四.戦姫編
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夜王・鳳仙が吉原から消えた今、女たちに自由は掴めたものの、その自由さゆえに治安は悪くなる一方でもあった。
そんな中、月詠を中心に百華が取り締まっているのだが、自分たちだけではどうにも手に負えなくなり、銀時達を呼んだ次第だった…。
日輪は膝の上にある手のひらをぎゅっと握ると、銀時たちにようやくことの事情を説明し始めた。
「実は、またここ最近嫌な噂が広がっちまっていてねぇ…」
「嫌な噂?」
「わっちら吉原の人間の中に、〝闇の情報屋〟というのが忍び込んでいるという噂じゃ。」
「闇の情報屋?」
銀時たち三人は首を傾げた。
月詠と日輪は彼らにわかりやすく説明を続けた。
「世界の均衡を保っている極秘情報までもを掴む、金さえ払えば何でも教えるという情報屋と言われているわ。その者から情報を掴むために、今攘夷志士や幕府の連中までもが、一般客を装ってこの吉原を出入りしている…」
「どこの馬の骨かも分からん連中がこの島に入ってくるのは、今にはじまったことじゃねーだろ。」
「ただ客として足を踏み入れるのであれば、な。だが奴らは違う。特にその、闇の情報屋と呼ばれる人物は、ついた女を一人ずつ、鮮やかな手口を使って殺していっておる。」
「そ、それってどういう事ですか?!」
「まぁ簡単に言えば、その情報をここで交換する。だがその場を目撃した、あるいは聞いてしまった女人たちは、全員殺されていっておるんじゃ。」
月詠は深刻な表情で煙を吐いた。
銀時たちはその話に疑問を抱き、二人に尋ねた。
「その闇の情報屋って奴についた女人が殺されてるっつうんなら、その客なんて帳簿見りゃわかんじゃねーの?」
「帳簿に記した名前は全てでたらめじゃ。闇の情報屋と通り名が付けられるくらいじゃからな、一筋縄ではいかんのじゃ。」
「……んで、俺にそいつを退治させろってか?」
「いろいろと手を尽くしたが、わっちらだけでは手に負えんくてな…。」
「銀さん、無茶なお願いだとは分かってるんだけど、頼めないかい?」
「退治って言ったってなぁ…名前も何も分からないんじゃ、俺だって手の打ちようがねーじゃねぇか。」
「なげやりの言葉を吐くのはまだ早いだろ。闇の情報屋の事なら、少しくらい知ってるよ。」
気づけば、奥の部屋から戻ってきた刹那の姿がそこにあった。
全員の視線が彼女に集まると、女として気飾れた彼女の姿を見て誰もが息を飲んだ。
真っ黒の布に点々と広がる白い彼岸花。髪は簪で束ねられ、顔は薄く化粧が施され、いつもよりも赤みを帯びた唇。
どこからどう見ても、花魁の中でも一際目立つ姿だった。
「お前……」
「こりゃ驚いた。想像以上に別嬪さんだったじゃないか」
「き、綺麗アル!!刹那姉ちゃん!」
「一瞬誰か分からなかったくらいですよ刹那さん!!」
「その黒い着物、よく似合っておるな。」
「あー…いや、ものっすごく歩きづらいんですけど、これ。」
苦笑いをうかべる刹那を見て、銀時は喜ぶどころか目をそらす。
出来れば気づいて欲しくなかった、自分以外の誰かがこいつの真の美しさを。
そんなことを考える銀時は、どこか切なそうな表情を浮かべていた。
刹那はそれに気づいていたが、どことなく触れることに躊躇している間に日輪が話を戻した。
「刹那さん、知ってるって何を?」
「まぁそう詳しい訳でもないけど…奴の顔は見れば分かる。」
「ほ、本当かいっ?!」
刹那は着物を汚さぬよう、慎重に歩みながら日輪たちに向かい合うように腰を下ろした。
「昔仕えていた所で、その男が出入りしてたことがあってね。まぁ当然、向こうにも私の顔はバレてるだろうが…。それにしても、厄介な奴に目をつけられましたね、吉原も。」
「どういうことだ、刹那。」
その深刻そうな声の一言に、銀時が反応して彼女をじっと見る。
そんな彼を見た刹那もまた、その強い眼差しから目を逸らした。
「闇の情報屋…姿かたちまでもが闇に包まれたと言われている。性別すら分からぬその人物は、恐ろしい程の情報力を持ち、それを売ることで商いを務めている。だがその情報を下手に利用すれば、その者が闇の情報屋自らの手で裁かれるとも言われてはいるが……」
刹那はそこで口を閉ざした。
話を聞いていた誰もがごくり、と息を飲む。
刹那は店の外へ出て、空を見上げて話を続けた。
「奴に逆らえば死。正体を暴こうとしても死。そして今も奴は、情報を踊らせて人を斬り殺しているんだ。」
「刹那さん、もしかしてその人と深い繋がりが…?」
「いや、深くはないよ。ただ、知っている。奴をそばで見てきたからこそ、見てきた素顔もある。私が知っているのは、闇の情報屋は男で、薄汚い野郎って事だけだ。」
刹那は静かに拳を握った。
かつて天人であるエドという男に嫌という程抱かれたこと。
そして闇の情報屋である男と密会し、奴もまた、自分の体に手をつけた男のひとりだ。
エドは情報を得る代わりに、私の身体をを奴に売っていた。
だからこそ、奴の顔も体つきも、嫌気がさすほどこの体が覚えている。
何かを思い詰めている刹那の様子に気づいた
銀時は、額から静かに汗を流した。
彼女のその顔は、間違いなく奴と何かあった顔だ。
「刹那さん、お願いします。吉原を守るためにご協力して頂けませんか…」
「おい待て日輪!こいつは…」
「…まぁ、手段はどうであれアイツを仕留めれば結果的に吉原を守る事にはなりますかね。その代わり、一つだけ条件があります。」
銀時が止めに入ろうとするも、刹那はそれを遮るように口を開いた。
彼女が闇の情報屋をこの場から追い出すという重大な任務について、何を条件に出してこようと言うのだろうか。
皆が息を飲む中、刹那はフッと静かに笑った。
いつまでも逃げていては行けない。どの道奴は、自分の存在を探してはいずれ何かしらの手を打ってくるに違いないのだ。
なぜなら唯一あの男の素性を知り、その顔も、その体も知り尽くしているからーー。
「私を、吉原の女として使えるようにご指導頂きたい。」
「なっ……!!」
そう言った刹那の瞳は、何かを見据えているような、酷く冷たい瞳をしていた。