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四.戦姫編

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※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
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雪がちらほらと舞う真冬の日。
万事屋一行は馴染みのある吉原へと足を運んでいた。
刹那にとっては初めて訪れる場所で、右を見ても左を見ても橙だの赤だの派手な建物ばかり。街中の女性は全員めかしこんでおり、より一層華やかさを増していた。

なぜここに訪れたかと言うと。
時は昨日に遡る。

「あ、銀ちゃん!!日輪さんから手紙が来てるアル!」

「日輪さんから?!」

「げっ……あの人使い荒い女から手紙が来るってことは、また何か厄介事頼まれるんじゃねぇのか?」

手紙が届いて浮かれる新八と神楽に対し、銀時は面倒くさそうな表情を浮かべた。

夜食後にお茶を淹れた刹那がキッチンから戻ってきては、その名を聞いて首を傾げた。

「日輪、さん?銀時の彼女?」

「いや違ぇから。全く持って違ぇから。どーしたらそうなんだよ。どーしたらそんな段階すっ飛ばして彼女に想像が行き着くんだよ。」

「いやぁ、女性で銀時に手紙を送ってくる人ってそうはいないからさ。」

「あのねぇ刹那ちゃん。俺がモテないかと思ってるかもしれないけど、実際は…」

刹那さん、日輪さんって人は吉原の人なんですよ。」

「って、ちょっと!俺の話無視ですかッ!無視なんですかーーッッ!!」

銀時のモテるアピールを遮るようにして、新八が刹那に今までの経緯を説明し始める。

かつて吉原が夜王・鳳仙という男によって支配されていたこと。
それを銀時を筆頭に倒し、今は自由翻弄の吉原があること。
その時最も関わった人物であるのが日輪と、百華という名の集団を率いる月詠の存在。
それから何度か交流があり、こうして何かあれば文を送ってくるという話だった。

「なるほど。じゃあまた、今回もなにか困り事があって送ってきたのかもしれないね。文には遊びに来て欲しいとしか書いてないんでしょう?」

「あの女はそうやってただ酒とタダ飯で俺たちを釣って厄介な事ばっかり頼んでくるんだよ…」

不貞腐れた銀時が、刹那の淹れたお茶を手に取り、啜ってはそう呟いた。

「へぇ。いいじゃん。まぁ成り行きだったとしても吉原の英雄になった以上、その役からはもう逃げられないだろーよ。」

「…おい刹那。」

じとり、と銀時が彼女を睨む。
自分と同じようにお茶を啜っている彼女は、なに?と首を傾げた。

「テメェは今回留守番だ。吉原には行くな。」

「な、何でですか銀さん!!」

「私はツッキーと日輪姉さんに刹那姉ちゃんを紹介したいネ!何でそんな意地悪言うかッ!」

「ダメっつったらダメだ!刹那にとっては面白くもなんともねぇからな。非番やるから、家で大人しくぐーたらしといてくれや。」

刹那を連れていきたがる新八と神楽に対し、銀時は首を縦には降らなかった。
理由はわからないが、長年の付き合いの刹那からすれば、何か訳があるのだろうと悟る。

「…いいよ。じゃあ私は暇をもてあましてるわ。」

刹那の返事に、銀時はそっと胸を撫で下ろす。
だがその理由すらわからないし納得の行かない神楽と新八は、さらに身を乗り出してこう言った。

「ええっ?!なんで刹那姉ちゃん!一緒に行こうよ!!」

「そうですよ!銀さんの言うことなんて気にしてちゃダメですよ!」

「いやでも社長さんがダメって言うから仕方ないよ。ま、明日は幸い総悟も非番って言ってたし、久しぶりに真選組にでも遊びに行ってくるわ。だから、みんなは気にせず楽しんできてよ。」

