四.戦姫編
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銀時が出ていった後、ようやく刹那は心を落ち着かせた。
幸い奴が訪れた後に客に接待することがなかったのが助かった。
大丈夫。私はまだ、闘える。
刹那はそう心の中で何度も呟いては、窓から見える満月を見上げた。
すると、窓から風が入り込み、ロウソクの灯りが一瞬にして消える。
灯りは月の光のみ。
刹那は慌ててロウソクに火をつけようとした。
だがそれを遮るように、一人の男が彼女の前に立ち塞がったのだ。
「ーーッ!」
油断した。
気配を絶ち、いつの間にか部屋に入り込んだその一人の影は、口元に弧を描いていた。
まさか闇の情報屋かと思い、刹那は月詠から授かった忍刀を着物から抜こうと手をかける。
だがそれは一瞬にしてその男の一本の手により止められた。
「…いい反応する女だな。あんた、ただの遊女じゃねぇな」
「……!」
その声には聞き覚えがあった。
刹那は恐る恐る顔を上げ、月の光でやつの顔に目を向けた。
「どうやらあんたは黒だな。安心しな。俺はあんたを殺しに来たわけでも酒を飲みに来た訳でもない。ちょっと聞きてぇことがあるだけだ。」
「……」
自分の手首を掴むもう反対の手に煙管を持ち、ニヤリと笑うその男は左目を閉じ、鋭い視線をこちらに向けていた。
刹那は思わず言葉を失う。
どうして彼がこんな所にいる。
どうしてこのタイミングで、私の前に現れたのだろう、と。
「おい女、聞いてるのか」
「どう、して……」
「あ?」
「どうして、今なんだ。どうして……」
雲に隠れていた月が再び顔を出した時、奴の目に刹那の顔が露になった。
「ーーッお前は……!」
男も同じように刹那の姿を見て驚く。
互いに見つめ合い、男が彼女に手を伸ばそうとしたその時。
「刹那ー!そろそろ店閉めるよー。」
別の遊女からの声と近づいてくる足音を耳にし、はっと我に返った。
そして気づけば目の前の男により強く抱きしめられ、共に物陰に身を隠されていた。
入口の襖がガラリと開く。
だがそこに、刹那の姿はない。
遊女は首をかしげながらも、すぐさまその場を去っていく。
ようやく足音が消えていき、男の吐息が耳にかかるほどの至近距離で、再び彼の声を聞いた。
「おいおい、なんの冗談だよ。最近闇の情報屋という奴がこの辺りを出入りしているっていう噂を嗅ぎつけて居所を聞き出そうと思えば、まさか欲しがっていた情報が、今俺の腕の中にいらァ。しかもそいつは女として俺の前にいるじゃねぇか。」
「ーーッ!離して!」
慌ててその男の腕から抜け出そうと刹那は必死に動くが、さらに力を強められてしまい、ビクともしない。
「離せるわけねぇだろ。俺がわかんねぇのか、刹那。」
彼がそう言った時、刹那の心の中は錯乱していた。
ーー呼ぶな、その名前をその優しい声で呼ばないでくれ。
ぎゅっと目を瞑り、何度も自分の中で言い聞かせる。
今はこの手を取っては行けない。銀時まで突き放してしまったのに、彼の手を取ることはできない。
「…人違いでありんす。刹那という名はただの源氏名。あなたが知っている女ではありんせん。」
頼む。どうかこのまま引き下がってくれ。今自分の正体がこの男にバレるのだけは、どうしても避けたい。
だが必死に別人を装って返すも、刹那の想いが叶うことは無かった。
「……へぇ、そうかい。でも偶然にしちゃァ、出来すぎてるな。例えばこの、肩の古傷とか、な。」
灯りを失って視界が悪い中、男は刹那の着物の袖を引き、肩を出させてはその傷跡を愛でるように口付けを落とす。
刹那はどうにも出来なくなり、ぎゅっと目を瞑って堪えた。
今彼の名を呼ぶわけにはいかない。
例えこの男が、分かっていたとしても。私はそれを認めるわけにはいかない。
「やめなんしッ!」
ようやくそのたくましい腕を振り払い、距離を取って彼をキッと睨みつけるが、それでも彼は未だに笑みを浮かべていた。
「…随分女らしくなったじゃねぇか。お前がどうしてここにいる。」
「…人違いだと」
「俺が刹那を見間違えるワケはねぇよ。お前、こんなとこで何して……まさか!」
男は彼女の思い詰めた様子を見て悟る。
こんな所に偶然彼女がいるはずはない。
もしここで会ったとしたならば、それは自分と同じ目的でここに立っているはずだ。
もう一度彼女にそれを確かめようとしたその時。
突如背後から気配を感じ、気づいた時にはその部屋は木っ端微塵に吹き飛んだのだった。