Happy birthday
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「え?旦那たちがもう一日帰ってきてない?」
万事屋から半ば強引に刹那を外へ連れ出し、喫茶店で彼女に落ち込んでる理由を聞き出せば、彼女は渋々口を割ってそう答えた。
「…何か仕事ででかけたとかじゃなくてですかぃ?」
「もしそうだとしたら、私が帰ってくるのを待っててくれると思うし…。何も言わずに三人ともがいなくなっちゃった事なんて、今までなかったよ…。」
そう言ってはまた、下を向く刹那を見て沖田は肩で息を吐いた。
こんなに落ち込んでいる彼女を見るのは初めてだった。
それも理由があの万事屋メンバーがいなくなったというのであれば、尚更あまりいい気分ではない。
「事情はよく分かんねぇが、刹那をほっぽいてどっか行っちまう奴らじゃねぇ事は確かだ。しばらくうちに来なせぇ。少しは気が紛れるでしょうし。」
「あぁいや、いいの。いつ帰ってくるか分かんないし…。」
「でもいつ帰ってくるか分かんねぇ旦那たちをあの家で待ってるのは結構酷な事じゃねぇか?置手紙の一つでも置いて、刹那も好き勝手やったらいい。」
腕を組んでふんぞり返ってそう話しても、刹那がそれにのってくる気配はなかった。
それどころか、窓の向こうで降りしきる雨を見つめ、何か別の事を考えているようだ。
沖田は頬杖をついて目の前にあるパフェを食べながら、彼女のそんな横顔をじっと見つめた。
ーーやっぱりこれは俺の役回りだぜぃ。あの山崎には手が余らァ。
心の内で、クククと笑う。
実は昨日の夕方、たまたま一人でいた真選組の山崎と万事屋メンバーが何やら密かに話をしているのを見かけた。
理由はよくわからないが、刹那を一人残して神楽たちが何か裏で企てているらしい。
最も1番彼女に近い存在である銀時は、それにあまり乗り気ではないようで、鼻をほじりながら二人のやる事を黙って見ていた。
そこで山崎がその作戦に乗り気になって彼らと解散したあと、身を隠していた沖田がすかさず山崎に事情を強引に聞き出し、その役を代われと無理やり選手交代してきたわけだ。
半泣きにされた山崎はこう言った。
「俺も細かい事情はよく分からんですが、なんか旦那達が刹那さんに内緒で何かをやろうとしていて、その少しの間留守にするから刹那さんを頼むって言われました。下手に探されても困るし、準備ができるまで秘密にしておきたいからって……。」
まぁようは、刹那にサプライズで何かを企んでいる訳だが、沖田にとってはここぞとないチャンス。
これを機に銀時から少しでも気持ちを自分に傾けてやると言わんばかりに、行動をとったわけではあるが。
思った以上に彼らがいないことにダメージを受けている刹那の姿を見ていると、そんな気も少し失せたた。
そして雨をじっと見つめる彼女を見て、沖田は悟った。
「……なぁ刹那。もしかして、雨の日が苦手かぃ?」
「えっ…」
刹那は沖田の思いもよらない直球な質問に、ドキリと肩を揺らした。
「そ、そんなことないよ。」
「嘘だ。ぜってぇ今のは嘘だ。」
「……」
「…俺に話せねぇってのかい。」
「あぁいや、そういうわけじゃ…」
彼女は言葉を詰まらせ、目を逸らせた後再び口を開けた。
「雨の日、だったの。」
「……」
「私が両親に殺されかけて、私を両親が殺した日が。」
「ーーッ、」
思っていたよりも、過酷な原因だったことに今度は沖田が言葉を詰まらせた。
確か以前、自分の恋人役を買ってでてくれた頃に話していたのを思い出した。
自分は孤独だった、と。自分が産まれたことを迎え入れるどころか、殺されかけて家を飛び出したというような事を言っていた。
それがまさか、殺されかけた両親を自分で殺めたという結末を誰が予想していただろうか。
動揺した表情をあらわにした沖田の顔を見て、刹那は情けなく力を抜いて笑った。
