一.法度破り
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江戸の町、市民の治安を護るために真選組という特別武装警察が存在する。
地球を乗っ取ろうと天人達の侵略から江戸を守ろうとした攘夷戦争に参加し、結果として敗北した自分の身の起き場所をどうするかと旅をしていた時。
刀を振るう理由を、生き続ける理由を、彼らに与えられたのであった。
それから時は流れて一年後。
「おーい、那智。起きてるかー。見回り行くぞー。」
自室の襖の向こうに、聞き慣れた声を耳にする。
那智はまぶたを擦りながら、重い体をゆっくりと起こし、壁にかけてある制服に袖を通した。
「…はよっす。」
低血圧な那智は冴えない挨拶を零しては、再び瞼を擦っていた。
赤みがかった茶色の長い髪は未だ下ろしており、着痩せするのか、他の隊員達から見るとかなり華奢に見えるという声をよく耳にする。。
一番隊にその身を預け、沖田の側近として任務をこなしている訳だが、ここの所ずっと裏仕事の密偵が続いたため、外の見回りは随分久方ぶりだった。
眠気眼でおぼつかない足を動かす那智を見て、沖田は小さくため息をこぼす。
「なんでぇ、もしかして夜更かしでもしてたのか?お肌によくねぇぜ、那智。」
「…うるせぇ。つーか無闇に女扱いしないで下さい隊長。」
「いやぁ、たまには女扱いしてやらねぇと、いつかほんとに男になっちまうんじゃねぇかって、俺ァ心配でさァ」
沖田の含みのある笑みと発言に、ピタリと足を止める。
くるりと振り返った那智は、寝起きとは思えぬほどの爽やかな笑顔を向けて、沖田にこう返した。
「男として真選組に籍をおけって言ったのは隊長達ですよ?ほかの隊員に、役職付きの俺が女だってバレたら困るのは、隊長たちじゃないんですか?」
その笑みがあまりにも腹黒く、沖田が不覚にも押されて言葉を失った。
そう、一番隊副隊長として圧倒的な強さと隊員達から厚い信頼を置かれている那智こと、周防那智は実は女。
もっとも、真選組が男のみで形成されているのは誰もが承知しているわけで、彼が実は女ということである事実は口が裂けても漏らすわけにはいかない。
なぜなら、彼女と剣を交えて真選組に入隊してもらいたいと志願したのは、他でもなく真選組の要とも言われる局長の近藤を初め、沖田と土方の三人だからだ。
一年前、江戸の幕府は天人達の侵略を食い止められず戦争は敗北に終わり、那智は行き場を失い、旅をしていた。
そんな時に彼らと知り合い、真選組を結成するにあたってこの手を取った訳だが。
自分が女であると気づいたのは、勧誘して数日後。後にも引けず、男に成りすまして籍を置くという何とも難儀な生活を送るはめになった。
とは言っても、誰もが認める剣の腕は本物で、正直彼女が本気を出せば真選組全員が手をかけても勝てる気がしないと言われている程強いせいか、誰も那智が女であると疑っている者すらいなかった。
朝から女扱いを受けてイライラしている那智は、長い廊下をズカズカと歩く。
沖田はそんな彼女の背中を見て、ふぅと息を漏らし、そっと近寄っては肩に手を置いて耳元で囁いた。
「那智。そんなイライラしねぇでくだせぇ。排卵日ですかい」
「ーーッ、二度目はねぇぞ、死ねぇ総悟ォォッッ!」
彼女が抜刀し、沖田がそれを避けて全速力で逃げる。
「まーた朝からやってらァ、あいつらも飽きねぇな。」
「そう言うなトシ。総悟は那智とあぁしてコミニュケーションをとってんだ。ほら、なんだかんだ言って仲良しだろ?」
彼らの姿を暖かい目で遠くから見守る近藤と土方。
土方は彼らの争う姿を見て、どうにも近藤が言うコミニュケーションの度が過ぎているのではないか、と額から汗を流す。
朝から屯所の敷地内でバズーカーやら刀がぶつかり合う音が鳴り響く。
一番隊はほかの隊の中でも特殊で、どの隊員達よりも戦闘能力が高く、どの隊員達からもその力への尊敬の眼差しは厚い。
そんな一番隊を束ねるはずの沖田と那智が朝から交戦とは、手本になるどころか本末転倒。
「どう見ても仲良くじゃれ合ってるようには見えねぇよ!!…ったく、何やってんだあいつらはァァッッ!!」
痺れを切らした土方が、咥えていたタバコを指でへし折り、エスカレートしていく喧嘩の仲裁へ入るため近藤の元を去る。
一人残された近藤は三人のその姿を見て、再び穏やかな笑みを浮かべた。
「全く、アイツらはいつもあんな感じだな。それも、那智が均衡を保ってくれているおかげかなぁ。」
近藤は知っていた。
自分の年齢も知らず、たださ迷っていた彼女が来てから、真選組の尖りもの達が穏やかになっていくのを。
この戦場にたつもの達が集う一つのむさ苦しい集団の中で彼らの心を癒すのもまた、隠れた紅一点が努めていた成果だということを。
