二.生殺し(※一部性的描写あり。)
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ピンクと紫のネオンライトにあてられた、昼間からド派手な印象を着飾る三階建てのビルを見上げた那智は、空いた口が塞がらなかった。
通りがてら見かけたことはあるものの、いざ目の前にすると自分の人生には無縁の場所だと思えて仕方がない。
そんな那智を見ては、必死に笑いを堪えながらも彼女の手をぎゅっと握った。
「さ、行きますぜ。言っときやすが、名前の通りカップルしか入れねぇとこなんで、その辺上手くやってくれよな。」
「カップルって何。恋人らしいって何。」
那智は混乱のあまり、もはや謎の独り言をブツブツ言い始める。
それを聞いた沖田は噴き出しつつも、ゆっくりと店の中へと向かっていった。
「そう固くならなくても大丈夫でさァ。俺がしっかりリードしてやりますって。」
「え、ちょっと、心の準備がまだ……ッ!」
そう言っても彼の足は止まらず、気づけば腰に手を回され入口を潜り店の中へと入り込んでいた。
あちこちを見渡しながら進んでいく那智とは違い、沖田は何食わぬ顔で階段をのぼり、受付まで来て足を止める。
店内はまだ昼前だというのに随分賑わっていて、名前の通り利用客はカップルばかりだ。
通り過ぎていく男女の様子を何となく目で覆っていると、どの女の子も相手のためにめかしこんで、着飾った華やかな姿をしている。
それに比べ自分は、大して化粧もせず、髪も下ろしたまま。着物はまぁ鶯色のシンプルな花模様のついたものだ。
こうして見ていると、一つの後悔と一つの疑問が浮かび上がった。
最初からこういう所に仕事で来るとわかっていれば、もう少しそれなりのオシャレをしてきたのに。という後悔と、隣を歩く彼と自分は傍から見て、本当に恋人のように見えるのかという疑問だった。
そんな事を考えているうちに順番が回ってきて、気づけば沖田が対応していた。
「ご希望のお部屋は?」
「じゃあ、SMルームで」
「って、がっつり趣味嗜好に走ってんじゃねぇッッ!!」
無表情で淡々と受け答えをする沖田に、突っ込まざるを得なかった。
沖田は那智をじとりと睨んでは、チッと舌打ちをして普通の部屋を指定し、ウエイターの案内に続いた。
「ボーッとしてたくせに、ちゃっかり聞いてるたァ流石ですね。」
オマケに皮肉をこぼした。
「聞き逃してたら危ない扉開くとこだったわ……。ていうか、喫茶って、普通にカップルの多い喫茶店じゃないの?私もしかして、勘違いしてた?」
「あぁ、そんな軽い店じゃねぇですぜぃ、ここは。」
「えっ、じゃ、じゃあどんな……」
「漫画喫茶ってあるじゃねぇですか。」
「あー…入ったことは無いけど、個室があって自分の空間で好きな漫画が読めるとこだっけ?」
「そう。それと同じ類でさァ。入るにはカップルじゃねぇとダメだっていう条件で、喫茶という名の個室提供商売。そこでカップルが何やってるかは……言わなくても姐さんなら分かりますよね?」
含みのある笑みをニヤリと浮かべる沖田に、那智はゴクリと息を飲んだ。
これまでの人生、刀を恋人だと思っていたような自分でも流石に彼の言っている意味はわかる。
道中からもそれぞれの部屋が個室が並んでいるのが分かり、中は磨りガラスで見えない仕様。
どこもかしこも怪しく見え始めた那智は、気になって辺りをきょろきょろと見渡した。
そんな那智を横目に見て、沖田は小さく息をこぼす。
先程店に入った時から、男どもの視線が彼女に釘付けになっている様をみて、改めて実感させられた。
化粧もしない、大して着飾ってもいないのにこれだけの注目を浴びるほどの美貌を兼ね揃えた女が今、全くの危機感を持たず隣にいる。
好意を寄せているこっちの身にもなって欲しいと思うが、彼女はそれを知る由もない。
そんな彼女をからかいたくなるも、沖田は耳元まで口を持っていき、そっと呟くように言った。
「……那智。よーく耳すましてみなァ。雌豚共の甘ーい声が聞こえまさァ」
耳元の彼の声は、必然的に那智の神経を麻痺させるかのように芯まで届き、無意識に言われたとおり耳を澄ました。
すると確かに彼の言うとおり、必死に押し殺しているような小さな女の声が聞こえてくるではないか。
バッと沖田の方を振り向くと、彼はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらの反応を見て喜んでいた。
「~~ッ!!総悟ッ!!」
「顔が真っ赤でさァ。初だねぇ、那智。」
「だっ、誰が……!」
「こちらでございます。」
何か言い返してやろうかと思えば、ウエイターが足を止めて手前の個室を指さした。
「……ま、マジでか。」
「さ、行きますぜぃ」
「ね、ねぇやっぱりやめよ?!私絶対適任じゃ……ふぐっ」