「この梅雨の時期は、幼い頃のそんな記憶を思い出させるんだ。ずっと孤独だった、ずっと独りだったあの頃を。」
「……刹那」
「変だよね。一日家に誰もいなかっただけで…。おかえり、なんて一言聞かなかっただけで、こんな気持ちになるなんて。私もすっかり、あそこの家にすがりついてたんだなぁ。」
彼女の目から涙は確かに出ていないのに、泣いている気がした。そうしてまた、窓の外で降る雨を見つめる。
沖田はテーブルの下でぎゅっと拳を作り、この距離感をもどかしいとさえ感じた。
今すぐその弱々しく微笑む刹那を力強く、めいっぱい抱きしめてやりたい。
でもそれは自分がやったところで、きっと彼女の心が満たされることは無いだろう。
今はただ温もりを欲しているだけではない。あの万事屋の誰か一人でも、刹那に家族として接しなければいけない。
かと言って何もしない、出来ないわけじゃない。
自分には自分のポジションがある。
沖田は腹をくくり、大きくため息をついて頬杖をついた。
「…あーあ。刹那も人が悪ぃや。」
「え?」
「…俺と家族にでもなりゃ、嫌でも毎日むさっ苦しい男どもがあんたを出迎えてくれるんだけどな。」
「ははっ、それって屯所のみんなのこと?まぁ確かに、今となってはあそこももうひとつの私の家みたいなもんだけどね。みんな優しくて、暖かい人達ばかりだもの。」
「それはアイツらが刹那に下心持ってるからでぃ。」
「そうかなぁ。そんな風には見えないけど。総悟は別として。」
「おいおい、ここに来て俺だけ除け者かい。俺ァ意外と紳士ですぜぃ。」
「…いや、顔が笑ってる。腹黒いオーラ纏ってるから。」
苦笑いを浮かべてそう返すも、心の中では沖田がいつもの様に接してくれている事に、少しばかり安堵していた。
だがその時。刹那の視界には、降りしきる雨の中、特徴のある和傘をさした姿が窓の向こうにチラついたのを捉えた。
「あれはッーー!」
「お、おい刹那!」
「ごめん総悟!また埋め合わせするから!!」
刹那は沖田を店に置き去りにしたまま、勢いよく外に出て全速力で駆け出した。
万事屋から半ば強引に刹那を外へ連れ出し、喫茶店で彼女に落ち込んでる理由を聞き出せば、彼女は渋々口を割ってそう答えた。
「…何か仕事ででかけたとかじゃなくてですかぃ?」
「もしそうだとしたら、私が帰ってくるのを待っててくれると思うし…。何も言わずに三人ともがいなくなっちゃった事なんて、今までなかったよ…。」
そう言ってはまた、下を向く刹那を見て沖田は肩で息を吐いた。
こんなに落ち込んでいる彼女を見るのは初めてだった。
それも理由があの万事屋メンバーがいなくなったというのであれば、尚更あまりいい気分ではない。
「事情はよく分かんねぇが、刹那をほっぽいてどっか行っちまう奴らじゃねぇ事は確かだ。しばらくうちに来なせぇ。少しは気が紛れるでしょうし。」
「あぁいや、いいの。いつ帰ってくるか分かんないし…。」
「でもいつ帰ってくるか分かんねぇ旦那たちをあの家で待ってるのは結構酷な事じゃねぇか?置手紙の一つでも置いて、刹那も好き勝手やったらいい。」
腕を組んでふんぞり返ってそう話しても、刹那がそれにのってくる気配はなかった。
それどころか、窓の向こうで降りしきる雨を見つめ、何か別の事を考えているようだ。
沖田は頬杖をついて目の前にあるパフェを食べながら、彼女のそんな横顔をじっと見つめた。
ーーやっぱりこれは俺の役回りだぜぃ。あの山崎には手が余らァ。
心の内で、クククと笑う。
実は昨日の夕方、たまたま一人でいた真選組の山崎と万事屋メンバーが何やら密かに話をしているのを見かけた。
理由はよくわからないが、刹那を一人残して神楽たちが何か裏で企てているらしい。
最も1番彼女に近い存在である銀時は、それにあまり乗り気ではないようで、鼻をほじりながら二人のやる事を黙って見ていた。
