の仕草を怠らない。けれどもなんともまぁ締まりのない真選組の姿を見て、沖田はおいおい、と突っ込んだ。
「緩すぎだぜぇ、那智。そんなんじゃ、真選組の顔が立たねぇやい。」
「いや、見回り中に公園のベンチで昼寝してる奴に言われたくねぇって。」
「あれ、なんで知ってるんでぃ。」
「密偵なめんな。江戸の外にいようと、江戸の町での総悟の行動はよーく知ってる。」
二人になれば、昔のように下の名前で呼ぶ那智に居心地の良さを感じつつも、沖田は悟られぬよう小さく笑みを浮かべた。
街を巡回し始める頃には長い髪もしっかり束ね、今は性別も初見では見抜けぬほどの変わりっぷり。
仕草や口調までもが男になっている彼が実は女だと知っている事に、密かに優越感を抱いているのも事実。
久方ぶりに那智と仕事ができると実感した沖田は、妙に浮き足立っていた。
「じゃあ知ってるか?最近できたあそこの団子屋が美味いんだ。」
「あー知ってる。じいさんのあんこが絶品の甘さで人気だろ。」
「…なんで団子の美味さまで知ってるんでぃ。」
「密偵だって、腹減っちゃ捜査はできないからな。腹ごしらえくらいするさ。」
「へぇ。腹ごしらえに団子ねぇ…。久々に奢れや那智」
「たからんでくだせぇ隊長。副隊長よかいい給料もらってる人がよく言うよ。」
「知らねぇの?密偵の方がいい給料もらえんだよ。」
「知らねぇ。っつーか給料の話しないでください。団子食べたいなら団子食いに行くって普通に言えば……」
那智の言葉はそこで止まった。
もう目と鼻の先にある団子屋を見て、足も止めた。
「おーい、那智。何今更躊躇してやがんでぃ。俺ァもう入る気満々だぜぃ。」
後ろで固まっている彼女にそう呼びかけても反応がない。
彼女が唖然として見ている先に沖田も目を向ければ、顔見知りの団体が団子にがっついている光景を見にした。
「なんでぃ旦那ァ。あんたらも団子ぶっ食ですかぃ。」
銀髪のくせのある髪の男、オレンジ頭のチャイナ服の少女、眼鏡をかけた侍姿の少年が、団子を頬張っている。
「あぁっ!テメェ昼間から何サボってやがる、税金泥棒ッッ!」
「そんな硬ぇこと言わねぇでくだせぇ。今日は久々に帰ってきた部下の羽を伸ばさしてやりてぇんですよ。」
「部下?!沖田さんの?!」
「まだお前みたいなクソヤローにつく馬鹿な部下がいたアルか。意外ネ」
「おいチャイナ。てめぇ今なんつった、今すぐそ顔団子みてぇに膨らませてやろうか」
早くも神楽と沖田の交戦が始まり、銀時や新八はそれを呆れた目で傍観する。
そして未だに入口で突っ立っている一人の部下に、沖田はようやく声をかけた。
「おーい、那智。何そんなとこで突っ立ってんでぃ。早く入ってきなせ……!」
最後まで言う前に、沖田は言葉を失った。
風に舞ったのれんの向こうで見えた那智の目からは、確かに涙が零れ落ちていたからだ。
「い、生きてた……」
「あぁ?……お前ーーッッ!」
その姿を見て銀時が思わず席を立ち、彼女の元へと駆け寄る。
沖田の体は那智の初めて見る泣き顔のせいで未だに動かず、その光景をただ見ていた。
「お前、那智かっ?!よく生きてたな!って何泣いてんだ!ほら、泣くな!!」
「銀さぁぁん、生きてたんですねぇぇ、良かったァァ」
銀時の元気そうな顔を見て更に涙腺が崩壊した那智は、どっと勢いをまして涙を流す。そしてそれを、優しく銀時が裾で拭う。
そんな二人の光景を、沖田はただ眺め、神楽と新八は首を傾げたまま見守った。
片方は大きな欠伸を隠すために、口に手のひらを覆う。
