それは本当に唐突の事でーーー。
刹那の心の中は、とてつもなく大きな空洞ができたような気分に陥っていた。


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いつものように買い出しに出かけて万事屋に帰ってくると、いつもそこに寝そべってだらけている銀時の姿がない。
その向かいでせんべいを咥えながらテレビを見ている神楽の姿も、その二人に突っ込みをいれている新八の姿もない。

おかしいと思ってはいた。
いつもなら玄関の扉を開ける前から自分の帰りに気づき、出迎えてくれる定春の姿がなかった事も。
少しは静かにしてほしいと思うほどいつもの騒がしい声も聞こえない事も。

刹那は目の前の現実を受け入れるのに、しばらくぼんやりと室内を眺めていた。
耳の中に入ってくる音は、外で降りしきる強い雨の音だけ。
いつも聞ける彼らの声はここにはない。

急いで思い当たる場所をあちこち探したが、とうとう一夜が明けても彼らの姿が見られることはなかった。



ソファでうたた寝をしていた刹那は、ふとチャイムの音を耳にして目を覚ました。

もしかして全員で出かけて帰ってきたのかと思い、慌てて玄関まで走り、扉を開ける。

だがそこには、期待を抱いていた彼らの姿はなかった。

「あれ、刹那一人ですかい？」

外は梅雨の強い雨が降り、ザーッという音が入り込んでくる。
刹那は目の前にいる沖田を見てはいるものの、その姿を捉えてはいなかった。

「…刹那？」

もう一度、彼に優しく名を呼ばれる。
ハッと我に返り、ようやく彼が目の前にいる事に気が付いた刹那は、慌てて笑顔で彼を迎えた。

「ど、どうしたの総悟！珍しいね、ここにくるなんて。」

頻繁に彼女に会っている沖田からすれば、作り笑顔なのは見れば分かる。
彼女に何かあったのかと思い、沖田はすっと玄関の中へ入り彼女の傍へ歩み寄った。

「何があったんでぃ、刹那。話してみろよ。そんな作り笑顔見せたって俺ァ騙されねぇ。」

「…やだなぁ、総悟。そういう何でも心を見透かすの、やめてよ。」

そう言った彼女は、今にも泣きだしそうなほど弱々しい声で情けない笑みを浮かべたのであった。