三.侍 時々 姫
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「なっ……!!なんだこれっ!」
人間のように二足歩行はしているが、とてもそれとは思えぬし、こんな天人たちは見たことがない。
「銀ちゃん!なんか変なのでてきたアル!」
「んなの見りゃわかるっつーの!どーいうこったよ、こりゃ…」
「カッカッカッ!わしの作った失敗作共らじゃよ」
「失敗作……っ?!」
「ま、まさか……」
ぼやける視界の中で、刹那はなんとか目を開いてそのもの達に目を向ける。
刹那にとっては初めて見るものではなかった。
むしろ薄れかけていた記憶の中から、再びその存在が蘇り、カタカタと肩を震わせ始めた。
「銀……っ!あれは、私と同じ……」
「あ?どこがテメェと一緒なんだ?全然違ぇじゃねえか、何一つ似てねぇよ。もしかしてオメェ…自分が鏡に映ると実はあんな姿に見えるとか意味わかんねーこと…」
「違う違う違うッ!意味わかんねぇこと妄想すんな!」
力がないなりにも、銀時の発言にツッコミを入れては再び説明を始めた。
「…私、前にもあんな姿をした奴らを何人も見た事があるんだ。天人達に囚われていた時に、な…」
「なっ、なんだって?!じゃあ、もしかしてこれって……!」
新八は彼女が何を言わんとしているかを推測し、結論は最悪なところに辿り着いた。
その青ざめた顔を見て、刹那は小さく頷いては話を続けた。
「恐らく私と同じ実験を行って、自我を失い、姿かたちまでかわってしまった、ただの人間だ……」
「なっ……!!」
刹那の言葉を疑った。
どこからどう見ても人間にはとても程遠い姿しか見えない。
だが今の話が真実ならば、刹那は一歩間違えばあの中の一員になっていたと言うことか。
銀時と沖田は拳を握りしめ、引きつった笑みを浮かべた。
「おいおい、冗談キツイぜ。じゃあ俺にさっき注射器でいれた液体は、一体なんなんでぃ。…今更冷や汗でてきちまったじゃねーか…」
「…治癒能力も高く、蘇生能力も高い。宇宙に住むエイリアンという生き物の血を濾過して、毒素を抜いた液体だ。あれを体内に入れ続け、限界を超えてしまった連中達は皆、ああなる。私はまだ、自我を保ってはいるけれど、いつ体ごと支配されてあぁなるかは……うっ…!」
「刹那ッッ!」
「だ、だから私と同じなんだよ…私はたまたま姿かたちも変わらず、エイリアンの特性が奇跡的に体に馴染み人間の姿をしているが……一歩間違った時は、彼らの姿が、私の成れの果てだ。」
「違うッッ!!刹那姉ちゃんはあんな奴らと一緒じゃないネ!!」
「…神楽?」
「そう、あいつらとレイは違う。なんせ出来損ないと、成功作じゃからの。こんな醜い奴らと一緒なわけがなかろうて。主はあらゆる痛みや苦痛に耐えられる完璧な器じゃ。それにわしら科学者が手を加え、そしてこのワシ、毒雁魔(どくがんま)の最高の作品になるんじゃッ!」
「……おいジジィ」
高笑いをする毒雁魔に、銀時の低い声が突き刺さる。
銀時だけではない。今の発言を聞いた彼ら全員の視線が奴に集中した。
「刹那が完璧な器?笑わせてんじゃねーよ。こいつはそもそも欠品だらけだろーが。」
「な、に……?」
「刀がねぇと運動もろくにできねぇ運動音痴、おまけに天然要素が強ぇ」
「ちょ、ちょっと…」
「更にはに人の好意の気持ちになかなか気づかねぇ重症の鈍感ときた」
「銀時さん、総悟さん…?」
「辛い時は一人で抱え込み、弱みも見せない。水臭い人ネ」
「……」
「自分に何があっても真っ先に他人を心配して、自分の事なんて全然大切にしない…周りの人の気持ちなんて一切考えない人です」
銀沖から始まり、沖田、神楽や新八も続けて刹那の欠点を零し始める。
とうとう何も言う気にならなかった刹那を、銀時はギュッと肩の手に力を入れて抱きしめ直し、再び口を開いた。
「完璧な器でも、テメェの実験台でもねぇ。このいろいろ欠けてるのが、どうしようもなく手のかかるこいつが、如月刹那だ。俺達はそんなこいつがいいんだ。これ以上改良するところなんてねぇんだよ」
銀時のその言葉は刹那の耳にしっかり届き、心に響いた。
胸の中がかっと熱くなり、気を緩めば今にも涙腺が崩壊しそうな気分になった。
だが、毒雁魔はそれを良くは思わなかった。銀時の真っ直ぐな瞳に苛立ちを覚え、瞬時に声色を変えた。
「…救いようのないバカどもじゃ。さっさと死ね」
その声を合図に、周囲にいたヤツらが動き出した。
銀時は慌てて構えをとる。
彼女を抱えたままでは牽制は不利のままだ。
だがこの胸の中に納まる刹那の自分にしがみつく力は脆く、今にも倒れそうな状態で手を離すことはできない。
「くっ……!」
闘いは始まっている。
新八と神楽は既に動き、交戦していた。
そんな時、もう一人の男が自分の肩に手を置き、焦りの中からはっと我に返った。
「旦那ァ、姫の護衛は俺に任せてくだせぇ。」
「お前、そんな身体で…!」
「さっきも言いやしたが、俺がここでくたばったら、もう刹那に合わせる顔がねぇ。それに、今日は約束したんだ」
「約束……?」
「今日一日、刹那を護るっ、て。ここで果たさなきゃ、命落とす前に男として…侍として死んじまう」
額から流れる汗に、荒い呼吸。
どこにこんな強がる余裕があるのかと問いたいぐらいだったが、沖田の目は死んでいなかった。
「……上等だコノヤロー。死んでもそいつの手ェ離すんじゃねぇぞッッ!!」
「ラジャー」
一分一秒でも早くこの闘いにケリをつけねばならない。
銀時はそう悟っては刹那を沖田に託し、全線へと進むのであった。