地球を乗っ取ろうと天人達の侵略から江戸を守ろうとした攘夷戦争に参加し、結果として敗北した自分の身の起き場所をどうするかと旅をしていた時。
刀を振るう理由を、生き続ける理由を、彼らに与えられたのであった。
それから時は流れて一年後。
「おーい、那智。起きてるかー。見回り行くぞー。」
自室の襖の向こうに、聞き慣れた声を耳にする。
那智はまぶたを擦りながら、重い体をゆっくりと起こし、壁にかけてある制服に袖を通した。
「…はよっす。」
低血圧な那智は冴えない挨拶を零しては、再び瞼を擦っていた。
赤みがかった茶色の長い髪は未だ下ろしており、着痩せするのか、他の隊員達から見るとかなり華奢に見えるという声をよく耳にする。。
一番隊にその身を預け、沖田の側近として任務をこなしている訳だが、ここの所ずっと裏仕事の密偵が続いたため、外の見回りは随分久方ぶりだった。
眠気眼でおぼつかない足を動かす那智を見て、沖田は小さくため息をこぼす。
「なんでぇ、もしかして夜更かしでもしてたのか?お肌によくねぇぜ、那智。」
「…うるせぇ。つーか無闇に女扱いしないで下さい隊長。」
「いやぁ、たまには女扱いしてやらねぇと、いつかほんとに男になっちまうんじゃねぇかって、俺ァ心配でさァ」
沖田の含みのある笑みと発言に、ピタリと足を止める。
くるりと振り返った那智は、寝起きとは思えぬほどの爽やかな笑顔を向けて、沖田にこう返した。
「男として真選組に籍をおけって言ったのは隊長達ですよ?ほかの隊員に、役職付きの俺が女だってバレたら困るのは、隊長たちじゃないんですか?」
その笑みがあまりにも腹黒く、沖田が不覚にも押されて言葉を失った。
そう、一番隊副隊長として圧倒的な強さと隊員達から厚い信頼を置かれている那智こと、周防那智は実は女。
もっとも、真選組が男のみで形成されているのは誰もが承知しているわけで、彼が実は女ということである事実は口が裂けても漏らすわけにはいかない。
なぜなら、彼女と剣を交えて真選組に入隊してもらいたいと志願したのは、他でもなく真選組の要とも言われる局長の近藤を初め、沖田と土方の三人だからだ。
一年前、江戸の幕府は天人達の侵略を食い止められず戦争は敗北に終わり、那智は行き場を失い、旅をしていた。
そんな時に彼らと知り合い、真選組を結成するにあたってこの手を取った訳だが。
自分が女であると気づいたのは、勧誘して数日後。後にも引けず、男に成りすまして籍を置くという何とも難儀な生活を送るはめになった。
とは言っても、誰もが認める剣の腕は本物で、正直彼女が本気を出せば真選組全員が手をかけても勝てる気がしないと言われている程強いせいか、誰も那智が女であると疑っている者すらいなかった。
朝から女扱いを受けてイライラしている那智は、長い廊下をズカズカと歩く。
沖田はそんな彼女の背中を見て、ふぅと息を漏らし、そっと近寄っては肩に手を置いて耳元で囁いた。
「那智。そんなイライラしねぇでくだせぇ。排卵日ですかい」
「ーーッ、二度目はねぇぞ、死ねぇ総悟ォォッッ!」
彼女が抜刀し、沖田がそれを避けて全速力で逃げる。
「まーた朝からやってらァ、あいつらも飽きねぇな。」
「そう言うなトシ。総悟は那智とあぁしてコミニュケーションをとってんだ。ほら、なんだかんだ言って仲良しだろ?」
彼らの姿を暖かい目で遠くから見守る近藤と土方。
土方は彼らの争う姿を見て、どうにも近藤が言うコミニュケーションの度が過ぎているのではないか、と額から汗を流す。
朝から屯所の敷地内でバズーカーやら刀がぶつかり合う音が鳴り響く。
一番隊はほかの隊の中でも特殊で、どの隊員達よりも戦闘能力が高く、どの隊員達からもその力への尊敬の眼差しは厚い。
そんな一番隊を束ねるはずの沖田と那智が朝から交戦とは、手本になるどころか本末転倒。
「どう見ても仲良くじゃれ合ってるようには見えねぇよ!!…ったく、何やってんだあいつらはァァッッ!!」
痺れを切らした土方が、咥えていたタバコを指でへし折り、エスカレートしていく喧嘩の仲裁へ入るため近藤の元を去る。
一人残された近藤は三人のその姿を見て、再び穏やかな笑みを浮かべた。
「全く、アイツらはいつもあんな感じだな。それも、那智が均衡を保ってくれているおかげかなぁ。」
近藤は知っていた。
自分の年齢も知らず、たださ迷っていた彼女が来てから、真選組の尖りもの達が穏やかになっていくのを。
この戦場にたつもの達が集う一つのむさ苦しい集団の中で彼らの心を癒すのもまた、隠れた紅一点が努めていた成果だということを。
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