三.侍 時々 姫
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「おい、起きろ、起きろ刹那ー」
遠くで誰かが呼んでいる。
私はゆっくり重い瞼をこすりながら開け、その先に見える視界を何度も瞬きをしながら見つめた。
夕日を背に、彼らがこちらを見て優しく微笑む。
自分の上には大きな木に繋がれている木の葉が風に揺られて、音を鳴らしていた。
「何こんなとこで寝てんだよ。気を抜くにも程があんだろーが。」
「全く、お前は本当に危機感のない奴だな。そういうところは銀時にそっくりだ」
「いや違う。俺に似てるんだ」
「いや何でそんなところで張り合うんだ高杉…」
桂の発言に高杉がむきになってつっかかるのに対し、坂本は笑い声をあげてそれを見守る。銀時はそんな彼らに呆れながらも頭を掻いて、自分へと手を伸ばした。
「ほら、帰んぞ。」
「か、帰るって…」
なぜだろう。目の前にいるのは、ずっと一緒に闘ってきた友なのに。
ずっと共に過ごしてきた家族のような存在なのに。
彼らが微笑みかけてくれる自分は、もうあの頃の自分ではない。
当時彼らに見せていた自分は男だと、侍だと偽って接してきたはず。
だが自分の体に目を向ければ、大人として成長し女を露骨に出した今の姿だっだ。
私はみんなと一緒に帰れない。
あの頃とは違う。もう男にも戻れない。女にもなり切れない。そして人間ともまた、遠い存在になってしまった。
「…私は、…」
「何モタモタしてんだよ。置いてくぞ」
「私、もう昔とは違う。みんなの知ってる如月刹那は、もうどこにもいない…だから」
「はぁ?何言ってんだオメーは。」
刹那が心の弱い部分をさらけ出そうとしたその時、銀時が額に手を伸ばし、俯いた顔を上げさせた。
「よく分かんねぇけど、刹那は刹那だろーが。俺たちは別に、テメェがどんな姿になろうが、変わらねぇよ。」
「銀…」
「刹那はいつも考えすぎだ。たまにはこいつらを見習ってバカになる事を覚えたほうがいい。まぁ最も、こ奴らはもともとバカではあるが。」
「小太郎…」
「あははっ!まーそう深く考えんと楽しくいこうぜぇ刹那。いつものように笑って、いつものようにワシんらに怒ってればそれでぇぇ」
「辰馬…」
「刹那。お前がどんな姿になろうと、どうなっちまおうと、いつだってお前の居場所は俺が用意してやる。刹那はいつだって独りじゃねぇさ。」
「晋助…」
それぞれらしい言葉に、刹那は気づけば涙をこぼしていた。
「私…まだ、みんなの傍に…いたい」
大粒の涙と一緒に、ぽつりぽつりと本音が零れる。
「私、いつあんな化け物のような姿になって自我を失うか分からないけど…」
ずっと恐れていた。
自分の成れの果ての姿を目の当たりにしてようやく自分がどのような存在かを、知らしめされた。
自分はいつ、ああなってしまうのだろう。いつか、大切な人に手をかけてしまう時が来るのだろうか。
それが怖い。この手で護りたいものを傷つけるのが、何よりも怖い。
それでもーーー。
「それでも、みんなの傍にいたい。みんなと一緒に今を生きたい!!」
力を込めて心の声を外に出せば、気づけば四本の温かい手のひらが自分の頭にのせられていた。
顔を上げれば、彼らが自分に優しく笑いかけてくれている。
言葉を交わさずとも、それが自分が出したわがままに対してどんな応えなのか聞くのは、愚問だろう。
刹那も彼らにつられて微笑んだ。
そして小さな声で何度もつぶやいた。
ーーありがとう、ありがとう。
そして目の前にいた彼らの姿は風に舞う木の葉により、消え去った。
刹那は驚いて手を延ばそうとした。
行かないで、一人にしないでくれという願いを込めて。
そして自分の手を掴んでくれたのは、先程とは違う三本の手。
日焼けを知らない白く美しい小さな手。
何度も苦難を乗り越えて、強くたくましく育っていく優しい手。
そして自分を命がけで護り、何も求めず傍にいてくれる温かい手。
私はこの手を知っている。
今の私には昔の彼らだけじゃない。
この優しいみんなの手も、護り抜きたいんだーーー。
「神楽、新八、総悟…」
三人の手をしっかりと握りしめる。
その時、ようやく自分の目に光が差し込んできた。