「しのごの言ってねぇでさっさと入れ。」
弱音を零す前に沖田に口を塞がれ、半ば引きづられるようにその部屋へと入っていったのであった。
通りがてら見かけたことはあるものの、いざ目の前にすると自分の人生には無縁の場所だと思えて仕方がない。
そんな那智を見ては、必死に笑いを堪えながらも彼女の手をぎゅっと握った。
「さ、行きますぜ。言っときやすが、名前の通りカップルしか入れねぇとこなんで、その辺上手くやってくれよな。」
「カップルって何。恋人らしいって何。」
那智は混乱のあまり、もはや謎の独り言をブツブツ言い始める。
それを聞いた沖田は噴き出しつつも、ゆっくりと店の中へと向かっていった。
「そう固くならなくても大丈夫でさァ。俺がしっかりリードしてやりますって。」
「え、ちょっと、心の準備がまだ……ッ!」
そう言っても彼の足は止まらず、気づけば腰に手を回され入口を潜り店の中へと入り込んでいた。
あちこちを見渡しながら進んでいく那智とは違い、沖田は何食わぬ顔で階段をのぼり、受付まで来て足を止める。
店内はまだ昼前だというのに随分賑わっていて、名前の通り利用客はカップルばかりだ。
通り過ぎていく男女の様子を何となく目で覆っていると、どの女の子も相手のためにめかしこんで、着飾った華やかな姿をしている。
それに比べ自分は、大して化粧もせず、髪も下ろしたまま。着物はまぁ鶯色のシンプルな花模様のついたものだ。
こうして見ていると、一つの後悔と一つの疑問が浮かび上がった。
最初からこういう所に仕事で来るとわかっていれば、もう少しそれなりのオシャレをしてきたのに。という後悔と、隣を歩く彼と自分は傍から見て、本当に恋人のように見えるのかという疑問だった。
そんな事を考えているうちに順番が回ってきて、気づけば沖田が対応していた。
「ご希望のお部屋は?」
「じゃあ、SMルームで」
「って、がっつり趣味嗜好に走ってんじゃねぇッッ!!」
無表情で淡々と受け答えをする沖田に、突っ込まざるを得なかった。
沖田は那智をじとりと睨んでは、チッと舌打ちをして普通の部屋を指定し、ウエイターの案内に続いた。
「ボーッとしてたくせに、ちゃっかり聞いてるたァ流石ですね。」
オマケに皮肉をこぼした。
「聞き逃してたら危ない扉開くとこだったわ……。ていうか、喫茶って、普通にカップルの多い喫茶店じゃないの?私もしかして、勘違いしてた?」
「あぁ、そんな軽い店じゃねぇですぜぃ、ここは。」
「えっ、じゃ、じゃあどんな……」
「漫画喫茶ってあるじゃねぇですか。」
「あー…入ったことは無いけど、個室があって自分の空間で好きな漫画が読めるとこだっけ?」
「そう。それと同じ類でさァ。入るにはカップルじゃねぇとダメだっていう条件で、喫茶という名の個室提供商売。そこでカップルが何やってるかは……言わなくても姐さんなら分かりますよね?」
含みのある笑みをニヤリと浮かべる沖田に、那智はゴクリと息を飲んだ。
これまでの人生、刀を恋人だと思っていたような自分でも流石に彼の言っている意味はわかる。
道中からもそれぞれの部屋が個室が並んでいるのが分かり、中は磨りガラスで見えない仕様。
どこもかしこも怪しく見え始めた那智は、気になって辺りをきょろきょろと見渡した。
そんな那智を横目に見て、沖田は小さく息をこぼす。
先程店に入った時から、男どもの視線が彼女に釘付けになっている様をみて、改めて実感させられた。
化粧もしない、大して着飾ってもいないのにこれだけの注目を浴びるほどの美貌を兼ね揃えた女が今、全くの危機感を持たず隣にいる。
好意を寄せているこっちの身にもなって欲しいと思うが、彼女はそれを知る由もない。
そんな彼女をからかいたくなるも、沖田は耳元まで口を持っていき、そっと呟くように言った。
「……那智。よーく耳すましてみなァ。雌豚共の甘ーい声が聞こえまさァ」
耳元の彼の声は、必然的に那智の神経を麻痺させるかのように芯まで届き、無意識に言われたとおり耳を澄ました。
すると確かに彼の言うとおり、必死に押し殺しているような小さな女の声が聞こえてくるではないか。
バッと沖田の方を振り向くと、彼はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらの反応を見て喜んでいた。
「~~ッ!!総悟ッ!!」
「顔が真っ赤でさァ。初だねぇ、那智。」
「だっ、誰が……!」
「こちらでございます。」
何か言い返してやろうかと思えば、ウエイターが足を止めて手前の個室を指さした。
「……ま、マジでか。」
「さ、行きますぜぃ」
「ね、ねぇやっぱりやめよ?!私絶対適任じゃ……ふぐっ」
「しのごの言ってねぇでさっさと入れ。」
弱音を零す前に沖田に口を塞がれ、半ば引きづられるようにその部屋へと入っていったのであった。