Happy birthday
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大きな岩が飛んできた方向にゆっくり目を向けると、そこには新たに夜兎族である証の傘を持つ男が立って険悪な顔で神威を見ていた。
「や、夜兎…」
「……痛いなぁ。何すんだよハゲッ!」
そんな大きな岩をひょいと除けて、ぶつけた本人に怒鳴りつける。神威の額からは微かに血が流れている程度で、刹那は夜兎族というもの達の頑丈さを改めて認識した。
だがそんな相手にすることも無く、男はただ刹那の方へと歩み寄り始めた。
徐々に男の顔が露わになる。
額まである帽子に、鋭い目付き。鼻下の髭をのばし、歳は自分よりも随分上だ。
さしずめ彼らの父親くらいの年代だろうか。
そう思ったところでハッと気づく。
「も、もしかして神楽と神威の……!」
「おいハゲ親父ッ!何すんだって言ってんだよ!」
「ハゲじゃありませんッッ!」
ようやく神威に振り向いて怒鳴り返す。
くるりと刹那から方向を変え、神威を睨みつけ、至近距離まで顔を近づけた。
「オレはそんな風に女を口説くように育てた覚えはないッ!」
「育てられた覚えがそもそもねぇよッ!だいたい女の口説き方なんて人に教えてもらったことねぇし!」
「なんだその口の利き方はッ!お父さん、もっかいどつくぞテメェ!」
「あ、あの、ちょっと……」
突然口喧嘩が勃発する中、刹那がオドオドしながら話に入り込む。
ようやくその存在に気づいた彼らは、二人揃って彼女の方にくるりと顔を向けた。
「あぁ、いやすまない。うちのバカ息子がとんだ失礼を……」
「あぁいえ!気にしてないので、気にしないでください!」
「……いや、気にしてよ、ちょっとは。」
「そ、それより。今お父さんって……神楽と神威の?」
「あぁ、俺の名は星海坊主。って、神楽ちゃんのことも知ってるのか?!」
「アイツのとこの万事屋の一人だってさ。」
「……そうか!君がもしかして、あの子の言っていた〝刹那ちゃん〟かな?」
星海坊主の顔がパッと晴れて刹那の両肩に手をのせる。
何やら自分と会ったことを喜んでいるらしいが、それよりも神楽が自分の事を父に話していたことにも驚きだった。
「いやぁ、予定より早くお目にかかれるとは。いっつも神楽ちゃんのくれる手紙で、君の話はよく聞いてるよ。お姉ちゃんができたって。……ん?お姉ちゃん?ま、まさか神威お前……」
「そう。だから本物のお姉さんにならないかって、今提案してたんだけど。」
神威が微笑んで星海坊主にそう言うと、彼ははたまた衝撃を受けて硬直しては、言葉を詰まらせた。
「なっ、なっ、なっ…………!」
「あぁいやだから、それは……」
「……みぃつけた。」
「ーーッ!」
刹那はドキリと肩を震わせ、身を硬直させた。
殺意混じりの彼の低い声に、思わず顔が引つる。
気づけば彼に背後を取られ、腕を掴まれる。
その姿に神威と星海坊主は驚き、戦闘態勢を構えた。
「そ、そう……」
「困った人だぁ。ちょっと目を離したスキにいろんな奴らに好意持たれてプロポーズされてちゃぁ、先約してた俺が適わねぇ。」
沖田の表情が見えないうえに、恐ろしさが増す。
「よくここまで追いついてきたね、お巡りさん。っていうか、先約って何?もしかして、もうお姉さんに子を産んでもらう約束してたわけ?」
「し、してなーーッ」
否定する前に、沖田に手で口を塞がれる。
「子供どころか、将来死ぬまでずぅっと面倒みてやるつもりでさァ。」
「お、おいその子から手を離せッッ!」
「だいたいなんでアイツの家族のあんたらが地球にいるんでぃ。」
「あんたには関係ないだろ。」
神威の鋭い殺意が沖田に向く。
