三.侍 時々 姫
name change
name changeお好きなお名前をどうぞ!
※下の名前は男女共用できる名前を付けるとストーリーがしっくりきます💦
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
状況は思った以上に深刻だった。
力の差は歴然としていて銀時達が圧倒的に押してはいるが、斬り倒した奴らはすぐに再生し、一人たりとも倒せてはいない。
それどころか、攻撃を避けるような素振りもしてはこなかった。
「キリがないですよ、銀さん!」
「んな事ァ分かってる!」
それでも攻撃の手を休める事は出来ない。
奴らの体にしっかりと張り付いたエイリアンたちが、隙あらばこちらの体も飲み込もうとしている動きを見せていたからだ。
「そ、総悟、それ以上はもう体が…っ!」
目が見えなくとも、刹那は彼の体に限界を迎えていた事を察していた。
自分の前から一歩たりとも動くこともなく、襲い掛かってくる敵をただ斬り倒す。
だが数秒後にそれは元の姿に再生され、また斬り倒すの繰り返しを行っている。
彼はただ無心に、自分を護り抜く事だけに集中していた。
「約束しただろ。今日は護るって。いいから今は、黙って休んでてくだせぇ。」
「総悟……」
強がりは言うものの、沖田自身も限界を感じていた。
身体が軋み、思うように動かない。
頭痛と吐き気が止まらない。
それでも刀を振るうこの手だけは、止めては行けないと本能だけで動かしていた。
「どうじゃワシの失敗作共は。なかなか張合いがあるじゃろ。どうだ?お主らも不死の身体を手に入れてみるか?」
毒雁魔はそう苦戦している彼らに向かって高笑いした。
ーー腐ってやがる。
誰もがそう思ったその時。
ドォン、と凄まじい爆音と共に端にいた敵が吹き飛んだ。
「なにっ?!」
「再生能力が高いなら、再生出来ぬほど粉々にすればいい」
「ヅラッ!!」
「ヅラじゃない、桂だ。」
新たにこの場所へと姿を現したのは、爆弾攻撃を得意とする桂だった。
その爆弾の威力は凄まじいもので、敵を一瞬で粉砕し跡形もなくした。
銀時たちのその呼び掛けに、刹那と沖田は反応する。
本来沖田は反射的に桂の名を耳にすれば敵とみなし、隙あらば捕らえようとするが、そうする気力もないどころか奴にこの場を何とかできるような期待さえ、抱いてしまった。
そして刹那は、久方ぶりに聞いたその主の声と、銀時たちが新たな味方に胸を弾ませる声を耳にし、硬直した。
「こ、小太郎……?」
弱々しく彼の名を呼ぶ声は、当人に届くことは無かったが、彼女の身が無事だとその目で見た桂は、再び爆弾を取り出した。
「遅くなってすまない。対エイリアン用の爆弾を用意するのに時間がかかってしまった。刹那、大丈夫か。今終わらせる!!」
「小癪なことを……ッッ!」
どうやら刀よりも爆弾の攻撃の方が効果はあるらしい。
何よりもそれを証明するのが、毒雁魔の表情だった。
突然現れた桂一人の攻撃により、一瞬で怪訝そうな顔をしていた。
そしてそこに更に拍車をかけるかのように、別の位置にいたエイリアン達が光を灯したかと思えば、消滅した。
「な、なんだっ?!」
「真選組だぁッッ!御用改めであるッ!」
広い室内に、土方の声が響く。
沖田はその声を聞き、瞬時に安堵する。
刹那も桂に続いて頼もしい仲間が現れたことにより、少しだけ心を落ち着かせた。
「なんでぇ総悟、ボロボロじゃねーか。そんなに後ろに一人いるお姫様護衛の任務は重てぇなら代わってやってもいいぜ。」
「ひ、土方…さん」
「とりあえず無事みたいで良かったぜ。刹那が一大事となりゃ、あいつらに何言われるか…うぐぁッ!」
ふぅ、と一息タバコを拭かせて話す土方に、突然銀時が飛び蹴りをかます。
不意打ちを食らった土方はその場に倒れ込み、素早く銀時に目を向けた。
「何しやがんだ、テメェ!」
「そりゃこっちのセリフだッ!てめぇら真選組はなにやってんだよ!刹那既にズタボロじゃねーか!一人の女もろくに護れねぇのかコノヤロー!つーか来るのおっせぇんだよ!!」
「うるせぇ、こっちにもいろいろ事情があったんだよ!っつーかそんな無駄口叩いてる暇があるならさっさとこいつら片付けやがれッッ!」
銀時も新たな戦力が来たことを喜んでいるのか、一見ただの悪絡みだが、妙にはしゃいでいるように刹那の耳には聞こえた。
だが、そんな状況は一瞬にして覆される。
「ぞろぞろとまぁ…面倒なことになったのぅ。レイだけは生かして連れていこうと思っておったが、もう仕方あるまい。」
毒雁魔はやれやれと肩で息を吐く。
そして再び、ポケットに閉まっていたスイッチに手をかけた。
「今度のは効果抜群じゃぞ。全員ここで死ぬ量じゃ。」
奴はニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべた。
その途端、天井、横壁にある小さな声穴から霧状の何かが溢れ出始めた。
「ゴホッ、ゴホッッ!なんだこれ……!」
「やべぇ、霧が酷くて前が……!」
「ま、待てこの匂い…!」
現れた味方が次々とむせ始める状況に、沖田は焦りを感じた。
毒雁魔にやられた時に嗅いだ匂いと同じだが、それよりもうんと匂いが強い。
間違いない、これは…!
「霧を吸うなっ!!猛毒だッ!!」
自分よりも先に刹那が彼らにそう叫ぶ。
だが時は既に遅く、次々と仲間たちの自由を奪い、咳込んだかと思えば吐血をする奴も出始めた。
「このままじゃ…!」
「カッカッカッ!さすがよのぅ、レイ。毒を吸っても他の奴らよりは丈夫じゃわい。ますます気に入った。全員死んだあとに、お主だけは治療してやろう」
「ふ、ふざけんなッ!!」
「総悟!」
毒が体の中に入りこみ、力はさらに抜けていく中沖田は何とか刀を支えに立ち上がり、刹那の前へ立ち塞がる。
だが正直、刀を振る力もなければ意識を保っている自信すら怪しい。
額から滝のように流れる汗、視界の中で何人もの仲間たちが倒れていく光景。
絶対絶命の状況だと誰もが理解できると感じたその時。
沖田が握りしめていた刀が何者かに引き抜かれた。
そして気づいた時には驚くほどの突風が彼らを護るように現れたのだった。