どんな時でも男の仕草を怠らない。けれどもなんともまぁ締まりのない真選組の姿を見て、沖田はおいおい、と突っ込んだ。
「緩すぎだぜぇ、那智。そんなんじゃ、真選組の顔が立たねぇやい。」
「いや、見回り中に公園のベンチで昼寝してる奴に言われたくねぇって。」
「あれ、なんで知ってるんでぃ。」
「密偵なめんな。江戸の外にいようと、江戸の町での総悟の行動はよーく知ってる。」
二人になれば、昔のように下の名前で呼ぶ那智に居心地の良さを感じつつも、沖田は悟られぬよう小さく笑みを浮かべた。
街を巡回し始める頃には長い髪もしっかり束ね、今は性別も初見では見抜けぬほどの変わりっぷり。
仕草や口調までもが男になっている彼が実は女だと知っている事に、密かに優越感を抱いているのも事実。
久方ぶりに那智と仕事ができると実感した沖田は、妙に浮き足立っていた。
「じゃあ知ってるか?最近できたあそこの団子屋が美味いんだ。」
「あー知ってる。じいさんのあんこが絶品の甘さで人気だろ。」
「…なんで団子の美味さまで知ってるんでぃ。」
「密偵だって、腹減っちゃ捜査はできないからな。腹ごしらえくらいするさ。」
「へぇ。腹ごしらえに団子ねぇ…。久々に奢れや那智」
「たからんでくだせぇ隊長。副隊長よかいい給料もらってる人がよく言うよ。」
「知らねぇの?密偵の方がいい給料もらえんだよ。」
「知らねぇ。っつーか給料の話しないでください。団子食べたいなら団子食いに行くって普通に言えば……」
那智の言葉はそこで止まった。
もう目と鼻の先にある団子屋を見て、足も止めた。
「おーい、那智。何今更躊躇してやがんでぃ。俺ァもう入る気満々だぜぃ。」
後ろで固まっている彼女にそう呼びかけても反応がない。
彼女が唖然として見ている先に沖田も目を向ければ、顔見知りの団体が団子にがっついている光景を見にした。
「なんでぃ旦那ァ。あんたらも団子ぶっ食ですかぃ。」
銀髪のくせのある髪の男、オレンジ頭のチャイナ服の少女、眼鏡をかけた侍姿の少年が、団子を頬張っている。
「あぁっ!テメェ昼間から何サボってやがる、税金泥棒ッッ!」
「そんな硬ぇこと言わねぇでくだせぇ。今日は久々に帰ってきた部下の羽を伸ばさしてやりてぇんですよ。」
「部下?!沖田さんの?!」
「まだお前みたいなクソヤローにつく馬鹿な部下がいたアルか。意外ネ」
「おいチャイナ。てめぇ今なんつった、今すぐそ顔団子みてぇに膨らませてやろうか」
早くも神楽と沖田の交戦が始まり、銀時や新八はそれを呆れた目で傍観する。
そして未だに入口で突っ立っている一人の部下に、沖田はようやく声をかけた。
「おーい、那智。何そんなとこで突っ立ってんでぃ。早く入ってきなせ……!」
最後まで言う前に、沖田は言葉を失った。
風に舞ったのれんの向こうで見えた那智の目からは、確かに涙が零れ落ちていたからだ。
「い、生きてた……」
「あぁ?……お前ーーッッ!」
その姿を見て銀時が思わず席を立ち、彼女の元へと駆け寄る。
沖田の体は那智の初めて見る泣き顔のせいで未だに動かず、その光景をただ見ていた。
「お前、那智かっ?!よく生きてたな!って何泣いてんだ!ほら、泣くな!!」
「銀さぁぁん、生きてたんですねぇぇ、良かったァァ」
銀時の元気そうな顔を見て更に涙腺が崩壊した那智は、どっと勢いをまして涙を流す。そしてそれを、優しく銀時が裾で拭う。
そんな二人の光景を、沖田はただ眺め、神楽と新八は首を傾げたまま見守った。