沖田も彼に同じように殺気を送り、空気は一瞬にして最悪の状況になった。
さすがに刹那もマズいと判断し、自由な左手で沖田の手を掴み、口から離した。
「………おい。」
俯いた目を彼らに向け、闘志を放ってゆっくり立ち上がる。
「一歩も動くなよ。私がこの間にたっているあいだ、どちらにも攻撃はさせねぇ。海坊主さん、あんたもだ。」
「刹那ッ…」
「どういう因縁かは知らないけど、どうしても闘いたいっつーんなら私の目の届かないところでやるんだな。私はここにいる誰の血も見たかない。さっさとその殺意を、全員しまえ。」
「……」
なんという気迫だろう、と男たちは引きつった笑みを浮かべた。とてもそこらの気の強い女とは比べ物にならない、と彼らは思った。
男三人は彼女の強い眼差しに、各々武器から手を離し、小さくため息をこぼした。
「わかってくれて、ありが……」
刹那がほっと胸を撫で下ろそうとしたその時。
今度は屋根の上からいきなり人が降ってきては、小屋に穴が開く。今度はなんだ!と誰もが目を見張ると、そこには長髪の男が立っていたのだった。
「えっ……!」
「ようやく見つけたぞ、刹那ッ!」
「こっ、こた……」
「桂ァァッッ!!」
刹那がこの場に現れた彼の名を呼ぶ前に、沖田が先に切り掛る。
彼女が慌てて止めようと沖田の傍によろうとするが、今度は神威がそれを止めた。
「か、神威ッ!」
「だめだよお姉さん。俺の話はまだ終わってないし。」
「こらバカ息子ッ!テメェ刹那ちゃんに何強引に言いよろうとしてるんだ!」
「ここは場所をかえよう。なんかうるさい外野が多すぎるし。」
「神威の話よりも、あれを先に止めないと…!って!!か、神威!こら、どこ触って……!」
再び米俵のように担がれ、身動きがとれなくなる。
そんな刹那の声により、交戦し始めていた沖田と桂は動きを止め、刹那の名を呼んだ。
「刹那ッッ!」
「馬鹿共はそこで殺し合いしてなよ。俺は今そこに参加するより大事な用事があるから。」
「テメェッ!この期に及んでどこに刹那連れ込んで孕ませようって気だッ!」
「はっ、孕ませる?!おい貴様、刹那に危害を加えるようならば俺が許さぬぞッ!」
「ちょ、ちょっと待って!話がなんかややこしいんですけど!っていうかなんかもう、めんどくさいんですけどッッ!!」
刹那は本音をつい零し、嘆いた。
だが神威はそれを無視したまま、その場を去ろうと足を動かした。
当然、桂も沖田も星海坊主も追いかける。
それが見える刹那の頭は混乱し、どうしたらいいのかすら分からなくなっていた。
「……お願い、もう下ろして!」
「なんで?」
「なんで?じゃなくて!なんかややこしいし、小太郎が私の事探してたみたいだし、何か用事が……」
「やだよ。用事は俺の方が先だったし。」
「……」
内容は違えど、一度見つけた獲物は飽きるまで追い続けるあたりからすると、神楽とよく似ている。
刹那は一気に脱力感を覚え、しばらく黙り込んでいた。
すっかり日は暮れ、夜空が舞う。雨もいつの間にか止んでいた。
身軽に塀や家を飛び越えていく神威に抱えられるまま、刹那は空を見上げた。
ーーどうしてこうなったんだっけ。
ふと、そんな原点に戻るとなぜだか思い通りにいかない一日に、情けなくなってきた。
神威に抱き抱えられたまま、ぼんやりと一日を振り返っていると、その視界にフッと空から降りてきたように、銀髪の髪の男が入り込んできたのだ。
それはそれは、刹那がずっと会いたいと願っていた。
どこに行ってしまったのか、分からなくなってしまっていた彼で。
思わず目を全開に見開いては、あっと口をあけた。
「ーーッ、ぎ……」
「おいこらバカ兄貴!何刹那担いで飛び回ってんだッ!その手を離せコノヤローッ!」
その愛しい名を呼ぶ前に、彼の足は神威に飛び蹴りをかました。