そこで山崎がその作戦に乗り気になって彼らと解散したあと、身を隠していた沖田がすかさず山崎に事情を強引に聞き出し、その役を代われと無理やり選手交代してきたわけだ。
半泣きにされた山崎はこう言った。
「俺も細かい事情はよく分からんですが、なんか旦那達が刹那さんに内緒で何かをやろうとしていて、その少しの間留守にするから刹那さんを頼むって言われました。下手に探されても困るし、準備ができるまで秘密にしておきたいからって……。」
まぁようは、刹那にサプライズで何かを企んでいる訳だが、沖田にとってはここぞとないチャンス。
これを機に銀時から少しでも気持ちを自分に傾けてやると言わんばかりに、行動をとったわけではあるが。
思った以上に彼らがいないことにダメージを受けている刹那の姿を見ていると、そんな気も少し失せたた。
そして雨をじっと見つめる彼女を見て、沖田は悟った。
「……なぁ刹那。もしかして、雨の日が苦手かぃ?」
「えっ…」
刹那は沖田の思いもよらない直球な質問に、ドキリと肩を揺らした。
「そ、そんなことないよ。」
「嘘だ。ぜってぇ今のは嘘だ。」
「……」
「…俺に話せねぇってのかい。」
「あぁいや、そういうわけじゃ…」
彼女は言葉を詰まらせ、目を逸らせた後再び口を開けた。
「雨の日、だったの。」
「……」
「私が両親に殺されかけて、私を両親が殺した日が。」
「ーーッ、」
思っていたよりも、過酷な原因だったことに今度は沖田が言葉を詰まらせた。
確か以前、自分の恋人役を買ってでてくれた頃に話していたのを思い出した。
自分は孤独だった、と。自分が産まれたことを迎え入れるどころか、殺されかけて家を飛び出したというような事を言っていた。
それがまさか、殺されかけた両親を自分で殺めたという結末を誰が予想していただろうか。
動揺した表情をあらわにした沖田の顔を見て、刹那は情けなく力を抜いて笑った。
「この梅雨の時期は、幼い頃のそんな記憶を思い出させるんだ。ずっと孤独だった、ずっと独りだったあの頃を。」
「……刹那」
「変だよね。一日家に誰もいなかっただけで…。おかえり、なんて一言聞かなかっただけで、こんな気持ちになるなんて。私もすっかり、あそこの家にすがりついてたんだなぁ。」
彼女の目から涙は確かに出ていないのに、泣いている気がした。そうしてまた、窓の外で降る雨を見つめる。
沖田はテーブルの下でぎゅっと拳を作り、この距離感をもどかしいとさえ感じた。
今すぐその弱々しく微笑む刹那を力強く、めいっぱい抱きしめてやりたい。
でもそれは自分がやったところで、きっと彼女の心が満たされることは無いだろう。
今はただ温もりを欲しているだけではない。あの万事屋の誰か一人でも、刹那に家族として接しなければいけない。
かと言って何もしない、出来ないわけじゃない。
自分には自分のポジションがある。
沖田は腹をくくり、大きくため息をついて頬杖をついた。
「…あーあ。刹那も人が悪ぃや。」
「え?」
「…俺と家族にでもなりゃ、嫌でも毎日むさっ苦しい男どもがあんたを出迎えてくれるんだけどな。」
「ははっ、それって屯所のみんなのこと?まぁ確かに、今となってはあそこももうひとつの私の家みたいなもんだけどね。みんな優しくて、暖かい人達ばかりだもの。」
「それはアイツらが刹那に下心持ってるからでぃ。」
「そうかなぁ。そんな風には見えないけど。総悟は別として。」
「おいおい、ここに来て俺だけ除け者かい。俺ァ意外と紳士ですぜぃ。」
「…いや、顔が笑ってる。腹黒いオーラ纏ってるから。」
苦笑いを浮かべてそう返すも、心の中では沖田がいつもの様に接してくれている事に、少しばかり安堵していた。
だがその時。刹那の視界には、降りしきる雨の中、特徴のある和傘をさした姿が窓の向こうにチラついたのを捉えた。
「あれはッーー!」
「お、おい刹那!」
「ごめん総悟!また埋め合わせするから!!」
刹那は沖田を店に置き去りにしたまま、勢いよく外に出て全速力で駆け出した。