刹那の返しに、銀時はぴくりと耳を反応させる。

「…お前、今なんつった?」

「え?だから、総悟が非番って言ってたから、非番同士遊びに行こうかなって。」

「ダメダメダメダメッッ!!何でそうなるのお前はッ!っつーかなに!なんで非番とか知ってんの!お前いつの間にあいつの休み把握するようになったわけ?!」

テーブルに足をかけて詰め寄る銀時に、刹那も思わず身体をそらす。

「あぁいや、実はこの前総悟から半ば強引にケータイ貰っちゃって。それで、連絡のやり取りしてて非番も知ってるって言うか…」

「はぁ?!ケータイ?!お前がなんでそんなもん貰ってんだよッ!ケータイは三十になってからって言ったでしょ!オトーサンは反対ですッ!」

「いや意味わかんないんだけど。だいたいケータイが三十からってなに!」

「ウルセェ!とにかくダメっつったらダメだ!!あんなクソガキと遊んでる暇なんてテメェにはねぇっ!」

「はぁ?!今非番くれるって言ったじゃん!だいたい私が誰と遊ぼうが銀時にとやかく言われる筋合いないんですけどッ!」

「大ありだ大あり!!あんなクソガキと一緒に遊びに出かけるくらいなら、仕事しやがれッ!テメェに非番なんてやらねーよッ!」

「……」

刹那は銀時の心境がますます分からなくなる。
さっきまでは吉原に行って欲しくないがために非番にしろ言い、総悟と会うと言えば非番はやらないと言う。

全く持って理解できない彼に呆れた目を向けていると、今の銀時の言葉を聞いた二人はぱっと明るくした。

「じゃあ、やっぱり刹那姉ちゃんも吉原に一緒に行くアルか?!」

「あ、いや、そういうわけじゃ……」

「そうですよ。刹那さんも一緒に行きましょう。今となっては四人揃って万事屋なんですから。ね、銀さん?」

「あ、あぁ……」

言った言葉は二度と取り消すことは出来ない。
墓穴をほって自ら吉原に同行するように仕向けてしまった銀時は、既に灰と化していた。

そして新八は、銀時が頑なに刹那を吉原に連れていきたがらない理由を予測していた。

普段化粧もろくにしていないありのままの彼女は、街中を歩いているだけで大抵の人が振り返る。
そんな刹那を吉原に連れていけば、日輪の性格からしてバイトをしないかだの、着飾らせろだの何やかんや言うのは目に見えている。
銀時は刹那がより一層綺麗になり、花魁の道に足を踏み入れ、変な虫がつくのではないかと恐れているのだ。

けれども新八は、密かにそれを楽しみにもしていた。
普段から何も着飾らない彼女が、プロの女の手を加えたらどうなるのか、と。
そうして、今まで見ることのなかった密かな銀時の独占欲と、なかなか進展しない二人の関係を見届けるのもまた、楽しみであった。


そして話は冒頭まで遡る。

幾度の店を素通りして、ようやくたどり着いた先に幼い少年が手を振っている姿を目にした。

「晴太!」

神楽と新八が一番に駆けつける。
そんな後ろ姿を微笑ましくも思いながら、刹那もその場へとたどり着いては、驚いて目を見開いた。

「ひさしぶりね、銀さん!…あら、そちらの方は?」

足が不自由とは昨夜新八から聞いてはいたが、車椅子に乗っていようとも、その美しさは絶対的なものだった。

「あぁ、こいつァ昔からの馴染みで、刹那っつーんだ。今はうちで万事屋の一員だ」

「あらぁ!いい男だねぇ。刹那さん、日輪です。よろしくお願いします!」

「わっちは月詠じゃ。」

自分が男に見られるのは無理もない。
なぜだか今朝万事屋を出る前に、しつこく銀時に男物の格好で行けと口酸っぱく言われたからだ。

髪もいつもは下ろしているが、今日は侍時代の時のようにひとつに束ね、腰には水無月を挿している。
どこからどう見ても侍の姿であろう刹那を、女と気づくことは無いだろう。

銀時もそう鷹を括っていた。
だが、彼女が一言挨拶をした瞬間、それは浅はかな計画だったと気づく。

「初めまして。話は新八たちから伺ってます。如月刹那です。お見知りおきを。」

刹那のその声を聞いた日輪と月詠は、首を傾げた。
日輪は車椅子を自らひいては刹那の傍まで行き、そっと頬に触れる。

「あら?あらあら?」

「あ、あの。な、なにか…」

「ちょっと銀さん!あんたこんな絶世美女になんて格好させてるんだいっ!」

バレたーーーーーッッ!!!

銀時は心のうちでそう叫び、額からダラダラと冷や汗を垂らす。

新八と神楽はほら見ろと言わんばかりのにやけた顔をして、日輪にこう言った。

「男装してても、やっぱりバレますよね!だって刹那さん、昔は男として通せても、ここ最近は本当に女にしか見えませんし。」

「そうアル。刹那姉ちゃんの魅力を男に変装させて隠すなんて子供だまし、誰にも通用しないネ。」

「いや、まぁ男として通用してた時もあったんだけどなぁ。」

「まぁまぁッ!銀さんたら、私が刹那さんを見てここで働かせようなんて考えるとでも思った?あんたも隅に置けない人だねぇ、独占欲の塊じゃないか。」

「え?」

「あぁいや、こっちの話よ。私たちは女の中の女。いくら上手く男装してても私の目は誤魔化せないわよ?ねぇ、せっかくだからちょっとおめかししてみない?別人になるわよ?」

「あぁいや、私そういうのはあんまり得意じゃなくて…」

「何言ってんだいッ!たまには蝶になるもんだよ!さ、早く奥の部屋へ…晴太!連れてってやんな!」

「任せて母ちゃん!ほら、刹那さん、こっちこっち!!」

「え、あ、あぁ!ちょっと!!」

完全に日輪と晴太のペースにはまり、刹那は奥の部屋へと誘導される。

銀時は呆然としたまま彼女の姿を見送っていると、その場に残っていた日輪はクスクスと笑いだした。

「銀さん、よっぽどあの人に惚れてるのねぇ。」

その言葉に、はっと我に返る。

「ち、違ぇよ!あいつァ化粧とかそういう女っぽいことァ昔から苦手なんだ!だからここには連れてきたくなかったっつーのによぉ……」

がっくりと肩を落とし、落胆する銀時を見て、壁にもたれて煙管を吹かしていた月詠が大きな声で笑い、口を開いた。

「お前にもそういう一面があったとは、わっちは驚きじゃ。だがわしも何年もいろんな女子を見てきておるが、あれは化けるぞ。」

「……んなこたァ分かってるよ。」

頭をガサガサと掻き、銀時はようやく椅子に腰を下ろしては諦めた。

「…んで、今日はどんな依頼で俺たちを呼んだわけ。」

目を細めて団子を食べる銀時は、空を見上げながら二人にそう尋ねる。

月詠と日輪は顔を見合わせて、銀時の背中を見つめたのだった。
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