神威は見事それをくらい、彼女の身はふわりと宙を浮いたかと思えば、そっと大きな手で抱き抱えられたのであった。
「や、夜兎…」
「……痛いなぁ。何すんだよハゲッ!」
そんな大きな岩をひょいと除けて、ぶつけた本人に怒鳴りつける。神威の額からは微かに血が流れている程度で、刹那は夜兎族というもの達の頑丈さを改めて認識した。
だがそんな相手にすることも無く、男はただ刹那の方へと歩み寄り始めた。
徐々に男の顔が露わになる。
額まである帽子に、鋭い目付き。鼻下の髭をのばし、歳は自分よりも随分上だ。
さしずめ彼らの父親くらいの年代だろうか。
そう思ったところでハッと気づく。
「も、もしかして神楽と神威の……!」
「おいハゲ親父ッ!何すんだって言ってんだよ!」
「ハゲじゃありませんッッ!」
ようやく神威に振り向いて怒鳴り返す。
くるりと刹那から方向を変え、神威を睨みつけ、至近距離まで顔を近づけた。
「オレはそんな風に女を口説くように育てた覚えはないッ!」
「育てられた覚えがそもそもねぇよッ!だいたい女の口説き方なんて人に教えてもらったことねぇし!」
「なんだその口の利き方はッ!お父さん、もっかいどつくぞテメェ!」
「あ、あの、ちょっと……」
突然口喧嘩が勃発する中、刹那がオドオドしながら話に入り込む。
ようやくその存在に気づいた彼らは、二人揃って彼女の方にくるりと顔を向けた。
「あぁ、いやすまない。うちのバカ息子がとんだ失礼を……」
「あぁいえ!気にしてないので、気にしないでください!」
「……いや、気にしてよ、ちょっとは。」
「そ、それより。今お父さんって……神楽と神威の?」
「あぁ、俺の名は星海坊主。って、神楽ちゃんのことも知ってるのか?!」
「アイツのとこの万事屋の一人だってさ。」
「……そうか!君がもしかして、あの子の言っていた〝刹那ちゃん〟かな?」
星海坊主の顔がパッと晴れて刹那の両肩に手をのせる。
何やら自分と会ったことを喜んでいるらしいが、それよりも神楽が自分の事を父に話していたことにも驚きだった。
「いやぁ、予定より早くお目にかかれるとは。いっつも神楽ちゃんのくれる手紙で、君の話はよく聞いてるよ。お姉ちゃんができたって。……ん?お姉ちゃん?ま、まさか神威お前……」
「そう。だから本物のお姉さんにならないかって、今提案してたんだけど。」
神威が微笑んで星海坊主にそう言うと、彼ははたまた衝撃を受けて硬直しては、言葉を詰まらせた。
「なっ、なっ、なっ…………!」
「あぁいやだから、それは……」
「……みぃつけた。」
「ーーッ!」
刹那はドキリと肩を震わせ、身を硬直させた。
殺意混じりの彼の低い声に、思わず顔が引つる。
気づけば彼に背後を取られ、腕を掴まれる。
その姿に神威と星海坊主は驚き、戦闘態勢を構えた。
「そ、そう……」
「困った人だぁ。ちょっと目を離したスキにいろんな奴らに好意持たれてプロポーズされてちゃぁ、先約してた俺が適わねぇ。」
沖田の表情が見えないうえに、恐ろしさが増す。
「よくここまで追いついてきたね、お巡りさん。っていうか、先約って何?もしかして、もうお姉さんに子を産んでもらう約束してたわけ?」
「し、してなーーッ」
否定する前に、沖田に手で口を塞がれる。
「子供どころか、将来死ぬまでずぅっと面倒みてやるつもりでさァ。」
「お、おいその子から手を離せッッ!」
「だいたいなんでアイツの家族のあんたらが地球にいるんでぃ。」
「あんたには関係ないだろ。」
神威の鋭い殺意が沖田に向く。
沖田も彼に同じように殺気を送り、空気は一瞬にして最悪の状況になった。
さすがに刹那もマズいと判断し、自由な左手で沖田の手を掴み、口から離した。
「………おい。」
俯いた目を彼らに向け、闘志を放ってゆっくり立ち上がる。
「一歩も動くなよ。私がこの間にたっているあいだ、どちらにも攻撃はさせねぇ。海坊主さん、あんたもだ。」
「刹那ッ…」
「どういう因縁かは知らないけど、どうしても闘いたいっつーんなら私の目の届かないところでやるんだな。私はここにいる誰の血も見たかない。さっさとその殺意を、全員しまえ。」
「……」
なんという気迫だろう、と男たちは引きつった笑みを浮かべた。とてもそこらの気の強い女とは比べ物にならない、と彼らは思った。
男三人は彼女の強い眼差しに、各々武器から手を離し、小さくため息をこぼした。
「わかってくれて、ありが……」
刹那がほっと胸を撫で下ろそうとしたその時。
今度は屋根の上からいきなり人が降ってきては、小屋に穴が開く。今度はなんだ!と誰もが目を見張ると、そこには長髪の男が立っていたのだった。
「えっ……!」
「ようやく見つけたぞ、刹那ッ!」
「こっ、こた……」
「桂ァァッッ!!」
刹那がこの場に現れた彼の名を呼ぶ前に、沖田が先に切り掛る。
彼女が慌てて止めようと沖田の傍によろうとするが、今度は神威がそれを止めた。
「か、神威ッ!」
「だめだよお姉さん。俺の話はまだ終わってないし。」
「こらバカ息子ッ!テメェ刹那ちゃんに何強引に言いよろうとしてるんだ!」
「ここは場所をかえよう。なんかうるさい外野が多すぎるし。」
「神威の話よりも、あれを先に止めないと…!って!!か、神威!こら、どこ触って……!」
再び米俵のように担がれ、身動きがとれなくなる。
そんな刹那の声により、交戦し始めていた沖田と桂は動きを止め、刹那の名を呼んだ。
「刹那ッッ!」
「馬鹿共はそこで殺し合いしてなよ。俺は今そこに参加するより大事な用事があるから。」
「テメェッ!この期に及んでどこに刹那連れ込んで孕ませようって気だッ!」
「はっ、孕ませる?!おい貴様、刹那に危害を加えるようならば俺が許さぬぞッ!」
「ちょ、ちょっと待って!話がなんかややこしいんですけど!っていうかなんかもう、めんどくさいんですけどッッ!!」
刹那は本音をつい零し、嘆いた。
だが神威はそれを無視したまま、その場を去ろうと足を動かした。
当然、桂も沖田も星海坊主も追いかける。
それが見える刹那の頭は混乱し、どうしたらいいのかすら分からなくなっていた。
「……お願い、もう下ろして!」
「なんで?」
「なんで?じゃなくて!なんかややこしいし、小太郎が私の事探してたみたいだし、何か用事が……」
「やだよ。用事は俺の方が先だったし。」
「……」
内容は違えど、一度見つけた獲物は飽きるまで追い続けるあたりからすると、神楽とよく似ている。
刹那は一気に脱力感を覚え、しばらく黙り込んでいた。
すっかり日は暮れ、夜空が舞う。雨もいつの間にか止んでいた。
身軽に塀や家を飛び越えていく神威に抱えられるまま、刹那は空を見上げた。
ーーどうしてこうなったんだっけ。
ふと、そんな原点に戻るとなぜだか思い通りにいかない一日に、情けなくなってきた。
神威に抱き抱えられたまま、ぼんやりと一日を振り返っていると、その視界にフッと空から降りてきたように、銀髪の髪の男が入り込んできたのだ。
それはそれは、刹那がずっと会いたいと願っていた。
どこに行ってしまったのか、分からなくなってしまっていた彼で。
思わず目を全開に見開いては、あっと口をあけた。
「ーーッ、ぎ……」
「おいこらバカ兄貴!何刹那担いで飛び回ってんだッ!その手を離せコノヤローッ!」
その愛しい名を呼ぶ前に、彼の足は神威に飛び蹴りをかました。
神威は見事それをくらい、彼女の身はふわりと宙を浮いたかと思えば、そっと大きな手で抱き抱えられたのであった。